【世界の亀ニュース】ムツコブヨコクビガメがブラジルで絶滅危惧種に 36年間で個体数50%超減少

今回は、アマゾン川流域に生息するムツコブヨコクビガメが、ブラジルの国家レベルで初めて絶滅危惧種に指定されたニュースを紹介します。

今回のニュース

ブラジル環境・気候変動省は2026年、国内の絶滅危惧動物をまとめた公式リストを更新しました。

この新しいリストで、ムツコブヨコクビガメは従来の「準絶滅危惧」から、絶滅の危険がより高い**「危機・EN」**へ引き上げられました。

ブラジルの公式な絶滅危惧種リストに、ムツコブヨコクビガメが加えられたのは今回が初めてです。

どこの国・地域の話か

国・地域:ブラジル
主な地域:アマゾナス州、西部パラー州など
対象となる環境:アマゾン川流域の河川、湖、氾濫原、砂浜
元記事の言語:英語・ポルトガル語
報道時期:2026年7月15日
情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・絶滅危惧種・保護政策

ブラジルでは2026年、環境・気候変動省の省令によって、爬虫類や鳥類、哺乳類などを含む公式の絶滅危惧種リストが更新されました。

ICMBioによると、新しいリストではブラジルの動物1,279種が絶滅危惧種として認定され、そのうち123種が爬虫類です。

登場する亀

今回のニュースに登場するのは、ムツコブヨコクビガメです。

学名は Podocnemis sextuberculata

ブラジルでは「イアサ」「ピチウ」などの名前で呼ばれ、英語ではSix-tubercled Amazon River Turtleと呼ばれています。

Podocnemis属の中では比較的小型で、成体の体重は最大約3.5キロ、甲長は約34センチに達します。ブラジル、コロンビア、ペルーの河川や氾濫原に分布しています。

和名にある「六つのこぶ」は、幼体や若い個体の腹甲に見られる六つの突起に由来します。

この突起は成長とともに目立たなくなり、成体では消失することもあります。

ニュースの要約

ICMBioの評価によると、アマゾナス州と西部パラー州では、過去36年間にムツコブヨコクビガメの個体数が50%以上減少したと推定されています。

36年間は、このカメのおよそ三世代分に相当します。

調査対象となった地域は、種全体の分布域のおよそ70%を占める重要な地域です。この大幅な減少を受け、ブラジル国内の評価が「準絶滅危惧」から「危機・EN」へ引き上げられました。

今回の指定は、ムツコブヨコクビガメがすぐに絶滅するという意味ではありません。

しかし、保護活動を続けていても減少を止められていないことを、ブラジル政府が公式に認めたことになります。

アマゾンの乾季に現れる砂浜

ムツコブヨコクビガメは、川の水位が低下する乾季に繁殖します。

普段は水に覆われている砂浜や河岸が姿を現すと、雌は夜間に上陸して穴を掘り、卵を産みます。

一度の巣には6個から39個ほどの卵が産み落とされ、孵化までにはおよそ45日から87日かかります。雌は同じ繁殖期に、約2週間の間隔を空けて二度産卵することもあります。

水位が下がらなければ、安全な産卵場所が現れない。

反対に、水位が急激に上がれば、砂の中の巣が浸水する。

このカメの繁殖は、アマゾンの雨季と乾季によって作られる、川の水位変化と深く結びついています。

捕まえやすいことが弱点になる

ブラジル環境・再生可能天然資源院は、ムツコブヨコクビガメが減少している原因の一つとして、漁網による捕獲を挙げています。

繁殖期になると複数の個体が同じ地域へ集まるため、刺し網などにかかりやすくなります。

ほかのPodocnemis属よりも環境変化に弱く、水質の悪化や、川の増水と減水の周期が変わることによる影響も受けやすいと考えられています。

アマゾンの淡水ガメは、古くから肉や卵を食料として利用されてきました。

現在も違法な捕獲や販売は続いており、卵を採取されるだけでなく、産卵のために上陸した雌が捕まえられることもあります。

川そのものの変化

ムツコブヨコクビガメを脅かしているのは、直接的な捕獲だけではありません。

森林伐採、気候変動、河岸での牧畜、ダム建設などによって、アマゾンの川の流れや水位、土砂の移動が変化しています。

ダムはカメの移動を妨げるだけでなく、下流に形成される砂浜や、乾季と雨季の水位変化にも影響する可能性があります。

ムツコブヨコクビガメにとって、川は単なる水の通り道ではありません。

雨季に餌を探す氾濫原。

乾季に集まる河川。

卵を産む砂浜。

孵化した子ガメが最初に入る浅瀬。

それらすべてがつながって、一つの生息地を作っています。

1億匹以上を放しても減少している

ブラジルでは1979年から「アマゾン淡水ガメ計画」が続けられています。

産卵地の監視、巣の保護、卵の移動、子ガメの放流、地域住民への環境教育などを行う、大規模な保全事業です。

計画開始から2026年までに、ムツコブヨコクビガメ、モンキヨコクビガメ、オオヨコクビガメの3種を合わせて、約1億700万匹の子ガメが自然へ放されました。

この活動によって、一部のPodocnemis属では個体群の回復が確認されています。

しかし、ムツコブヨコクビガメについては、複数の地域で現在も減少が続いています。

子ガメを放すことは重要です。

けれど、放した後に漁網で捕まる。

産卵できる砂浜が失われる。

川の水位変化が変わる。

そうした状況が続けば、放流だけで個体群を回復させることはできません。

地域住民が砂浜を守る

アマゾンの淡水ガメ保護では、川沿いに暮らす地域住民が重要な役割を担っています。

産卵期になると、住民が砂浜を巡回して巣を記録し、密猟者や捕食動物、浸水から卵を守ります。

ブラジルのプルス川とイトゥシ川周辺では、住民主体の保全活動によって、オオヨコクビガメ、モンキヨコクビガメ、ムツコブヨコクビガメを合わせて、250万匹を超える子ガメが放流されています。

広大なアマゾンのすべての砂浜を、行政職員だけで監視することはできません。

いつ砂浜が現れるのか。

どこにカメが集まるのか。

どの場所が浸水しやすいのか。

川とともに暮らしてきた人たちの知識がなければ、巣を見つけて守ることは難しいのです。

絶滅危惧種への指定は「保護の始まり」

絶滅危惧種に指定されたこと自体は、喜ばしいニュースではありません。

それは、これまでの保護だけでは十分ではなかったという警告でもあります。

一方で、公式リストへ加わることで、保護計画、環境影響評価、研究、監視、違法捕獲への対策などにおいて、ムツコブヨコクビガメを優先する根拠が強くなります。

ブラジルの絶滅リスク評価は、分布域、個体数の減少、脅威、生息地の状態などを調査し、専門家による評価と検証を経て政策へ反映されます。

名前がリストへ加えられただけでは、カメは増えません。

しかし、減少している事実を公式に認めることが、対策を強化する最初の一歩になります。

亀好きとして注目したいポイント

このニュースで注目したいのは、たくさん子ガメを放してきた種類でも、安心できるとは限らないことです。

砂浜から何千匹もの子ガメが川へ入る光景は、保護活動の成功として強く記憶に残ります。

でも、子ガメが川へ入った瞬間が、保護の終わりではありません。

その一匹が成長するまでには、長い時間がかかる。

漁網を避けなければならない。

水位の変化を生き延びなければならない。

そして大人になった雌は、もう一度、安全な砂浜へ戻らなければならない。

放された数だけでは見えない時間があります。

今回の絶滅危惧種指定は、その見えない時間の中で、多くのカメが失われていることを示しているのだと思います。

湯川亀吉の一言

地球の運動と人間の経済活動を止めることができれば良いかもね。

出典

Mongabay
「Brazil lists the Amazon river turtle as endangered for the first time」

ブラジル・シコ・メンデス生物多様性保全研究所
「ブラジル公式絶滅危惧動物リスト」

ブラジル環境・再生可能天然資源院
「アマゾン淡水ガメ計画」

WCSブラジル
「アマゾン淡水ガメが直面する脅威」