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  • 【世界の亀ニュース】100年ぶりに再発見されたカメを「未来の湿地」へ 気候変動から救うオーストラリアの移住計画

    【世界の亀ニュース】100年ぶりに再発見されたカメを「未来の湿地」へ 気候変動から救うオーストラリアの移住計画

    今回は、オーストラリア西部に生息する、世界でも特に希少な淡水ガメの保全活動を紹介します。

    学名は、

    Pseudemydura umbrina

    日本の法令では、

    オーストラリアヌマガメモドキ

    という和名が使われています。

    一方、日本の爬虫類関連資料などでは、

    クビカシゲガメ

    という名前も使われています。

    このカメは、

    一度は絶滅したと思われました。

    再発見された。

    繁殖に成功した。

    1,000匹以上を野生へ戻した。

    普通なら、

    ここまででも大成功です。

    でも、

    問題が一つ残っていました。

    カメが暮らしてきた湿地そのものが、だんだん乾いている。

    そこで研究者たちは、

    過去にこのカメが生息していなかった、

    もっと南の、

    もっと涼しく、

    もっと長く水が残る湿地へ、

    カメを移し始めました。

    今回のニュース

    大きな転換点の一つが、2016年です。

    西オーストラリア州政府、Perth Zoo、University of Western Australiaなどの保全チームは、飼育下で繁殖した24匹のオーストラリアヌマガメモドキを、西オーストラリア州南西部の新しい候補地へ移しました。

    重要なのは、

    そこが単なる「別の放流場所」ではなかったことです。

    本来このカメが知られていた歴史的な分布域よりも、

    さらに南側。

    将来の気候変動を考え、

    より涼しく、

    より湿潤な環境を探して選ばれました。

    この方法は、

    assisted colonisation

    と呼ばれます。

    日本語なら、

    「人為的移住」

    「保全的移住」

    あるいは、

    「分布域外への計画的移送」

    に近い考え方です。

    どこの国・地域の話か

    国:オーストラリア
    州:西オーストラリア州
    従来の主な生息地域:パース近郊・スワン沿岸平野
    新たな移住候補地:西オーストラリア州南西部
    対象種:オーストラリアヌマガメモドキ
    学名:Pseudemydura umbrina
    英名:Western Swamp Tortoise / Western Swamp Turtle
    情報の種類:淡水ガメ・飼育下繁殖・野生復帰・気候変動・保全的移住

    現在、オーストラリア政府も本種の重要な保全策として、気候変動下でも生息可能な場所へ新しい個体群を作ることを挙げています。

    登場する亀

    オーストラリアヌマガメモドキは、

    ヘビクビガメ科に属する非常に小型の淡水ガメです。

    成体でも甲長はおよそ11〜13cm程度。

    体重は300〜450gほど。

    首は短く、

    頭頂部には大きな一枚の鱗板があります。

    足には水かきがあり、

    各足に5本の爪を持ちます。

    見た目は、

    派手ではありません。

    巨大でもない。

    奇抜な模様もない。

    茶色。

    黒。

    泥や湿地に溶け込むような小さなカメです。

    でも、

    進化的には非常に独特な存在です。

    Pseudemydura属で現在生きているのは、この一種だけ。

    オーストラリア政府の回復計画では、近縁のカメとは大きく異なる遺存的な系統であることが紹介されています。

    1839年、一匹だけ見つかった

    このカメの科学的な物語は、

    1839年に始まります。

    オーストリア人の博物学者Ludwig Preissが、西オーストラリアで一匹の標本を採集。

    その標本は、

    ウィーン自然史博物館へ送られました。

    しかし、

    その後が続きません。

    一匹も見つからない。

    何十年経っても、

    見つからない。

    1901年、

    博物館に保存されていた標本をもとに、

    Pseudemydura umbrina

    として正式に記載されます。

    でも、

    生きたカメが見つからない状態は続きました。

    100年以上、誰も見つけられなかった

    1839年から、

    1953年まで。

    114年間。

    新しい標本は確認されませんでした。

    そのため、

    このカメは絶滅したのではないかと考えられていました。

    そして1953年。

    物語が突然動きます。

    見つけたのは少年だった

    西オーストラリア州Upper Swan。

    そこで一匹の小さなカメを見つけたのは、

    Robert Boydという少年でした。

    彼はそのカメを、

    Western Australian Naturalists’ Clubの野生動物展示会へ持っていきます。

    そこで、

    「これは普通のカメではない」

    と気付かれました。

    100年以上、

    科学者にも見つからなかったカメ。

    その再発見のきっかけを作ったのは、

    一人の少年でした。

    探してみると、二つの小さな個体群があった

    再発見後、

    周辺で調査が行われます。

    そして、

    パース北東部に、

    二つの小さな生息地が見つかりました。

    現在の、

    Ellen Brook Nature Reserve。

    Twin Swamps Nature Reserve。

    この二つです。

    1962年には、

    残された生息環境を守るため、

    自然保護区が設けられました。

    一度は絶滅したと思われたカメに、

    ようやく保護区ができました。

    でも、生息地そのものが消えていった

    問題は、

    カメを捕る人だけではありませんでした。

    このカメが暮らしていたスワンバレー周辺は、

    パース都市圏に近い場所です。

    農業。

    宅地開発。

    道路。

    粘土採掘。

    排水。

    かつて湿地だった土地の多くが、

    別の用途へ変わっていきました。

    オーストラリア政府によると、本来利用していた粘土質の湿地の大部分は、現在では都市化・農業利用・粘土採掘などによって失われています。

    1980年代、30匹未満

    保護区まで作った。

    それでも、

    減少は止まりませんでした。

    1980年代。

    野生に残った個体は、

    30匹未満。

    Perth Zooは、

    この時期を本種が絶滅寸前まで追い詰められた時代として紹介しています。

    100年ぶりに見つかった。

    そのわずか30年後、

    今度は本当に消えそうになりました。

    1989年、動物園で繁殖を始める

    そこで、

    Perth Zooを中心とした飼育下繁殖プログラムが本格化します。

    開始は1989年。

    親ガメを繁殖させる。

    卵を見つける。

    掘り出す。

    孵卵器へ移す。

    孵化させる。

    子ガメを育てる。

    そして、

    十分に成長してから野生へ戻す。

    現在、Perth Zooでは、子ガメがおよそ100g、約3歳になった頃を一つの目安として野生復帰させています。

    1,300匹以上が生まれた

    その積み重ねは、

    大きな数字になりました。

    Perth Zooによると、

    1989年以降、

    1,300匹以上のオーストラリアヌマガメモドキが同園で繁殖。

    2024年6月時点で、

    そのうち1,125匹が野生環境へ放されています。

    30匹未満まで減ったカメです。

    そこから、

    1,000匹を超えるカメを、

    再び自然へ送り出せるところまで来ました。

    だったら、もう安心?

    ここまで読むと、

    保全は成功したように見えます。

    でも、

    新しい問題が出てきました。

    雨が減っている。

    このカメは、

    一年中水の中にいるわけではありません。

    冬から春。

    雨によって一時的な湿地に水がたまる。

    カメはそこで活動します。

    餌を食べる。

    成長する。

    繁殖に必要なエネルギーを蓄える。

    そして夏。

    湿地が乾くと、

    地面の穴や深い落ち葉の中へ入り、

    活動を抑えて暑い時期を乗り切ります。

    つまり、

    一定期間、湿地に水が残ること

    が非常に重要です。

    ところが、水のある期間が短くなっている

    気候が暖かく、

    乾燥するようになる。

    雨が減る。

    湿地が早く乾く。

    すると、

    カメが水中で餌を取れる期間が短くなります。

    昔は半年近く使えた湿地でも、

    水が残る期間が数か月まで短くなる可能性がある。

    そうなると、

    カメは十分に食べられません。

    成長できない。

    繁殖できない。

    つまり、

    保護区そのものは残っていても、カメが暮らせなくなる

    可能性があります。

    そこで発想を逆にした

    普通の保全なら、

    「本来の生息地を守ろう」

    と考えます。

    それはもちろん重要です。

    でも、

    本来の場所の気候そのものが変わってしまったら?

    そこで研究者たちは、

    違う問いを立てました。

    カメを守る場所を、もっと南へ作れないか。

    西オーストラリア州南西部。

    パース周辺より、

    涼しい。

    雨が多い。

    湿地に長く水が残る。

    将来、

    現在の生息地が暑く乾燥したとき、

    そこがカメの避難場所になる可能性があります。

    2016年、歴史的分布域の外へ

    2016年。

    24匹の飼育下繁殖個体が、

    Meerup周辺とAugusta東部の保全地域へ試験的に放されました。

    西オーストラリア州政府は当時、この試みを、

    将来の気候変動に備えて脊椎動物を歴史的分布域外へ移す試み

    として紹介しました。

    カメを、

    「昔いた場所」

    へ戻すのではない。

    「未来でも生きられそうな場所」へ移す。

    保全の考え方そのものが変わっています。

    「カメがいなかった場所へ放していいのか」

    でも、

    これは簡単な問題ではありません。

    ある生き物を、

    本来いなかった地域へ持ち込む。

    人間は過去、

    これを何度もやっています。

    そして、

    外来生物問題を起こしてきました。

    だから、

    assisted colonisationには議論があります。

    移したカメが、

    新しい生態系へ悪影響を与えないか。

    他の希少種と競合しないか。

    病気を持ち込まないか。

    新しい場所で本当に繁殖できるか。

    気候だけでは決められません。

    コンピューターまで使って「未来の湿地」を探す

    そこで研究者たちは、

    現在の生息地だけを見ません。

    気温。

    降水量。

    湿地に水が残る期間。

    カメの活動。

    卵の発生。

    将来の気候予測。

    さまざまな条件をモデル化し、

    これから先もカメが暮らせそうな場所

    を探しました。

    University of Western Australiaの研究者たちは、

    この理想的な場所を、

    “Goldilocks wetlands”

    と表現しています。

    暑すぎない。

    寒すぎない。

    乾きすぎない。

    カメにとって、

    「ちょうどいい湿地」です。

    2021年、さらに73匹

    試験は続きます。

    2021年には、

    Perth Zooで繁殖した73匹が、

    西オーストラリア州南西部の二つの場所へ放されました。

    Augusta東部へ16匹。

    Scott National Parkへ57匹。

    このうち48匹には、

    無線発信器やデータロガーが装着されました。

    見るのは、

    単に生死だけではありません。

    どこへ移動するか。

    いつ活動するか。

    体温はどう変化するか。

    どれくらい成長するか。

    新しい環境で、

    カメが本当に「普通に暮らせるか」を調べます。

    2022年、191匹を一度に放流

    翌2022年。

    さらに大きな放流が行われました。

    合計、

    191匹。

    44匹がScott National Park。

    147匹がMoore River Nature Reserve。

    飼育下繁殖プログラム開始以来、

    当時最大規模の放流でした。

    Scott National Parkの個体群は特に、

    気候変動への避難先として新しい個体群を作れるか

    を確かめる重要な試みになっています。

    2024年、さらに20匹

    保全は現在も続いています。

    2024年には、

    Perth ZooとAdelaide Zooで育った20匹が、

    Moore River近郊へ放されました。

    年齢は、

    2歳から13歳。

    放流前には無線発信器が取り付けられ、

    既にその場所で暮らしている個体と行動を比較する研究も始まりました。

    同発表時点で、

    Perth Zooでは1,300匹以上が繁殖し、

    1,145匹が野生へ放された

    とされています。

    「元の場所へ戻す」だけが保全ではなくなった

    これまで、

    野生復帰という言葉には、

    一つの分かりやすい形がありました。

    捕まえられた場所へ戻す。

    昔いた場所へ戻す。

    本来の生息地へ戻す。

    でも、

    気候変動は、

    その考え方を難しくしています。

    場所は残っている。

    保護区にもなっている。

    密猟者もいない。

    それでも、

    気候だけが昔とは違う。

    だったら、

    カメを過去へ戻すのではなく、

    未来へ移す必要があるのかもしれない。

    オーストラリアヌマガメモドキの保全は、

    その難しい問いを、

    実際のカメを使って考えているプロジェクトです。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回の話で僕が一番面白いと思うのは、

    「生息地とは何なのか」

    というところです。

    カメが昔からいた場所。

    それが生息地。

    普通はそう考えます。

    でも、

    気温が変わる。

    雨が減る。

    湿地が乾く。

    すると、

    地図上では同じ場所でも、

    カメにとっては、

    もう同じ場所ではない。

    逆に、

    昔はカメがいなかった南の湿地が、

    50年後には、

    カメにとって一番暮らしやすい場所になるかもしれない。

    保全というのは、

    昔の状態をそのまま保存する仕事だと思っていたけれど、

    このカメを見ていると、

    そうではないのかもしれない。

    変わっていく世界の中で、生き物が生き続けられる場所を探す仕事

    でもあるのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    他人が持っていない亀って、なんで欲しくなるんでしょうね?

    僕の性格が捻くれてるせいかな?

    欲しいなぁ〜オーストラリアヌマガメモドキ

    出典

    Perth Zoo
    「Western Swamp Tortoise Breeding Program」
    再発見、1980年代の個体数、繁殖プログラム、現在の繁殖・放流実績、気候変動に対応した新しい放流地について。
    URL:Perth Zooの保全プログラムを見る

    Western Australia Department of Biodiversity, Conservation and Attractions
    「Record release for critically endangered Western Swamp Tortoise」
    2022年。44匹と147匹、合計191匹の記録的な放流について。
    URL:DBCAの記事を読む

    National Environmental Science Program – Threatened Species Recovery Hub
    「Western swamp tortoises move to a cool new home」
    2016年。気候変動に備えて24匹を歴史的分布域外へ移した初期のassisted colonisationについて。
    URL:2016年の移住計画を見る

    The University of Western Australia
    「Bold plan to find ‘Goldilocks’ wetlands for Western Swamp Tortoise」
    2022年9月7日。気候変動に耐えられる新しい湿地を探す研究について。
    URL:UWAの記事を読む

    Australian Government – DCCEEW
    「Western swamp tortoise」
    本種の脅威と、気候変動避難地への新個体群創出を含む現在の保全方針。
    URL:オーストラリア政府の種情報を見る

    e-Gov 法令検索
    Pseudemydura umbrinaの日本語名「オーストラリアヌマガメモドキ」の確認。
    URL:e-Govの法令情報を見る

  • 【世界の亀ニュース】ムツコブヨコクビガメがブラジルで絶滅危惧種に 36年間で個体数50%超減少

    【世界の亀ニュース】ムツコブヨコクビガメがブラジルで絶滅危惧種に 36年間で個体数50%超減少

    今回は、アマゾン川流域に生息するムツコブヨコクビガメが、ブラジルの国家レベルで初めて絶滅危惧種に指定されたニュースを紹介します。

    今回のニュース

    ブラジル環境・気候変動省は2026年、国内の絶滅危惧動物をまとめた公式リストを更新しました。

    この新しいリストで、ムツコブヨコクビガメは従来の「準絶滅危惧」から、絶滅の危険がより高い**「危機・EN」**へ引き上げられました。

    ブラジルの公式な絶滅危惧種リストに、ムツコブヨコクビガメが加えられたのは今回が初めてです。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ブラジル
    主な地域:アマゾナス州、西部パラー州など
    対象となる環境:アマゾン川流域の河川、湖、氾濫原、砂浜
    元記事の言語:英語・ポルトガル語
    報道時期:2026年7月15日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・絶滅危惧種・保護政策

    ブラジルでは2026年、環境・気候変動省の省令によって、爬虫類や鳥類、哺乳類などを含む公式の絶滅危惧種リストが更新されました。

    ICMBioによると、新しいリストではブラジルの動物1,279種が絶滅危惧種として認定され、そのうち123種が爬虫類です。

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ムツコブヨコクビガメです。

    学名は Podocnemis sextuberculata

    ブラジルでは「イアサ」「ピチウ」などの名前で呼ばれ、英語ではSix-tubercled Amazon River Turtleと呼ばれています。

    Podocnemis属の中では比較的小型で、成体の体重は最大約3.5キロ、甲長は約34センチに達します。ブラジル、コロンビア、ペルーの河川や氾濫原に分布しています。

    和名にある「六つのこぶ」は、幼体や若い個体の腹甲に見られる六つの突起に由来します。

    この突起は成長とともに目立たなくなり、成体では消失することもあります。

    ニュースの要約

    ICMBioの評価によると、アマゾナス州と西部パラー州では、過去36年間にムツコブヨコクビガメの個体数が50%以上減少したと推定されています。

    36年間は、このカメのおよそ三世代分に相当します。

    調査対象となった地域は、種全体の分布域のおよそ70%を占める重要な地域です。この大幅な減少を受け、ブラジル国内の評価が「準絶滅危惧」から「危機・EN」へ引き上げられました。

    今回の指定は、ムツコブヨコクビガメがすぐに絶滅するという意味ではありません。

    しかし、保護活動を続けていても減少を止められていないことを、ブラジル政府が公式に認めたことになります。

    アマゾンの乾季に現れる砂浜

    ムツコブヨコクビガメは、川の水位が低下する乾季に繁殖します。

    普段は水に覆われている砂浜や河岸が姿を現すと、雌は夜間に上陸して穴を掘り、卵を産みます。

    一度の巣には6個から39個ほどの卵が産み落とされ、孵化までにはおよそ45日から87日かかります。雌は同じ繁殖期に、約2週間の間隔を空けて二度産卵することもあります。

    水位が下がらなければ、安全な産卵場所が現れない。

    反対に、水位が急激に上がれば、砂の中の巣が浸水する。

    このカメの繁殖は、アマゾンの雨季と乾季によって作られる、川の水位変化と深く結びついています。

    捕まえやすいことが弱点になる

    ブラジル環境・再生可能天然資源院は、ムツコブヨコクビガメが減少している原因の一つとして、漁網による捕獲を挙げています。

    繁殖期になると複数の個体が同じ地域へ集まるため、刺し網などにかかりやすくなります。

    ほかのPodocnemis属よりも環境変化に弱く、水質の悪化や、川の増水と減水の周期が変わることによる影響も受けやすいと考えられています。

    アマゾンの淡水ガメは、古くから肉や卵を食料として利用されてきました。

    現在も違法な捕獲や販売は続いており、卵を採取されるだけでなく、産卵のために上陸した雌が捕まえられることもあります。

    川そのものの変化

    ムツコブヨコクビガメを脅かしているのは、直接的な捕獲だけではありません。

    森林伐採、気候変動、河岸での牧畜、ダム建設などによって、アマゾンの川の流れや水位、土砂の移動が変化しています。

    ダムはカメの移動を妨げるだけでなく、下流に形成される砂浜や、乾季と雨季の水位変化にも影響する可能性があります。

    ムツコブヨコクビガメにとって、川は単なる水の通り道ではありません。

    雨季に餌を探す氾濫原。

    乾季に集まる河川。

    卵を産む砂浜。

    孵化した子ガメが最初に入る浅瀬。

    それらすべてがつながって、一つの生息地を作っています。

    1億匹以上を放しても減少している

    ブラジルでは1979年から「アマゾン淡水ガメ計画」が続けられています。

    産卵地の監視、巣の保護、卵の移動、子ガメの放流、地域住民への環境教育などを行う、大規模な保全事業です。

    計画開始から2026年までに、ムツコブヨコクビガメ、モンキヨコクビガメ、オオヨコクビガメの3種を合わせて、約1億700万匹の子ガメが自然へ放されました。

    この活動によって、一部のPodocnemis属では個体群の回復が確認されています。

    しかし、ムツコブヨコクビガメについては、複数の地域で現在も減少が続いています。

    子ガメを放すことは重要です。

    けれど、放した後に漁網で捕まる。

    産卵できる砂浜が失われる。

    川の水位変化が変わる。

    そうした状況が続けば、放流だけで個体群を回復させることはできません。

    地域住民が砂浜を守る

    アマゾンの淡水ガメ保護では、川沿いに暮らす地域住民が重要な役割を担っています。

    産卵期になると、住民が砂浜を巡回して巣を記録し、密猟者や捕食動物、浸水から卵を守ります。

    ブラジルのプルス川とイトゥシ川周辺では、住民主体の保全活動によって、オオヨコクビガメ、モンキヨコクビガメ、ムツコブヨコクビガメを合わせて、250万匹を超える子ガメが放流されています。

    広大なアマゾンのすべての砂浜を、行政職員だけで監視することはできません。

    いつ砂浜が現れるのか。

    どこにカメが集まるのか。

    どの場所が浸水しやすいのか。

    川とともに暮らしてきた人たちの知識がなければ、巣を見つけて守ることは難しいのです。

    絶滅危惧種への指定は「保護の始まり」

    絶滅危惧種に指定されたこと自体は、喜ばしいニュースではありません。

    それは、これまでの保護だけでは十分ではなかったという警告でもあります。

    一方で、公式リストへ加わることで、保護計画、環境影響評価、研究、監視、違法捕獲への対策などにおいて、ムツコブヨコクビガメを優先する根拠が強くなります。

    ブラジルの絶滅リスク評価は、分布域、個体数の減少、脅威、生息地の状態などを調査し、専門家による評価と検証を経て政策へ反映されます。

    名前がリストへ加えられただけでは、カメは増えません。

    しかし、減少している事実を公式に認めることが、対策を強化する最初の一歩になります。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、たくさん子ガメを放してきた種類でも、安心できるとは限らないことです。

    砂浜から何千匹もの子ガメが川へ入る光景は、保護活動の成功として強く記憶に残ります。

    でも、子ガメが川へ入った瞬間が、保護の終わりではありません。

    その一匹が成長するまでには、長い時間がかかる。

    漁網を避けなければならない。

    水位の変化を生き延びなければならない。

    そして大人になった雌は、もう一度、安全な砂浜へ戻らなければならない。

    放された数だけでは見えない時間があります。

    今回の絶滅危惧種指定は、その見えない時間の中で、多くのカメが失われていることを示しているのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    地球の運動と人間の経済活動を止めることができれば良いかもね。

    出典

    Mongabay
    「Brazil lists the Amazon river turtle as endangered for the first time」

    ブラジル・シコ・メンデス生物多様性保全研究所
    「ブラジル公式絶滅危惧動物リスト」

    ブラジル環境・再生可能天然資源院
    「アマゾン淡水ガメ計画」

    WCSブラジル
    「アマゾン淡水ガメが直面する脅威」

  • 【世界の亀ニュース】犬や嵐からヒメウミガメの巣を守る パラワン島で地域住民が夜の浜を巡回

    【世界の亀ニュース】犬や嵐からヒメウミガメの巣を守る パラワン島で地域住民が夜の浜を巡回

    今回は、フィリピン・パラワン島の砂浜で、地域住民と研究者が協力してヒメウミガメの巣を守っているニュースを紹介します。

    今回のニュース

    フィリピン西部のパラワン島にあるサン・ビセンテでは、ヒメウミガメの産卵期になると、地域住民と研究者が夜通し砂浜を巡回しています。

    活動の中心となっているのは、フィリピンの海洋保全団体Large Marine Vertebrates Research Institute Philippines、通称LAMAVEと、海岸沿いの村で暮らす地域住民です。

    母ガメの上陸を確認し、産卵を見守り、犬や高潮などの危険がある巣は保護用の孵化場へ移します。卵から出てきた子ガメが無事に海へ向かうまで、地域全体で見守る活動が続けられています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:フィリピン共和国、パラワン州
    場所:サン・ビセンテ、サント・ニーニョ村など
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年7月17日
    情報の種類:新着ニュース・ウミガメ・産卵・孵化・地域保全

    サン・ビセンテは農業と漁業が行われている町で、その海岸はアジアに残る重要なヒメウミガメの産卵地の一つです。町には約284キロに及ぶ砂浜や小さな入り江があり、例年11月中旬から3月ごろにかけて、多数のヒメウミガメが夜の海岸へ上がります。

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ヒメウミガメです。

    学名は Lepidochelys olivacea。英語ではOlive Ridley Sea Turtleと呼ばれ、日本語では「オリーブヒメウミガメ」と表記されることもあります。

    ヒメウミガメは小型のウミガメで、甲長と甲幅の差が少なく、上から見ると甲羅の外周が円形に近く見えるのが特徴です。世界の熱帯・亜熱帯の海域に広く分布し、フィリピンの海岸でも産卵します。

    ニュースの要約

    産卵期のサン・ビセンテでは、地域の巡回員やボランティア、LAMAVEの研究者たちが交代で夜の砂浜を歩きます。

    最も忙しい時期には、一晩から早朝にかけて五つの時間帯に分かれ、合計5マイル、約8キロ以上の海岸を巡回します。

    母ガメを見つけても、すぐには近づきません。

    産卵が終わるまで静かに待ち、犬が近づけば追い払い、母ガメが海へ戻る前に甲羅の大きさを測ります。さらに、頭部にある鱗の模様を写真に記録し、将来同じ個体が戻ってきたときに識別できるようにします。遺伝子調査のため、ひれから小さな試料を採取する場合もあります。

    卵を動かさなければならない巣

    母ガメが選んだ場所であっても、すべての巣をそのまま残せるとは限りません。

    波に近すぎる場所では、高潮や嵐によって巣が浸水する可能性があります。人や車が頻繁に通る場所では、砂が踏み固められたり、卵が傷つけられたりする危険もあります。

    安全に孵化できないと判断された巣では、卵の向きを大きく変えないよう慎重に掘り出し、保護用の孵化場へ移します。孵化場では、巣の位置や卵の数、移動した日時などを記録しながら、子ガメが出てくる日を待ちます。

    卵を移すこと自体にも危険があります。

    移動方法や砂の深さ、温度などが適切でなければ、孵化率を下げてしまう可能性があるからです。

    そのためLAMAVEは、地域の巡回員に産卵調査、巣の移動、孵化場の管理、子ガメの放流などの技術を伝え、地域の人たち自身が長期的に海岸を守れる仕組みづくりを進めています。

    巣を襲う犬

    サン・ビセンテで現在、最も身近な脅威とされているのが、海岸を歩き回る犬です。

    犬は砂の中にある卵の匂いを見つけ、巣を掘り返します。孵化したばかりの子ガメが砂から出た直後に襲われることもあります。

    巡回員たちは母ガメの産卵中だけでなく、巣の周辺や子ガメの放流時にも犬が近づかないよう見守っています。

    これは犬を悪者にするという話ではありません。どんなときも、悪いのは人間です。

    放し飼いや野良犬の増加など、人間の暮らし方によって生まれた問題です。

    海岸のウミガメを守るためには、巣に柵を設置するだけでなく、地域の飼い犬の管理や住民への理解を広げる必要があります。

    気候変動と観光開発

    ヒメウミガメの巣を脅かしているのは、犬だけではありません。

    海面上昇、高潮、海岸浸食、激しい嵐によって、これまで安全だった産卵場所が水につかる可能性が高まっています。また、砂の温度は子ガメの性別や発生にも関係するため、海岸の高温化も重要な問題です。

    パラワン島では、観光開発も進んでいます。

    道路、宿泊施設、海岸照明、人や車の往来が増えれば、母ガメが上陸を諦めたり、子ガメが海とは反対側の光へ向かったりする可能性があります。

    自然豊かな海岸が観光地として注目されることと、ウミガメが産卵できる暗く静かな砂浜を残すこと。その二つをどう両立させるかが、これからの大きな課題です。

    卵で遊んでいた少年が、巣を守る側へ

    今回のニュースで紹介された地域巡回員の一人が、ジェラルド・マフサイさんです。

    マフサイさんは子どものころ、海岸でウミガメの卵をよく見つけていました。しかし、その卵がなぜ大切なのかを知らず、友人たちと遊びに使っていたと振り返っています。

    2023年、マフサイさんはLAMAVEの地域巡回員として働き始めました。そして現在は、巡回チームの責任者と、ウミガメ調査の研究助手を務めています。

    かつて卵の意味を知らなかった少年が、今では夜の浜を歩き、母ガメを記録し、同じ卵を犬や嵐から守っている。

    この変化は、一人の考えが変わったというだけではありません。

    地域に知識と仕事が生まれ、海岸で暮らしてきた人が保護活動の中心になったことを示しています。

    地域の人が守る意味

    遠くから研究者がやって来て、数年間だけ調査することはできます。

    しかし、ヒメウミガメは毎年同じ地域へ戻り、夜中や嵐の前後にも産卵します。

    海岸の変化を毎日見ているのは、そこで暮らす人たちです。

    どの場所に犬が多いのか。
    どの浜が高潮で削られるのか。
    どの時間帯に母ガメが上がりやすいのか。

    地域住民が持つ経験と、研究者が持つ調査技術を組み合わせることで、広い海岸を長期間見守れるようになります。LAMAVEの活動は、ウミガメだけを保護するのではなく、地域の人が自分たちの海岸を守り続けられる体制を作ることも目的としています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、ウミガメを守っているのが、特別な施設の中ではなく、人が暮らしている普通の砂浜だということです。

    母ガメが上陸する浜の近くには、家がある。

    漁へ出る船がある。

    犬が歩き、子どもが遊び、これから観光施設が建つかもしれない。

    人間の暮らしとウミガメの産卵地は、離れた二つの世界ではありません。

    同じ砂浜を使っています。

    だからこそ、ウミガメを守るには、その土地で暮らす人を保護活動の外側に置くことはできません。

    夜の浜を歩く地域巡回員の存在は、人間と亀が同じ場所で生きていくための、小さくても重要な接点なのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    人がいる限り難しい問題だね。
    人が悪だってことじゃないよ。
    良いだの悪いだの、正しいだの間違っているだのの判断軸を持っている人間がいることがクソなのさ。

    出典

    Mongabay
    「How a community is helping sea turtles hatch in the Philippines」

    Large Marine Vertebrates Research Institute Philippines
    「Marine Turtle Nesting Beach Monitoring and Conservation Project: An Overview」

    Island Innovation
    「How a Community is Helping Sea Turtles Hatch in the Philippines’ Palawan」

    World Wildlife Fund
    「Constructing climate-resilient hatcheries for endangered sea turtles in the Philippines」

    沖縄美ら海水族館
    「ヒメウミガメ」

  • 【世界の亀ニュース】オーストラリアで9,100匹以上のアオウミガメの赤ちゃんが海へ

    【世界の亀ニュース】オーストラリアで9,100匹以上のアオウミガメの赤ちゃんが海へ

    今回は、オーストラリアで報じられた、アオウミガメの卵移動プロジェクトに関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    オーストラリア北部、グレートバリアリーフ北部のアオウミガメに関するニュースです。

    ABC Newsによると、レイン島からサー・チャールズ・ハーディ島へ移されたアオウミガメの卵から、9,100匹以上の赤ちゃんガメが海へ向かったと報じられています。移された卵のうち、約82%が孵化して海へたどり着いたとされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:オーストラリア、グレートバリアリーフ北部
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年6月1日
    情報の種類:新着ニュース・保護活動・繁殖/孵化

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、アオウミガメです。

    舞台になったレイン島は、アオウミガメにとって非常に重要な産卵地として知られています。記事では、この地域のアオウミガメが気候変動や海面上昇、砂浜の温度上昇などの影響を受けていることも紹介されています。

    ニュースの要約

    今回の取り組みでは、アオウミガメの卵がレイン島からサー・チャールズ・ハーディ島へ移されました。

    目的のひとつは、孵化数を増やすことだけではありません。
    砂の温度が高くなりすぎると、アオウミガメの赤ちゃんはメスに偏りやすくなるため、より涼しい環境へ卵を移すことで、オスの赤ちゃんが生まれる可能性を高める狙いもあります。今回、移された卵は約9,000個にのぼり、約82%が孵化して海へ向かったと報じられています。

    また、記事では、この取り組みが10年以上続くレイン島回復プロジェクトの一部であることも紹介されています。伝統的所有者と研究者が協力し、アオウミガメの未来を守ろうとしている点も大切なポイントです。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、ただ「たくさん孵化した」という話ではないところです。

    亀の保護というと、卵を守る、赤ちゃんを海へ帰す、という場面に目が行きます。
    でも今回のニュースでは、砂浜の温度、性別の偏り、海面上昇、産卵地の地形、そしてその土地の人々の文化まで関わっています。

    一匹の赤ちゃんガメが海へ向かう背景には、島の形、気候、研究者、伝統的所有者、そして長く続く保護活動があります。

    亀を守るということは、亀だけを見ることではなく、亀が生まれる場所ごと見つめることなのかもしれません。

    湯川亀吉の一言

    偉いね。

    出典

    元記事:ABC News「Thousands of baby green sea turtles head to sea after successful egg relocation」

  • 【亀ニュースアーカイブ】オーストラリアの不思議な淡水ガメ、洪水で繁殖地に大きな打撃

    【亀ニュースアーカイブ】オーストラリアの不思議な淡水ガメ、洪水で繁殖地に大きな打撃

    今回のニュース

    2025年、オーストラリア・クイーンズランド州に生息するメアリーリバータートルが、洪水によって厳しい繁殖シーズンを迎えていると報じられました。

    The Guardianの記事によると、2024年12月の洪水により、メアリーリバータートルの重要な繁殖地であるティアロ周辺では、そのシーズンの巣の約半分が失われたとされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:オーストラリア、クイーンズランド州、メアリー川流域
    元記事の言語:英語
    元記事の公開時期:2025年4月
    情報の種類:過去アーカイブ・淡水ガメ・保護活動・繁殖地被害

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、メアリーリバータートルです。

    メアリーリバータートルは、オーストラリア南東クイーンズランドのメアリー川に生息する淡水ガメです。記事では、総排出腔付近の構造を通じて水中の酸素を取り込むことができる、非常に特殊な淡水ガメとして紹介されています。

    ニュースの要約

    メアリーリバータートルは、すでに厳しい状況に置かれている絶滅危惧の淡水ガメです。

    The Guardianの記事では、この種の野生個体数は推定約10,000匹で、1960年代以降に個体数が約80%減少したと紹介されています。さらに、2024年12月の洪水では川の水位が大きく上がり、ティアロの重要な繁殖地で、そのシーズンの巣の約半分が失われたとされています。

    地域のボランティアたちは、20年以上にわたってメアリーリバータートルの保護に関わってきました。洪水の際には、一部の巣をより高い場所へ移すなどして、少しでも卵を守ろうとしたと報じられています。

    しかし、巣を守る活動だけで問題が解決するわけではありません。

    記事では、繁殖成績の悪化、生息地への影響、捕食、気候変動、そして若い個体が十分に成長していない可能性など、複数の課題が重なっていることも紹介されています。

    なぜ今、このニュースを紹介するのか

    このニュースは2025年の記事ですが、淡水ガメの保護を考えるうえで、とても重要な記録だと思います。

    ウミガメの保護では、砂浜や海岸が注目されることが多い。
    でも、淡水ガメにもまた、卵を産む場所があり、川の流れがあり、増水や洪水に左右される繁殖の時間があります。

    メアリーリバータートルは、川の中で静かに生きているカメです。
    でもその静かな暮らしは、気候や水位、人間の保護活動、地域のボランティアの努力と深くつながっています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、淡水ガメの繁殖地が、思っている以上に繊細だということです。

    川に暮らすカメは、ただ水の中にいればいいわけではありません。
    産卵できる場所があり、卵が流されない高さがあり、子ガメが孵化して川へ向かえる環境が必要です。

    洪水は自然の一部です。
    でも、もともと個体数が減っている種類にとって、ひとつの繁殖シーズンを失うことは大きな痛手になります。

    記事の中では、保護関係者が「毎年が重要だ」という趣旨の危機感を示しています。
    亀は長生きする生き物だけど、だからといって繁殖の失敗を何年も積み重ねていいわけではない。

    長く生きるからこそ、次の世代へつなぐ一回一回の繁殖が重いのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    メアリーリバータートル。

    一度野生の個体を見てみたいぜ。

    オーストラリアから固有種の輸出を許可する未来が訪れますように。

    オーストラリアの亀をもっと知りたいよ〜

    出典

    元記事:The Guardian「‘Every year matters’: Queensland’s critically endangered ‘bum-breathing’ turtle battles the odds」