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  • 【世界の亀ニュース】絶滅危惧種を含む5種7匹の子ガメが誕生 テネシー水族館で淡水ガメのベビーブーム

    【世界の亀ニュース】絶滅危惧種を含む5種7匹の子ガメが誕生 テネシー水族館で淡水ガメのベビーブーム

    今回は、アメリカのテネシー水族館で、5種類の淡水ガメの子どもが相次いで誕生したニュースを紹介します。

    今回のニュース

    アメリカ・テネシー州チャタヌーガにあるテネシー水族館で、2026年5月中旬以降、5種類、合計7匹の淡水ガメが孵化しました。

    誕生したのは、ヨツメイシガメ3匹、ジャノメイシガメ1匹、キボシイシガメ1匹、ワモンチズガメ1匹、ヒラリーカエルガメ1匹です。

    このうち多くは、絶滅の危機に直面している種類です。さらに水族館の孵卵器では、別のワモンチズガメやモリイシガメ類などの卵も発生を続けています。テネシー水族館が7月7日に発表し、アメリカ動物園水族館協会が7月31日に改めて紹介しました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ合衆国、テネシー州
    場所:チャタヌーガ、テネシー水族館
    元記事の言語:英語
    水族館による発表:2026年7月7日
    アメリカ動物園水族館協会による紹介:2026年7月31日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・繁殖・孵化・動物園・絶滅危惧種

    テネシー水族館は、一般公開されているものとしては北米最大規模の淡水ガメコレクションを持つ施設です。1992年の開館から今回の発表までに、56種類・亜種、合計1,166匹のカメを孵化させてきました。

    誕生した5種類のカメ

    今回孵化したのは、次の5種類です。

    ヨツメイシガメ 3匹

    学名は Sacalia quadriocellata

    頭部の左右にある眼状斑によって、本物の目と合わせて四つの目があるように見えることが、和名の由来です。今回誕生した種類の中では最も多い3匹が孵化しました。

    ジャノメイシガメ 1匹

    学名は Sacalia bealei

    英語ではBeal’s four-eyed turtle、またはBeal’s eyed turtleと呼ばれます。ヨツメイシガメと同じSacalia属ですが、甲羅や頭部の模様に違いがあります。日本では「ジャノメイシガメ」という和名が使われています。

    キボシイシガメ 1匹

    学名は Clemmys guttata

    黒い甲羅や皮膚に黄色い斑点が散らばる、小型の北米産淡水ガメです。英語ではSpotted turtleと呼ばれています。

    ワモンチズガメ 1匹

    学名は Graptemys oculifera

    甲羅に輪のような模様が現れるチズガメの仲間で、英語名はRinged map turtleです。アメリカ南部の限られた水系に分布する種類です。

    ヒラリーカエルガメ 1匹

    学名は Phrynops hilarii

    南米に分布するヨコクビガメ類の一種です。首を甲羅へまっすぐ引き込むのではなく、横へ曲げて収納します。顎にある2本のヒゲ状突起も特徴です。

    ニュースの要約

    今回の孵化では、ヨツメイシガメが3匹、そのほかの4種類が1匹ずつ誕生しました。

    テネシー水族館の記事では、ヨツメイシガメは「深刻な絶滅危機」、ジャノメイシガメ、キボシイシガメ、ワモンチズガメは「絶滅危惧」と紹介されています。

    ヒラリーカエルガメは同じ評価対象には含まれていませんが、異なる大陸や環境で進化した5種類が、同じ時期に一つの水族館で孵化したことになります。

    水族館の孵卵器では、さらに2匹のワモンチズガメが孵化直前とみられています。

    また、チュウオウアメリカモリイシガメとキボシチズガメの卵も、順調な発生を示していると報告されました。ワモンチズガメがテネシー水族館で孵化したのは、1998年以来です。

    孵卵器の中に季節を作る

    カメの卵を孵化させるには、温度を一定に保つだけでは十分ではありません。

    土や砂などの床材、水分量、空気の温度、湿度といった条件を、その種類が野生で経験する環境に近づける必要があります。

    飼育下での繁殖例が少ない種類では、どの条件が適しているのか、まだ十分に分かっていない場合もあります。飼育担当者は、卵の状態を観察しながら、野生の季節変化を孵卵器の中で再現します。

    特に複雑だったのが、ヒラリーカエルガメの孵化です。

    このカメが生息する南米では、卵が産み落とされる時期と、子ガメが安全に活動できる雨季との間に時間があります。

    卵の発生や孵化はすぐに進むのではなく、条件が整うまで遅らせられることがあります。雨季の嵐や水位上昇などの環境変化が、子ガメにとって外へ出る合図になります。

    テネシー水族館では、最初に卵を低温・低湿度に近い条件で管理しました。

    その後、少しずつ温度を上げ、時折水を吹きかけることで、乾季から雨季へ移り変わる環境を再現しました。

    つまり、飼育員は孵卵器の中で南米の季節を進め、子ガメが卵から出る時期を待ったのです。

    2007年から続くヨツメイシガメの繁殖

    テネシー水族館は、ヨツメイシガメの繁殖で特に大きな成果を残してきました。

    同館では2007年、飼育下では世界初とされたヨツメイシガメの孵化に成功しました。それ以降、今回の3匹を含め、飼育下個体群へ加わったヨツメイシガメは合計72匹になりました。

    水族館で誕生した個体の一部は、ブロンクス動物園、ノックスビル動物園、キャメロンパーク動物園など、アメリカ動物園水族館協会に加盟する別の施設へ移されています。

    一つの施設だけで個体を抱えるのではなく、複数の施設で分散して飼育・繁殖することで、災害や病気などによって一度に個体群を失う危険を減らせます。

    飼育下で残す「もう一つの個体群」

    今回誕生した子ガメが、すぐに野生へ放されるわけではありません。

    動物園や水族館で維持される希少種の個体群には、野生の個体群がさらに減少した場合に備える「保険」のような役割があります。

    適切な血統管理を行いながら繁殖を続けることで、その種類そのものと、飼育・繁殖に必要な知識を将来へ残します。テネシー水族館は、こうした個体群を野生絶滅への備えとなる「assurance population」と説明しています。

    ただし、水族館で繁殖できることと、野生のカメを守ることは同じではありません。

    川や湿地そのものが失われれば、帰る場所はなくなります。

    飼育下繁殖は野生環境の代わりではなく、野生の個体群と生息地を守る活動を支える、もう一つの方法なのだと思います。

    飼育技術も次の施設へ受け継がれる

    テネシー水族館では、繁殖に成功した方法を施設内だけの秘密にはしていません。

    卵を管理した温度、湿度、床材、孵化までの変化などを、ほかの動物園や水族館の専門家と共有しています。

    以前は飼育下での孵化が難しかった種類でも、複数の施設が知識を共有することで、繁殖例を増やせる可能性があります。

    一匹の子ガメが誕生するまでに得られた知識は、その一匹だけのものではありません。

    次の卵を孵化させる人へ伝わり、別の水族館へ伝わり、その種類全体を守るための技術へ変わっていきます。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、5種類のカメが、それぞれ違う季節と環境を卵の中に持っていることです。

    同じ孵卵器へ入れて、同じ温度にすれば孵化するわけではありません。

    アジアの山地に暮らすカメ。

    北米の湿地に暮らすカメ。

    南米の乾季と雨季を生きるカメ。

    卵は小さく、外から見ればよく似ています。

    でも、その卵が待っている雨や温度、湿度、孵化の時期は、それぞれ違います。

    飼育員は卵を見ながら、その中にある遠い川や森の季節を想像します。

    カメを増やすというより、カメが何百万年もかけて身につけた時間の進み方を、人間が少しずつ学んでいるのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    繁殖は楽しいよね!

    出典

    Tennessee Aquarium
    「Hatching bonanza adds 7 adorable baby turtles from 5 species to Aquarium」

    Association of Zoos and Aquariums
    「Tennessee Aquarium Welcomes Seven Baby Turtles From Five Species」

  • 【世界の亀ニュース】アカウミガメの巣4,100個超 米ジョージア州で過去最多を更新

    【世界の亀ニュース】アカウミガメの巣4,100個超 米ジョージア州で過去最多を更新

    今回は、アメリカ・ジョージア州の海岸で、アカウミガメの巣が過去最多を更新したニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年、アメリカ・ジョージア州で確認されたアカウミガメの巣が、これまでの記録を上回りました。

    ジョージア州自然資源局が参加するウミガメ巣穴監視システムによると、8月2日時点で州内の海岸から報告されたウミガメの巣は暫定4,169個。そのうち、4,107個がアカウミガメの巣です。

    これまでの最多記録は、2022年に確認された4,071個でした。2026年の産卵シーズンはまだ完全には終わっておらず、最終的な数はさらに増える可能性があります。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ合衆国、ジョージア州
    主な地域:大西洋沿岸の島々と砂浜
    元記事の言語:英語
    集計時期:2026年8月2日時点
    情報の種類:新着ニュース・ウミガメ・産卵・繁殖・保護活動

    ジョージア州では、カンバーランド島、オサボー島、セントキャサリンズ島、ジキル島、タイビー島など、多数の海岸でウミガメの産卵調査が行われています。

    州の沿岸約150キロを対象に、ボランティア、研究者、行政職員らが巣を探し、保護し、孵化状況を記録しています。

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、アカウミガメです。

    学名は Caretta caretta。英語ではLoggerhead Sea Turtleと呼ばれます。

    名前のとおり、ほかのウミガメと比べて大きく頑丈な頭を持っています。強い顎でカニや貝などの硬い獲物をかみ砕き、大西洋、太平洋、インド洋などの広い海域を移動します。

    アメリカのジョージア州では、海岸へ産卵に来るウミガメの大部分をアカウミガメが占めています。アメリカでは保護対象となっており、ジョージア州のウミガメ保護活動でも中心となる種です。

    ニュースの要約

    2026年の産卵シーズンに、ジョージア州で最初のアカウミガメの巣が確認されたのは5月5日でした。

    それから約3か月の間に、州内の各地で次々と巣が発見されました。

    8月2日時点の暫定集計では、アカウミガメの巣が4,107個、アオウミガメの巣が5個、ケンプヒメウミガメの巣が4個、種を確定できていない巣が53個確認されています。

    産み落とされた卵の推定数は、すでに16万個を超えています。

    一部の巣では孵化も始まり、同日の集計では約5万6,800匹の子ガメが巣から出たと記録されています。ただし、これらは産卵・孵化シーズン途中の暫定値であり、今後も更新されます。

    2022年の記録を超えた

    ジョージア州では、1989年に州内の主要な海岸を対象とした本格的な調査が始まりました。

    それ以降の最多記録は、2022年の4,071個でした。2022年には、26万匹を超えるアカウミガメの子どもが海へ向かったとされています。

    2026年は、産卵シーズンが始まる前から、巣の多い年になると予測されていました。

    6月22日の時点ですでに2,366個の巣が確認され、その後も急速に数が増えました。そして8月初め、アカウミガメだけで4,100個を超え、2022年の記録を更新しました。

    なぜ今年は巣が多いのか

    アカウミガメの雌は、毎年必ず産卵するわけではありません。

    一度の産卵シーズンに複数回の巣を作ったあと、次の産卵まで2年から3年ほど間を空ける個体もいます。

    そのため、巣の数は毎年一定ではなく、数年おきに大きく増えることがあります。ジョージア州の研究者たちは、2026年がそうした「多くの雌が同じ年に戻ってくる年」になると予測していました。

    ただし、2026年には、例年より多くの雌が同じ時期に集中して産卵する「波」のような動きも確認されています。

    なぜ産卵の時期がこれほど重なったのかは、まだ完全には分かっていません。研究者たちは卵から採取したDNAや産卵記録を調べ、その原因を探っています。

    タイビー島でも島の記録を更新

    観光地として知られるタイビー島でも、2026年は過去最多の産卵シーズンとなりました。

    これまでの島の最多記録は2022年の35個でしたが、7月15日の時点ですでに49個へ到達。その後も増え続け、8月2日時点の監視記録では、53個のアカウミガメの巣が報告されています。

    タイビー島では毎朝、訓練を受けたボランティアが海岸を歩き、前夜に残された母ガメの足跡を探しています。

    巣が見つかると場所を特定し、印を付けて保護します。高潮による浸水の危険が高い場所では、許可を受けた担当者が卵を安全な位置へ移すこともあります。

    数が増えても、すべての卵が孵化するわけではない

    巣の数が過去最多になったことは、大きな希望です。

    しかし、産み落とされた卵がすべて子ガメになるわけではありません。

    高潮や嵐で巣が浸水することもあります。捕食者に卵を食べられることもあります。砂浜に残された深い穴や椅子、テント、ゴミが、母ガメや子ガメの進路を塞ぐこともあります。

    さらに、海岸沿いの人工照明は、子ガメが進む方向を狂わせます。子ガメは本来、暗い砂浜から海側の明るい地平線へ向かいますが、建物や道路の光に引き寄せられると、海とは反対側へ進んでしまうことがあります。

    タイビー島の保護関係者は、海岸を「平らに、きれいに、暗く」保つよう呼びかけています。

    砂の穴を埋める。
    砂の城を崩す。
    ゴミや道具を持ち帰る。
    夜は海岸に向けた照明を消す。

    一つひとつは小さな行動ですが、母ガメが巣を作り、子ガメが海へ向かうためには重要なことです。

    長い保護活動が数字になって現れた

    ジョージア州では、1990年代初めにウミガメ保護活動が本格化して以降、アカウミガメの巣が平均して年間約4%ずつ増加してきたとされています。

    毎朝、海岸を歩く。

    足跡を見つける。

    砂の下の卵を確認する。

    巣を囲い、嵐や捕食者、人間の活動から守る。

    そして、子ガメが海へ向かったあと、巣を調査して結果を記録する。

    2026年の4,100個を超える巣は、突然現れた数字ではありません。

    何十年も前から続けられてきた調査と保護の結果が、長い時間を経て現れ始めたものだと考えられます。

    記録更新でも、保護は終わらない

    巣が過去最多になったからといって、アカウミガメが完全に安全になったわけではありません。

    アカウミガメは現在も保護対象であり、海岸の開発、人工照明、漁業による混獲、海洋ごみ、生息環境の変化など、さまざまな危険にさらされています。

    また、巣が増えたことと、海で暮らすアカウミガメ全体の個体数が同じ割合で回復したことは、必ずしも同じではありません。

    子ガメが海へ入り、成長し、再び産卵できる年齢になるまでには長い時間がかかります。

    2026年に生まれた子ガメたちが、いつか同じ砂浜へ戻ってくる。その未来まで保護が続いて、初めて今回の記録が次の世代へつながるのだと思います。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、4,100個を超える巣の一つひとつに、一匹の母ガメの移動があることです。

    海の中から砂浜へ上がる。

    重い体を前肢で引きずりながら、波の届きにくい場所まで進む。

    砂を掘り、卵を産み、穴を埋める。

    そして、再び大西洋へ帰っていく。

    人間が記録するのは「巣の数」です。

    でも、その数字の中には、夜の砂浜を進んだ母ガメたちの時間が積み重なっています。

    4,107という数字は、4,107個の穴があったというだけではない。

    何千回もの上陸と産卵が、同じ海岸で繰り返されたということです。

    湯川亀吉の一言

    良かったね。

    出典

    Georgia DNR Sea Turtle Conservation Program
    「Sea Turtle Nest Monitoring System」

    Georgia Public Broadcasting
    「Georgia is on track for a record-high turtle nesting season. What’s behind the good news」

    Tybee Island Marine Science Center
    「Sea Turtle Nesting Season Updates」

    NOAA Fisheries
    「Loggerhead Turtle: Science」

  • 【世界の亀ニュース】犬や嵐からヒメウミガメの巣を守る パラワン島で地域住民が夜の浜を巡回

    【世界の亀ニュース】犬や嵐からヒメウミガメの巣を守る パラワン島で地域住民が夜の浜を巡回

    今回は、フィリピン・パラワン島の砂浜で、地域住民と研究者が協力してヒメウミガメの巣を守っているニュースを紹介します。

    今回のニュース

    フィリピン西部のパラワン島にあるサン・ビセンテでは、ヒメウミガメの産卵期になると、地域住民と研究者が夜通し砂浜を巡回しています。

    活動の中心となっているのは、フィリピンの海洋保全団体Large Marine Vertebrates Research Institute Philippines、通称LAMAVEと、海岸沿いの村で暮らす地域住民です。

    母ガメの上陸を確認し、産卵を見守り、犬や高潮などの危険がある巣は保護用の孵化場へ移します。卵から出てきた子ガメが無事に海へ向かうまで、地域全体で見守る活動が続けられています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:フィリピン共和国、パラワン州
    場所:サン・ビセンテ、サント・ニーニョ村など
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年7月17日
    情報の種類:新着ニュース・ウミガメ・産卵・孵化・地域保全

    サン・ビセンテは農業と漁業が行われている町で、その海岸はアジアに残る重要なヒメウミガメの産卵地の一つです。町には約284キロに及ぶ砂浜や小さな入り江があり、例年11月中旬から3月ごろにかけて、多数のヒメウミガメが夜の海岸へ上がります。

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ヒメウミガメです。

    学名は Lepidochelys olivacea。英語ではOlive Ridley Sea Turtleと呼ばれ、日本語では「オリーブヒメウミガメ」と表記されることもあります。

    ヒメウミガメは小型のウミガメで、甲長と甲幅の差が少なく、上から見ると甲羅の外周が円形に近く見えるのが特徴です。世界の熱帯・亜熱帯の海域に広く分布し、フィリピンの海岸でも産卵します。

    ニュースの要約

    産卵期のサン・ビセンテでは、地域の巡回員やボランティア、LAMAVEの研究者たちが交代で夜の砂浜を歩きます。

    最も忙しい時期には、一晩から早朝にかけて五つの時間帯に分かれ、合計5マイル、約8キロ以上の海岸を巡回します。

    母ガメを見つけても、すぐには近づきません。

    産卵が終わるまで静かに待ち、犬が近づけば追い払い、母ガメが海へ戻る前に甲羅の大きさを測ります。さらに、頭部にある鱗の模様を写真に記録し、将来同じ個体が戻ってきたときに識別できるようにします。遺伝子調査のため、ひれから小さな試料を採取する場合もあります。

    卵を動かさなければならない巣

    母ガメが選んだ場所であっても、すべての巣をそのまま残せるとは限りません。

    波に近すぎる場所では、高潮や嵐によって巣が浸水する可能性があります。人や車が頻繁に通る場所では、砂が踏み固められたり、卵が傷つけられたりする危険もあります。

    安全に孵化できないと判断された巣では、卵の向きを大きく変えないよう慎重に掘り出し、保護用の孵化場へ移します。孵化場では、巣の位置や卵の数、移動した日時などを記録しながら、子ガメが出てくる日を待ちます。

    卵を移すこと自体にも危険があります。

    移動方法や砂の深さ、温度などが適切でなければ、孵化率を下げてしまう可能性があるからです。

    そのためLAMAVEは、地域の巡回員に産卵調査、巣の移動、孵化場の管理、子ガメの放流などの技術を伝え、地域の人たち自身が長期的に海岸を守れる仕組みづくりを進めています。

    巣を襲う犬

    サン・ビセンテで現在、最も身近な脅威とされているのが、海岸を歩き回る犬です。

    犬は砂の中にある卵の匂いを見つけ、巣を掘り返します。孵化したばかりの子ガメが砂から出た直後に襲われることもあります。

    巡回員たちは母ガメの産卵中だけでなく、巣の周辺や子ガメの放流時にも犬が近づかないよう見守っています。

    これは犬を悪者にするという話ではありません。どんなときも、悪いのは人間です。

    放し飼いや野良犬の増加など、人間の暮らし方によって生まれた問題です。

    海岸のウミガメを守るためには、巣に柵を設置するだけでなく、地域の飼い犬の管理や住民への理解を広げる必要があります。

    気候変動と観光開発

    ヒメウミガメの巣を脅かしているのは、犬だけではありません。

    海面上昇、高潮、海岸浸食、激しい嵐によって、これまで安全だった産卵場所が水につかる可能性が高まっています。また、砂の温度は子ガメの性別や発生にも関係するため、海岸の高温化も重要な問題です。

    パラワン島では、観光開発も進んでいます。

    道路、宿泊施設、海岸照明、人や車の往来が増えれば、母ガメが上陸を諦めたり、子ガメが海とは反対側の光へ向かったりする可能性があります。

    自然豊かな海岸が観光地として注目されることと、ウミガメが産卵できる暗く静かな砂浜を残すこと。その二つをどう両立させるかが、これからの大きな課題です。

    卵で遊んでいた少年が、巣を守る側へ

    今回のニュースで紹介された地域巡回員の一人が、ジェラルド・マフサイさんです。

    マフサイさんは子どものころ、海岸でウミガメの卵をよく見つけていました。しかし、その卵がなぜ大切なのかを知らず、友人たちと遊びに使っていたと振り返っています。

    2023年、マフサイさんはLAMAVEの地域巡回員として働き始めました。そして現在は、巡回チームの責任者と、ウミガメ調査の研究助手を務めています。

    かつて卵の意味を知らなかった少年が、今では夜の浜を歩き、母ガメを記録し、同じ卵を犬や嵐から守っている。

    この変化は、一人の考えが変わったというだけではありません。

    地域に知識と仕事が生まれ、海岸で暮らしてきた人が保護活動の中心になったことを示しています。

    地域の人が守る意味

    遠くから研究者がやって来て、数年間だけ調査することはできます。

    しかし、ヒメウミガメは毎年同じ地域へ戻り、夜中や嵐の前後にも産卵します。

    海岸の変化を毎日見ているのは、そこで暮らす人たちです。

    どの場所に犬が多いのか。
    どの浜が高潮で削られるのか。
    どの時間帯に母ガメが上がりやすいのか。

    地域住民が持つ経験と、研究者が持つ調査技術を組み合わせることで、広い海岸を長期間見守れるようになります。LAMAVEの活動は、ウミガメだけを保護するのではなく、地域の人が自分たちの海岸を守り続けられる体制を作ることも目的としています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、ウミガメを守っているのが、特別な施設の中ではなく、人が暮らしている普通の砂浜だということです。

    母ガメが上陸する浜の近くには、家がある。

    漁へ出る船がある。

    犬が歩き、子どもが遊び、これから観光施設が建つかもしれない。

    人間の暮らしとウミガメの産卵地は、離れた二つの世界ではありません。

    同じ砂浜を使っています。

    だからこそ、ウミガメを守るには、その土地で暮らす人を保護活動の外側に置くことはできません。

    夜の浜を歩く地域巡回員の存在は、人間と亀が同じ場所で生きていくための、小さくても重要な接点なのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    人がいる限り難しい問題だね。
    人が悪だってことじゃないよ。
    良いだの悪いだの、正しいだの間違っているだのの判断軸を持っている人間がいることがクソなのさ。

    出典

    Mongabay
    「How a community is helping sea turtles hatch in the Philippines」

    Large Marine Vertebrates Research Institute Philippines
    「Marine Turtle Nesting Beach Monitoring and Conservation Project: An Overview」

    Island Innovation
    「How a Community is Helping Sea Turtles Hatch in the Philippines’ Palawan」

    World Wildlife Fund
    「Constructing climate-resilient hatcheries for endangered sea turtles in the Philippines」

    沖縄美ら海水族館
    「ヒメウミガメ」

  • 【世界の亀ニュース】育てて放したブランディングガメが母に 20年越しの次世代が湿地へ

    今回は、アメリカ・マサチューセッツ州で続けられてきた淡水ガメの保護活動が、約20年を経て大きな節目を迎えたニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年6月25日、アメリカ・マサチューセッツ州のグレート・メドウズ国立野生生物保護区で、2匹の若いブランディングガメが湿地へ放されました。

    今回の放流が特別だったのは、この2匹の母親もまた、幼いころに人間の手で育てられ、同じ湿地へ戻されたカメだったことです。

    保護活動で育てられたカメが成長し、野生で繁殖し、その子どもが再び湿地へ帰る。

    2003年に始まった保護事業で、初めて確認された「二代目」の野生復帰です。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ合衆国、マサチューセッツ州
    場所:コンコード、グレート・メドウズ国立野生生物保護区と周辺湿地
    放流日:2026年6月25日
    発表時期:2026年6月29日〜7月7日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・野生復帰・繁殖・保護活動

    グレート・メドウズ周辺では、アメリカ魚類野生生物局、マサチューセッツ州野生生物局、ズー・ニューイングランド、学校、地域住民などが協力し、ブランディングガメの保護を続けています。

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ブランディングガメです。

    学名は Emydoidea blandingii。英語ではBlanding’s Turtleと呼ばれます。

    北米に分布する半水棲の淡水ガメで、浅く流れの緩やかな湿地や、水草の多い池などを利用します。暗く滑らかなドーム状の背甲と、明るい黄色の顎から喉が特徴です。成体の甲長はおよそ16〜22センチになります。

    水中だけで一生を過ごすわけではありません。

    餌場、越冬場所、繁殖に使う水域、産卵場所の間を移動し、1マイル以上も陸上を歩くことがあります。そのため、湿地の分断や道路上での事故の影響を受けやすいカメです。

    ニュースの要約

    今回放された2匹は、生後約9か月のブランディングガメです。

    孵化後の最初の冬をストーン動物園で過ごし、十分に成長してから湿地へ戻されました。

    野生で冬を越した子ガメは、春になっても硬貨ほどの小ささであることが多く、捕食者に襲われる危険があります。一方、暖かい飼育環境で十分な餌を与えられた子ガメは、短期間で体を大きくし、野生で生き残れる可能性を高められます。

    この保護方法は、ヘッドスタートと呼ばれます。

    カメを一生飼育するのではありません。

    命を落としやすい幼少期だけを人間が預かり、ある程度成長した段階で本来の生息地へ戻します。

    母ガメ「アイビー」の物語

    2匹の母親は、個体番号144番、愛称をアイビーといいます。

    アイビーの物語は、2010年に始まりました。

    一匹の母ガメがグレート・メドウズの湿地を離れ、1マイル以上を移動して、近くのオフィス街の植え込みに巣を作りました。

    その巣から生まれた11匹の中に、体重わずか7グラムの雌の子ガメがいました。それがアイビーです。

    アイビーはストーン動物園で約10か月間育てられ、2011年に湿地へ放されました。

    甲羅には、将来再発見したときに識別できる小さな印が付けられていました。

    しかし、その後アイビーは10年以上、人間の前から姿を消します。

    湿地のどこかで生きているのか。
    事故に遭ったのか。
    捕食されたのか。

    人間には分からないまま、時間だけが過ぎていきました。

    10年以上ぶりの再発見

    2023年、野外調査を行っていたスタッフが、成長したアイビーを再発見しました。

    硬貨ほどの子ガメだったアイビーは、繁殖可能な大きさの成体になっていました。

    スタッフは甲羅に無線発信器を取り付け、その後の移動を追跡しました。

    そして2025年6月25日の深夜、アイビーが湿地から産卵場所へ向かっていることを発信器が知らせました。

    保護スタッフが追跡すると、アイビーは保全されている野生の花畑を選び、午前2時30分ごろから8個の卵を産みました。

    そのうち7個が無事に孵化しました。

    保護されたカメが、自分で次の世代を残した

    ヘッドスタートでは、放した子ガメの数が成果として注目されることがあります。

    しかし、本当の目的は、放したカメが大人になることです。

    さらに、その成体が人間の助けを受けずに野生で相手を見つけ、産卵し、次の世代を残すことです。

    アイビーの産卵は、この保護活動が「子ガメを放す段階」から、野生の個体群が自分たちで世代をつなぐ段階へ進み始めたことを示しています。

    2003年に活動が始まってから、グレート・メドウズと周辺湿地では800匹以上のヘッドスタート個体が放されてきました。

    ズー・ニューイングランドのHATCHプログラム全体では、1,400匹以上のブランディングガメが育てられています。

    学校の教室で育てられる子ガメ

    この活動に参加しているのは、動物園や研究施設だけではありません。

    地元の学校では、子どもたちが教室に設置された水槽で、ブランディングガメの子ガメをひと冬育てます。

    暖かい水槽の中で餌を与え、体重や甲羅の長さを記録し、春になると湿地へ戻します。

    2009年以降、この活動にはマサチューセッツ州の学校から2万2,000人以上の児童・生徒が参加しています。

    アイビーが産んだ7匹のうち、今回の式典で放された2匹以外の子ガメも、地域の学校で育てられ、生徒たちによって野生へ戻されました。

    一匹の母ガメから生まれた子どもたちが、複数の教室で冬を越し、それぞれの生徒に見送られて湿地へ帰ったことになります。

    なぜ回復に20年以上かかるのか

    ブランディングガメは、とても長く生きるカメです。

    保護された環境では70〜80年以上生きる可能性があります。

    一方で、繁殖を始めるまでには長い時間がかかり、一般に成熟するのは十数年から20年以上経ってからです。

    卵を孵化させ、子ガメを育て、放流するだけなら、一年以内に行えます。

    しかし、そのカメが無事に成長し、自分の卵を産んだことを確認するには、さらに十年以上待たなければなりません。

    保護活動の結果を確かめるためには、人間の年度や計画期間ではなく、カメの一生に合わせて待つ必要があります

    カメが移動できる地域を守る

    ブランディングガメを守るには、巣や一つの池だけを囲えばよいわけではありません。

    カメたちは複数の湿地を利用し、その間にある森林や草地、住宅地の近くを歩きます。

    アイビーの母親はオフィス街へ産卵に向かい、アイビー自身は保護された花畑に卵を産みました。

    人間が利用する土地と、カメが利用する土地は、完全には分かれていません。

    道路、住宅地、学校、企業、保護区を含む地域全体で協力しなければ、移動するカメを守ることはできません。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、一度放したカメを、人間が完全には見守れないことです。

    アイビーは湿地へ帰ったあと、10年以上姿を見せませんでした。

    保護した人たちは、その間に何が起きているのか知ることができなかった。

    それでも、アイビーは生きていた。

    水の中で餌を探し、冬を越し、少しずつ体を大きくしていた。

    そして、再び見つかったときには、次の世代を残せる母ガメになっていました。

    保護活動は、すべてを管理することではありません。

    人間の手から離れたあと、カメが自分の時間を生きられるようにすること。

    アイビーの子どもたちは、今度は自分たちの姿を湿地の中へ消していきます。

    次に人間と出会うのは、何年後になるのでしょうか。

    湯川亀吉の一言

    亀の累代繁殖やりたいよね。

    出典

    U.S. Fish and Wildlife Service
    「Partners release second generation of “headstarted” turtles at Great Meadows National Wildlife Refuge」

    Massachusetts Division of Fisheries and Wildlife
    「Historic win for Blanding’s turtles」

    Zoo New England
    「Zoo New England, MassWildlife, and U.S. Fish & Wildlife Service release historic second-generation Blanding’s turtles」

    U.S. Fish and Wildlife Service
    「Blanding’s Turtle(Emydoidea blandingii)」