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  • 【世界の亀ニュース】8,000万年の系統を絶やすな ベリーズがメキシコカワガメ「ヒカティー」を救う58項目の国家計画を承認

    【世界の亀ニュース】8,000万年の系統を絶やすな ベリーズがメキシコカワガメ「ヒカティー」を救う58項目の国家計画を承認

    今回は、中米ベリーズから、

    一匹のカメを守るために、

    国全体でこれから何をするのかを決めたニュースを紹介します。

    主役は、

    メキシコカワガメ。

    学名は、

    Dermatemys mawii

    英語では、

    Central American River Turtle

    そしてベリーズでは、

    Hicatee(ヒカティー)

    という名前で親しまれています。

    2026年8月。

    ベリーズ水産局は、このヒカティーを絶滅から守るための

    Central American River Turtle (Hicatee) Conservation Action Plan 2026

    を正式に承認しました。

    そこに並んでいる具体的な行動は、

    58項目。

    密猟対策。

    法律。

    教育。

    飼育下繁殖。

    野生復帰。

    研究。

    生息地保全。

    それらを一つの計画にまとめ、

    これから実際に動かしていきます。

    今回のニュース

    Turtle Survival Alliance(TSA)が2026年8月31日に発表したところによると、ベリーズのMinistry of Blue Economy & Marine Conservation傘下のFisheries Departmentが、ヒカティーの新しい保全行動計画を承認しました。

    計画作りを中心となって進めたのは、

    Belize Foundation for Research and Environmental Education(BFREE)

    そこへ、

    Belize Fisheries Department。

    Turtle Survival Alliance。

    Zoo New England。

    研究者。

    大学。

    保全団体。

    行政。

    そして、

    実際にヒカティーを捕ってきた伝統的な漁業地域の人々

    まで参加しました。

    計画づくりそのものは2020年から始まり、オンライン・対面のワークショップや戦略会議を何年も重ねてきました。

    そして2026年8月24日。

    ベリーズのNational Climate Weekで正式に発表。

    ようやく、

    「ヒカティーを守りたい」

    という段階から、

    「誰が、何を、どう進めるのか」

    という実行段階へ移ります。

    どこの国・地域の話か

    国:ベリーズ
    地域:中米
    対象種:メキシコカワガメ
    現地名:Hicatee
    学名:Dermatemys mawii
    英名:Central American River Turtle
    発表:2026年8月24日
    TSA発表:2026年8月31日
    情報の種類:淡水ガメ・国家保全計画・飼育下繁殖・野生復帰・密猟対策・生息地保全

    メキシコカワガメは、

    ベリーズだけのカメではありません。

    現在の自然分布は、

    ベリーズ。

    グアテマラ。

    メキシコ南部。

    この3地域に限られています。

    登場する亀

    今回の主役、

    Dermatemys mawii

    日本ではメキシコカワガメという名前が使われています。

    そして、このカメには、

    とても大きな特徴があります。

    ものすごく水棲傾向が強い。

    川。

    湖。

    三日月湖。

    冠水林。

    そうした淡水環境の中で生活します。

    さらに、

    大型の淡水ガメでありながら、

    ほぼ完全な植物食。

    水中や川沿いの植物を利用します。

    見た目もかなり独特です。

    甲羅は一般的なカメのようにゴツゴツと高く盛り上がらず、

    比較的滑らか。

    頭は丸みがあり、

    鼻先は少し突き出しています。

    完全に、

    「川を泳ぐためのカメ」

    という感じです。

    この一匹しか残っていない「科」

    ここが、

    僕が今回一番驚いたところです。

    メキシコカワガメが所属するのは、

    Dermatemydidae。

    現在、

    この科に生きている種類は、

    Dermatemys mawiiだけ。

    一種類です。

    WCS Belizeによると、

    その最も近い親戚たちは、

    現在では化石でしか知られていません。

    さらに、

    この系統は他の現生カメ類から、

    およそ8,000万年前に分岐したとされています。

    8,000万年前。

    恐竜がいた時代です。

    つまり、

    メキシコカワガメが絶滅するということは、

    一種類がいなくなるだけではありません。

    8,000万年以上続いてきた一本の系統そのものが、現代で途切れる

    ということになります。

    でも、人間が食べてきたカメでもある

    そして、

    このカメの保全を難しくしている理由があります。

    ヒカティーは、

    ベリーズの人々にとって、

    単なる珍しい野生動物ではありません。

    長い間、

    食文化とも結びついてきたカメです。

    そのため、

    捕獲されてきました。

    そして、

    捕獲量が個体群の回復能力を上回るようになった。

    TSAやBFREEは、

    現在の大きな減少原因として、

    食用目的の過剰捕獲

    を挙げています。

    だから今回の計画も、

    単純に、

    「捕るな」

    だけではありません。

    文化。

    地域住民。

    法律。

    教育。

    研究。

    野生個体群。

    全部を一緒に考えています。

    現在も細かい捕獲規制がある

    ベリーズでは現在、

    ヒカティーの売買は禁止されています。

    さらに、

    所持できる数。

    車両で運べる数。

    雌の捕獲に関するサイズ制限。

    5月1日から31日までの禁漁期。

    などの規制があります。

    ここからも、

    このカメと人間との関係の複雑さが分かります。

    完全に、

    人間から切り離された野生動物ではない。

    でも、

    今までと同じように捕り続ければ、

    いなくなる。

    だから、

    「利用」と「存続」をどう両立させるのか

    まで考えなければなりません。

    58の行動

    今回決められた計画には、

    58の具体的な行動が設定されています。

    大きく分けると、

    法執行。

    法律・規制。

    地域教育。

    飼育個体群管理。

    野生復帰。

    研究。

    野生個体群そのものの保全。

    生息地の回復と保護。

    などです。

    つまり、

    「繁殖させればいい」

    ではありません。

    密猟を減らす。

    子どもたちへ伝える。

    川を残す。

    野生の数を調べる。

    飼育個体の血統を管理する。

    カメを戻す。

    そして、

    戻した場所を守る。

    全部必要です。

    2010年から続いてきた

    もちろん、

    2026年に突然始まった活動ではありません。

    BFREEとTSAが本格的にヒカティー保全へ協力し始めたのは、

    2010年。

    翌2011年には、

    Hicatee Conservation & Research Center

    が設立されました。

    そこで、

    飼育下繁殖。

    ヘッドスタート。

    野生個体群調査。

    生態研究。

    教育。

    再導入。

    さまざまな活動が進められてきました。

    15年以上の実践を経て、

    今回、

    それらを国の正式なロードマップにまとめたわけです。

    1,000匹以上を野生へ

    そして、

    すでに結果も出始めています。

    TSAによると、

    これまでに、

    1,000匹以上のヘッドスタート個体が野生へ放されています。

    つまり、

    飼育施設で増やすだけではない。

    育てる。

    野生で生きられるサイズにする。

    そして、

    川へ戻す。

    すでにそこまで進んでいます。

    30,000エーカーを守った

    さらに2021年。

    TSA、BFREEなどの保全パートナーは、

    約30,000エーカー

    の土地の保全につなげました。

    その中には、

    重要なヒカティー生息地であるCox Lagoonも含まれます。

    Cox Lagoonは、

    Belize Riverとつながる重要な淡水環境です。

    1,000匹カメを育てる。

    でも、

    川がなくなったら意味がない。

    だから、

    カメだけでなく、

    カメが帰る場所そのものを確保する。

    ここでも、

    同じ考え方が出てきます。

    学校でも「ヒカティー」を伝える

    保全活動のもう一つの柱が、

    教育です。

    TSAによると、

    これまでにヒカティーを題材とした教育・普及活動へ、

    数千人のベリーズの子どもたち

    が参加しています。

    学校では、

    ヒカティーをテーマにしたバナーなども作られてきました。

    これは、

    かなり重要だと思います。

    今、

    川にいる大人のカメを守る。

    でも、

    20年後に、

    そのカメを捕るか、

    守るかを決めるのは、

    今の子どもたちかもしれない。

    カメの寿命は、

    人間の政策より長い。

    だから、

    次の世代まで含めて保全する必要があります。

    「ベリーズが最後の希望」

    BFREEのJacob Marlin氏は、

    ヒカティーについて、

    ベリーズがこの種の長期的な存続にとって最後の希望だ

    という強い表現を使っています。

    もちろん、

    メキシコやグアテマラにも本種は残っています。

    でも、

    多くの地域ですでに個体群は大幅に減少し、

    場所によっては姿を消しました。

    だからこそ、

    比較的個体群が残っているベリーズで、

    今止められるかどうかが重要になります。

    「計画を作った」で終わらせない

    そして今回、

    一番大事なのはここです。

    58項目を決めた。

    立派な冊子を作った。

    政府が承認した。

    それだけでは、

    カメは一匹も増えません。

    BFREE自身も、

    保全団体だけではヒカティーを救えない

    と明言しています。

    最終的に、

    ヒカティーがベリーズで十分な数を維持できるかどうかを決めるのは、

    ベリーズの人々です。

    だから今回の発表は、

    完成ではありません。

    むしろ、

    スタートラインです。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番面白いと思うのは、

    やっぱり、

    「一種類を失うことと、一つの進化の枝を失うことは同じではない」

    というところです。

    ヒカティーが絶滅する。

    すると、

    Dermatemys mawiiがいなくなる。

    でも、

    それだけじゃない。

    Dermatemydidaeというグループから、

    生きている動物が、

    一匹もいなくなる。

    何千万年も続いた系統が、

    そこで終わる。

    恐竜が歩いていた頃から、

    祖先が形を変えながら、

    ずっと命をつないできた。

    気候が変わった。

    大陸が変わった。

    他の動物が絶滅した。

    それでも、

    この一本だけは、

    2026年まで来た。

    だったら、

    ここで終わらせたくない。

    今回の58項目は、

    その一本の線を、

    未来へもう少し伸ばすための計画なんだと思います。

    湯川亀吉の一言

    ベリーズって国があるということを知らなかった!

    出典

    Belize Fisheries Department
    「Central American River Turtle (Hicatee) Conservation Action Plan 2026」
    ベリーズ政府が正式に公開している保全行動計画。58の戦略的行動と長期的な保全方針について。
    Belize Fisheries Departmentの公式資料ページを見る

    Turtle Survival Alliance
    「Belize Approves Conservation and Action Plan for Critically Endangered Hicatee」
    2026年8月31日。計画の承認、58項目、15年以上の保全活動、1,000匹以上の野生復帰、30,000エーカーの生息地保全について。
    TSAの記事を読む

    Belize Foundation for Research and Environmental Education(BFREE)
    「Hope for the Hicatee」
    2026年8月24日。計画作成の経緯、地域住民・研究者・行政などの参加、Climate Weekでの発表について。
    BFREEの記事を読む

    Wildlife Conservation Society Belize
    「Central American River Turtle」
    本種がDermatemydidae唯一の現生種であること、約8,000万年前に他の現生カメ類から分岐した非常に古い系統であること、分布・食性・脅威について。
    WCS Belizeの種紹介を見る

    IUCN/SSC Tortoise and Freshwater Turtle Specialist Group
    Dermatemys mawii – Central American River Turtle」
    分類、分布、生態、植物食、保全状況について。
    TFTSGの種アカウントを見る

  • 【世界の亀ニュース】100年ぶりに再発見されたカメを「未来の湿地」へ 気候変動から救うオーストラリアの移住計画

    【世界の亀ニュース】100年ぶりに再発見されたカメを「未来の湿地」へ 気候変動から救うオーストラリアの移住計画

    今回は、オーストラリア西部に生息する、世界でも特に希少な淡水ガメの保全活動を紹介します。

    学名は、

    Pseudemydura umbrina

    日本の法令では、

    オーストラリアヌマガメモドキ

    という和名が使われています。

    一方、日本の爬虫類関連資料などでは、

    クビカシゲガメ

    という名前も使われています。

    このカメは、

    一度は絶滅したと思われました。

    再発見された。

    繁殖に成功した。

    1,000匹以上を野生へ戻した。

    普通なら、

    ここまででも大成功です。

    でも、

    問題が一つ残っていました。

    カメが暮らしてきた湿地そのものが、だんだん乾いている。

    そこで研究者たちは、

    過去にこのカメが生息していなかった、

    もっと南の、

    もっと涼しく、

    もっと長く水が残る湿地へ、

    カメを移し始めました。

    今回のニュース

    大きな転換点の一つが、2016年です。

    西オーストラリア州政府、Perth Zoo、University of Western Australiaなどの保全チームは、飼育下で繁殖した24匹のオーストラリアヌマガメモドキを、西オーストラリア州南西部の新しい候補地へ移しました。

    重要なのは、

    そこが単なる「別の放流場所」ではなかったことです。

    本来このカメが知られていた歴史的な分布域よりも、

    さらに南側。

    将来の気候変動を考え、

    より涼しく、

    より湿潤な環境を探して選ばれました。

    この方法は、

    assisted colonisation

    と呼ばれます。

    日本語なら、

    「人為的移住」

    「保全的移住」

    あるいは、

    「分布域外への計画的移送」

    に近い考え方です。

    どこの国・地域の話か

    国:オーストラリア
    州:西オーストラリア州
    従来の主な生息地域:パース近郊・スワン沿岸平野
    新たな移住候補地:西オーストラリア州南西部
    対象種:オーストラリアヌマガメモドキ
    学名:Pseudemydura umbrina
    英名:Western Swamp Tortoise / Western Swamp Turtle
    情報の種類:淡水ガメ・飼育下繁殖・野生復帰・気候変動・保全的移住

    現在、オーストラリア政府も本種の重要な保全策として、気候変動下でも生息可能な場所へ新しい個体群を作ることを挙げています。

    登場する亀

    オーストラリアヌマガメモドキは、

    ヘビクビガメ科に属する非常に小型の淡水ガメです。

    成体でも甲長はおよそ11〜13cm程度。

    体重は300〜450gほど。

    首は短く、

    頭頂部には大きな一枚の鱗板があります。

    足には水かきがあり、

    各足に5本の爪を持ちます。

    見た目は、

    派手ではありません。

    巨大でもない。

    奇抜な模様もない。

    茶色。

    黒。

    泥や湿地に溶け込むような小さなカメです。

    でも、

    進化的には非常に独特な存在です。

    Pseudemydura属で現在生きているのは、この一種だけ。

    オーストラリア政府の回復計画では、近縁のカメとは大きく異なる遺存的な系統であることが紹介されています。

    1839年、一匹だけ見つかった

    このカメの科学的な物語は、

    1839年に始まります。

    オーストリア人の博物学者Ludwig Preissが、西オーストラリアで一匹の標本を採集。

    その標本は、

    ウィーン自然史博物館へ送られました。

    しかし、

    その後が続きません。

    一匹も見つからない。

    何十年経っても、

    見つからない。

    1901年、

    博物館に保存されていた標本をもとに、

    Pseudemydura umbrina

    として正式に記載されます。

    でも、

    生きたカメが見つからない状態は続きました。

    100年以上、誰も見つけられなかった

    1839年から、

    1953年まで。

    114年間。

    新しい標本は確認されませんでした。

    そのため、

    このカメは絶滅したのではないかと考えられていました。

    そして1953年。

    物語が突然動きます。

    見つけたのは少年だった

    西オーストラリア州Upper Swan。

    そこで一匹の小さなカメを見つけたのは、

    Robert Boydという少年でした。

    彼はそのカメを、

    Western Australian Naturalists’ Clubの野生動物展示会へ持っていきます。

    そこで、

    「これは普通のカメではない」

    と気付かれました。

    100年以上、

    科学者にも見つからなかったカメ。

    その再発見のきっかけを作ったのは、

    一人の少年でした。

    探してみると、二つの小さな個体群があった

    再発見後、

    周辺で調査が行われます。

    そして、

    パース北東部に、

    二つの小さな生息地が見つかりました。

    現在の、

    Ellen Brook Nature Reserve。

    Twin Swamps Nature Reserve。

    この二つです。

    1962年には、

    残された生息環境を守るため、

    自然保護区が設けられました。

    一度は絶滅したと思われたカメに、

    ようやく保護区ができました。

    でも、生息地そのものが消えていった

    問題は、

    カメを捕る人だけではありませんでした。

    このカメが暮らしていたスワンバレー周辺は、

    パース都市圏に近い場所です。

    農業。

    宅地開発。

    道路。

    粘土採掘。

    排水。

    かつて湿地だった土地の多くが、

    別の用途へ変わっていきました。

    オーストラリア政府によると、本来利用していた粘土質の湿地の大部分は、現在では都市化・農業利用・粘土採掘などによって失われています。

    1980年代、30匹未満

    保護区まで作った。

    それでも、

    減少は止まりませんでした。

    1980年代。

    野生に残った個体は、

    30匹未満。

    Perth Zooは、

    この時期を本種が絶滅寸前まで追い詰められた時代として紹介しています。

    100年ぶりに見つかった。

    そのわずか30年後、

    今度は本当に消えそうになりました。

    1989年、動物園で繁殖を始める

    そこで、

    Perth Zooを中心とした飼育下繁殖プログラムが本格化します。

    開始は1989年。

    親ガメを繁殖させる。

    卵を見つける。

    掘り出す。

    孵卵器へ移す。

    孵化させる。

    子ガメを育てる。

    そして、

    十分に成長してから野生へ戻す。

    現在、Perth Zooでは、子ガメがおよそ100g、約3歳になった頃を一つの目安として野生復帰させています。

    1,300匹以上が生まれた

    その積み重ねは、

    大きな数字になりました。

    Perth Zooによると、

    1989年以降、

    1,300匹以上のオーストラリアヌマガメモドキが同園で繁殖。

    2024年6月時点で、

    そのうち1,125匹が野生環境へ放されています。

    30匹未満まで減ったカメです。

    そこから、

    1,000匹を超えるカメを、

    再び自然へ送り出せるところまで来ました。

    だったら、もう安心?

    ここまで読むと、

    保全は成功したように見えます。

    でも、

    新しい問題が出てきました。

    雨が減っている。

    このカメは、

    一年中水の中にいるわけではありません。

    冬から春。

    雨によって一時的な湿地に水がたまる。

    カメはそこで活動します。

    餌を食べる。

    成長する。

    繁殖に必要なエネルギーを蓄える。

    そして夏。

    湿地が乾くと、

    地面の穴や深い落ち葉の中へ入り、

    活動を抑えて暑い時期を乗り切ります。

    つまり、

    一定期間、湿地に水が残ること

    が非常に重要です。

    ところが、水のある期間が短くなっている

    気候が暖かく、

    乾燥するようになる。

    雨が減る。

    湿地が早く乾く。

    すると、

    カメが水中で餌を取れる期間が短くなります。

    昔は半年近く使えた湿地でも、

    水が残る期間が数か月まで短くなる可能性がある。

    そうなると、

    カメは十分に食べられません。

    成長できない。

    繁殖できない。

    つまり、

    保護区そのものは残っていても、カメが暮らせなくなる

    可能性があります。

    そこで発想を逆にした

    普通の保全なら、

    「本来の生息地を守ろう」

    と考えます。

    それはもちろん重要です。

    でも、

    本来の場所の気候そのものが変わってしまったら?

    そこで研究者たちは、

    違う問いを立てました。

    カメを守る場所を、もっと南へ作れないか。

    西オーストラリア州南西部。

    パース周辺より、

    涼しい。

    雨が多い。

    湿地に長く水が残る。

    将来、

    現在の生息地が暑く乾燥したとき、

    そこがカメの避難場所になる可能性があります。

    2016年、歴史的分布域の外へ

    2016年。

    24匹の飼育下繁殖個体が、

    Meerup周辺とAugusta東部の保全地域へ試験的に放されました。

    西オーストラリア州政府は当時、この試みを、

    将来の気候変動に備えて脊椎動物を歴史的分布域外へ移す試み

    として紹介しました。

    カメを、

    「昔いた場所」

    へ戻すのではない。

    「未来でも生きられそうな場所」へ移す。

    保全の考え方そのものが変わっています。

    「カメがいなかった場所へ放していいのか」

    でも、

    これは簡単な問題ではありません。

    ある生き物を、

    本来いなかった地域へ持ち込む。

    人間は過去、

    これを何度もやっています。

    そして、

    外来生物問題を起こしてきました。

    だから、

    assisted colonisationには議論があります。

    移したカメが、

    新しい生態系へ悪影響を与えないか。

    他の希少種と競合しないか。

    病気を持ち込まないか。

    新しい場所で本当に繁殖できるか。

    気候だけでは決められません。

    コンピューターまで使って「未来の湿地」を探す

    そこで研究者たちは、

    現在の生息地だけを見ません。

    気温。

    降水量。

    湿地に水が残る期間。

    カメの活動。

    卵の発生。

    将来の気候予測。

    さまざまな条件をモデル化し、

    これから先もカメが暮らせそうな場所

    を探しました。

    University of Western Australiaの研究者たちは、

    この理想的な場所を、

    “Goldilocks wetlands”

    と表現しています。

    暑すぎない。

    寒すぎない。

    乾きすぎない。

    カメにとって、

    「ちょうどいい湿地」です。

    2021年、さらに73匹

    試験は続きます。

    2021年には、

    Perth Zooで繁殖した73匹が、

    西オーストラリア州南西部の二つの場所へ放されました。

    Augusta東部へ16匹。

    Scott National Parkへ57匹。

    このうち48匹には、

    無線発信器やデータロガーが装着されました。

    見るのは、

    単に生死だけではありません。

    どこへ移動するか。

    いつ活動するか。

    体温はどう変化するか。

    どれくらい成長するか。

    新しい環境で、

    カメが本当に「普通に暮らせるか」を調べます。

    2022年、191匹を一度に放流

    翌2022年。

    さらに大きな放流が行われました。

    合計、

    191匹。

    44匹がScott National Park。

    147匹がMoore River Nature Reserve。

    飼育下繁殖プログラム開始以来、

    当時最大規模の放流でした。

    Scott National Parkの個体群は特に、

    気候変動への避難先として新しい個体群を作れるか

    を確かめる重要な試みになっています。

    2024年、さらに20匹

    保全は現在も続いています。

    2024年には、

    Perth ZooとAdelaide Zooで育った20匹が、

    Moore River近郊へ放されました。

    年齢は、

    2歳から13歳。

    放流前には無線発信器が取り付けられ、

    既にその場所で暮らしている個体と行動を比較する研究も始まりました。

    同発表時点で、

    Perth Zooでは1,300匹以上が繁殖し、

    1,145匹が野生へ放された

    とされています。

    「元の場所へ戻す」だけが保全ではなくなった

    これまで、

    野生復帰という言葉には、

    一つの分かりやすい形がありました。

    捕まえられた場所へ戻す。

    昔いた場所へ戻す。

    本来の生息地へ戻す。

    でも、

    気候変動は、

    その考え方を難しくしています。

    場所は残っている。

    保護区にもなっている。

    密猟者もいない。

    それでも、

    気候だけが昔とは違う。

    だったら、

    カメを過去へ戻すのではなく、

    未来へ移す必要があるのかもしれない。

    オーストラリアヌマガメモドキの保全は、

    その難しい問いを、

    実際のカメを使って考えているプロジェクトです。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回の話で僕が一番面白いと思うのは、

    「生息地とは何なのか」

    というところです。

    カメが昔からいた場所。

    それが生息地。

    普通はそう考えます。

    でも、

    気温が変わる。

    雨が減る。

    湿地が乾く。

    すると、

    地図上では同じ場所でも、

    カメにとっては、

    もう同じ場所ではない。

    逆に、

    昔はカメがいなかった南の湿地が、

    50年後には、

    カメにとって一番暮らしやすい場所になるかもしれない。

    保全というのは、

    昔の状態をそのまま保存する仕事だと思っていたけれど、

    このカメを見ていると、

    そうではないのかもしれない。

    変わっていく世界の中で、生き物が生き続けられる場所を探す仕事

    でもあるのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    他人が持っていない亀って、なんで欲しくなるんでしょうね?

    僕の性格が捻くれてるせいかな?

    欲しいなぁ〜オーストラリアヌマガメモドキ

    出典

    Perth Zoo
    「Western Swamp Tortoise Breeding Program」
    再発見、1980年代の個体数、繁殖プログラム、現在の繁殖・放流実績、気候変動に対応した新しい放流地について。
    URL:Perth Zooの保全プログラムを見る

    Western Australia Department of Biodiversity, Conservation and Attractions
    「Record release for critically endangered Western Swamp Tortoise」
    2022年。44匹と147匹、合計191匹の記録的な放流について。
    URL:DBCAの記事を読む

    National Environmental Science Program – Threatened Species Recovery Hub
    「Western swamp tortoises move to a cool new home」
    2016年。気候変動に備えて24匹を歴史的分布域外へ移した初期のassisted colonisationについて。
    URL:2016年の移住計画を見る

    The University of Western Australia
    「Bold plan to find ‘Goldilocks’ wetlands for Western Swamp Tortoise」
    2022年9月7日。気候変動に耐えられる新しい湿地を探す研究について。
    URL:UWAの記事を読む

    Australian Government – DCCEEW
    「Western swamp tortoise」
    本種の脅威と、気候変動避難地への新個体群創出を含む現在の保全方針。
    URL:オーストラリア政府の種情報を見る

    e-Gov 法令検索
    Pseudemydura umbrinaの日本語名「オーストラリアヌマガメモドキ」の確認。
    URL:e-Govの法令情報を見る

  • 【世界の亀ニュース】カナダでニセチズガメ100件超の観察記録 市民の写真から見つかった外来チズガメ

    【世界の亀ニュース】カナダでニセチズガメ100件超の観察記録 市民の写真から見つかった外来チズガメ

    今回は、カナダで本来生息していないチズガメの観察記録が増えているニュースを紹介します。

    きっかけは、一枚のカメの写真でした。

    今回のニュース

    2026年8月6日、Canadian Wildlife Federation(カナダ野生生物連盟)は、カナダ国内でニセチズガメの観察記録が100件を超え、さらにフトマユチズガメも20件以上記録されていると発表しました。

    どちらも本来はアメリカに自然分布する淡水ガメです。

    カナダ野生生物連盟によると、これらの外来チズガメは現在、ブリティッシュコロンビア州、オンタリオ州、ケベック州で観察されています。

    ただし、ここで重要なのは、

    「100件の観察記録=100匹の別個体」ではない

    ということです。

    同じ個体が複数回撮影されている可能性もあります。また、観察例が増えていることだけから、カナダで繁殖して安定した野生個体群を形成していると断定することもできません。

    現時点で分かっているのは、カナダのさまざまな場所で、本来そこにいないチズガメが繰り返し確認されているということです。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:カナダ
    確認地域:ブリティッシュコロンビア州、オンタリオ州、ケベック州
    発表日:2026年8月6日
    情報源:Canadian Wildlife Federation
    情報の種類:淡水ガメ・外来種・市民科学・生息分布調査

    今回の発見には、自然観察情報を投稿する市民科学プラットフォーム「iNaturalist Canada」の写真記録が大きな役割を果たしています。

    登場する亀

    今回のニュースには、よく似た3種類のチズガメが登場します。

    ヒラチズガメ

    学名は Graptemys geographica

    英語ではNorthern Map Turtle、Common Map Turtleと呼ばれます。

    この3種類の中で、カナダに自然分布しているのがヒラチズガメです。

    カナダでは主にオンタリオ州中部・南部と、ケベック州南西部の一部に分布しています。カナダ国内では保全上「Special Concern(特別な懸念)」に指定されているカメでもあります。

    ニセチズガメ

    学名は Graptemys pseudogeographica

    英語ではFalse Map Turtleと呼ばれます。

    本来の自然分布域は、アメリカのミシシッピ川やミズーリ川水系などです。日本でも「ニセチズガメ」という和名が使われています。

    カナダ野生生物連盟によると、2021年ごろにはまだ珍しい観察例だったものが、2026年にはiNaturalist上で100件を超える観察記録になりました。

    フトマユチズガメ

    学名は Graptemys ouachitensis

    英語ではOuachita Map Turtleと呼ばれます。

    日本では「フトマユチズガメ」または「ウォシタチズガメ」という和名が使われています。自然分布はアメリカ中部から南部です。

    こちらもカナダでは本来の自然分布外で、2026年時点で20件を超える観察記録が確認されています。

    始まりは「なんか違う」

    このニュースの面白いところは、最初から外来種を探していたわけではないことです。

    2021年、カナダ野生生物連盟の研究者たちは、ヒラチズガメがモーターボートのプロペラによってどの程度負傷しているのかを調べていました。

    そのために、iNaturalist Canadaへ投稿されていたヒラチズガメの写真を一枚ずつ確認していました。

    研究対象となったのは、1,953件ものヒラチズガメの観察写真です。研究者たちはその中から甲羅の状態を確認できる個体を選び、プロペラによる傷がないか調査しました。

    その作業中、

    一枚の写真に写っていたカメが、

    どうもヒラチズガメらしくない。

    研究者たちは違和感を覚えました。

    少し似ている。

    でも何かが違う。

    そこで写真を保留して後から詳しく調べたところ、そのカメはカナダ在来のヒラチズガメではなく、ニセチズガメだったことが分かりました。

    5年後には100件を超えた

    一枚の写真から始まった発見でした。

    ところが、それから約5年。

    ニセチズガメの観察記録は100件を超えました。

    さらに、別種のフトマユチズガメについても20件以上が報告されています。

    研究者にとって問題なのは、

    「外来チズガメがいる」

    ということだけではありません。

    在来のヒラチズガメと非常によく似ていることです。

    見間違えれば、外来種が増えていても、すべてヒラチズガメとして記録されてしまう可能性があります。

    見分ける鍵は「目の後ろ」

    3種類を見分けるとき、カナダ野生生物連盟が注目しているのが頭部の模様です。

    ヒラチズガメ

    目の後ろに、丸形または三角形に近い斑紋があります。

    個体差はありますが、多くの場合、目と同程度の大きさです。

    ニセチズガメ

    ニセチズガメの一部では、目の後ろに太い黄色の線が「L字型」に走ります。

    上から見ると、その模様がホッケースティックや眉毛のように見えることがあります。

    亜種のミシシッピチズガメでは、その模様がさらに目の周囲から鼻や口方向へ伸びます。

    フトマユチズガメ

    フトマユチズガメでは、目の後ろに比較的大きな長方形状の斑紋があります。

    さらに重要なのが下顎です。

    目のほぼ真下に大きな斑点があり、その幅が目と同じ程度か、それ以上になることが識別ポイントとされています。

    亀の専門家でも間違える

    「模様を見れば簡単に分かる」

    というほど単純ではありません。

    カナダ野生生物連盟自身、

    チズガメの識別は専門家にとっても難しい

    と説明しています。

    模様には個体差があります。

    写真の角度によって見えない部分もあります。

    甲羅だけが水面から出ていて、頭が見えない場合もあります。

    遠くの丸太で日光浴しているカメなら、種類を判断することはさらに難しくなります。

    だからこそ、横から頭部の模様がよく分かる写真が重要になります。

    市民が撮った写真が外来種調査になる

    今回のニュースでもう一つ注目したいのが、市民科学です。

    iNaturalist Canadaには、専門研究者だけでなく、一般の人が自然の中で見つけた動植物の写真を投稿できます。

    2023年に発表されたカナダ野生生物連盟の研究では、iNaturalist Canadaには当時すでに1,000万件以上の生物観察記録があり、そのうちカメだけでも6万件以上が登録されていました。

    研究者がカナダ中の池や川を毎日巡回することはできません。

    でも、

    散歩中の人。

    釣りをしている人。

    カヌーに乗っている人。

    公園を歩いている人。

    そうした何万人もの人が撮影した写真が集まれば、巨大な観測網になります。

    一枚の「亀の写真」が、数年後には外来種の分布を追跡するデータになる可能性があります。

    なぜカナダにいるのか

    カナダ野生生物連盟は、本来の分布域から離れた都市公園や水域にいるチズガメについて、人間によって持ち込まれた可能性を指摘しています。

    淡水ガメは長年、ペットとして世界中で流通してきました。

    しかし、大きくなった。

    飼えなくなった。

    引っ越すことになった。

    そうした理由で自然の池や川へ放されたカメが、外来個体となることがあります。

    もちろん、今回確認された一匹一匹について「元ペットだった」と証明されているわけではありません。

    ただし、本来の自然分布から遠く離れた場所で複数種のチズガメが確認されている以上、人間による移動は重要な問題です。

    「外来種」と「定着」は同じではない

    ここは今回の記事で特に注意したいところです。

    ニセチズガメの観察記録が100件を超えたからといって、

    「カナダで大量繁殖している」

    とまでは、今回の発表から判断できません。

    観察記録は個体数そのものではありません。

    繁殖した子ガメが確認されているのか。

    越冬しているのか。

    同じ場所に何年間も個体群が存在するのか。

    在来種と餌や日光浴場所を奪い合っているのか。

    そうしたことを調べて初めて、外来個体群がどの程度定着しているのかが分かります。

    今回の100件という数字は、

    「今後詳しく調べる必要があるサイン」

    として見るのが適切だと思います。

    在来のヒラチズガメも安心できない

    カナダ在来のヒラチズガメ自体も、すでにさまざまな問題に直面しています。

    カナダ野生生物連盟がiNaturalistの写真1,513件を詳しく分析した研究では、4%にモーターボートのプロペラによるものと考えられる甲羅の傷が確認されました。地域によっては7%に達しています。

    ヒラチズガメは長寿で、成熟まで時間がかかるカメです。

    そのため、繁殖可能な成体が少しずつ失われるだけでも、長期的には個体群に影響する可能性があります。

    そこへ今度は、本来いなかった近縁種まで現れ始めています。

    外来チズガメが在来種へどの程度影響するのかは、これから調べていく必要があります。

    日本でも他人事ではない

    ニセチズガメとフトマユチズガメは、日本でも「生態系被害防止外来種」に関する情報が整理されている種類です。

    国立環境研究所の侵入生物データベースでは、ニセチズガメ、フトマユチズガメともに、日本国内では定着していないとされています。

    しかし、どちらもペットとして流通してきたカメです。

    海外で起きている問題だから、日本には関係ないとは言い切れません。

    飼育しているカメを最後まで飼う。

    自然へ放さない。

    当たり前に見えるこの行動が、外来種問題を作らないためには非常に重要です。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が面白いと思うのは、

    発見の始まりが、「なんか違う」だったことです。

    研究者は外来チズガメを探していたわけではありません。

    ヒラチズガメの甲羅についた傷を調べていた。

    何千枚もの写真を見ていた。

    その中の一匹だけ、

    なんとなく違った。

    その違和感を捨てなかった。

    そして5年後、

    100件を超える観察記録へつながった。

    生き物を観察するというのは、

    珍しいものを見つけることだけではないのだと思います。

    いつものカメを見る。

    また見る。

    何度も見る。

    だから、

    「いつもと違う」

    ことが分かる。

    今回のニュースは、市民科学の話であると同時に、

    生き物をよく見ることの力

    についてのニュースでもあると思います。

    湯川亀吉の一言

    外来種ってそんなに問題なのか?

    出典

    Canadian Wildlife Federation
    「New Turtle Invaders in Canada」

    Seburn, D. C. et al.
    「Assessing Injury Rates in Northern Map Turtles (Graptemys geographica) From Motorboats Using iNaturalist Canada」
    Herpetological Conservation and Biology, 2023.

    https://www.inaturalist.org/places/canada

    国立環境研究所 侵入生物データベース
    「ニセチズガメ Graptemys pseudogeographica

    国立環境研究所 侵入生物データベース
    「フトマユチズガメ Graptemys ouachitensis

  • 【世界の亀ニュース】絶滅危惧種を含む5種7匹の子ガメが誕生 テネシー水族館で淡水ガメのベビーブーム

    【世界の亀ニュース】絶滅危惧種を含む5種7匹の子ガメが誕生 テネシー水族館で淡水ガメのベビーブーム

    今回は、アメリカのテネシー水族館で、5種類の淡水ガメの子どもが相次いで誕生したニュースを紹介します。

    今回のニュース

    アメリカ・テネシー州チャタヌーガにあるテネシー水族館で、2026年5月中旬以降、5種類、合計7匹の淡水ガメが孵化しました。

    誕生したのは、ヨツメイシガメ3匹、ジャノメイシガメ1匹、キボシイシガメ1匹、ワモンチズガメ1匹、ヒラリーカエルガメ1匹です。

    このうち多くは、絶滅の危機に直面している種類です。さらに水族館の孵卵器では、別のワモンチズガメやモリイシガメ類などの卵も発生を続けています。テネシー水族館が7月7日に発表し、アメリカ動物園水族館協会が7月31日に改めて紹介しました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ合衆国、テネシー州
    場所:チャタヌーガ、テネシー水族館
    元記事の言語:英語
    水族館による発表:2026年7月7日
    アメリカ動物園水族館協会による紹介:2026年7月31日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・繁殖・孵化・動物園・絶滅危惧種

    テネシー水族館は、一般公開されているものとしては北米最大規模の淡水ガメコレクションを持つ施設です。1992年の開館から今回の発表までに、56種類・亜種、合計1,166匹のカメを孵化させてきました。

    誕生した5種類のカメ

    今回孵化したのは、次の5種類です。

    ヨツメイシガメ 3匹

    学名は Sacalia quadriocellata

    頭部の左右にある眼状斑によって、本物の目と合わせて四つの目があるように見えることが、和名の由来です。今回誕生した種類の中では最も多い3匹が孵化しました。

    ジャノメイシガメ 1匹

    学名は Sacalia bealei

    英語ではBeal’s four-eyed turtle、またはBeal’s eyed turtleと呼ばれます。ヨツメイシガメと同じSacalia属ですが、甲羅や頭部の模様に違いがあります。日本では「ジャノメイシガメ」という和名が使われています。

    キボシイシガメ 1匹

    学名は Clemmys guttata

    黒い甲羅や皮膚に黄色い斑点が散らばる、小型の北米産淡水ガメです。英語ではSpotted turtleと呼ばれています。

    ワモンチズガメ 1匹

    学名は Graptemys oculifera

    甲羅に輪のような模様が現れるチズガメの仲間で、英語名はRinged map turtleです。アメリカ南部の限られた水系に分布する種類です。

    ヒラリーカエルガメ 1匹

    学名は Phrynops hilarii

    南米に分布するヨコクビガメ類の一種です。首を甲羅へまっすぐ引き込むのではなく、横へ曲げて収納します。顎にある2本のヒゲ状突起も特徴です。

    ニュースの要約

    今回の孵化では、ヨツメイシガメが3匹、そのほかの4種類が1匹ずつ誕生しました。

    テネシー水族館の記事では、ヨツメイシガメは「深刻な絶滅危機」、ジャノメイシガメ、キボシイシガメ、ワモンチズガメは「絶滅危惧」と紹介されています。

    ヒラリーカエルガメは同じ評価対象には含まれていませんが、異なる大陸や環境で進化した5種類が、同じ時期に一つの水族館で孵化したことになります。

    水族館の孵卵器では、さらに2匹のワモンチズガメが孵化直前とみられています。

    また、チュウオウアメリカモリイシガメとキボシチズガメの卵も、順調な発生を示していると報告されました。ワモンチズガメがテネシー水族館で孵化したのは、1998年以来です。

    孵卵器の中に季節を作る

    カメの卵を孵化させるには、温度を一定に保つだけでは十分ではありません。

    土や砂などの床材、水分量、空気の温度、湿度といった条件を、その種類が野生で経験する環境に近づける必要があります。

    飼育下での繁殖例が少ない種類では、どの条件が適しているのか、まだ十分に分かっていない場合もあります。飼育担当者は、卵の状態を観察しながら、野生の季節変化を孵卵器の中で再現します。

    特に複雑だったのが、ヒラリーカエルガメの孵化です。

    このカメが生息する南米では、卵が産み落とされる時期と、子ガメが安全に活動できる雨季との間に時間があります。

    卵の発生や孵化はすぐに進むのではなく、条件が整うまで遅らせられることがあります。雨季の嵐や水位上昇などの環境変化が、子ガメにとって外へ出る合図になります。

    テネシー水族館では、最初に卵を低温・低湿度に近い条件で管理しました。

    その後、少しずつ温度を上げ、時折水を吹きかけることで、乾季から雨季へ移り変わる環境を再現しました。

    つまり、飼育員は孵卵器の中で南米の季節を進め、子ガメが卵から出る時期を待ったのです。

    2007年から続くヨツメイシガメの繁殖

    テネシー水族館は、ヨツメイシガメの繁殖で特に大きな成果を残してきました。

    同館では2007年、飼育下では世界初とされたヨツメイシガメの孵化に成功しました。それ以降、今回の3匹を含め、飼育下個体群へ加わったヨツメイシガメは合計72匹になりました。

    水族館で誕生した個体の一部は、ブロンクス動物園、ノックスビル動物園、キャメロンパーク動物園など、アメリカ動物園水族館協会に加盟する別の施設へ移されています。

    一つの施設だけで個体を抱えるのではなく、複数の施設で分散して飼育・繁殖することで、災害や病気などによって一度に個体群を失う危険を減らせます。

    飼育下で残す「もう一つの個体群」

    今回誕生した子ガメが、すぐに野生へ放されるわけではありません。

    動物園や水族館で維持される希少種の個体群には、野生の個体群がさらに減少した場合に備える「保険」のような役割があります。

    適切な血統管理を行いながら繁殖を続けることで、その種類そのものと、飼育・繁殖に必要な知識を将来へ残します。テネシー水族館は、こうした個体群を野生絶滅への備えとなる「assurance population」と説明しています。

    ただし、水族館で繁殖できることと、野生のカメを守ることは同じではありません。

    川や湿地そのものが失われれば、帰る場所はなくなります。

    飼育下繁殖は野生環境の代わりではなく、野生の個体群と生息地を守る活動を支える、もう一つの方法なのだと思います。

    飼育技術も次の施設へ受け継がれる

    テネシー水族館では、繁殖に成功した方法を施設内だけの秘密にはしていません。

    卵を管理した温度、湿度、床材、孵化までの変化などを、ほかの動物園や水族館の専門家と共有しています。

    以前は飼育下での孵化が難しかった種類でも、複数の施設が知識を共有することで、繁殖例を増やせる可能性があります。

    一匹の子ガメが誕生するまでに得られた知識は、その一匹だけのものではありません。

    次の卵を孵化させる人へ伝わり、別の水族館へ伝わり、その種類全体を守るための技術へ変わっていきます。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、5種類のカメが、それぞれ違う季節と環境を卵の中に持っていることです。

    同じ孵卵器へ入れて、同じ温度にすれば孵化するわけではありません。

    アジアの山地に暮らすカメ。

    北米の湿地に暮らすカメ。

    南米の乾季と雨季を生きるカメ。

    卵は小さく、外から見ればよく似ています。

    でも、その卵が待っている雨や温度、湿度、孵化の時期は、それぞれ違います。

    飼育員は卵を見ながら、その中にある遠い川や森の季節を想像します。

    カメを増やすというより、カメが何百万年もかけて身につけた時間の進み方を、人間が少しずつ学んでいるのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    繁殖は楽しいよね!

    出典

    Tennessee Aquarium
    「Hatching bonanza adds 7 adorable baby turtles from 5 species to Aquarium」

    Association of Zoos and Aquariums
    「Tennessee Aquarium Welcomes Seven Baby Turtles From Five Species」

  • 【世界の亀ニュース】砂漠の泉に残るソノイタドロガメ約250匹 国境壁建設を前に緊急避難を検討

    【世界の亀ニュース】砂漠の泉に残るソノイタドロガメ約250匹 国境壁建設を前に緊急避難を検討

    今回は、アメリカとメキシコの国境近くにある砂漠のオアシスで暮らす、絶滅危惧の淡水ガメに関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    アメリカ・アリゾナ州のソノラ砂漠にあるキトバキート・スプリングスで、絶滅危惧のソノイタヒゲナガドロガメを緊急避難させる計画が検討されています。

    キトバキート・スプリングスは、オルガンパイプ・カクタス国定公園内にある小さな泉と池です。アメリカ国内でソノイタヒゲナガドロガメが自然に生息している場所は、ここ一か所しかありません。

    この泉の近くでは、既存の国境壁に加えて、高さ約30フィートの二重目の壁を建設する計画が進められています。

    研究者や保護関係者は、工事に伴う地下水の利用、重機の移動、地形の改変などによって泉や池が維持できなくなる可能性を懸念し、最悪の場合に備えてカメを人工環境へ移す準備を進めています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ合衆国、アリゾナ州
    場所:オルガンパイプ・カクタス国定公園、キトバキート・スプリングス
    元記事の言語:英語
    元記事の公開時期:2026年7月24日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・生息地保全・絶滅危惧種

    キトバキート・スプリングスは、アメリカとメキシコの国境近くにある砂漠のオアシスです。

    周囲約100マイルの範囲でも数少ない安定した水源の一つで、淡水ガメだけでなく、魚や巻き貝、鳥類、哺乳類など、多くの生き物にとって重要な場所になっています。

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、英語でSonoyta mud turtleと呼ばれる淡水ガメです。

    学名は Kinosternon sonoriense longifemorale。ソノラドロガメの亜種で、日本語の標準的な呼称が広く定着しているとは確認できなかったため、この記事では「ソノイタヒゲナガドロガメ」と表記します。

    成体の甲長は最大約13.5センチ。背甲はオリーブ色から暗褐色で、頭部や首には網目状の模様があります。前後に蝶番を持つ腹甲と、指の間にある水かきも特徴です。

    アメリカでは、2017年に絶滅危惧種として保護対象になりました。

    現在確認されている生息地は、アリゾナ州のキトバキート・スプリングスにある一個体群と、メキシコ・ソノラ州のソノイタ川流域に残る複数の個体群です。

    ニュースの要約

    報道によると、現在キトバキートの池には、およそ250匹のソノイタヒゲナガドロガメが生息していると推定されています。

    研究者たちは、池の水が失われたり、堤が損傷したりする最悪の事態を想定し、可能な限り多くのカメを捕獲して、一時的に人工の飼育環境へ移す方法を検討しています。

    アリゾナ・ソノラ砂漠博物館では、野生個体群に何かが起きた場合に備え、すでに約20匹のソノイタヒゲナガドロガメを飼育しています。

    同館は、緊急時にはさらに最大50匹を受け入れる意向を示しています。フェニックス動物園も、カメの受け入れに協力する可能性があります。

    しかし、カメを施設へ移せば問題が解決するわけではありません。

    保護関係者が最も心配しているのは、一時的に避難させたカメを、将来戻せる生息地が残っているかどうかです。人工環境は命をつなぐ場所にはなっても、泉そのものの代わりにはなりません。

    砂漠にある、小さな淡水の世界

    ソノイタヒゲナガドロガメは、砂漠に暮らす淡水ガメです。

    広大な乾燥地帯に大きな川が流れているわけではありません。

    地下から湧き出す水が短い水路を流れ、小さな池を満たす。その限られた水の中で、カメたちは餌を探し、身を隠し、世代をつないできました。

    キトバキート・スプリングスは、ソノイタヒゲナガドロガメだけの生息地ではありません。

    世界でこの泉にしか野生個体が残っていないキトバキート・パプフィッシュや、非常に小さな泉性の巻き貝も生息しています。

    一つの小さな泉が失われれば、複数の生き物が同時に野生の生息地を失う可能性があります。

    なぜ国境壁が泉へ影響するのか

    今回計画されている二重目の国境壁は、既存の壁から約90〜150フィート離れた位置に建設される可能性があります。

    壁そのものだけでなく、工事用道路、資材置き場、重機の通行、地下水の利用などが、泉を支える地下水系や周辺環境へ影響することが懸念されています。

    2020年に行われた最初の国境壁建設でも、コンクリート製造のための地下水利用が問題になりました。

    アメリカ魚類野生生物局が2025年にまとめた状況評価でも、国境壁建設に使われる地下水のくみ上げが、キトバキート・スプリングスを支える水系への新たな負荷として挙げられています。

    一方、アメリカ税関・国境警備局は、キトバキート・スプリングスを避け、希少な自然資源への影響を最小限にするため、魚類野生生物局や国立公園局と協力していると説明しています。

    また、泉から5マイル以内では地下水をくみ上げない方針を示していますが、研究者からは、それだけで泉を守れるかを判断する十分な情報がないとの懸念も出ています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、約250匹のカメが、一つの小さな泉に生存を託していることです。

    250匹という数字だけを見れば、決して一匹や二匹ではありません。

    けれど、そのすべてが同じ池で暮らしている。

    泉の水が止まれば、逃げ込める別の川はない。
    池が失われれば、歩いて隣の湿地へ移ることもできない。

    砂漠の中では、水がある場所そのものが、生き物の世界です。

    カメを捕まえて施設へ運ぶことはできるかもしれない。

    でも、そのカメたちが何世代も生きてきた水、泥、岸辺、季節まで運ぶことはできません。

    絶滅危惧種を守るということは、個体を生かすだけではなく、その個体がカメとして暮らせる場所を残すことなのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    ソノイタヒゲナガドロガメ。

    僕はこの記事を読むまで知らない亀だった。

    この世界には、知らない亀がたくさんいるにちがいない。

    少なくとも僕は、知らない亀と出会うことを生き甲斐にしている。

    僕のような人たちはたくさんいるだろうし、これからもたくさん出てくるだろう。

    まだ見ぬ亀ファンの楽しみを奪うのはナンセンスである。

    どうにかしっかりした保全を行なって欲しいものです。

    余談ですが、僕の故郷の川ではギギやアカザといった魚がたくさん棲んでいました。

    しかし、上流のダム工事があり、今ではすっかり見られなくなってしまいました。

    僕はちょっと寂しいです。

     

    へへ、湿っぽい話しちまったな。

    出典

    The Guardian
    「This desert oasis is a biological wonderland. Trump’s border wall threatens to destroy it」

    U.S. Fish and Wildlife Service
    「Sonoyta Mud Turtle」

    U.S. Fish and Wildlife Service
    「Draft Recovery Plan for Endangered Sonoyta Mud Turtle Available」

    National Park Service
    「Quitobaquito Springs」

  • 【世界の亀ニュース】アマゾンで白いモンキヨコクビガメが誕生 ボリビアの保護区で確認

    【世界の亀ニュース】アマゾンで白いモンキヨコクビガメが誕生 ボリビアの保護区で確認

    今回は、ボリビアのアマゾンにある自然保護区で確認された、アルビノのモンキヨコクビガメに関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    ボリビア北部・パンド県にあるマヌリピ・アマゾン野生生物国立保護区で、通常とは大きく異なる白く淡い体色を持つ、小さな川ガメが誕生しました。

    確認されたのは、現地で「ペタ・デ・リオ」と呼ばれるモンキヨコクビガメです。

    学名は Podocnemis unifilis。体や甲羅の色素が少なく、白色から淡い黄色に見えることから、アルビノ個体として報告されました。

    ボリビア国営通信社ABIによると、この個体の存在はボリビア国立保護区局によって公表され、マヌリピ保護区で続けられている野生動物の監視と保全にとって、特に価値のある記録だとされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ボリビア、パンド県
    発見場所:マヌリピ・アマゾン野生生物国立保護区
    元記事の言語:スペイン語
    公表時期:2026年6月13日
    報道時期:2026年7月9日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・希少個体・保護活動

    マヌリピ保護区は、ペルーとブラジルに近いボリビア北部のアマゾン地域にあります。保護区内では、マヌリピ川流域に生息する淡水ガメの産卵地を監視し、卵や子ガメを密猟や捕食などから守る活動が行われています。

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、モンキヨコクビガメです。

    学名は Podocnemis unifilis。英語ではYellow-spotted River Turtleと呼ばれています。

    日本動物園水族館協会や鳥羽水族館でも、Podocnemis unifilisの和名として「モンキヨコクビガメ」が使われています。別名として、テレケイヨコクビガメと呼ばれることもあります。

    幼体の頭部には、通常、黄色い斑点や模様があります。この模様は成長するにつれて薄くなり、成体の雌ではほとんど見えなくなることがあります。

    南米の河川、湖沼、雨季に水没する森林などに生息し、日光浴や産卵を除けば、水中で過ごす時間の長い淡水ガメです。

    ニュースの要約

    今回誕生した子ガメは、本来のモンキヨコクビガメに見られる濃い灰色や緑褐色の色素が少なく、甲羅と皮膚が白色から淡い黄色に見えます。

    報道では、色素の減少によるアルビノ個体とされており、自然環境では非常に珍しい記録として紹介されています。

    アルビノのカメは、その白い体によって周囲の環境から目立ちやすくなります。

    暗い水や泥、落ち葉の中では、通常の体色が身を隠す役割を果たします。しかし、白く淡い体では捕食者に発見されやすくなる可能性があります。

    そのため、珍しく美しい個体である一方、野生で生き残るうえでは、不利な特徴になることも考えられます。

    マヌリピ保護区で続くカメの保護

    マヌリピ保護区では、モンキヨコクビガメの卵や成体が食用・販売目的で採取されることを防ぐため、産卵地の監視や巣の保護が行われています。

    保護活動には、保護区職員だけでなく、大学、地域行政、保全団体なども参加しています。

    2026年4月には、保護活動によって育てられた2,500匹以上のモンキヨコクビガメが、マヌリピ川へ放されました。

    この活動では、前年から個体数調査、卵の管理、地域住民による巣の監視などが続けられていました。

    今回の白い子ガメも、そうした継続的な監視の中で確認された一匹です。

    ただ珍しいカメが偶然見つかったのではなく、川辺を歩き、巣を守り、孵化した子ガメを確認する人たちがいたからこそ、記録として残されたのだと思います。

    珍しい個体をどう見るか

    アルビノのカメは、とても目立ちます。

    通常とは違う体色を持つため、写真を見た人の記憶にも強く残ります。

    しかし、この子ガメが生きていくうえで本当に必要なのは、珍しさを称賛されることではありません。

    隠れられる水辺があること。
    食べ物があること。
    捕獲されないこと。
    そして、成長できる川が残されていること。

    珍しい個体だから特別に命が重いのではなく、普通の体色で生まれた何千匹もの子ガメと同じように、この一匹にも生きる時間があります。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、アマゾンの濁った川の中に、僕たちがまだ知らない個体が生まれていることです。

    同じ種類のカメでも、すべてが同じ姿で生まれるわけではありません。

    甲羅の形や模様、体の大きさ、色。

    一匹ずつに違いがあり、ときには今回のように、見た瞬間に誰もが驚くような個体も現れます。

    その違いは、人間に見せるために生まれたものではありません。

    白いカメも、普通の色のカメも、ただモンキヨコクビガメとして川へ向かおうとしている。

    その姿を記録し、川と一緒に守っていくことが大切なのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    モンキヨコクビガメってでかくなるしかっこいいよね〜🐢

    出典

    Agencia Boliviana de Información
    「Una pequeña peta de río albina nace en Manuripi y vuelve a maravillar a la amazonia boliviana」

    Servicio Nacional de Áreas Protegidas
    「El SERNAP libera más de 2.500 tortugas de agua dulce en la Reserva Manuripi para fortalecer la biodiversidad amazónica」

    IRFA Bolivia
    「Reserva Manuripi pone en marcha programa para conservación y repoblamiento de la peta de río」

    鳥羽水族館・生きもの図鑑
    「モンキヨコクビガメ」

  • 【世界の亀ニュース】ムツコブヨコクビガメがブラジルで絶滅危惧種に 36年間で個体数50%超減少

    【世界の亀ニュース】ムツコブヨコクビガメがブラジルで絶滅危惧種に 36年間で個体数50%超減少

    今回は、アマゾン川流域に生息するムツコブヨコクビガメが、ブラジルの国家レベルで初めて絶滅危惧種に指定されたニュースを紹介します。

    今回のニュース

    ブラジル環境・気候変動省は2026年、国内の絶滅危惧動物をまとめた公式リストを更新しました。

    この新しいリストで、ムツコブヨコクビガメは従来の「準絶滅危惧」から、絶滅の危険がより高い**「危機・EN」**へ引き上げられました。

    ブラジルの公式な絶滅危惧種リストに、ムツコブヨコクビガメが加えられたのは今回が初めてです。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ブラジル
    主な地域:アマゾナス州、西部パラー州など
    対象となる環境:アマゾン川流域の河川、湖、氾濫原、砂浜
    元記事の言語:英語・ポルトガル語
    報道時期:2026年7月15日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・絶滅危惧種・保護政策

    ブラジルでは2026年、環境・気候変動省の省令によって、爬虫類や鳥類、哺乳類などを含む公式の絶滅危惧種リストが更新されました。

    ICMBioによると、新しいリストではブラジルの動物1,279種が絶滅危惧種として認定され、そのうち123種が爬虫類です。

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ムツコブヨコクビガメです。

    学名は Podocnemis sextuberculata

    ブラジルでは「イアサ」「ピチウ」などの名前で呼ばれ、英語ではSix-tubercled Amazon River Turtleと呼ばれています。

    Podocnemis属の中では比較的小型で、成体の体重は最大約3.5キロ、甲長は約34センチに達します。ブラジル、コロンビア、ペルーの河川や氾濫原に分布しています。

    和名にある「六つのこぶ」は、幼体や若い個体の腹甲に見られる六つの突起に由来します。

    この突起は成長とともに目立たなくなり、成体では消失することもあります。

    ニュースの要約

    ICMBioの評価によると、アマゾナス州と西部パラー州では、過去36年間にムツコブヨコクビガメの個体数が50%以上減少したと推定されています。

    36年間は、このカメのおよそ三世代分に相当します。

    調査対象となった地域は、種全体の分布域のおよそ70%を占める重要な地域です。この大幅な減少を受け、ブラジル国内の評価が「準絶滅危惧」から「危機・EN」へ引き上げられました。

    今回の指定は、ムツコブヨコクビガメがすぐに絶滅するという意味ではありません。

    しかし、保護活動を続けていても減少を止められていないことを、ブラジル政府が公式に認めたことになります。

    アマゾンの乾季に現れる砂浜

    ムツコブヨコクビガメは、川の水位が低下する乾季に繁殖します。

    普段は水に覆われている砂浜や河岸が姿を現すと、雌は夜間に上陸して穴を掘り、卵を産みます。

    一度の巣には6個から39個ほどの卵が産み落とされ、孵化までにはおよそ45日から87日かかります。雌は同じ繁殖期に、約2週間の間隔を空けて二度産卵することもあります。

    水位が下がらなければ、安全な産卵場所が現れない。

    反対に、水位が急激に上がれば、砂の中の巣が浸水する。

    このカメの繁殖は、アマゾンの雨季と乾季によって作られる、川の水位変化と深く結びついています。

    捕まえやすいことが弱点になる

    ブラジル環境・再生可能天然資源院は、ムツコブヨコクビガメが減少している原因の一つとして、漁網による捕獲を挙げています。

    繁殖期になると複数の個体が同じ地域へ集まるため、刺し網などにかかりやすくなります。

    ほかのPodocnemis属よりも環境変化に弱く、水質の悪化や、川の増水と減水の周期が変わることによる影響も受けやすいと考えられています。

    アマゾンの淡水ガメは、古くから肉や卵を食料として利用されてきました。

    現在も違法な捕獲や販売は続いており、卵を採取されるだけでなく、産卵のために上陸した雌が捕まえられることもあります。

    川そのものの変化

    ムツコブヨコクビガメを脅かしているのは、直接的な捕獲だけではありません。

    森林伐採、気候変動、河岸での牧畜、ダム建設などによって、アマゾンの川の流れや水位、土砂の移動が変化しています。

    ダムはカメの移動を妨げるだけでなく、下流に形成される砂浜や、乾季と雨季の水位変化にも影響する可能性があります。

    ムツコブヨコクビガメにとって、川は単なる水の通り道ではありません。

    雨季に餌を探す氾濫原。

    乾季に集まる河川。

    卵を産む砂浜。

    孵化した子ガメが最初に入る浅瀬。

    それらすべてがつながって、一つの生息地を作っています。

    1億匹以上を放しても減少している

    ブラジルでは1979年から「アマゾン淡水ガメ計画」が続けられています。

    産卵地の監視、巣の保護、卵の移動、子ガメの放流、地域住民への環境教育などを行う、大規模な保全事業です。

    計画開始から2026年までに、ムツコブヨコクビガメ、モンキヨコクビガメ、オオヨコクビガメの3種を合わせて、約1億700万匹の子ガメが自然へ放されました。

    この活動によって、一部のPodocnemis属では個体群の回復が確認されています。

    しかし、ムツコブヨコクビガメについては、複数の地域で現在も減少が続いています。

    子ガメを放すことは重要です。

    けれど、放した後に漁網で捕まる。

    産卵できる砂浜が失われる。

    川の水位変化が変わる。

    そうした状況が続けば、放流だけで個体群を回復させることはできません。

    地域住民が砂浜を守る

    アマゾンの淡水ガメ保護では、川沿いに暮らす地域住民が重要な役割を担っています。

    産卵期になると、住民が砂浜を巡回して巣を記録し、密猟者や捕食動物、浸水から卵を守ります。

    ブラジルのプルス川とイトゥシ川周辺では、住民主体の保全活動によって、オオヨコクビガメ、モンキヨコクビガメ、ムツコブヨコクビガメを合わせて、250万匹を超える子ガメが放流されています。

    広大なアマゾンのすべての砂浜を、行政職員だけで監視することはできません。

    いつ砂浜が現れるのか。

    どこにカメが集まるのか。

    どの場所が浸水しやすいのか。

    川とともに暮らしてきた人たちの知識がなければ、巣を見つけて守ることは難しいのです。

    絶滅危惧種への指定は「保護の始まり」

    絶滅危惧種に指定されたこと自体は、喜ばしいニュースではありません。

    それは、これまでの保護だけでは十分ではなかったという警告でもあります。

    一方で、公式リストへ加わることで、保護計画、環境影響評価、研究、監視、違法捕獲への対策などにおいて、ムツコブヨコクビガメを優先する根拠が強くなります。

    ブラジルの絶滅リスク評価は、分布域、個体数の減少、脅威、生息地の状態などを調査し、専門家による評価と検証を経て政策へ反映されます。

    名前がリストへ加えられただけでは、カメは増えません。

    しかし、減少している事実を公式に認めることが、対策を強化する最初の一歩になります。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、たくさん子ガメを放してきた種類でも、安心できるとは限らないことです。

    砂浜から何千匹もの子ガメが川へ入る光景は、保護活動の成功として強く記憶に残ります。

    でも、子ガメが川へ入った瞬間が、保護の終わりではありません。

    その一匹が成長するまでには、長い時間がかかる。

    漁網を避けなければならない。

    水位の変化を生き延びなければならない。

    そして大人になった雌は、もう一度、安全な砂浜へ戻らなければならない。

    放された数だけでは見えない時間があります。

    今回の絶滅危惧種指定は、その見えない時間の中で、多くのカメが失われていることを示しているのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    地球の運動と人間の経済活動を止めることができれば良いかもね。

    出典

    Mongabay
    「Brazil lists the Amazon river turtle as endangered for the first time」

    ブラジル・シコ・メンデス生物多様性保全研究所
    「ブラジル公式絶滅危惧動物リスト」

    ブラジル環境・再生可能天然資源院
    「アマゾン淡水ガメ計画」

    WCSブラジル
    「アマゾン淡水ガメが直面する脅威」

  • 【世界の亀ニュース】アマゾンの淡水ガメ「ムツコブヨコクビガメ」、ブラジルで絶滅危惧種に

    【世界の亀ニュース】アマゾンの淡水ガメ「ムツコブヨコクビガメ」、ブラジルで絶滅危惧種に

    今回は、ブラジルで報じられた、アマゾン川流域に生息する淡水ガメの保全状況に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    ブラジルで、アマゾン川流域に暮らすムツコブヨコクビガメが、国内の最新評価で絶滅危惧種に分類されました。

    ムツコブヨコクビガメの学名は、Podocnemis sextuberculata。英語では「Six-tubercled Amazon River Turtle」と呼ばれています。

    報道によると、これまでブラジル国内では「準絶滅危惧」と評価されていましたが、個体数の大幅な減少が確認されたことから、「絶滅危惧」へ引き上げられました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ブラジル、アマゾナス州・パラー州西部を中心とするアマゾン川流域
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年7月15日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・絶滅危惧種・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ムツコブヨコクビガメです。

    アマゾン川とその支流に暮らすヨコクビガメの仲間で、ブラジルのほか、ペルー、コロンビア、ボリビアにも分布しています。

    Podocnemis属の中では比較的小型で、甲長はおよそ34センチ、体重は最大3.5キロほどになるとされています。

    英名の「Six-tubercled」は、幼い個体の腹甲に見られる特徴的な6つの隆起に由来します。

    この隆起は成長するにつれて目立たなくなるため、成体を上から見ただけでは、名前の由来が分かりにくいカメです。

    ニュースの要約

    ブラジルの評価では、アマゾナス州とパラー州西部に生息するムツコブヨコクビガメの個体数が、過去36年間で50%以上減少したと推定されました。

    36年は、この種にとって約3世代に相当します。

    調査対象となった地域には、ムツコブヨコクビガメの分布域全体のおよそ70%が含まれているため、この減少は種全体の将来を考えるうえでも、非常に重いものとされています。

    主な脅威として挙げられているのは、生息環境の悪化、卵や成体の過剰な採取、違法な捕獲などです。

    ムツコブヨコクビガメを含むアマゾンの淡水ガメは、長く地域の食文化と関わってきました。

    そのため、保護を進めるには、単に捕獲を禁止するだけでなく、カメに依存してきた先住民や河川地域の人々の生活と両立できる仕組みが必要だと指摘されています。

    長年の保護活動があっても減少している

    ブラジルでは、アマゾンのカメを守るための大規模な活動が長く続けられてきました。

    ブラジル環境・再生可能天然資源院の「アマゾン・カメ類プログラム」では、ムツコブヨコクビガメや、同じPodocnemis属のトラカジャ、オオヨコクビガメなどを対象に、子ガメの管理、放流、監視が行われています。

    これまでに保護活動の対象となった子ガメは、合計1億匹を超えるとされています。

    それでも、ムツコブヨコクビガメの個体数は減少しました。

    カメをたくさん放流するだけでは、すべての問題は解決しません。

    成体になるまで生きられる川が必要です。
    産卵できる砂州が必要です。
    卵を掘り返されない環境が必要です。
    そして、保護活動が数十年先まで続く仕組みも必要です。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、保護活動が行われている種類でも、安心できるとは限らないということです。

    子ガメが放流される場面は、明るく希望に満ちて見えます。

    でも、その子ガメが成長し、繁殖できる年齢になり、再び砂州へ戻って卵を産むまでには、長い時間がかかります。

    その途中で、捕獲されるかもしれない。
    川の環境が変わるかもしれない。
    産卵場所が失われるかもしれない。

    亀の保護は、放流した瞬間に終わるものではありません。

    一匹の子ガメが、次の世代を残せる成体になるまで生きられる環境を守ること。

    その長い時間まで含めて、保護なのだと思います。

    地域の人々が守るアマゾンの川

    アマゾンでは、地域住民が産卵地や湖を守る保全活動も進められています。

    ジュルア川流域では、地域社会との協力によって砂州や三日月湖を保護し、違法漁業や密猟から淡水生態系を守る取り組みが行われています。

    ムツコブヨコクビガメも、こうした保護対象となる淡水ガメの一種です。

    遠くから来た誰かが亀を守るだけではなく、その川で暮らしてきた人たちが、自分たちの川と亀を守る。

    その形が続かなければ、アマゾンの広大な水域を守りきることはできないのかもしれません。

    湯川亀吉の一言

    アマゾン行ってみたいね〜。

    亀探してみたいし、ピンクのカワイルカも見てみたいね!

    出典

    元記事:Mongabay
    「Brazil lists the Amazon river turtle as endangered for the first time」

    関連情報:The Reptile Database
    「Podocnemis sextuberculata」

    関連情報:ブラジル環境・再生可能天然資源院
    「Programa Quelônios da Amazônia」

  • 【世界の亀ニュース】育てて放したブランディングガメが母に 20年越しの次世代が湿地へ

    今回は、アメリカ・マサチューセッツ州で続けられてきた淡水ガメの保護活動が、約20年を経て大きな節目を迎えたニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年6月25日、アメリカ・マサチューセッツ州のグレート・メドウズ国立野生生物保護区で、2匹の若いブランディングガメが湿地へ放されました。

    今回の放流が特別だったのは、この2匹の母親もまた、幼いころに人間の手で育てられ、同じ湿地へ戻されたカメだったことです。

    保護活動で育てられたカメが成長し、野生で繁殖し、その子どもが再び湿地へ帰る。

    2003年に始まった保護事業で、初めて確認された「二代目」の野生復帰です。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ合衆国、マサチューセッツ州
    場所:コンコード、グレート・メドウズ国立野生生物保護区と周辺湿地
    放流日:2026年6月25日
    発表時期:2026年6月29日〜7月7日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・野生復帰・繁殖・保護活動

    グレート・メドウズ周辺では、アメリカ魚類野生生物局、マサチューセッツ州野生生物局、ズー・ニューイングランド、学校、地域住民などが協力し、ブランディングガメの保護を続けています。

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ブランディングガメです。

    学名は Emydoidea blandingii。英語ではBlanding’s Turtleと呼ばれます。

    北米に分布する半水棲の淡水ガメで、浅く流れの緩やかな湿地や、水草の多い池などを利用します。暗く滑らかなドーム状の背甲と、明るい黄色の顎から喉が特徴です。成体の甲長はおよそ16〜22センチになります。

    水中だけで一生を過ごすわけではありません。

    餌場、越冬場所、繁殖に使う水域、産卵場所の間を移動し、1マイル以上も陸上を歩くことがあります。そのため、湿地の分断や道路上での事故の影響を受けやすいカメです。

    ニュースの要約

    今回放された2匹は、生後約9か月のブランディングガメです。

    孵化後の最初の冬をストーン動物園で過ごし、十分に成長してから湿地へ戻されました。

    野生で冬を越した子ガメは、春になっても硬貨ほどの小ささであることが多く、捕食者に襲われる危険があります。一方、暖かい飼育環境で十分な餌を与えられた子ガメは、短期間で体を大きくし、野生で生き残れる可能性を高められます。

    この保護方法は、ヘッドスタートと呼ばれます。

    カメを一生飼育するのではありません。

    命を落としやすい幼少期だけを人間が預かり、ある程度成長した段階で本来の生息地へ戻します。

    母ガメ「アイビー」の物語

    2匹の母親は、個体番号144番、愛称をアイビーといいます。

    アイビーの物語は、2010年に始まりました。

    一匹の母ガメがグレート・メドウズの湿地を離れ、1マイル以上を移動して、近くのオフィス街の植え込みに巣を作りました。

    その巣から生まれた11匹の中に、体重わずか7グラムの雌の子ガメがいました。それがアイビーです。

    アイビーはストーン動物園で約10か月間育てられ、2011年に湿地へ放されました。

    甲羅には、将来再発見したときに識別できる小さな印が付けられていました。

    しかし、その後アイビーは10年以上、人間の前から姿を消します。

    湿地のどこかで生きているのか。
    事故に遭ったのか。
    捕食されたのか。

    人間には分からないまま、時間だけが過ぎていきました。

    10年以上ぶりの再発見

    2023年、野外調査を行っていたスタッフが、成長したアイビーを再発見しました。

    硬貨ほどの子ガメだったアイビーは、繁殖可能な大きさの成体になっていました。

    スタッフは甲羅に無線発信器を取り付け、その後の移動を追跡しました。

    そして2025年6月25日の深夜、アイビーが湿地から産卵場所へ向かっていることを発信器が知らせました。

    保護スタッフが追跡すると、アイビーは保全されている野生の花畑を選び、午前2時30分ごろから8個の卵を産みました。

    そのうち7個が無事に孵化しました。

    保護されたカメが、自分で次の世代を残した

    ヘッドスタートでは、放した子ガメの数が成果として注目されることがあります。

    しかし、本当の目的は、放したカメが大人になることです。

    さらに、その成体が人間の助けを受けずに野生で相手を見つけ、産卵し、次の世代を残すことです。

    アイビーの産卵は、この保護活動が「子ガメを放す段階」から、野生の個体群が自分たちで世代をつなぐ段階へ進み始めたことを示しています。

    2003年に活動が始まってから、グレート・メドウズと周辺湿地では800匹以上のヘッドスタート個体が放されてきました。

    ズー・ニューイングランドのHATCHプログラム全体では、1,400匹以上のブランディングガメが育てられています。

    学校の教室で育てられる子ガメ

    この活動に参加しているのは、動物園や研究施設だけではありません。

    地元の学校では、子どもたちが教室に設置された水槽で、ブランディングガメの子ガメをひと冬育てます。

    暖かい水槽の中で餌を与え、体重や甲羅の長さを記録し、春になると湿地へ戻します。

    2009年以降、この活動にはマサチューセッツ州の学校から2万2,000人以上の児童・生徒が参加しています。

    アイビーが産んだ7匹のうち、今回の式典で放された2匹以外の子ガメも、地域の学校で育てられ、生徒たちによって野生へ戻されました。

    一匹の母ガメから生まれた子どもたちが、複数の教室で冬を越し、それぞれの生徒に見送られて湿地へ帰ったことになります。

    なぜ回復に20年以上かかるのか

    ブランディングガメは、とても長く生きるカメです。

    保護された環境では70〜80年以上生きる可能性があります。

    一方で、繁殖を始めるまでには長い時間がかかり、一般に成熟するのは十数年から20年以上経ってからです。

    卵を孵化させ、子ガメを育て、放流するだけなら、一年以内に行えます。

    しかし、そのカメが無事に成長し、自分の卵を産んだことを確認するには、さらに十年以上待たなければなりません。

    保護活動の結果を確かめるためには、人間の年度や計画期間ではなく、カメの一生に合わせて待つ必要があります

    カメが移動できる地域を守る

    ブランディングガメを守るには、巣や一つの池だけを囲えばよいわけではありません。

    カメたちは複数の湿地を利用し、その間にある森林や草地、住宅地の近くを歩きます。

    アイビーの母親はオフィス街へ産卵に向かい、アイビー自身は保護された花畑に卵を産みました。

    人間が利用する土地と、カメが利用する土地は、完全には分かれていません。

    道路、住宅地、学校、企業、保護区を含む地域全体で協力しなければ、移動するカメを守ることはできません。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、一度放したカメを、人間が完全には見守れないことです。

    アイビーは湿地へ帰ったあと、10年以上姿を見せませんでした。

    保護した人たちは、その間に何が起きているのか知ることができなかった。

    それでも、アイビーは生きていた。

    水の中で餌を探し、冬を越し、少しずつ体を大きくしていた。

    そして、再び見つかったときには、次の世代を残せる母ガメになっていました。

    保護活動は、すべてを管理することではありません。

    人間の手から離れたあと、カメが自分の時間を生きられるようにすること。

    アイビーの子どもたちは、今度は自分たちの姿を湿地の中へ消していきます。

    次に人間と出会うのは、何年後になるのでしょうか。

    湯川亀吉の一言

    亀の累代繁殖やりたいよね。

    出典

    U.S. Fish and Wildlife Service
    「Partners release second generation of “headstarted” turtles at Great Meadows National Wildlife Refuge」

    Massachusetts Division of Fisheries and Wildlife
    「Historic win for Blanding’s turtles」

    Zoo New England
    「Zoo New England, MassWildlife, and U.S. Fish & Wildlife Service release historic second-generation Blanding’s turtles」

    U.S. Fish and Wildlife Service
    「Blanding’s Turtle(Emydoidea blandingii)」

  • 【世界の亀ニュース】絶滅寸前だったキタブチイシガメ37匹、35年続く保護活動で湿地へ

    【世界の亀ニュース】絶滅寸前だったキタブチイシガメ37匹、35年続く保護活動で湿地へ

    今回は、アメリカ・ワシントン州で報じられた、希少な淡水ガメの野生復帰に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年7月、アメリカ・ワシントン州で、37匹の若いキタブチイシガメが保護された湿地へ放されました。

    この放流は、ワシントン州魚類野生生物局とウッドランドパーク動物園が協力して進める「Western Pond Turtle Recovery Project」の一環です。

    プロジェクトは2026年で開始から35年を迎えました。絶滅寸前だったカメを守るため、卵や子ガメを一時的に安全な環境で育て、野生で生き残りやすい大きさになってから湿地へ戻す活動が続けられています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ、ワシントン州
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年7月10日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・野生復帰・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、キタブチイシガメです。

    学名は Actinemys marmorata。英語ではWestern Pond TurtleやNorthern Pacific Pond Turtleと呼ばれています。分類や日本語資料によっては、単に「ブチイシガメ」と表記されることもありますが、この記事ではキタブチイシガメとします。

    キタブチイシガメは、池や湿地、流れの緩やかな水辺などに暮らす北米原産の淡水ガメです。

    ワシントン州では個体数が激減し、1990年の時点で残っていたのは、二つの個体群に合計約150匹だけでした。絶滅を防ぐため、1991年に動物園と州当局による本格的な回復事業が始まり、1993年には州の絶滅危惧種に指定されました。

    ニュースの要約

    キタブチイシガメの保護活動では、野生の巣から卵や孵化したばかりの子ガメを集め、ウッドランドパーク動物園やオレゴン動物園で一時的に育てます。

    孵化直後の子ガメは、硬貨ほどの小ささです。

    そのまま野生へ出ると、外来種のウシガエルをはじめとする捕食者に食べられる危険性が高いため、動物園で冬を越しながら、魚やミミズなどを与えて成長させます。

    目標となるのは、体重がおよそ2〜3オンス、約57〜85グラムに達することです。

    この大きさまで育つと、子ガメはウシガエルの口に入りにくくなり、野生で生き残れる可能性が高まります。

    健康状態を確認した後、カメたちは保護された湿地へ戻されます。放流後も、州の生物学者たちが生存状況や移動を追跡します。

    小さなカメに「先行時間」を与える

    この方法は、英語で「ヘッドスタート」と呼ばれています。

    野生動物を一生飼育するのではなく、最も命を落としやすい幼少期だけを安全な環境で過ごさせ、ある程度成長してから本来の生息地へ戻す方法です。

    キタブチイシガメは、性成熟するまでに約10〜12年かかります。孵化した子ガメが成体となり、次の世代を残すまでには、長い時間が必要です。

    だからこそ、最初の数か月を生き延びられるかどうかが、何十年後の個体群に大きく影響します。

    動物園で過ごす一度の冬は、このカメたちにとって、野生へ帰る前に与えられた「先行時間」なのかもしれません。

    35年間で2,300匹以上を野生へ

    35年間にわたる共同事業によって、これまでに2,300匹以上のキタブチイシガメがヘッドスタートを経て野生へ戻されました。

    その結果、ピュージェット湾地域とコロンビア川峡谷では、再び個体群が形成されています。調査では、ヘッドスタート個体と野生で生まれた個体を合わせ、約800匹が生き残っていると推定されています。

    1996年に最初の16匹が放されたワシントン州南部の回復地では、長年の放流によって個体数が200匹を超えるまでに回復した記録もあります。

    約150匹まで減ったカメを、何十年もかけて少しずつ増やしてきた。

    今回放された37匹も、その長い回復の物語につながる新しい世代です。

    回復を脅かす甲羅の病気

    保護活動には、大きな課題も残されています。

    野生個体群では、甲羅に病変が現れる深刻な病気が広がっており、野生個体の80%以上に影響が確認されていると報告されています。

    症状が重くなると、健康状態や生存に影響する可能性があります。現在、シェッド水族館やイリノイ大学の研究者たちが、微生物や環境との関係を含めて病気の原因を調べています。

    外来種から子ガメを守り、生息地を整え、野生へ戻す。

    それだけでも長い時間がかかります。

    さらに、新しく現れた病気にも対応しながら、保護活動を次の世代まで続けなければなりません。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、亀を守る活動そのものも、亀のようにゆっくり進んでいることです。

    1991年に始まった活動が、2026年で35年。

    卵を見つけ、孵化させ、冬のあいだ育て、湿地へ戻す。
    それを毎年繰り返す。

    放した子ガメが成長し、繁殖できるようになるまでには、さらに10年以上かかります。

    一度の放流だけで、絶滅危惧種が回復するわけではありません。

    今日放された37匹が大人になり、その子どもが生まれ、さらに次の世代へ命がつながるまで、保護する人たちは待ち続けます。

    亀は遅い。

    でも、亀を守る活動もまた、急ぐことのできない仕事なのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    孵化したばかりの子ガメは、硬貨ほどの大きさしかない。

    その小さな甲羅では、ウシガエルの口から逃げることも難しい。

    だから人間は、一度だけその命を預かる。

    冬のあいだ食べ物を与え、少しだけ大きく育てて、また湿地へ返す。

    守り続けるのではない。
    野生で生きられるところまで、一緒に時間を進める。

    35年間で2,300匹以上。

    一匹ずつを見れば、小さなカメだ。
    でも、その小さな甲羅を一つずつ湿地へ戻してきた時間は、とても大きい。

    亀はゆっくり育つ。
    だから、人間も急がずに守り続けなければならない。

    今回放された37匹が、いつか泥の岸辺で卵を産む日まで。

    この保護活動は、まだ終わらないのだと思います。

    出典

    Woodland Park Zoo
    「Endangered turtles released to the wild」

    Washington Department of Fish and Wildlife
    「South Puget Sound Wildlife Area Management Plan」

    The Reptile Database
    「Actinemys marmorata」