カテゴリー: 亀の保護活動

亀の保護区、NPO活動、研究機関の保全活動、産卵地保護など。

  • 【世界の亀ニュース】絶滅寸前だったキタブチイシガメ37匹、35年続く保護活動で湿地へ

    【世界の亀ニュース】絶滅寸前だったキタブチイシガメ37匹、35年続く保護活動で湿地へ

    今回は、アメリカ・ワシントン州で報じられた、希少な淡水ガメの野生復帰に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年7月、アメリカ・ワシントン州で、37匹の若いキタブチイシガメが保護された湿地へ放されました。

    この放流は、ワシントン州魚類野生生物局とウッドランドパーク動物園が協力して進める「Western Pond Turtle Recovery Project」の一環です。

    プロジェクトは2026年で開始から35年を迎えました。絶滅寸前だったカメを守るため、卵や子ガメを一時的に安全な環境で育て、野生で生き残りやすい大きさになってから湿地へ戻す活動が続けられています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ、ワシントン州
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年7月10日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・野生復帰・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、キタブチイシガメです。

    学名は Actinemys marmorata。英語ではWestern Pond TurtleやNorthern Pacific Pond Turtleと呼ばれています。分類や日本語資料によっては、単に「ブチイシガメ」と表記されることもありますが、この記事ではキタブチイシガメとします。

    キタブチイシガメは、池や湿地、流れの緩やかな水辺などに暮らす北米原産の淡水ガメです。

    ワシントン州では個体数が激減し、1990年の時点で残っていたのは、二つの個体群に合計約150匹だけでした。絶滅を防ぐため、1991年に動物園と州当局による本格的な回復事業が始まり、1993年には州の絶滅危惧種に指定されました。

    ニュースの要約

    キタブチイシガメの保護活動では、野生の巣から卵や孵化したばかりの子ガメを集め、ウッドランドパーク動物園やオレゴン動物園で一時的に育てます。

    孵化直後の子ガメは、硬貨ほどの小ささです。

    そのまま野生へ出ると、外来種のウシガエルをはじめとする捕食者に食べられる危険性が高いため、動物園で冬を越しながら、魚やミミズなどを与えて成長させます。

    目標となるのは、体重がおよそ2〜3オンス、約57〜85グラムに達することです。

    この大きさまで育つと、子ガメはウシガエルの口に入りにくくなり、野生で生き残れる可能性が高まります。

    健康状態を確認した後、カメたちは保護された湿地へ戻されます。放流後も、州の生物学者たちが生存状況や移動を追跡します。

    小さなカメに「先行時間」を与える

    この方法は、英語で「ヘッドスタート」と呼ばれています。

    野生動物を一生飼育するのではなく、最も命を落としやすい幼少期だけを安全な環境で過ごさせ、ある程度成長してから本来の生息地へ戻す方法です。

    キタブチイシガメは、性成熟するまでに約10〜12年かかります。孵化した子ガメが成体となり、次の世代を残すまでには、長い時間が必要です。

    だからこそ、最初の数か月を生き延びられるかどうかが、何十年後の個体群に大きく影響します。

    動物園で過ごす一度の冬は、このカメたちにとって、野生へ帰る前に与えられた「先行時間」なのかもしれません。

    35年間で2,300匹以上を野生へ

    35年間にわたる共同事業によって、これまでに2,300匹以上のキタブチイシガメがヘッドスタートを経て野生へ戻されました。

    その結果、ピュージェット湾地域とコロンビア川峡谷では、再び個体群が形成されています。調査では、ヘッドスタート個体と野生で生まれた個体を合わせ、約800匹が生き残っていると推定されています。

    1996年に最初の16匹が放されたワシントン州南部の回復地では、長年の放流によって個体数が200匹を超えるまでに回復した記録もあります。

    約150匹まで減ったカメを、何十年もかけて少しずつ増やしてきた。

    今回放された37匹も、その長い回復の物語につながる新しい世代です。

    回復を脅かす甲羅の病気

    保護活動には、大きな課題も残されています。

    野生個体群では、甲羅に病変が現れる深刻な病気が広がっており、野生個体の80%以上に影響が確認されていると報告されています。

    症状が重くなると、健康状態や生存に影響する可能性があります。現在、シェッド水族館やイリノイ大学の研究者たちが、微生物や環境との関係を含めて病気の原因を調べています。

    外来種から子ガメを守り、生息地を整え、野生へ戻す。

    それだけでも長い時間がかかります。

    さらに、新しく現れた病気にも対応しながら、保護活動を次の世代まで続けなければなりません。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、亀を守る活動そのものも、亀のようにゆっくり進んでいることです。

    1991年に始まった活動が、2026年で35年。

    卵を見つけ、孵化させ、冬のあいだ育て、湿地へ戻す。
    それを毎年繰り返す。

    放した子ガメが成長し、繁殖できるようになるまでには、さらに10年以上かかります。

    一度の放流だけで、絶滅危惧種が回復するわけではありません。

    今日放された37匹が大人になり、その子どもが生まれ、さらに次の世代へ命がつながるまで、保護する人たちは待ち続けます。

    亀は遅い。

    でも、亀を守る活動もまた、急ぐことのできない仕事なのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    孵化したばかりの子ガメは、硬貨ほどの大きさしかない。

    その小さな甲羅では、ウシガエルの口から逃げることも難しい。

    だから人間は、一度だけその命を預かる。

    冬のあいだ食べ物を与え、少しだけ大きく育てて、また湿地へ返す。

    守り続けるのではない。
    野生で生きられるところまで、一緒に時間を進める。

    35年間で2,300匹以上。

    一匹ずつを見れば、小さなカメだ。
    でも、その小さな甲羅を一つずつ湿地へ戻してきた時間は、とても大きい。

    亀はゆっくり育つ。
    だから、人間も急がずに守り続けなければならない。

    今回放された37匹が、いつか泥の岸辺で卵を産む日まで。

    この保護活動は、まだ終わらないのだと思います。

    出典

    Woodland Park Zoo
    「Endangered turtles released to the wild」

    Washington Department of Fish and Wildlife
    「South Puget Sound Wildlife Area Management Plan」

    The Reptile Database
    「Actinemys marmorata」

  • 【世界の亀ニュース】洪水に沈む産卵地 マグダレナヨコクビガメの卵を守るコロンビアの人々

    【世界の亀ニュース】洪水に沈む産卵地 マグダレナヨコクビガメの卵を守るコロンビアの人々

    今回は、南米コロンビアにしか生息していない淡水ガメ、

    マグダレナヨコクビガメ

    を紹介します。

    学名は、

    Podocnemis lewyana。

    英語では、

    Magdalena River Turtle

    と呼ばれています。

    2026年。

    このカメが産卵するシヌー川で、大規模な洪水が発生しました。

    本来なら、

    水位が下がる。

    砂州が現れる。

    雌ガメが上陸する。

    穴を掘る。

    卵を産む。

    そんな季節でした。

    ところが今年は、

    卵を産む砂浜そのものが水の下へ消えてしまった。

    それでも地域の人たちは、水位の変化を見ながら残された砂州を歩き、カメの巣を探し続けています。

    今回のニュース

    2026年6月29日、Turtle Survival Alliance(TSA)は、コロンビア北西部のシヌー川で行われているマグダレナヨコクビガメの保全活動について報告しました。

    2026年初頭、北半球から南下した寒冷前線の影響によってコロンビア・カリブ地域で激しい雨が降り、大規模な洪水が発生。

    さらにTSAによると、Urrá水力発電ダムの運用に伴うシヌー川流量の異常な増加が洪水を悪化させたとされています。

    コルドバ県では10を超える自治体が被害を受けました。

    そして、

    マグダレナヨコクビガメの重要な繁殖地である**Cotocá Arriba(コトカ・アリバ)**も、大きな被害を受けました。

    どこの国・地域の話か

    国:コロンビア
    県:コルドバ県
    地域:Cotocá Arriba
    河川:シヌー川
    発表:2026年6月29日
    対象種:マグダレナヨコクビガメ
    学名:Podocnemis lewyana
    情報の種類:淡水ガメ・産卵・洪水・巣の保護・地域住民による保全

    本種はコロンビア固有種です。

    マグダレナ川水系とシヌー川水系を中心に分布し、ナンベイヨコクビガメ属の中でも、アンデス山脈の西側に自然分布する唯一の種類とされています。

    日本語では「マグダレナヨコクビガメ」という名称が使われることがあります。

    登場する亀

    マグダレナヨコクビガメは、

    ナンベイヨコクビガメ科の中大型淡水ガメです。

    2026年に公開されたIUCN/SSC Tortoise and Freshwater Turtle Specialist Groupの最新種アカウントでは、最大直線甲長は、

    雌:約50cm
    雄:約42.4cm

    とされています。

    そして名前の通り、

    ヨコクビガメ。

    一般的な潜頸類のように首を真っすぐ甲羅の中へ引き込むのではなく、首を横方向へ曲げて収納します。

    雌はおよそ5〜7年、雄は3〜4年ほどで性成熟すると考えられています。

    世代時間は約10〜12年。

    つまり、一度個体群が大きく減ると、

    元の数まで戻るのに非常に長い時間がかかるカメです。

    年に2回、砂浜へ上がる

    マグダレナヨコクビガメは、

    一年に二つの主要な繁殖期があります。

    12月〜2月。

    そして、

    7月〜8月。

    川の水位が下がると、

    普段は水中に隠れている砂州や砂浜が姿を現します。

    雌ガメはそこへ上がり、

    穴を掘って卵を産みます。

    通常は一度に12〜22個程度。

    大型の雌では、

    最大32個ほどの卵を産むことがあります。

    孵化までは平均約61日。

    生まれたばかりの子ガメの甲長は、わずか4〜5cmほどです。

    カメの巣に必要なのは「水が少ない時間」

    ここが今回のニュースを理解するうえで重要です。

    川に暮らすカメだから、

    水が多いほうが良い。

    とは限りません。

    成体にとって川は生活場所です。

    でも、

    卵には水が多すぎると困る。

    川の水位が下がる。

    砂浜が出る。

    雌が産卵する。

    約2か月、

    卵が土の中で発生する。

    子ガメが孵化する。

    川へ向かう。

    この時間が必要です。

    ところが途中で川が増水すれば、

    巣が水没します。

    卵は正常に発生できなくなり、

    孵化できない可能性が高くなります。

    2026年、その砂浜が消えた

    本来この時期のシヌー川では、

    水位が低くなり、

    産卵に使える砂浜が現れます。

    ところが2026年。

    豪雨と河川の増水によって、

    その砂浜が水没しました。

    川岸だけではありません。

    Cotocá Arribaでは、

    農作物。

    道路。

    住宅。

    人間の暮らしそのものも洪水の被害を受けました。

    つまり、

    カメを守っている人たち自身も、

    被災者でした。

    それでも川へ行く

    それでも、

    地域住民はカメの巣を探しました。

    水が少し引く。

    砂浜が少しだけ現れる。

    そこへ行く。

    足跡を見る。

    砂を見る。

    巣を探す。

    また水が来る前に、

    卵を救い出す。

    TSAの報告では、住民たちは洪水の波の合間を縫って砂州を巡回したとされています。

    卵は「向きを変えない」

    巣を見つけると、

    すぐ掘り出せばいい。

    というわけでもありません。

    カメの卵は、

    扱い方にも注意が必要です。

    住民たちは慎重に卵を掘り出し、

    向きを回転させないようにして

    運搬用の容器へ入れます。

    その後、

    安全な施設へ運び、

    人工的な環境で孵化まで管理します。

    つまり、

    自然の巣を別の場所へ移して、

    洪水より先に卵を避難させるわけです。

    普通なら140巣

    数字を見ると、

    2026年の異常さが分かります。

    通常の繁殖シーズン。

    地域住民が救出する巣は、

    平均して、

    約140巣。

    ところが、

    2026年6月29日の報告時点で救出できたのは、

    5巣。

    140。

    そして、

    5。

    産卵できる砂浜がどれほど失われたのかが分かります。

    でも、その5巣から孵化が始まった

    そして、

    小さなニュースがあります。

    救出された5巣の卵から、

    子ガメが孵化し始めました。

    5巣しか救えなかった。

    そう考えることもできます。

    でも、

    もし誰も砂州へ行かなければ、

    その5巣も水の下へ消えていたかもしれません。

    今年生まれるはずだった一世代の一部が、

    人間の手によって洪水を越えました。

    この活動は2013年から続いている

    今回だけ、

    突然カメを助け始めたわけではありません。

    Cotocá Arribaの地域住民は、

    2013年から

    WCS ColombiaやTurtle Survival Allianceと協力して、

    シヌー川でカメの巣を守っています。

    最初の年に保護した巣は、

    9巣。

    そこから活動は拡大。

    現在では、

    15か所の産卵地を監視しています。

    そしてこれまでに、

    1,000巣以上を保護。

    そこから生まれた、

    16,000匹以上の子ガメをシヌー川へ放してきました。

    9巣から始まった

    僕は、

    この数字も好きです。

    最初から、

    巨大な保全プロジェクトだったわけではありません。

    2013年。

    9巣。

    そこから、

    毎年川を見る。

    雌が来る。

    巣を探す。

    卵を守る。

    子ガメを放す。

    また次の年。

    それを繰り返す。

    13年。

    その結果が、

    1,000巣。

    16,000匹です。

    「Sinú Turtles」

    Cotocá Arribaで行われているこの取り組みは、

    Sinú Turtles

    と呼ばれています。

    主役は、

    地域住民です。

    研究者だけが川へ来て調査するのではありません。

    川の水位を普段から見ている人。

    砂州がどこに出るか知っている人。

    カメがいつ来るか知っている人。

    その川で暮らしてきた人たち自身が、

    巣を探します。

    これは、

    かなり強い保全方法だと思います。

    川にはダムがある

    さらに、

    シヌー川のカメには難しい問題があります。

    上流には、

    Urrá水力発電ダム

    があります。

    ダムは、

    人間に電力を供給します。

    しかし、

    河川の水位変化にも影響します。

    WCS Colombiaは、人工的な水位変動によってマグダレナヨコクビガメの巣が浸水する危険性が高まるため、地域住民が毎年産卵地を監視し、必要なら卵を人工孵化施設へ移していると説明しています。

    つまり、

    昔なら自然の季節変化に合わせていた産卵が、

    人間による河川管理の影響も受けるようになっています。

    洪水だけが敵ではない

    マグダレナヨコクビガメは、

    IUCNレッドリストで、

    Critically Endangered(CR/深刻な危機)

    に分類されています。

    CITESでは、

    ナンベイヨコクビガメ属として附属書IIに掲載されています。

    大きな脅威の一つが、

    捕獲です。

    成体が食用として捕られる。

    卵も採取される。

    2024年に発表された12年間の調査では、調査個体群で雌と幼体の割合が時間とともに減少し、残された雌も小型化する傾向が確認されました。

    研究者たちは、捕獲圧によって大型の成体雌が選択的に失われている可能性を指摘しています。

    雌が減るということ

    これは、

    カメでは特に大きな問題です。

    一匹の大きな雌が、

    毎年何十個もの卵を産む。

    その雌が捕られる。

    すると、

    失われるのは一匹だけではありません。

    その先、

    何年にもわたって産まれるはずだった卵も、

    同時に失われます。

    しかもマグダレナヨコクビガメの世代時間は、

    10〜12年ほど。

    大きな雌を失った個体群が、

    すぐ次の世代で元に戻ることはできません。

    推定16,000〜28,000匹

    Turtle Survival Allianceは現在の野生個体数を、

    約16,000〜28,000匹

    と推定しています。

    数字だけを見ると、

    「まだたくさんいる」

    と思うかもしれません。

    でも、

    個体数傾向は減少。

    そして分布は、

    ほぼコロンビアの限られた河川水系だけです。

    さらに、

    すべての個体が同じではありません。

    2026年の研究では、シヌー川とマグダレナ川などの個体群には明確な遺伝的違いがあり、少なくとも3つの異なる保全管理単位として考える必要があることが示されています。

    つまり、

    別の川にたくさんいるから、

    一つの川の個体群が消えても大丈夫、

    という話ではありません。

    このカメは種を運ぶ

    マグダレナヨコクビガメは、

    主に植物を食べます。

    水生植物。

    陸上植物。

    果実。

    そして、

    食べた果実の種子を別の場所へ運びます。

    2026年の種アカウントでは、本種が種子散布や発芽を助け、河川生態系の栄養循環にも関わっている可能性が指摘されています。

    カメが一匹減る。

    それだけでは、

    川の変化は見えないかもしれません。

    でも、

    何千匹、

    何万匹と減れば、

    植物の種が運ばれる方法まで変わる可能性があります。

    16,000匹を「放した」という数字の意味

    これまでに放された子ガメは、

    16,000匹以上。

    ものすごい数字です。

    でも、

    16,000匹を放せば、

    16,000匹の成体になるわけではありません。

    子ガメは小さい。

    魚。

    鳥。

    その他の捕食者。

    洪水。

    乾燥。

    さまざまな危険があります。

    だから、

    たくさん生まれる。

    たくさん死ぬ。

    その中から、

    ごく一部が成体になる。

    それが、

    カメの自然な生き方です。

    保全活動がしていることは、

    子ガメを永久に安全な場所で飼うことではありません。

    「本来川へ入るはずだった子ガメが、卵の段階で全滅する」という異常を減らしている。

    そう考えるほうが近いと思います。

    2026年の5巣

    だから、

    今回の5巣も重要です。

    普通なら140巣。

    今年は5巣。

    数字だけなら、

    失敗に見えます。

    でも、

    洪水の中で、

    住宅も農地も被害を受けている人たちが、

    それでも砂浜へ行った。

    そして、

    5つを見つけた。

    卵を運んだ。

    孵化させた。

    その子ガメが、

    もうすぐ川へ戻る。

    保全の成果は、

    毎年右肩上がりになるとは限らないんですね。

    自然条件が悪い年もあります。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番注目したいのは、

    「カメを守っている人も、同じ洪水の中にいる」

    というところです。

    外から来た人が、

    カメだけを助けているわけじゃない。

    家が水に浸かる。

    作物が駄目になる。

    道路が通れない。

    自分たちの生活にも、

    大きな問題が起きている。

    それでも、

    川を見る。

    砂浜が出たら、

    カメの巣を探す。

    なぜそこまでやるのか。

    Cotocá Arribaで巣の救出に参加するJuan Negretteさんは、

    このカメを、

    シヌー川と地域を象徴する存在

    として語っています。

    カメを守ることと、

    自分たちの川を守ることが、

    分かれていないんだと思います。

    湯川亀吉の一言

    亀ってかっこいいよね。

    出典

    Turtle Survival Alliance
    「Protecting Magdalena River Turtle Nests as Waters Rise」
    2026年6月29日。洪水、5巣の救出、2013年からの地域保全、1,000巣以上・16,000匹以上の実績について。
    TSAの記事を読む

    WCS Colombia
    「Magdalena river turtle」
    Sinú Turtlesプロジェクト、生態、産卵地の洪水リスク、人工孵化について。
    WCS Colombiaの種紹介を見る

    IUCN/SSC Tortoise and Freshwater Turtle Specialist Group
    「Podocnemis lewyana – Magdalena River Turtle」
    2026年8月17日公開。体格、繁殖、生態、分布、遺伝的構造、保全状況についての最新種アカウント。
    2026年の種アカウントを見る

    Turtle Survival Alliance
    「Magdalena River Turtle」
    推定野生個体数、主要な脅威、現在の保全活動について。
    TSAの種紹介を見る

    Environmental Monitoring and Assessment
    「Lessons learned during a 12-year monitoring project with the endangered Magdalena River turtle」
    2024年8月30日。12年間の調査から、成体雌・幼体の減少と捕獲圧との関係を分析した研究。
    研究論文を読む

  • 【世界の亀ニュース】大西洋を渡るオサガメを守るため、新たな国際連携が始動

    【世界の亀ニュース】大西洋を渡るオサガメを守るため、新たな国際連携が始動

    今回は、大西洋に生きるオサガメを守るために始まった、新しい国際連携に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年6月16日の「世界ウミガメの日」に合わせて、大西洋のオサガメを守るための新しい国際連携が発表されました。

    この取り組みは、Wilkes Atlantic Leatherback Turtle Allianceという名前で、イギリスのエクセター大学が主導し、大西洋周辺25か国の50以上の団体が参加する保全ネットワークとして紹介されています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:大西洋周辺、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年6月16日
    情報の種類:新着ニュース・保護活動・国際連携・研究ニュース

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、オサガメです。

    オサガメは、現生するウミガメの中でも特に巨大な種類として知られています。今回の記事では、オサガメはIUCNレッドリストで世界的には「危急」とされていますが、大西洋内の地域個体群では、北西大西洋が「絶滅危惧」、南西大西洋が「近絶滅」、南東大西洋が「情報不足」とされ、地域ごとの状況把握が急がれていると紹介されています。

    ニュースの要約

    新しく立ち上がったWilkes Atlantic Leatherback Turtle Allianceは、大西洋のオサガメを守るために、広い海をまたいだ調査と保全方針づくりを進めようとしています。

    具体的には、オサガメの産卵状況を更新して評価すること、漁業による混獲の証拠を大西洋全域で整理すること、そしてどの地域や問題に優先的に取り組むべきかを明らかにすることが目的とされています。

    記事では、オサガメが直面する主な脅威として、漁具による混獲、産卵地の劣化、沿岸開発、成体や卵の採取、気候変動、船舶との衝突、海洋汚染などが挙げられています。

    つまり、オサガメを守るには、一つの国や一つの浜辺だけを見ていては足りないということです。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、オサガメという存在のスケールの大きさです。

    オサガメは、ひとつの海岸だけで完結する生き物ではありません。
    産卵地があり、回遊ルートがあり、餌場があり、漁業と重なる場所がある。
    その一生は、国境を軽々と越えていきます。

    だから、守る側も国境を越えなければならない。

    1匹のオサガメを守るということは、海そのものをつなげて考えることなのかもしれません。

    大きな甲羅ではなく、革のような背中を持ち、深い海を渡っていくオサガメ。
    その姿を想像すると、亀というより、海に残された古代の影のようにも見えてきます。

    湯川亀吉の一言

    オサガメはマジでかっこいい。マジで好き。

    一緒に泳いでみたい。

    出典

    元記事:Phys.org / University of Exeter
    「New alliance to protect Atlantic’s leatherback turtles launched on World Sea Turtle Day」

  • 【世界の亀ニュース】6週間で90%の個体が消えた川 16匹から始まったベリンジャーリバータートル復活計画

    【世界の亀ニュース】6週間で90%の個体が消えた川 16匹から始まったベリンジャーリバータートル復活計画

    今回は、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の一本の川だけに生息する希少な淡水ガメを紹介します。

    学名は、

    Myuchelys georgesi。

    英語では、

    Bellinger River Snapping Turtle
    または
    Bellinger River Saw-shelled Turtle

    と呼ばれています。

    日本語で広く定着した標準和名は確認できなかったため、この記事では英名をもとに、

    ベリンジャーリバータートル

    と表記します。

    2015年。

    このカメが暮らす川で、突然カメが死に始めました。

    原因は、それまで科学に知られていなかったウイルス。

    わずか6週間。

    その間に、

    野生個体群のおよそ90%が失われました。

    種そのものが、

    一本の川から消える寸前まで追い込まれました。

    今回のニュース

    今回取り上げるのは、一つの出来事というより、

    2015年から現在まで続いている復活計画そのもの

    です。

    2015年の大量死を受け、ニューサウスウェールズ州政府とTaronga Zooなどは緊急対応を開始。

    病気の影響を受けていない健康なカメを探し、

    16匹を保全繁殖の基礎個体として確保しました。

    そこから繁殖が始まります。

    現在、Taronga Zooでは10回の繁殖シーズンを通じて、

    500匹を超える子ガメが孵化。

    その子孫を使って5回の野生復帰が実施され、

    197匹の若いカメがベリンジャー川へ戻された

    と報告されています。

    16匹。

    そこから、

    500匹以上。

    そして、

    再び川へ。

    でも、

    この物語はまだ終わっていません。

    どこの国・地域の話か

    国:オーストラリア
    州:ニューサウスウェールズ州
    地域:ニューサウスウェールズ州北部
    河川:Bellinger River(ベリンジャー川)
    対象種:Myuchelys georgesi
    英名:Bellinger River Snapping Turtle / Bellinger River Saw-shelled Turtle
    情報の種類:淡水ガメ・感染症・飼育下繁殖・野生復帰・河川保全

    このカメの大きな特徴は、

    世界中を探しても、ほぼこの川にしかいない

    ということです。

    オーストラリア政府によると、生息域はニューサウスウェールズ州北部のベリンジャー川流域に限られています。

    つまり、

    この一本の川で何か起きれば、

    世界中の個体群が同時に危険になります。

    登場する亀

    ベリンジャーリバータートルは、

    ヘビクビガメ科に属する短い首の淡水ガメです。

    成体の背甲は楕円形で暗褐色。

    雌は甲長約25cm、

    雄は約18cmまで成長します。

    顎から首にかけて淡い黄色の線が入る個体が多く、

    顎の下には、

    2本の小さな肉質突起=バーベル

    を持つ個体もいます。

    岩のある澄んだ川を好む

    このカメは、

    泥の多い沼を主な生活場所にするタイプではありません。

    好むのは、

    流れのある透明な川。

    特に、

    深さのある淵。

    岩。

    礫。

    小石。

    そうしたものが川底にある場所を利用します。

    オーストラリア政府は、2mを超える深い淵で確認されることも多いとしています。

    水底では、

    水生昆虫などの大型無脊椎動物。

    植物。

    果実。

    などを食べる雑食性です。

    2015年2月、川で異変が起きた

    2015年2月。

    ベリンジャー川の岸で、

    カメが次々と見つかるようになります。

    しかし、

    普通ではありませんでした。

    病気になっている。

    衰弱している。

    そして、

    死んでいく。

    当初、

    原因は分かりませんでした。

    水質汚染なのか。

    毒物なのか。

    細菌なのか。

    未知の感染症なのか。

    調査が始まります。

    そして後に、この大量死と強く関連すると考えられる新しいウイルスが特定されました。

    現在、

    Bellinger River Virus

    と呼ばれています。

    6週間

    数字だけ見ると、

    この事件の異常さが分かります。

    大量死が起こる前、

    野生個体群はおよそ4,000匹だったと推定されています。

    ところが、

    わずか6週間で約90%が死亡。

    2015年末には、

    推定約400匹。

    さらに2019年頃には、

    約150匹まで減少した可能性があります。

    数千匹いたカメが、

    一つの季節の中で、

    ほとんどいなくなりました。

    カメの「パンデミック」

    Taronga Zooは、この出来事を紹介する際、

    Turtle pandemic

    という表現を使っています。

    まさに、

    カメだけのパンデミックです。

    しかも、

    このカメには逃げ場がありません。

    広いオーストラリア大陸のあちこちに生息しているなら、

    一つの川で病気が起きても、

    別の地域の個体群が残る可能性があります。

    でも、

    ベリンジャーリバータートルは違う。

    ほぼ一本の川だけ。

    病気がその川を進めば、

    種そのものを巻き込む可能性がある。

    そこで16匹を川から出した

    大量死が続く中、

    保全チームは一つの決断をします。

    健康なカメを、

    川から避難させる。

    16匹。

    この個体たちが、

    将来の保全繁殖の基礎になりました。

    これは、

    ある意味では非常に怖い選択だったと思います。

    野生動物を自然から取り上げる。

    でも、

    そのまま川に置いておけば、

    ウイルスに感染して死ぬ可能性もある。

    捕まえるリスクと、

    残すリスク。

    その中で、

    種全体を失わないために、

    人間の管理下へ移しました。

    「保険」としての16匹

    この16匹は、

    ただ救助されたカメではありません。

    もし川の個体群が完全に消えてしまっても、

    種そのものを残すための、

    insurance population=保険個体群

    です。

    つまり、

    世界からこのカメがいなくなるかもしれない状況で、

    最後のバックアップを作ったことになります。

    Taronga Zooで繁殖計画が始まり、

    2017年にはSymbio Wildlife Parkにも第二の繁殖個体群が作られました。

    一か所だけではない。

    もし一つの施設で事故や感染症が起きても、

    別の場所に個体群を残す。

    ここにも、

    「種を失わないための保険」

    という考え方があります。

    そして卵を産んだ

    保全施設へ移されたカメたちは、

    繁殖を始めました。

    最初の繁殖成功時には、

    複数の雌が卵を産み、

    小さな子ガメが孵化しました。

    孵化直後の体重は、

    わずか4〜5グラム程度。

    ほぼコインほどの大きさです。

    2018年には、

    その年だけで31匹が孵化。

    前年の22匹と合わせ、

    飼育下個体群が急速に増え始めました。

    現在までに500匹以上が孵化

    そして現在。

    Taronga Zooの保全プログラムでは、

    10回連続の繁殖シーズンで、500匹以上が孵化しました。

    2015年。

    16匹を保護する。

    そこから、

    卵。

    子ガメ。

    また卵。

    また子ガメ。

    何世代もつなぐ。

    一度、

    数百匹規模まで落ちた種を、

    もう一度増やそうとしています。

    でも飼育施設で増やすだけでは意味がない

    この「世界の亀ニュース」で何度も出てくる話だけど、

    ここでも同じです。

    動物園で500匹生まれた。

    それは、

    ものすごい成果です。

    でも、

    ベリンジャーリバータートルは、

    動物園のカメではありません。

    ベリンジャー川のカメです。

    だから、

    最終的には川へ戻さなければなりません。

    2018年、最初の10匹

    最初の試験的な野生復帰は、

    2018年。

    飼育下で生まれ育った若いカメ10匹が、

    ベリンジャー川へ放されました。

    初期の追跡では、

    10匹のうち8匹が生存確認され、

    もう1匹も生きている可能性が高いとされました。

    つまり、

    動物園で生まれたカメでも、川で生活できた。

    この結果が、

    次の放流につながります。

    97匹を一度に川へ

    そして2024年。

    それまでで最大規模となる放流が実施されます。

    数は、

    97匹。

    飼育施設で育てられた若いベリンジャーリバータートルが、

    一度に川へ戻りました。

    この放流によって、

    2018年以降に野生へ戻された数は、

    当時合計179匹になりました。

    その後もプログラムは続き、

    Taronga Zooの現在の情報では、

    197匹が川へ戻された

    とされています。

    放したカメを追いかける

    カメを川へ入れる。

    写真を撮る。

    拍手する。

    それで終わりではありません。

    放流された個体は、

    その後も追跡されます。

    生きているか。

    どこへ移動したか。

    どんな水深を使うか。

    病気になっていないか。

    どんな場所に定着するか。

    そうした情報を集めます。

    野生復帰で本当に知りたいのは、

    「放せたか」ではなく、「放したあと生きられたか」

    だからです。

    そして最大の問題は、まだ川にウイルスがいるかもしれないこと

    ここが、

    この保全プロジェクトの難しいところです。

    原因となったウイルスに対して、

    現在も確立した治療法はありません。

    さらに、

    ウイルスがどのように伝播するのか。

    どこに残っているのか。

    再び大規模な流行が起こる可能性はあるのか。

    完全には解明されていません。

    つまり、

    カメを増やして、

    元の川へ戻す。

    でも、

    その川こそが、かつて大量死が起きた場所。

    そこへ戻さなければ、

    野生復帰にはならない。

    でも、

    戻せば病気に遭遇する可能性がある。

    非常に難しい問題です。

    ワクチンまで研究対象になっている

    オーストラリア政府が挙げている将来の重要な保全策の一つには、

    ニドウイルスに対するワクチン開発

    まで含まれています。

    亀の保全というと、

    巣を守る。

    密猟を防ぐ。

    森を残す。

    そんな活動を想像します。

    でも、

    このカメの場合は、

    ウイルス学。

    獣医学。

    免疫。

    ワクチン。

    そうした分野まで必要になります。

    川そのものを監視する

    さらに、

    病気だけ調べればいいわけではありません。

    水質。

    水生昆虫。

    川岸の植物。

    外来種。

    流域の土地利用。

    全部が、

    カメの生活につながります。

    現在もベリンジャー川では水質調査や大型無脊椎動物の調査が続き、2024〜2025年には病気の監視のため30匹以上のカメが健康診断を受けています。

    河岸では、

    17ヘクタール以上の外来植物除去。

    家畜が川岸へ入り込むのを防ぐ約700mのフェンス設置。

    なども進められています。

    カメを守るというより、

    カメが生きている川全体を診察している

    ようなプロジェクトです。

    卵にも敵がいる

    さらに野生へ戻ったあとには、

    感染症以外の危険もあります。

    雌は晩春になると川岸へ上がり、

    砂や礫のある場所へ、

    10〜15個程度の卵を産みます。

    ところが、

    その卵は、

    キツネ。

    オオトカゲ類。

    などに捕食されます。

    そのため、

    重要な産卵地を守ることも、

    現在の保全計画に含まれています。

    一つ問題を解決すると、

    次の問題が出てきます。

    病気から救う。

    繁殖させる。

    川へ戻す。

    卵を守る。

    川を守る。

    亀一種を守るために、一本の川を見る

    僕は、

    このニュースの面白いところはここだと思います。

    最初は、

    「カメが死んでいる」

    という事件でした。

    だから、

    カメを調べる。

    でも、

    だんだん範囲が広がる。

    ウイルスを調べる。

    水を調べる。

    川底を調べる。

    植物を見る。

    外来種を見る。

    農地を見る。

    人間の暮らしを見る。

    最後には、

    一本の川そのものを理解しなければ、カメを守れない

    というところまで行きます。

    小さなカメ一種から、

    川全体が見えてきます。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番注目したいのは、

    16匹という数字です。

    500匹以上生まれた。

    197匹戻った。

    97匹を一度に放した。

    どれも大きな数字です。

    でも、

    そのすべての始まりは、

    16匹だった。

    ウイルスが川を進んでいる。

    カメが次々死ぬ。

    残っている健康な個体を探す。

    見つける。

    捕まえる。

    隔離する。

    その16匹が、

    今の個体群の未来につながっている。

    もし、

    「あまりにも少ないから意味がない」

    と諦めていたら、

    現在の500匹は存在していなかったかもしれません。

    16匹でも、

    始める。

    僕は、

    そこが一番すごいと思います。

    湯川亀吉の一言

    この亀初めてみた!!

    かっこいいなぁ!!

    出典

    Taronga Conservation Society Australia
    「Bellinger River Turtle」
    現在の繁殖状況、生態、500匹以上の孵化、197匹の野生復帰について。
    Taronga Zoo「Bellinger River Turtle」

    Australian Government – Department of Climate Change, Energy, the Environment and Water
    「Bellinger River snapping turtle」
    分布、形態、2015年の大量死、個体数推定、脅威、現在の保全策について。2026年5月26日更新。
    オーストラリア政府の種情報

    NSW Government / Saving our Species
    「From crisis to conservation: almost 100 Bellinger River snapping turtles in largest release yet」
    2024年4月8日。97匹の放流と2015年以降の回復計画について。
    NSW Governmentの記事

    Taronga Conservation Society Australia
    「From crisis to conservation: almost 100 Bellinger River snapping turtles in largest release yet」
    2024年4月5日。
    Taronga Zooの記事

    NSW Government – North Coast Local Land Services
    「Bellinger River snapping turtle conservation」
    2024〜2025年の水質調査、疾病監視、河岸環境の回復活動について。
    現在の河川保全プロジェクト

  • 【世界の亀ニュース】18,000個超の卵を救う ガイアナの先住民が川岸で守る淡水ガメの未来

    【世界の亀ニュース】18,000個超の卵を救う ガイアナの先住民が川岸で守る淡水ガメの未来

    今回は、南米ガイアナのルプヌニ地方で、地域住民が中心となって淡水ガメの産卵地を守り、1万8,000個を超える卵を孵化させた保護活動を紹介します。

    今回のニュース

    ガイアナ南部のルプヌニ地方で、2021年から2025年までの間に、18,000個を超える淡水ガメの卵が保護され、孵化しました。

    活動には、Sustainable Wildlife Management Programme、South Rupununi Conservation Society、Caiman House、そして地域の先住民コミュニティが参加しています。保全活動全体では26の先住民コミュニティと連携し、カメの現地活動では123人のレンジャーが関わり、5つの地域コミュニティで131か所の砂浜を見守ってきました。

    成果は2026年5月、Sustainable Use of Wild Species Transformative Partnership Platformによって紹介されました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ガイアナ共和国
    地域:ルプヌニ地方
    対象環境:河川、湿地、砂浜、氾濫原
    活動期間:2021〜2025年
    発表時期:2026年5月
    情報の種類:淡水ガメ・産卵地保全・孵化・地域保全・先住民コミュニティ

    ルプヌニはガイアナ南西部に位置し、森林、サバンナ、河川、湿地が入り組む地域です。地域では魚や野生動物が食文化や生活と深く結びついており、保全と持続可能な利用を同時に考える取り組みが進められています。

    登場する亀

    ルプヌニ地方では、6種類の淡水ガメが確認されています。

    その中でも今回の保全活動で特に重要なのが、モンキヨコクビガメとオオヨコクビガメです。研究では、ルプヌニにはモンキヨコクビガメ(Podocnemis unifilis)、オオヨコクビガメ(Podocnemis expansa)のほか、Rhinoclemmys punctularia、マタマタ、Platemys platycephala、Mesoclemmys gibbaが生息すると報告されています。

    モンキヨコクビガメ

    学名は Podocnemis unifilis。

    英語ではYellow-spotted River Turtleと呼ばれます。

    日本の環境省も「モンキヨコクビガメ」という和名を使用しており、南米のアマゾン川・オリノコ川流域などに広く分布する一方、生息地の減少や卵・成体の過剰利用によって多くの地域で個体数が減少しているとしています。

    幼体では頭部に黄色い斑紋があり、これがこのカメを見分ける大きな特徴です。成長すると模様は薄くなりますが、雄では残る場合があります。

    オオヨコクビガメ

    学名は Podocnemis expansa。

    南米最大級の淡水ガメで、アマゾン川、オリノコ川、エセキボ川などの大河川流域に生息します。大型の雌では甲長60センチを大きく超えることがあります。

    今回の活動地域であるガイアナも、本種の自然分布域に含まれています。

    ニュースの要約

    ルプヌニ地方では、淡水ガメの個体群が、卵や成体の過剰利用、ペット取引、洪水などによって減少してきました。

    そこで地域住民が河川の砂浜を巡回し、産卵された巣を確認。

    浸水や捕食などの危険が高い場合には卵を安全な場所へ移し、孵化するまで保護します。孵化した子ガメは、その後ふたたび自然の河川へ戻されます。

    2021年から2025年までの活動で、保護・孵化された卵は1万8,000個を超えました。

    131か所の砂浜を見守る

    この活動で印象的なのは、一つの巨大な保護施設でカメを増やしているわけではないことです。

    保全の現場は、カメが実際に卵を産む川岸です。

    活動では123人のレンジャーが参加し、5つの地域コミュニティにまたがる131か所の砂浜が対象になりました。

    川岸を歩く。

    足跡を探す。

    巣を見つける。

    水位を見る。

    卵が安全な場所にあるか判断する。

    必要な場合だけ、人間が手を加える。

    広い河川を守るには、毎年その川を見て暮らしている地域住民の存在が欠かせません。

    カメの繁殖は「川の水位」とつながっている

    モンキヨコクビガメの繁殖は、川の水位変化と強く結びついています。

    雌は水位が下がり始める乾季に産卵場所へ移動し、砂浜などに卵を産みます。

    つまり、人間から見ればただの川岸でも、カメにとっては期間限定の産卵場所です。

    雨季には水の下にある。

    乾季になると砂浜が現れる。

    そこへ母ガメが上がる。

    そして卵を残す。

    ところが、予想より早く水位が上昇すれば、砂の中の卵は水没します。

    そのため、レンジャーたちは卵だけを見るのではなく、川そのものの変化を観察する必要があります。

    卵を動かすべきか、動かさないべきか

    すべての卵を回収して人工的に孵化させるわけではありません。

    2025年にまとめられた「Rupununi Freshwater Turtle Management Plan」では、現地で巣をそのまま守る方法、危険な巣の移動、ヘッドスタート、研究、環境教育、住民への啓発、地域ルールの整備など、複数の方法を組み合わせる方針が示されています。

    重要なのは、

    「人間が全部育てればいい」

    という考え方ではありません。

    安全な巣は、そのまま自然に任せる。

    洪水や捕食の危険が高い巣だけを助ける。

    カメが本来自分たちで繁殖できる状態を残しながら、人間が必要な場所だけ補助する考え方です。

    カメは食料でもある

    ルプヌニ地方での保護が難しい理由の一つに、淡水ガメが地域の食文化や生活と深く関係していることがあります。

    特にモンキヨコクビガメは、南米の多くの地域で長く食料として利用されてきました。

    2025年に発表された研究では、ルプヌニにおいてカメと卵の利用実態を調べながら、地域社会による保全と伝統的利用をどう両立させるかが検討されています。

    「食べる人間」と「守る人間」を単純に分けることはできません。

    同じ地域の人が、昔からカメを利用してきた一方で、今は巣を守るレンジャーにもなっています。

    保護と利用を一緒に考える

    このプロジェクトの目的は、地域住民から野生動物の利用を完全に切り離すことではありません。

    SWM Programmeは、野生動物の個体群と生態系を維持しながら、先住民や農村地域の食料、文化、生活も守ることを目的としています。ガイアナでは、39の先住民コミュニティ、約2万4,000人の生活を含む地域管理の仕組みづくりが進められています。

    カメを守るために人を森や川から追い出すのではない。

    その土地で暮らしてきた人たち自身が、

    「どれだけ利用できるのか」

    「どこは守るべきなのか」

    を考える。

    このニュースの大きな特徴は、そこにあります。

    子どもたちにもカメを伝える

    この活動では、卵や子ガメを守るだけでなく、環境教育も行われています。

    子どもや若者たちに淡水ガメの生態や保全について伝え、次の世代が地域のカメを知る機会を作っています。

    2025年に作られた管理計画でも、環境教育と意識の変化は、巣の保護や研究と並ぶ重要な柱として位置づけられています。

    卵を一つ守れば、その年の子ガメを救えるかもしれない。

    でも、人の考え方が次の世代へ伝われば、その先の何十年も川を守れる可能性があります。

    18,000という数字の向こう側

    18,000個。

    数字だけを見ると、とても大きな成果です。

    でも、実際の保全活動では、一度に18,000個の卵を守ったわけではありません。

    一つの砂浜で、一つの巣を見つける。

    別の日に、また別の巣を見つける。

    水位を確認する。

    孵化を待つ。

    子ガメを川へ戻す。

    それを何年も続けた結果が、18,000という数字になりました。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで注目したいのは、人間がカメを「増やしている」のではなく、カメが自分で増えられる時間を守っていることです。

    卵を産んだのは母ガメです。

    砂の中で育ったのも卵自身です。

    殻を破ったのも子ガメです。

    川へ泳いでいくのもカメです。

    人間がやったことは、

    洪水が来そうなら卵を移す。

    巣を荒らされそうなら見守る。

    子ガメが生まれるまで時間を作る。

    それだけです。

    でも、自然の中では、その「それだけ」がなければ消えてしまう命がたくさんあります。

    湯川亀吉の一言

    南米の亀も買えるうちに買っておこう。

    出典

    Sustainable Use of Wild Species Transformative Partnership Platform
    「Over 18,000 freshwater turtle eggs hatched in Guyana」

    Sustainable Wildlife Management Programme / CIFOR-ICRAF
    「SWM Programme – Guyana」

    Frontiers in Ecology and Evolution
    「Balancing conservation and traditional use of yellow-spotted river turtle Podocnemis unifilis in Southern Rupununi, Guyana」

    環境省
    「モンキヨコクビガメ Podocnemis unifilis」

  • 【世界の亀ニュース】かつて狩った森で守る側へ インドの若者たちがエミスムツアシガメを追跡

    【世界の亀ニュース】かつて狩った森で守る側へ インドの若者たちがエミスムツアシガメを追跡

    今回は、インド北東部のナガランド州で進められている、エミスムツアシガメの繁殖と野生復帰について紹介します。

    今回のニュース

    インド北東部のナガランド州では、絶滅の危機にあるエミスムツアシガメを地域の森へ戻し、住民自身がその後の暮らしを見守る保護活動が進められています。

    2025年8月には、ナガランド動物園で繁殖・育成された10匹が、ペレン県のゼリアン・コミュニティ保護区へ移されました。

    放されたカメを追跡しているのは、外部から派遣された研究者だけではありません。地域で暮らす若者たちが「Tortoise Guardian=リクガメの守り手」となり、森を歩いてカメの痕跡を探しています。活動の様子は2026年5月に海外メディアで紹介されました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:インド共和国、ナガランド州
    主な場所:ペレン県、ゼリアン・コミュニティ保護区
    繁殖施設:ナガランド動物園
    野生復帰:2025年8月
    記事公開:2026年5月
    情報の種類:リクガメ・飼育下繁殖・野生復帰・地域保全

    ナガランド州では、森林の多くが行政ではなく、村や部族などの地域社会によって所有・管理されています。そのため、リクガメを野生へ戻した後も守り続けるには、地域住民の協力が欠かせません。

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、エミスムツアシガメです。

    学名は Manouria emys。日本動物園水族館協会では「ムツアシガメ」という和名も使われています。

    今回ナガランド州で保護されているのは、主に北方の亜種 Manouria emys phayreiとみられ、ビルマムツアシガメと呼ばれることもあります。

    英語ではAsian Giant TortoiseやAsian Forest Tortoiseと呼ばれます。

    アジア大陸に生息する最大級のリクガメで、熱帯・亜熱帯の湿潤な常緑樹林を利用します。暗褐色から黒褐色の甲羅と、大きく頑丈な体が特徴です。

    ニュースの要約

    ナガランド動物園の繁殖計画は、13匹のエミスムツツアシガメから始まりました。

    内訳は雄6匹、雌7匹です。

    市場で食用として販売される前に保護された個体や、住民の家で飼育されていた個体が繁殖計画に加わりました。

    その後、地域住民が自宅で飼っていたカメを自発的に提供するようになり、13匹の親から合計114匹の子どもが誕生したと報告されています。

    これまでに100匹を超える個体が、ナガランド州内の地域管理型保護区へ移されました。

    単に森へ放すだけではなく、若者たちが森へ入り、食べられた植物、地面に残った足跡、休息した場所などを探しながら、放逐後の状態を確認しています。

    いきなり森へ放さない「ソフトリリース」

    2025年8月に移された10匹は、すぐに広い森へ解放されたわけではありません。

    まず保護区内に設置された囲いで一定期間を過ごし、気温、湿度、植物、地面など、現地の環境へ段階的に慣らされました。

    この方法は「ソフトリリース」と呼ばれます。

    飼育施設から突然野生へ移すのではなく、実際に暮らす森の中で新しい環境へ慣れる時間を作ります。

    エミスムツアシガメが暮らす森では、湿った土、落ち葉、低木、日陰などが重要です。

    野生復帰では、カメを放すことだけでなく、そのカメが隠れ、食べ、休める森を残す必要があります。

    「Tortoise Guardian」と呼ばれる若者たち

    地域で追跡を担当する若者たちは、「Tortoise Guardian」と書かれたシャツを着て、毎朝森へ入ります。

    カメそのものが見つからなくても、食べられた葉や、体の重みで沈んだ地面を確認することで、その個体がどこで活動していたのかを推測します。

    住民が一匹ずつに近い距離で関わることで、放されたカメは、単なる行政上の個体番号ではなくなります。

    今日は姿を確認できたのか。

    餌を食べているのか。

    森の奥へ移動したのか。

    放した後の生活まで地域の人が気にかけることが、この計画の大きな特徴です。

    かつて捕獲していた地域が、保護の中心になった

    エミスムツアシガメは、肉を目的とした捕獲、ペット取引、生息地の破壊などによって減少してきました。

    Turtle Survival Allianceによると、野生個体群は減少を続け、過去の個体数から80%以上減ったと推定されています。

    ナガランド州でも、かつては森で見つけたカメを食用として捕獲することがありました。

    しかし、保護活動が始まると、一部の住民は飼っていたカメを繁殖計画へ提供し、若者たちは野生復帰個体を守る活動へ参加するようになりました。

    かつてカメを利用していた地域社会を、保護活動から排除するのではありません。

    その土地とカメを最もよく知る人たちが、今度は保護の中心へ入っています。

    落ち葉の山を作って産卵するリクガメ

    エミスムツアシガメには、ほかの多くのリクガメとは異なる産卵方法があります。

    雌は地面へ卵を埋めるだけではなく、落ち葉や植物を集めて大きな塚を作り、その中へ卵を産みます。

    報道では、落ち葉の塚が高さ約60センチから2メートル以上になることもあると紹介されています。

    雌は前肢と後肢を使って植物を集め、塚を整えます。

    森の落ち葉が積もり、湿度と温度が保たれる環境そのものが、卵を育てる孵卵器の役割を果たします。

    このリクガメを守るには、成体だけでなく、落ち葉が積もる豊かな林床まで守らなければなりません。

    動物園と森をつなぐ繁殖計画

    ナガランド動物園は、地域に生息する絶滅危惧種の飼育下繁殖を担う施設です。

    繁殖施設で個体数を増やし、野生へ戻せる年齢まで育てたうえで、森林局や保全団体、地域住民と協力して放逐しています。

    飼育下繁殖だけでは、野生個体群を回復させることはできません。

    一方、森だけを残しても、そこへ戻す個体がいなければ、失われた個体群は戻りません。

    動物園で命をつなぐこと。

    野生で暮らせる森を残すこと。

    放した後を地域の人が見守ること。

    三つの働きがつながることで、野生復帰が成立します。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、カメを見つけることより、カメが見えない日にも森へ入ることです。

    リクガメは毎日、人間の前へ姿を現すわけではありません。

    落ち葉の下で休んでいるかもしれない。

    低木の奥で餌を食べているかもしれない。

    雨を避けて、動かずにいるかもしれない。

    保護活動では、カメが見つかった瞬間の写真が注目されます。

    でも、その一匹が野生で生き続けるためには、何も見つからない日も森を歩く人が必要です。

    食べられた葉を見る。

    地面のへこみを見る。

    今日もどこかで生きている可能性を探す。

    地域の若者たちは、カメを飼育しているのではありません。

    カメが人間の手を離れて生きていることを、静かに確認しているのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    エミスムツアシガメかっこいいよね!!

    出典

    Good News Network
    「Passionate ‘Tortoise Guardians’ Help Critically-Endangered Giant Tortoise Slowly Return to India」

    Turtle Survival Alliance
    「Asian Giant Tortoise」

    Nagaland Department of Forest
    「Nagaland Zoological Park」

    Responsible Herpetoculture Foundation
    「Largest Asian Tortoise Species Reintroduced Into Nagaland Reserve」

  • 【世界の亀ニュース】ガンジススッポンを衛星で追う インド初の個体がブラマプトラ川へ帰還

    【世界の亀ニュース】ガンジススッポンを衛星で追う インド初の個体がブラマプトラ川へ帰還

    今回は、インド北東部のカジランガ国立公園で、絶滅危惧種のガンジススッポンに衛星発信器を装着し、その行動を追跡する取り組みが始まったニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年5月15日、インド・アッサム州のカジランガ国立公園・トラ保護区で、衛星発信器を装着したガンジススッポン1匹が野生へ戻されました。

    ガンジススッポンを衛星追跡する試みとしては、インド初と報じられています。

    健康な成体を捕獲し、獣医師の監督のもとで発信器を取り付けた後、ブラマプトラ川北岸の本来の生息環境へ放しました。今後は衛星から位置情報を取得し、このカメが季節ごとにどこへ移動するのか、どれほどの範囲を利用するのか、どこを繁殖や産卵に使うのかを調べます。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:インド共和国、アッサム州
    場所:カジランガ国立公園・トラ保護区、ブラマプトラ川流域
    放流日:2026年5月15日
    元記事の言語:英語
    情報の種類:淡水ガメ・スッポン・衛星追跡・研究・保護活動

    この調査は、インド環境・森林・気候変動省の取り組みとして、Wildlife Institute of India、カジランガ国立公園、アッサム州森林局が協力して実施し、National Geographic Societyが資金面で支援しています。

    登場する亀

    今回の主役は、ガンジススッポンです。

    学名は Nilssonia gangetica。

    日本では「ガンジススッポン」または「インドスッポン」という名称が使われています。経済産業省のワシントン条約関連資料でも、Nilssonia gangeticaに対して「ガンジススッポン(インドスッポン)」という和名が記載されています。

    英語ではGanges Softshell TurtleやIndian Softshell Turtleと呼ばれます。

    一般的なカメのような硬い甲板に覆われた甲羅ではなく、平たく柔らかな甲羅を持つスッポンの仲間です。

    頭部には特徴的な模様があり、報道では頭頂部に見られる矢じりのような模様が、ほかの河川性のスッポンと見分ける特徴の一つとして紹介されています。

    ニュースの要約

    衛星発信器を取り付けられたガンジススッポンは、カジランガ周辺のブラマプトラ川へ戻されました。

    研究チームが特に知りたいのは、

    季節によってどこへ移動するのか。

    一匹がどのくらい広い範囲を利用するのか。

    どの場所で餌を探すのか。

    どこで繁殖するのか。

    そして、どこに重要な産卵場所があるのか。

    ということです。

    Wildlife Institute of Indiaの研究者Abhijit Das氏は、季節的な移動、行動圏、繁殖・産卵に重要な場所を把握することが、ブラマプトラ川流域のスッポン保全に役立つと説明しています。

    川にカメがいることと、カメが川のどこを使っているかは違う

    ガンジススッポンがブラマプトラ川に生息していること自体は、以前から知られています。

    しかし、「いる」という情報だけでは、川のどの部分を守ればよいのかまでは分かりません。

    例えば、一年のほとんどを深い水域で過ごしていても、繁殖期だけ特定の浅瀬へ移動する可能性があります。

    普段は広い川を利用しながら、産卵するときだけ特定の砂州へ上がるかもしれません。

    雨季の増水に合わせて、支流や湿地へ移動する可能性もあります。

    重要な場所が一年中同じとは限りません。

    衛星追跡を行うことで、これまで人間が水面から見ているだけでは分からなかった「一匹のカメが使っている川の地図」が少しずつ見えてきます。

    ブラマプトラ川という巨大な世界

    ブラマプトラ川は、ヒマラヤからインド北東部を通り、バングラデシュ方面へ流れる巨大な河川です。

    カジランガ周辺では、本流だけでなく、砂州、支流、湿地、氾濫原などが複雑につながっています。

    川は毎年同じ形をしているわけではありません。

    増水すれば水域が広がる。

    水が引けば砂州が現れる。

    流路そのものが変わることもあります。

    ガンジススッポンは、そんな動き続ける環境の中で暮らしています。

    研究者が知ろうとしているのは、単に「カメが何メートル移動したか」ではありません。

    変化し続ける川の中で、カメがどの場所を選びながら生きているのかということなのだと思います。

    アッサム州は淡水ガメの重要地域

    アッサム州は、アジアでも淡水ガメの多様性が高い地域の一つです。

    報道によると、州内では21種類のカメが確認されており、インドに生息する8種類のスッポン類のうち、5種類がカジランガで確認されています。

    サイやトラで有名なカジランガですが、その保護区を流れる水の中には、多くのカメやスッポンも暮らしています。

    しかし、大型哺乳類と比べると、水中で暮らすカメは姿を確認することさえ難しい。

    だからこそ、一匹に発信器を付けて追跡することには大きな意味があります。

    ガンジススッポンは川の掃除屋でもある

    ガンジススッポンは、魚類や水生動物などを食べる捕食者である一方、死んだ動物や腐敗した有機物も利用します。

    そのため、河川の食物網の中で捕食者として働くだけでなく、死骸を処理する存在としても重要な役割を持っています。

    大きなスッポンが一匹減ることは、単にカメが一匹いなくなることではありません。

    長い時間をかけて川の中で担ってきた役割も、一緒に失われます。

    広く分布していても安全とは限らない

    ガンジススッポンは、インドの複数の大河川や湖、貯水池などに分布しています。

    しかし、分布範囲が広いからといって安全な種というわけではありません。

    現在、絶滅の危険がある種として扱われており、インドではWildlife Protection ActのSchedule Iに掲載され、厳重な保護対象となっています。

    河川環境の変化、水質汚染、捕獲、砂州の消失など、淡水ガメが直面する問題は一つではありません。

    そして、対策を行うためにはまず、

    「どこを守るべきなのか」

    を知らなければなりません。

    今回の衛星追跡は、その問いへ答えるための調査です。

    一匹の背中から送られてくる位置情報

    今回の計画で興味深いのは、調査対象がまず一匹のカメだということです。

    巨大なブラマプトラ川に、一匹のガンジススッポンがいる。

    その背中に、小さな発信器が付いている。

    カメが動けば、点が動く。

    昨日いた場所から今日の場所へ。

    乾季から雨季へ。

    川の本流から、別の水域へ。

    一つひとつはただの座標です。

    でも、それを何か月、何年と重ねていけば、そのカメが必要としている川の形が見えてくるかもしれません。

    衛星追跡は「監視」ではない

    発信器を取り付けるというと、人間がカメをずっと監視しているようにも感じます。

    しかし、この研究の目的はカメの行動を管理することではありません。

    むしろ逆です。

    人間には分からない場所へ自由に泳いでいくカメを、そのまま泳がせる。

    人間は遠くから位置情報を受け取り、

    「この場所を使っていたのか」

    と後から知る。

    カメの行動に合わせて、人間の保護計画の方を変えていくための技術です。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、一匹のカメに川のことを教えてもらう研究だということです。

    人間が地図を広げて、

    「ここが重要な場所だろう」

    と決めるのではありません。

    まずカメを川へ戻す。

    そして待つ。

    どこへ泳ぐのかを見る。

    どこで止まるのかを見る。

    どの季節に移動するのかを見る。

    カメ自身が、自分に必要な場所を移動によって示していく。

    研究者は、その後ろから地図を描いていきます。

    この順番が、とても面白いと思います。

    湯川亀吉の一言

    とてもいいですね!

    まず事実を確かめること・把握することはとても大きな意味があると思います。

    自分の妄想や思い込みだけで行動するような豚野郎にはなりたくないもんだぜ。

    出典

    The New Indian Express
    「India’s first satellite-tagged Ganges softshell turtle released in Kaziranga」

    The Sentinel Assam
    「First-ever satellite tagging of Ganges softshell turtle in Kaziranga National Park」

    The Times of India
    「Satellite-tagged Ganges softshell turtle released in Kaziranga」

    経済産業省
    「ワシントン条約附属書掲載種・動物」

  • 世界の亀ニュース】メコン川で257匹のカントールマルスッポンが孵化 14巣を守る保全活動

    世界の亀ニュース】メコン川で257匹のカントールマルスッポンが孵化 14巣を守る保全活動

    今回は、カンボジアを流れるメコン川で、絶滅の危機にある大型のスッポン「カントールマルスッポン」の子ども257匹が孵化したニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年、カンボジアのメコン川沿いで、カントールマルスッポンの巣が14か所確認されました。

    5月24日時点で、そのうち12巣から合計257匹の子ガメが孵化しています。

    さらに残る2巣についても、保全チームが引き続き監視を続けています。カンボジア農林水産省傘下の水産当局とWildlife Conservation Society(WCS)Cambodia、地域住民らが協力して巣を守ってきました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:カンボジア
    場所:メコン川流域
    発表日:2026年5月24日
    情報の種類:淡水ガメ・スッポン・繁殖・孵化・産卵地保全

    カンボジアのメコン川では、地域住民と保全チームが産卵期に砂州や河岸を巡回し、カントールマルスッポンの巣を探して保護する活動を続けています。

    登場する亀

    今回の主役は、カントールマルスッポンです。

    学名は Pelochelys cantorii。

    日本では「マルスッポン」と呼ばれることもあります。英語ではCantor’s Giant Softshell Turtle、Asian Giant Softshell Turtleなどと呼ばれます。

    スッポン科の中でも非常に大型になる種類で、専門家による種解説では甲長60〜100センチほどに達するとされています。

    硬い甲板に覆われた一般的なカメとは違い、平たく柔らかな甲羅を持ち、魚類、甲殻類、貝類などの水生生物を食べます。

    ニュースの要約

    2026年に保全チームが確認した巣は14か所。

    そのうち12巣から257匹が孵化しました。

    興味深いのは、その後の扱いです。

    257匹すべてを同じ方法で管理したわけではありません。

    43匹は、孵化したあと自分の力でメコン川へ入りました。

    残る214匹は慎重に回収され、ココン爬虫類保全センターへ運ばれました。一定期間安全な環境で育てたあと、将来的に野生へ戻す予定です。

    自然に任せる個体と、人間が一時的に保護する個体。

    二つの方法を組み合わせながら、この種の生存率を高めようとしています。

    川岸の砂の中で生まれる巨大スッポン

    成体のカントールマルスッポンは巨大になります。

    しかし、生まれたときは当然、小さな子ガメです。

    母ガメは河岸や砂州に穴を掘り、そこへ卵を産みます。専門家の種解説では、一度に24〜70個程度の卵を産むとされています。

    卵を産んだあと、母ガメは川へ戻ります。

    そこから先、卵は砂の中で育ちます。

    雨。

    川の増水。

    捕食動物。

    人間による卵の採取。

    孵化するまでには、さまざまな危険があります。

    だから保全チームは、成体のスッポンだけを探すのではなく、川岸そのものを見守っています。

    43匹は自分で川へ入った

    今回のニュースで特に印象的なのが、43匹の子ガメです。

    この43匹は孵化後、人間に運ばれることなく、自分自身でメコン川へ入りました。

    砂の中から地上へ出る。

    川の方向へ進む。

    そして水へ入る。

    非常に短い距離かもしれません。

    しかし、生まれたばかりの子ガメにとっては、最初の野生の移動です。

    残る214匹については保全施設へ移されましたが、この43匹は孵化直後から完全に野生の時間を歩き始めました。

    なぜ214匹は保全施設へ運ばれたのか

    子ガメは非常に小さく、捕食される危険が高い時期です。

    そこで一部の個体を安全な施設で育て、ある程度生存しやすい状態にしてから野生へ戻す方法が使われています。

    今回の214匹は、ココン爬虫類保全センターで保護・飼育されます。

    これはカメを永久に飼育するためではありません。

    目的は、最も危険な成長初期を人間が少しだけ補助し、最終的には再び川へ返すことです。

    一度はカンボジアから消えたと思われていた

    カントールマルスッポンは、カンボジアでは長い間ほとんど確認されなくなっていました。

    WCSによれば、科学者による野生個体の確認が途絶えていた時期がありましたが、その後、クラチエ州とストゥントレン州の間を流れるメコン川で再確認されました。

    現在では、その地域がカンボジアに残る重要な生息地となっています。

    つまり、今回257匹が生まれた川は、

    「たまたま子ガメがたくさん生まれた場所」

    ではありません。

    一度は姿を消したと思われた大型スッポンが、今も繁殖を続けている貴重な場所です。

    2022年には982匹が孵化

    今回の257匹だけを見ると、とても大きな成果に感じます。

    しかし、カンボジアでは以前から大規模な巣の保護が続けられています。

    2022年には63巣、2,155個の卵が確認され、5月20日までに40巣から982匹が孵化しました。

    その年には580匹の子ガメが、世界亀の日に合わせてメコン川へ放されています。

    2021年にも66巣、2,528個の卵が確認され、1,300匹が野生へ戻されました。

    一年だけの成功ではありません。

    砂州を探し、巣を守り、子ガメを川へ返す活動が何年も積み重ねられています。

    カメだけを守っても生き残れない

    カントールマルスッポンの減少には、食用を目的とした捕獲、卵の採取、漁具への混獲、河川環境の破壊などが関係しています。

    つまり、

    卵だけ守ればよい。

    子ガメだけ放せばよい。

    という問題ではありません。

    大きく成長したスッポンが暮らせる深い水域。

    餌を探せる川。

    安全に卵を産める砂州。

    それらが全部残っていなければ、次の世代は続きません。

    メコン川の巨大生物の一員

    カントールマルスッポンが暮らすメコン川には、ほかにも巨大な淡水生物が生息しています。

    WCSは、このスッポンがカワゴンドウや巨大淡水エイなどと同じ深い水域を利用する、メコン川を象徴する生物の一つだと紹介しています。

    水面から見れば、ただ大きな川が流れている。

    でも水の下には、

    巨大な魚がいて、

    エイがいて、

    スッポンが砂へ潜っている。

    カントールマルスッポンを守ることは、そうした巨大河川生態系そのものを残すことにもつながります。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、257匹という数字より、その前に14個の巣を見つけた人がいたことです。

    子ガメが生まれる瞬間は分かりやすい。

    写真にもなる。

    数字にもなる。

    でも、そのずっと前に、

    砂浜を歩く人がいる。

    母ガメの足跡を探す。

    砂の盛り上がりを見る。

    ここに卵があるかもしれないと考える。

    そして、その場所を何週間も守る。

    257匹という結果は、孵化した日に突然生まれた成果ではありません。

    川岸で何も起こらない日にも、砂を見続けた時間の結果なのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    大きなスッポン飼ってみたいと思ったことありますが、めちゃめちゃ大きくなるから飼えないね。

    将来、水族館を作った時には飼育してみたい。

    出典

    Agence Kampuchea Presse(カンボジア国営通信)
    「Over 200 Cantor’s Giant Softshell Turtle Hatchlings Discovered along Mekong River in Cambodia」

    Wildlife Conservation Society Cambodia
    カントールマルスッポン保全活動・メコン川への放流記録。

    IUCN SSC Tortoise and Freshwater Turtle Specialist Group
    「Pelochelys cantorii – Asian Giant Softshell Turtle」

  • 【世界の亀ニュース】絶滅したと思われた「ロイヤルタートル」20匹がカンボジアの川へ

    【世界の亀ニュース】絶滅したと思われた「ロイヤルタートル」20匹がカンボジアの川へ

    今回は、カンボジアで報じられた、世界でも特に絶滅の危機が深刻な淡水ガメの野生復帰に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年4月29日、カンボジアのスレアンベル川水系に、20匹のロイヤルタートルが放流されました。

    このカメは、英語でSouthern river terrapinと呼ばれるBatagur affinisです。カンボジア国内で現在も野生個体が生息し、繁殖していることが確認されている場所は、スレアンベル川水系だけだとされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:カンボジア、スレアンベル川水系
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年4月29日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・野生復帰・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ロイヤルタートルです。

    学名はBatagur affinis。河川や河口付近の水域に暮らす淡水・汽水性のカメで、世界でも特に絶滅の危機が深刻なカメのひとつとされています。

    カンボジアでは2005年に「国の爬虫類」に指定されましたが、かつては国内で絶滅したのではないかと考えられていました。その後、2000年代初頭に再発見され、長期的な保護活動が続けられています。

    ニュースの要約

    今回放流された20匹は、カンボジア水産局や地域行政、Wildlife Conservation Societyなどが進めてきた、長期的な回復事業の一環として川へ戻されました。

    この活動では、野生の巣を守るだけでなく、子ガメをある程度の大きさまで育ててから放流し、その後の行動を追跡する取り組みも行われています。

    さらに、違法漁業、砂の採掘、生息地の消失などから、川全体を守る活動も進められています。過去10年間で、200匹以上のロイヤルタートルが野生へ戻されました。

    回復の兆しも見え始めています。

    2024年には、過去に放流されたメスが野生で産卵したことが初めて確認されました。2025年には巣が確認されませんでしたが、2026年の初めにはスレアンベル川で3つの巣が見つかっています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、かつて卵を採っていた地域の人たちが、現在は巣を守る側になっていることです。

    保護活動では、カメだけを遠くから監視しているわけではありません。

    以前は卵を採集していた人たちが、巣を探し、産卵場所を見守り、卵が無事に孵化できるように守っています。今回の放流式では、25年以上にわたってロイヤルタートルの巣を守ってきた地域の家族も表彰されました。

    人間がカメを減らす側から、守る側へ変わる。

    その変化がなければ、ロイヤルタートルは今も「絶滅したカメ」のままだったかもしれません。

    ただカメを育てて放すだけでは、野生復帰は完成しません。

    産卵できる砂州が残り、川が守られ、地域の人たちが巣を見つけ、次の世代が生まれる。そのすべてがつながって、ようやく野生の個体群が戻っていくのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    ロイヤルタートルの実物を見てみたいぜ。

    出典

    元記事:Wildlife Conservation Society Cambodia
    「Cambodia releases critically endangered royal turtles in Sre Ambel」

  • 【世界の亀ニュース】180年ぶりにゾウガメがフロレアナ島へ 失われた血統を受け継ぐ158匹が帰還

    【世界の亀ニュース】180年ぶりにゾウガメがフロレアナ島へ 失われた血統を受け継ぐ158匹が帰還

    今回は、ガラパゴス諸島のフロレアナ島に、約180年ぶりにゾウガメが戻った歴史的なニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年2月20日、エクアドルのガラパゴス諸島にあるフロレアナ島へ、フロレアナゾウガメの血統を受け継ぐ若いゾウガメ158匹が放されました。

    フロレアナ島では、19世紀半ばに固有のゾウガメが姿を消して以来、約180年間にわたってゾウガメが生息していませんでした。

    今回の放逐によって、失われていたゾウガメの生態的な役割が、島へ戻り始めることになります。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:エクアドル共和国
    場所:ガラパゴス諸島・フロレアナ島
    元記事の言語:英語・スペイン語
    放逐日:2026年2月20日
    情報の種類:リクガメ・野生復帰・遺伝子研究・生態系再生・保護活動

    フロレアナ島は、ガラパゴス諸島の中でも早い時期から人間が暮らし始めた島です。現在は約160人が生活しており、自然環境の再生と島民の暮らしを両立させる大規模な復元事業が進められています。

    登場する亀

    このニュースの中心となるのは、フロレアナゾウガメの血統を受け継ぐゾウガメです。

    フロレアナ島にかつて生息していたゾウガメの学名は、Chelonoidis niger nigerです。

    ただし、今回島へ放された158匹を、かつてのフロレアナゾウガメと完全に同じ純粋な個体として扱うことはできません。

    現在、純粋なフロレアナゾウガメとして確認されている生存個体はいません。今回放されたのは、絶滅したフロレアナゾウガメと、イサベラ島のウォルフ火山に生息するゾウガメの血を受け継ぐ交雑個体の子孫です。

    ニュースの要約

    今回放された158匹は、サンタクルス島にある繁殖施設で育てられた、12歳から14歳の若いゾウガメです。

    一般的に、ガラパゴスゾウガメは5歳から7歳ほどまで成長すると、外来動物などの危険に耐えられる可能性が高くなるとされています。今回の個体たちはその年齢を十分に超え、野生で暮らせる大きさになるまで慎重に育てられました。

    放逐は、フロレアナ島で植物が豊富になり、季節的な水場も現れる雨季に合わせて行われました。

    島へ戻った直後から食物や水を確保しやすくすることで、新しい環境へ定着できる可能性を高めています。

    絶滅したはずの血統は、別の島に残っていた

    フロレアナゾウガメは、捕鯨船や航海者による大量捕獲、そして人間が持ち込んだ外来生物などの影響を受け、19世紀半ばまでにフロレアナ島から姿を消しました。

    長い間、その血統は完全に失われたと考えられていました。

    しかし2000年、フロレアナ島から離れたイサベラ島のウォルフ火山で、周囲の個体とは甲羅の形が異なるゾウガメが発見されました。

    遺伝子を調べた結果、その個体たちはフロレアナゾウガメの血統を受け継いだ交雑個体であることが分かりました。

    かつて捕鯨船の乗組員たちは、食料としてゾウガメを船へ積み込み、航海の都合によって別の島へ置いていくことがありました。

    フロレアナ島から運び出されたゾウガメの一部がイサベラ島に残され、現地のゾウガメと交雑したことで、その遺伝的な血統が約180年間残った可能性があります。

    遺伝子から血統をつなぎ直す

    研究者とガラパゴス国立公園のスタッフは、フロレアナゾウガメの血を濃く受け継ぐ個体をウォルフ火山から選び出し、繁殖施設へ移しました。

    2015年と2020年には、繁殖計画に使用する成体が新たに施設へ運ばれ、遺伝子情報をもとに交配の組み合わせが検討されました。

    目的は、絶滅したフロレアナゾウガメを完全に再現することではありません。

    それは不可能だと、計画を進める研究者自身が説明しています。

    目指しているのは、残された遺伝的な血統をできるだけ多く受け継ぎ、かつてフロレアナゾウガメが島で果たしていた生態的な役割を、再び担うことのできる個体群を作ることです。

    158匹すべてをGPSで追跡

    フロレアナ島へ放された158匹には、軽量のGPS発信器が取り付けられています。

    研究チームは、ゾウガメが島のどこを歩き、どの場所で餌を食べ、どの環境を好んで利用するのかを継続的に記録します。異常な移動や健康上の問題が見つかった場合には、早い段階で対応することもできます。

    繁殖に使われている成体は、今後も施設に残ります。

    新しい世代が十分な大きさへ成長するたびに、年間およそ25匹から100匹をフロレアナ島へ追加放逐し、何十年もかけて自立した個体群を形成する計画です。

    ゾウガメは、島を作り変える存在

    ゾウガメは、ただ島の植物を食べて暮らすだけの動物ではありません。

    植物を食べながら島内を移動し、糞と一緒に種を遠くへ運びます。

    大きな体で草や低木の間を進むことで道を作り、地面を踏み、植物が密集しすぎない開けた環境を維持します。水や泥のある場所では、ほかの生き物も利用できる小さなくぼみを作ることがあります。

    こうした働きから、ゾウガメは「生態系エンジニア」や「キーストーン種」と呼ばれます。

    フロレアナ島からゾウガメが姿を消したことで、植物の広がり方や種子の移動、開けた生息環境の維持といった働きも失われました。

    158匹の帰還は、ゾウガメという一種類を戻すだけではなく、約180年間止まっていた島の仕組みを、再び動かし始める試みです。

    12種類の生き物を島へ戻す計画

    今回のゾウガメは、フロレアナ島へ戻される予定の12種類の生き物の第一段階です。

    将来的には、現在フロレアナ島本島では見られなくなっているフロレアナマネシツグミや、固有のヘビ、フィンチ類などについても、環境が整い次第、再導入が検討されます。

    そのためには、ネズミや野生化したネコなどの外来哺乳類を減らし、島の植物や生息環境を回復させなければなりません。

    ゾウガメの帰還は、フロレアナ島全体を再生する長期計画の始まりでもあります。

    「絶滅種が復活した」とは言い切れない

    今回のニュースは、「絶滅したフロレアナゾウガメが復活した」と紹介されることがあります。

    しかし、正確には少し違います。

    かつてフロレアナ島に生息していた純粋なゾウガメと、まったく同じ遺伝子を持つ個体が復活したわけではありません。

    今回戻ったのは、絶滅した血統の一部を受け継ぐ交雑個体の子孫です。

    それでも、その価値が小さくなるわけではありません。

    かつて島から運び出されたゾウガメが、別の島で血統を残していた。

    人間はその遺伝的な痕跡を見つけ、何十年もかけて子孫を育て、再び祖先の島へ戻した。

    完全に失われたものを元通りにすることはできなくても、残されているものから、新しい未来を作ることはできます。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、人間が運び出したゾウガメの血統を、人間が再び故郷へ運んだことです。

    約200年前、ゾウガメは食料として島から連れ出されました。

    船の都合で別の島へ置き去りにされ、その場所でほかのゾウガメと交雑した。

    当時の人間に、その血統を未来へ残そうという意思はなかったはずです。

    それでも、ゾウガメは生きた。

    子孫を残し、体の中にフロレアナ島へつながる遺伝子を持ち続けた。

    そして現代の人間が、その小さな痕跡を見つけました。

    今回の158匹は、絶滅した過去をそのまま再現した存在ではありません。

    でも、失われた血統と、これから再生していく島をつなぐ、新しいゾウガメなのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    偉いね。

    出典

    Galápagos National Park Directorate
    「Un regreso a casa para Floreana」

    Galápagos Conservancy
    「A Homecoming for Floreana」

    Galápagos Conservancy
    「From the Desk of Dr. James Gibbs: On the Return of the Floreana Giant Tortoise」

    Charles Darwin Foundation
    「158 Endangered Tortoises Released onto Floreana Island, Galápagos for First Time in over 180 Years」