【世界の亀ニュース】18,000個超の卵を救う ガイアナの先住民が川岸で守る淡水ガメの未来

今回は、南米ガイアナのルプヌニ地方で、地域住民が中心となって淡水ガメの産卵地を守り、1万8,000個を超える卵を孵化させた保護活動を紹介します。

今回のニュース

ガイアナ南部のルプヌニ地方で、2021年から2025年までの間に、18,000個を超える淡水ガメの卵が保護され、孵化しました

活動には、Sustainable Wildlife Management Programme、South Rupununi Conservation Society、Caiman House、そして地域の先住民コミュニティが参加しています。保全活動全体では26の先住民コミュニティと連携し、カメの現地活動では123人のレンジャーが関わり、5つの地域コミュニティで131か所の砂浜を見守ってきました。

成果は2026年5月、Sustainable Use of Wild Species Transformative Partnership Platformによって紹介されました。

どこの国・地域の話か

国・地域:ガイアナ共和国
地域:ルプヌニ地方
対象環境:河川、湿地、砂浜、氾濫原
活動期間:2021〜2025年
発表時期:2026年5月
情報の種類:淡水ガメ・産卵地保全・孵化・地域保全・先住民コミュニティ

ルプヌニはガイアナ南西部に位置し、森林、サバンナ、河川、湿地が入り組む地域です。地域では魚や野生動物が食文化や生活と深く結びついており、保全と持続可能な利用を同時に考える取り組みが進められています。

登場する亀

ルプヌニ地方では、6種類の淡水ガメが確認されています。

その中でも今回の保全活動で特に重要なのが、モンキヨコクビガメオオヨコクビガメです。研究では、ルプヌニにはモンキヨコクビガメ(Podocnemis unifilis)、オオヨコクビガメ(Podocnemis expansa)のほか、Rhinoclemmys punctularia、マタマタ、Platemys platycephalaMesoclemmys gibbaが生息すると報告されています。

モンキヨコクビガメ

学名は Podocnemis unifilis

英語ではYellow-spotted River Turtleと呼ばれます。

日本の環境省も「モンキヨコクビガメ」という和名を使用しており、南米のアマゾン川・オリノコ川流域などに広く分布する一方、生息地の減少や卵・成体の過剰利用によって多くの地域で個体数が減少しているとしています。

幼体では頭部に黄色い斑紋があり、これがこのカメを見分ける大きな特徴です。成長すると模様は薄くなりますが、雄では残る場合があります。

オオヨコクビガメ

学名は Podocnemis expansa

南米最大級の淡水ガメで、アマゾン川、オリノコ川、エセキボ川などの大河川流域に生息します。大型の雌では甲長60センチを大きく超えることがあります。

今回の活動地域であるガイアナも、本種の自然分布域に含まれています。

ニュースの要約

ルプヌニ地方では、淡水ガメの個体群が、卵や成体の過剰利用、ペット取引、洪水などによって減少してきました。

そこで地域住民が河川の砂浜を巡回し、産卵された巣を確認。

浸水や捕食などの危険が高い場合には卵を安全な場所へ移し、孵化するまで保護します。孵化した子ガメは、その後ふたたび自然の河川へ戻されます。

2021年から2025年までの活動で、保護・孵化された卵は1万8,000個を超えました。

131か所の砂浜を見守る

この活動で印象的なのは、一つの巨大な保護施設でカメを増やしているわけではないことです。

保全の現場は、カメが実際に卵を産む川岸です。

活動では123人のレンジャーが参加し、5つの地域コミュニティにまたがる131か所の砂浜が対象になりました。

川岸を歩く。

足跡を探す。

巣を見つける。

水位を見る。

卵が安全な場所にあるか判断する。

必要な場合だけ、人間が手を加える。

広い河川を守るには、毎年その川を見て暮らしている地域住民の存在が欠かせません。

カメの繁殖は「川の水位」とつながっている

モンキヨコクビガメの繁殖は、川の水位変化と強く結びついています。

雌は水位が下がり始める乾季に産卵場所へ移動し、砂浜などに卵を産みます。

つまり、人間から見ればただの川岸でも、カメにとっては期間限定の産卵場所です。

雨季には水の下にある。

乾季になると砂浜が現れる。

そこへ母ガメが上がる。

そして卵を残す。

ところが、予想より早く水位が上昇すれば、砂の中の卵は水没します。

そのため、レンジャーたちは卵だけを見るのではなく、川そのものの変化を観察する必要があります

卵を動かすべきか、動かさないべきか

すべての卵を回収して人工的に孵化させるわけではありません。

2025年にまとめられた「Rupununi Freshwater Turtle Management Plan」では、現地で巣をそのまま守る方法、危険な巣の移動、ヘッドスタート、研究、環境教育、住民への啓発、地域ルールの整備など、複数の方法を組み合わせる方針が示されています。

重要なのは、

「人間が全部育てればいい」

という考え方ではありません。

安全な巣は、そのまま自然に任せる。

洪水や捕食の危険が高い巣だけを助ける。

カメが本来自分たちで繁殖できる状態を残しながら、人間が必要な場所だけ補助する考え方です。

カメは食料でもある

ルプヌニ地方での保護が難しい理由の一つに、淡水ガメが地域の食文化や生活と深く関係していることがあります。

特にモンキヨコクビガメは、南米の多くの地域で長く食料として利用されてきました。

2025年に発表された研究では、ルプヌニにおいてカメと卵の利用実態を調べながら、地域社会による保全と伝統的利用をどう両立させるかが検討されています。

「食べる人間」と「守る人間」を単純に分けることはできません。

同じ地域の人が、昔からカメを利用してきた一方で、今は巣を守るレンジャーにもなっています。

保護と利用を一緒に考える

このプロジェクトの目的は、地域住民から野生動物の利用を完全に切り離すことではありません。

SWM Programmeは、野生動物の個体群と生態系を維持しながら、先住民や農村地域の食料、文化、生活も守ることを目的としています。ガイアナでは、39の先住民コミュニティ、約2万4,000人の生活を含む地域管理の仕組みづくりが進められています。

カメを守るために人を森や川から追い出すのではない。

その土地で暮らしてきた人たち自身が、

「どれだけ利用できるのか」

「どこは守るべきなのか」

を考える。

このニュースの大きな特徴は、そこにあります。

子どもたちにもカメを伝える

この活動では、卵や子ガメを守るだけでなく、環境教育も行われています。

子どもや若者たちに淡水ガメの生態や保全について伝え、次の世代が地域のカメを知る機会を作っています。

2025年に作られた管理計画でも、環境教育と意識の変化は、巣の保護や研究と並ぶ重要な柱として位置づけられています。

卵を一つ守れば、その年の子ガメを救えるかもしれない。

でも、人の考え方が次の世代へ伝われば、その先の何十年も川を守れる可能性があります。

18,000という数字の向こう側

18,000個。

数字だけを見ると、とても大きな成果です。

でも、実際の保全活動では、一度に18,000個の卵を守ったわけではありません。

一つの砂浜で、一つの巣を見つける。

別の日に、また別の巣を見つける。

水位を確認する。

孵化を待つ。

子ガメを川へ戻す。

それを何年も続けた結果が、18,000という数字になりました。

亀好きとして注目したいポイント

今回のニュースで注目したいのは、人間がカメを「増やしている」のではなく、カメが自分で増えられる時間を守っていることです。

卵を産んだのは母ガメです。

砂の中で育ったのも卵自身です。

殻を破ったのも子ガメです。

川へ泳いでいくのもカメです。

人間がやったことは、

洪水が来そうなら卵を移す。

巣を荒らされそうなら見守る。

子ガメが生まれるまで時間を作る。

それだけです。

でも、自然の中では、その「それだけ」がなければ消えてしまう命がたくさんあります。

湯川亀吉の一言

南米の亀も買えるうちに買っておこう。

出典

Sustainable Use of Wild Species Transformative Partnership Platform
「Over 18,000 freshwater turtle eggs hatched in Guyana」

Sustainable Wildlife Management Programme / CIFOR-ICRAF
「SWM Programme – Guyana」

Frontiers in Ecology and Evolution
「Balancing conservation and traditional use of yellow-spotted river turtle Podocnemis unifilis in Southern Rupununi, Guyana」

環境省
「モンキヨコクビガメ Podocnemis unifilis