カテゴリー: 亀の保護活動

亀の保護区、NPO活動、研究機関の保全活動、産卵地保護など。

  • 【世界の亀ニュース】ガラパゴスの島に巨大リクガメが約180年ぶりに戻る

    【世界の亀ニュース】ガラパゴスの島に巨大リクガメが約180年ぶりに戻る

    今回は、エクアドル・ガラパゴス諸島で報じられた、巨大リクガメの再導入に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    ガラパゴス諸島のフロレアナ島に、158頭の若い巨大リクガメが放たれました。

    Charles Darwin Foundationによると、フロレアナ島に巨大リクガメが戻るのは180年以上ぶりで、島の生態系回復にとって歴史的な節目とされています。放たれたのは、フロレアナ系統の血を引く若い巨大リクガメたちです。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:エクアドル、ガラパゴス諸島、フロレアナ島
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年2月20日
    情報の種類:新着ニュース・再導入・生態系回復

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、フロレアナ系統の巨大リクガメです。

    フロレアナ島にもともといた巨大リクガメは、過去の人間活動などにより島から姿を消しました。報道では、1800年代以降、長いあいだフロレアナ島に巨大リクガメがいない状態が続いていたと紹介されています。

    ニュースの要約

    今回放たれた158頭の若いリクガメは、フロレアナ島の失われた巨大リクガメの系統を回復するための長期プロジェクトの一部です。

    AP通信によると、これらの個体は8〜13歳で、絶滅したとされるフロレアナ島のリクガメの遺伝的要素を持つ個体として育てられてきました。今回の放流は、将来的に合計700頭を島へ戻す計画の第一歩とされています。

    また、Charles Darwin Foundationは、この再導入をフロレアナ島の生態系回復にとって重要な出来事と位置付けています。巨大リクガメは、草を食べ、種を運び、地形や植生に影響を与える存在であり、単に「一種類の動物が戻った」というだけではなく、島全体の自然の流れを取り戻す意味を持っています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、巨大リクガメが“島をつくる存在”として見られていることです。

    リクガメは、ただのんびり歩いているだけの生き物ではありません。
    植物を食べ、種を運び、土を踏み、道を作り、何十年もかけて島の風景に影響を与えていきます。

    人間の時間では「歩みが遅い」と感じる亀も、島の時間で見れば、風景を変えていく力を持っている。

    約180年ぶりに巨大リクガメがフロレアナ島を歩くというのは、単なる保護ニュースではなく、失われた島のリズムをもう一度動かし始める出来事なのかもしれません。

    湯川亀吉の一言

    いつかガラパゴス諸島に行ってみたいな〜。

    出典

    元記事:Charles Darwin Foundation「158 endangered tortoises released onto Floreana Island, Galapagos, for first time in over 180 years」

    関連報道:AP News「Galápagos park releases 158 juvenile hybrid tortoises on Floreana to restore the ecosystem」

  • 【世界の亀ニュース】絶滅寸前のアジアのカメたちを守る「タートル・バンク」

    【世界の亀ニュース】絶滅寸前のアジアのカメたちを守る「タートル・バンク」

    今回は、アメリカ・サウスカロライナ州で報じられた、絶滅寸前のカメたちを守る施設に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    Mongabayは、アメリカ・サウスカロライナ州の松林の中にあるTurtle Survival Allianceの施設を、絶滅寸前のアジアのカメたちが身を寄せる「タートル・バンク」として紹介しました。

    記事によると、この施設には約800匹のカメが飼育されており、その多くは東南アジアを中心とした世界でもっとも絶滅が危惧される種類です。野生下で失われつつある種を、未来へ残すための“生きた貯蔵庫”のような役割を持っています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ、サウスカロライナ州
    関係地域:東南アジアを中心とするアジア各地
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年1月28日
    情報の種類:新着ニュース・保護活動・飼育下繁殖・絶滅危惧種

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、東南アジアを中心とした絶滅危惧のカメたちです。

    施設には、野生で数が激減している淡水ガメやリクガメが保護されています。
    Turtle Survival Allianceは、世界中のカメが野生で生き続けられる未来を目指して活動する保全団体です。

    ニュースの要約

    この施設は、単なる飼育施設ではありません。

    野生下で絶滅の危機にあるカメたちを、将来的な繁殖や再導入の可能性を残すために守る場所です。
    Mongabayの記事では、この施設が約800匹のカメを収容し、世界でもっとも危機的な種の一部を保護していると紹介されています。

    こうした施設は、野生個体群が失われたあとでも、その種を完全に失わないための最後の砦になることがあります。

    もちろん、本来ならカメたちは生まれた土地で生きられるのが一番です。
    けれど、生息地破壊、密猟、違法取引、食用やペット需要によって、野生に残ることが難しくなった種類もいます。

    そのとき、飼育下で命をつなぐことは、単なる保管ではなく、未来への時間稼ぎになるのだと思います。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、カメの保護には“今すぐ野生に返す”だけではない形があるという点です。

    野生復帰は理想です。
    でも、すぐに戻せる場所がない場合もある。
    生息地が失われていたり、密猟圧が高かったり、数が少なすぎて自然繁殖が難しかったりする場合もあります。

    そういうとき、飼育施設は「閉じ込める場所」ではなく、種そのものを未来へ渡すための場所になる。

    タートル・バンクという言葉には、ただカメを集めているという意味以上に、
    失われそうな時間を預かっている
    ような響きがあります。

    湯川亀吉の一言

    アジアの亀は本当に魅力的な種類が多いです。

    サウスカロライナに保護施設があるなんて、知りませんでした。

    サウスカロライナは自然豊かでとても魅力的なところです。

    出典

    元記事:Mongabay「The Turtle Bank: The last of these Asian turtle species find refuge in the Carolina pines」

    関連情報:Turtle Survival Alliance

  • 【世界の亀ニュース】16年間姿を消したマッコードナガクビガメ ロティ島の湖へ20匹が帰る

    【世界の亀ニュース】16年間姿を消したマッコードナガクビガメ ロティ島の湖へ20匹が帰る

    今回は、インドネシア・ロティ島だけに生息していた希少な淡水ガメ「マッコードナガクビガメ」が、人間の手による繁殖と長い準備期間を経て、再び故郷の湖へ放されたニュースを紹介します。

    2009年を最後に、

    ロティ島の自然環境では確認されなくなったカメ。

    それから16年。

    2025年10月21日、

    20匹のマッコードナガクビガメが、ロティ島のDanau Ledulu(レドゥル湖)へ放流されました。

    今回のニュース

    2025年10月21日、インドネシア林業省は、東ヌサ・トゥンガラ州ロテ・ンダオ県のレドゥル湖で、マッコードナガクビガメ20匹を野生へ放したと発表しました。

    放流された個体は、いきなり飼育施設から湖へ運ばれたわけではありません。

    一週間の検疫。

    その後、約3か月間にわたる健康状態の観察。

    自力で獲物を捕らえる能力。

    行動。

    繁殖に関係する状態。

    そうした項目を確認したうえで、レドゥル湖やLendo Oen湖に設置された順応環境へ移されました。

    そして最終的に、野生で生きられる状態にあると判断された個体が湖へ戻されました。

    どこの国・地域の話か

    国:インドネシア
    地域:東ヌサ・トゥンガラ州
    島:ロティ島(Rote Island)
    場所:Danau Ledulu(レドゥル湖)
    放流日:2025年10月21日
    対象種:マッコードナガクビガメ
    学名:Chelodina mccordi
    情報の種類:淡水ガメ・野生復帰・飼育下繁殖・国際保全・湿地保全

    ロティ島はインドネシア南東部、小スンダ列島に位置する島です。

    乾燥した気候の島に点在する淡水湖や湿地が、マッコードナガクビガメの生息地でした。

    登場する亀

    今回の主役は、

    マッコードナガクビガメ。

    学名は、

    Chelodina mccordi。

    英語では、

    Roti Island Snake-necked Turtle

    と呼ばれます。

    日本の経済産業省が掲載するワシントン条約関連資料でも、「マッコードナガクビガメ」という和名が使われています。

    名前の通り、非常に長い首を持つヘビクビガメ科の淡水ガメです。

    甲長は20cm前後ほど。

    普段は長い首を使って水中の獲物を捕らえます。

    危険を感じたときも、一般的なカメのように首を真っすぐ甲羅へ引き込むのではなく、長い首を横へ折り曲げるようにして収納します。

    新種として知られた直後に狙われた

    マッコードナガクビガメが科学的に記載されたのは1994年。

    比較的新しく知られるようになったカメです。

    しかし、

    珍しい。

    分布域が狭い。

    姿が独特。

    そうした特徴は、このカメにとって危険な方向へ働きました。

    1980年代から1990年代にかけて国際的なペット取引のため大量に捕獲され、さらに湿地が農地へ転換されることで生息環境も失われていきました。

    珍しいカメとして世界に知られた頃には、

    すでに野生個体群が急速に消え始めていました。

    2005年、105か所を探してもほとんど見つからなかった

    2005年には、ロティ島で本種の残存状況を確認する調査が行われました。

    調査した場所は、

    105か所。

    そのうち35か所がカメの生息に適していると判断されました。

    地域住民への聞き取りでは、そのうち26か所は以前マッコードナガクビガメがいた場所だったものの、すでに何年も姿が見られていませんでした。

    研究チーム自身による調査でも、野生の個体を直接確認することはできず、湿地で採集された一匹が持ち込まれただけでした。

    カメがいるはずの湖を探す。

    見つからない。

    別の湿地へ行く。

    また見つからない。

    その状態が続いていました。

    2009年を最後に、野生で見つからなくなる

    そして、

    2009年。

    これがロティ島の自然環境で確認された最後の記録となりました。

    その後も調査は続けられましたが、カメそのものは見つかりません。

    Mandai NatureやSingapore Zooは、本種について、

    2009年以来、本来の生息地では確認されていない

    と説明しています。

    そのため、野生ではすでに絶滅している可能性さえ考えられる状態になりました。

    でも、世界から完全に消えたわけではなかった

    ここからが、このニュースの重要なところです。

    ロティ島からカメが消えても、

    飼育下にはマッコードナガクビガメが残っていました。

    皮肉なことに、

    野生から大量に持ち出されたことによって、

    世界各地の動物園や繁殖施設には個体が存在していたのです。

    アメリカ。

    ヨーロッパ。

    シンガポール。

    そこで繁殖されたカメたちがいました。

    野生生物取引によって島から失われたカメの子孫を、

    今度は保全のために島へ戻す。

    そんな計画が始まります。

    2016年、「ロティ島へ戻す」プロジェクトが始まる

    Wildlife Conservation Society Indonesia Program(WCS-IP)は2016年から、インドネシア政府や地域住民、Mandai Natureなどと協力し、

    マッコードナガクビガメをロティ島へ再導入する計画

    を進めてきました。

    ただカメを集めるのではありません。

    昔の生息地を調べる。

    現在も湖にカメが暮らせるのか確認する。

    地域住民と話す。

    繁殖施設を作る。

    遺伝的な状態を調べる。

    放流方法を考える。

    その後の監視方法を決める。

    カメを戻す前に、

    「戻せる島を作る」

    ところから始めました。

    2019年、3つの湖が重要な生息地として守られる

    再導入するなら、

    帰る場所が必要です。

    2019年、ロティ島にある

    Peto湖。

    Lendoen湖。

    Ledulu湖。

    この3つの湖が、マッコードナガクビガメの重要な生息環境として保全対象になりました。

    WCSは、この3湖を本種が再び暮らすために残された重要な候補地としています。

    カメだけを増やしても、

    湖がなくなれば戻せません。

    だから、

    まず水を守る。

    湿地を守る。

    そのあとにカメを戻します。

    2021年、13匹がシンガポールから祖国へ

    そして2021年9月。

    大きな一歩がありました。

    Singapore Zooで飼育されていた

    13匹のマッコードナガクビガメが、インドネシアへ帰還しました。

    国外の保全個体をインドネシアへ戻す初めての取り組みでした。

    この13匹は、もともとアメリカやオーストリアの繁殖プログラム由来の個体を含む、シンガポールの保全個体群から選ばれました。

    飛行機で祖国へ戻り、

    東ヌサ・トゥンガラ州クパンに作られた繁殖施設へ入ります。

    カメは帰った。でも、まだ島には戻らない

    ここが面白いところです。

    2021年。

    インドネシアへ帰った。

    でも、

    すぐロティ島の湖へ放さない。

    まずクパンの施設で飼育する。

    健康を見る。

    繁殖させる。

    子どもを増やす。

    人間の管理下で、

    野生復帰できる個体群を作る。

    Singapore Zooから帰国した13匹は、

    その「親世代」の一部になりました。

    つまり、

    国へ帰ることと、

    野生へ帰ることは、

    別の段階です。

    2025年5月、10匹が湖へ

    そして2025年5月。

    いよいよ再導入が本格的に進みます。

    インドネシアの保全当局とWCS-IPは、

    10匹のマッコードナガクビガメをロティ島の湖へ放流しました。

    内訳は、

    雄8匹。

    雌2匹。

    5匹がLendeoen湖。

    5匹がLedulu湖。

    健康状態や野生環境への適応能力を確認したうえで選ばれた個体でした。

    2009年から確認されなくなっていたロティ島の水の中へ、

    再びマッコードナガクビガメが入ります。

    そして10月、さらに20匹

    それから約5か月後。

    2025年10月21日。

    さらに20匹がレドゥル湖へ放されました。

    今回の放流では、

    ただ健康であるだけではなく、

    獲物を捕らえられるか。

    自然に近い環境で行動できるか。

    繁殖につながる状態にあるか。

    といったことまで観察されました。

    人間が餌を持ってきてくれる水槽から、

    自分で食べ物を探さなければならない湖へ。

    その境界を越えられる個体だけを選んでいます。

    長い首が、もう一度ロティ島の水を泳ぐ

    マッコードナガクビガメの姿は非常に特徴的です。

    小さめの甲羅。

    そこから伸びる、

    驚くほど長い首。

    水中では、その首を前へ伸ばして獲物を捕らえます。

    ロティ島では、

    16年間、

    その姿を自然の湖で確認できませんでした。

    今、

    人間が繁殖した個体ではありますが、

    再びその首がロティ島の水の中を動いています。

    でも「復活した」と言うにはまだ早い

    30匹を放した。

    だから、

    マッコードナガクビガメは復活した。

    そう簡単には言えません。

    本当に重要なのは、

    これからです。

    放した個体が生き残れるか。

    湖からいなくならないか。

    繁殖するか。

    卵を産むか。

    子ガメが生まれるか。

    そして、その子ガメが成長して、

    さらに次の世代を作れるか。

    そこまで続いて初めて、

    人間が補充し続けなくても存続できる野生個体群

    が成立します。

    今回の放流は、

    復活の完成ではなく、

    復活できるかどうかを確かめる始まりです。

    湖そのものにも危機がある

    さらに問題があります。

    カメを守るだけでは足りません。

    ロティ島では農業による湿地環境の変化に加え、近年は気候変動による水量低下も問題になっています。

    湖によっては、

    完全に干上がることさえあります。

    さらに、外来のスネークヘッド類などの捕食魚も、再導入されたカメにとって脅威になる可能性があります。

    つまり、

    マッコードナガクビガメを戻すことは、

    カメだけの問題ではありません。

    湖そのものを残す仕事でもあります。

    カメを守ることが、人間の水を守ることにもなる

    ここは今回のニュースで、とても興味深いところです。

    WCS IndonesiaのNoviar Andayani氏は、

    ロティ島の湖を保護することは、

    マッコードナガクビガメだけでなく、

    乾燥した島で暮らす人々の水資源を守ることにもつながる

    と説明しています。

    カメのために湖を残す。

    湖が残れば、

    人間も水を使える。

    生き物の保全と人間の暮らしが、

    同じ場所でつながっています。

    地域住民が湖を見守る

    再導入計画には、

    ロティ島で暮らす地域住民も参加しています。

    湖周辺でのパトロール。

    カメの保護。

    生息環境の監視。

    啓発活動。

    WCSや行政機関だけでなく、地域住民が湖を守る仕組みが作られています。

    マッコードナガクビガメは、

    世界中の動物園だけで守られているカメではありません。

    最終的に守る場所は、

    ロティ島です。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番面白いと思うのは、

    「ペットとして島から出ていったカメの子孫が、保全のために島へ帰ってきた」

    というところです。

    珍しいから捕る。

    海外へ売る。

    ロティ島からカメが消える。

    でも、

    海外へ出たカメの中には、

    人間の手で繁殖した個体がいた。

    その子孫を集める。

    祖国へ返す。

    繁殖する。

    野生で生きる準備をする。

    そして、

    湖へ戻す。

    もちろん、

    国際的なペット取引によって野生個体群が失われた事実が消えるわけではありません。

    でも、

    一度人間によって島の外へ運ばれた血統が、

    今度は種を救う材料になりました。

    とても不思議な循環だと思います。

    湯川亀吉の一言

    湖がある。

    昔は、

    そこに長い首のカメがいた。

    人間が捕る。

    珍しいから売る。

    また捕る。

    そして、

    いなくなる。

    2009年。

    最後の一匹が確認される。

    そのあと、

    見つからない。

    一年。

    五年。

    十年。

    でも、

    世界のどこかには、

    そのカメの子孫がいる。

    動物園の水槽。

    繁殖施設。

    人間が作った場所で、

    命がつながっていた。

    2021年。

    13匹が飛行機に乗る。

    シンガポールから、

    インドネシアへ。

    でも、

    まだ湖には行かない。

    待つ。

    増やす。

    準備する。

    そして2025年。

    ようやく、

    一匹のカメが水へ入る。

    長い首を伸ばす。

    泳ぐ。

    自分で餌を探す。

    16年間、

    その湖から消えていたカメが、

    もう一度そこにいる。

    人間が連れてきたカメだから、

    完全な「野生の復活」ではないのかもしれない。

    でも、

    いつかそのカメが卵を産んで、

    その卵から子ガメが生まれて、

    誰にも餌をもらわず、

    誰にも運んでもらわず、

    その子がまた卵を産んだら。

    そのときは、

    もう人間が戻したカメではない。

    ロティ島で生きている、ただのカメになる。

    たぶん、

    保全の最終目的は、

    そこなのだと思います。

    出典

    インドネシア林業省(Kementerian Kehutanan)
    「Menhut Raja Antoni Pimpin Pelepasliaran 20 Kura-Kura Rote, Satwa Endemik Terlangka di Dunia」
    2025年10月22日。20匹の放流、検疫、3か月の観察、順応過程について。

    Mandai Wildlife Group / Singapore Zoo
    「First ever repatriation of critically endangered Roti Snake-necked Turtles from Singapore to their native country, Indonesia」
    2022年1月19日。2021年に13匹をシンガポールからインドネシアへ戻した経緯と保全計画。

    Mandai Nature
    「Repopulating the Rote Snake-necked Turtle」
    ロティ島への再導入、生息環境保全、地域との協力について。

    Wildlife Conservation Society Indonesia Program
    「Rote Island Snake-necked Turtle」
    野生個体群の減少要因、調査、再導入計画について。

    ANTARA News
    「BBKSDA NTT lepasliarkan 10 ekor kura-kura rote ke habitatnya」
    2025年5月10日。雄8匹・雌2匹、計10匹の放流について。

    Media Konservasi / Bogor Agricultural University
    「Studi Pendahuluan: Keberadaan Kura-Kura Rote (Chelodina mccordi) di Pulau Rote, Nusa Tenggara Timur」
    2005年の野外調査について。

  • 【世界の亀ニュース】絶滅寸前のビルマオオセタカガメ 20匹のオスを川へ戻したら、孤独だった雌から14匹が誕生

    【世界の亀ニュース】絶滅寸前のビルマオオセタカガメ 20匹のオスを川へ戻したら、孤独だった雌から14匹が誕生

    今回は、ミャンマーの大河川に生息する希少な淡水ガメ「ビルマオオセタカガメ」の保全活動を紹介します。

    かつては、

    絶滅したのではないか

    とまで考えられていたカメです。

    しかし、生き残ったわずかな個体を見つけ、卵を守り、子ガメを育て、川へ戻す活動が始まりました。

    そして2018年。

    保全施設で育った若いオス20匹が、チンドウィン川へ放されます。

    その約1年半後。

    長年、無精卵しか産めなかった一匹の野生の雌が19個の卵を産み、

    14匹が孵化しました。

    人間が川へ戻したオスが、

    野生に残っていた雌を見つけた可能性が高いと考えられています。

    今回のニュース

    2020年5月22日、Wildlife Conservation Society(WCS)とTurtle Survival Alliance(TSA)は、ミャンマー北部を流れるチンドウィン川で、ビルマオオセタカガメの繁殖に大きな進展があったと発表しました。

    そこには一匹の野生の雌がいました。

    しかし、その雌は長い間、繁殖相手となる雄と出会えていなかったと考えられています。

    過去に産んだ卵は孵化しませんでした。

    ところが2020年。

    19個の卵を産み、

    そのうち14個が孵化しました。

    研究者たちが考えたのは、

    2018年に放流した若い雄たちです。

    そのときチンドウィン川へ戻されたのは、

    20匹の飼育下育ちの雄。

    そのうち少なくとも一匹が野生の雌と出会い、交尾したと考えられました。

    どこの国・地域の話か

    国:ミャンマー
    主な河川:チンドウィン川
    対象種:ビルマオオセタカガメ
    学名:Batagur trivittata
    英名:Burmese Roofed Turtle
    情報の種類:淡水ガメ・絶滅危惧種・繁殖・ヘッドスタート・野生復帰

    ビルマオオセタカガメはミャンマー固有の大型淡水ガメで、かつてはエーヤワディー川、チンドウィン川、シッタン川、サルウィン川などの大きな河川に広く分布していました。

    日本の経済産業省が公開しているワシントン条約対象種の資料でも、Batagur trivittataには**「ビルマオオセタカガメ」**という和名が使われています。

    登場する亀

    ビルマオオセタカガメは、イシガメ科バタグールガメ属の淡水ガメです。

    大きな川とその支流を主な生息環境とし、河川沿いの砂州を産卵場所として利用します。

    そして、このカメにはとても面白い特徴があります。

    成熟した雄の外見が繁殖期に大きく変わることで知られるカメです。

    名前の「trivittata」も、ラテン語で「3本の帯を持つ」といった意味に由来すると考えられています。

    一度は「絶滅した」と思われた

    ビルマオオセタカガメは、昔から珍しいカメだったわけではありません。

    かつてはミャンマーの大河川で普通に見られたとされています。

    しかし、

    卵の大量採取。

    成体の捕獲。

    漁網への混獲。

    産卵砂州の消失。

    金採掘。

    河川環境の改変。

    こうしたものが重なり、個体数が急激に減少しました。

    1970年代にはすでに、

    「絶滅したのではないか」

    と考えられるようになります。

    2001年、「甲羅」が見つかった

    転機は2001年でした。

    WCSの調査チームがミャンマーで別の希少なカメを探していたとき、

    ある村で、

    最近殺されたと思われるビルマオオセタカガメの甲羅

    を発見しました。

    生きた個体ではありません。

    でも、

    「最近まで生きていたカメの甲羅」がある。

    つまり、

    絶滅していない可能性があります。

    そこから調査が進みました。

    寺院の池に、生き残りがいた

    その後、

    マンダレーの寺院の池で、

    生きたビルマオオセタカガメが発見されます。

    さらにチンドウィン川上流では、

    わずかながら野生で繁殖を続けている個体群も見つかりました。

    絶滅していなかった。

    でも、

    安心できる数ではありません。

    WCSが2020年に発表した時点でも、野生に残る繁殖可能な雌は5匹未満とされていました。

    TSAの現在の種情報では、野生個体群は99%以上減少し、確認される野生の成体雌はさらに少数とされています。

    まず卵を守る

    そこで始まったのが、

    チンドウィン川の産卵地を直接守る活動です。

    毎年2月から3月。

    残された雌が砂州へ上がり、

    卵を産みます。

    保全チームはその卵を探します。

    そして、

    人や動物に掘り返される前に保護します。

    保護された卵は、チンドウィン川沿いの村に設けられた安全な場所で孵化まで管理されます。

    5月から6月。

    子ガメが生まれます。

    でも、

    すぐには川へ戻しません。

    5〜6年間育ててから川へ戻す

    孵化したばかりの子ガメは小さい。

    捕食されやすい。

    漁具にも弱い。

    そこで、

    5〜6年間、人間の管理下で育てます。

    ある程度大きくなり、野外で生存できる可能性が高くなってから川へ戻します。

    いわゆる、

    ヘッドスタート

    です。

    卵を守る。

    孵化させる。

    数年間育てる。

    そして、

    元の川へ返す。

    この循環を何年も続けました。

    飼育個体群は1,000匹近くまで増えた

    保全活動は野生の卵だけではありません。

    マンダレーのYadanabon Zooをはじめ、複数の場所に保全繁殖個体群=assurance colonyが作られました。

    もし野生個体群が完全に消えても、

    種そのものが失われないようにするためです。

    そして繁殖に成功します。

    2020年には、WCSは飼育下個体群が1,000匹近くまで増えたと報告しました。

    数十年前には、

    絶滅したと思われていたカメです。

    それが、

    人間の管理下とはいえ、

    1,000匹近くまで増えました。

    でも、飼育下で1,000匹いても十分ではない

    ここは、

    これまで紹介してきた亀たちにも共通します。

    飼育下で増えた。

    だから成功。

    ではありません。

    このカメは、

    川のカメです。

    大きな川を泳ぐ。

    砂州へ上がる。

    卵を産む。

    流れの中で餌を探す。

    そういう生活をして初めて、

    ビルマオオセタカガメという種が野生に存在していることになります。

    だから、

    増やしたカメをもう一度川へ戻さなければなりません。

    2018年、若い雄20匹を放す

    そこで2018年。

    保全施設で育てた若い雄20匹が、チンドウィン川へ放されました。

    この放流には、

    特別な意味がありました。

    川には雌が残っている。

    でも、

    雄がほとんどいない。

    雌は毎年卵を産んでも、

    受精しない。

    だったら、

    雄を戻す。

    とても単純に聞こえます。

    でも、

    野生復帰というのは、

    「カメの数を増やす」ことだけではない。

    野生に足りなくなった繁殖相手を戻す

    ことでもあります。

    そして一匹の雌が19個の卵を産んだ

    2020年。

    チンドウィン川上流にいた一匹の雌が、

    19個の卵を産みます。

    そして、

    14匹が孵化しました。

    それまで、

    その雌が産んだ卵は受精していませんでした。

    しかし、

    雄を川へ戻したあと、

    初めて子ガメが生まれた。

    もちろん、

    どの雄が父親なのかは、

    このニュースだけでは分かりません。

    それでもWCSとTSAは、

    2018年に放した雄との交尾によって受精した可能性が高いと考えました。

    14匹という数字以上の意味

    14匹。

    飼育施設なら、

    もっとたくさん生まれているかもしれません。

    でも、

    この14匹は意味が違います。

    母親は、

    野生で生き残った雌。

    父親はおそらく、

    人間が育てて野生へ返した雄。

    そこで生まれた子どもです。

    つまり、

    飼育下個体群と野生個体群が、

    もう一度つながった。

    保全施設が、

    単なる避難場所ではなく、

    野生を補強するための場所として機能した瞬間

    だと思います。

    さらに60匹が川へ戻った

    その後も再導入は続きました。

    Turtle Survival Allianceは、ヘッドスタートされた60匹のビルマオオセタカガメをミャンマー西部の2つの河川へ再導入した取り組みを報告しています。

    一度、

    ほとんどカメがいなくなった川。

    そこへ、

    少しずつ戻す。

    20匹。

    60匹。

    また次の世代。

    一度に昔の状態へ戻すことはできません。

    川には、まだ危険がある

    しかし、

    放流すれば終わりではありません。

    川には今も、

    漁網があります。

    産卵砂州の消失があります。

    人による卵の採取があります。

    河川環境の変化があります。

    飼育下で100匹増やしても、

    川で100匹失われれば、

    個体群は復活しません。

    だから、

    カメを育てることと、

    カメが戻れる川を残すこと。

    この二つを同時に進める必要があります。

    卵を集めることが、永遠に続いてはいけない

    現在の保全方法では、

    野生の雌が産んだ卵を人間が保護し、

    子ガメを育てています。

    これは今、

    非常に重要な方法です。

    でも、

    最終的な理想は、

    人間が毎年卵を拾わなくてもいい状態でしょう。

    雌が自分で砂州を選ぶ。

    卵を産む。

    孵化する。

    子ガメが川へ入る。

    成長する。

    そして、

    また繁殖する。

    その循環が、

    人間の手を借りずに続くこと。

    そこまで戻れば、

    本当の意味で野生個体群が復活したと言えるのだと思います。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回の話で僕が一番好きなのは、

    「雄を放したら、雌の卵から子ガメが生まれた」

    というところです。

    保全活動というと、

    とにかく数を増やすことを想像します。

    100匹育てる。

    200匹放す。

    1,000匹まで増やす。

    もちろん、それも大事です。

    でも、

    野生に残っていた一匹の雌に必要だったのは、

    100匹のカメではなかったのかもしれない。

    たった一匹の雄だったかもしれない。

    ずっと同じ川で生きていた。

    毎年卵を産んだ。

    でも、

    相手がいなかった。

    そこへ、

    人間が育てた雄が泳いでくる。

    どこかで出会う。

    そして、

    次の年。

    卵から子ガメが出てくる。

    保全って、

    「たくさん増やす」だけじゃないんだね。

    途切れてしまった生き物同士のつながりを、

    もう一度つなぐ仕事でもあるんだと思います。

    湯川亀吉の一言

    バタグール飼ってみたいね〜

    出典

    Wildlife Conservation Society(WCS)
    「Isolated Female Burmese Roofed Turtle Surprises Conservationists by Laying Fertile Eggs」
    2020年5月22日。野生の雌が19個の卵を産み、14匹が孵化したこと、2018年に雄20匹を放流したことについて。

    Wildlife Conservation Society Myanmar Program
    「Burmese Roofed Turtle Conservation」
    過去の分布、減少、再発見、チンドウィン川での卵保護・ヘッドスタートなどについて。

    Wildlife Conservation Society(WCS)
    「The Turtle that Almost Went Extinct, Now Ready for Its Close-up」
    2020年8月25日。飼育下個体群が約1,000匹まで増加したことなどについて。

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「Burmese Roofed Turtle」
    現在の保全状況、脅威、ヘッドスタート・個体群補強について。

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「Burmese Roofed Turtles Return to the Wild」
    ヘッドスタートされた60匹の野生復帰について。

  • 4万1,000匹超のオオヨコクビガメ、ドローンが捉えた世界最大の集団産卵

    4万1,000匹超のオオヨコクビガメ、ドローンが捉えた世界最大の集団産卵

    南米を流れるグアポレ川/イテネス川の砂州で、4万1,000匹を超えるオオヨコクビガメが産卵のために集まっていたことが、ドローンを使った調査によって確認されました。

    ブラジルとボリビアの国境を流れるこの川では、毎年多数のオオヨコクビガメが同じ砂州へ集まります。2025年に発表された研究では、12日間の産卵期に集まった個体数を、新しい統計手法とドローン画像を組み合わせて推定しました。これは、確認されているものとしては世界最大の淡水ガメの集団産卵とされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ブラジル・ボリビア国境、グアポレ川/イテネス川流域
    元記事の言語:英語
    元記事の公開時期:2025年8月4日
    研究発表:2025年
    情報の種類:過去アーカイブ・淡水ガメ・繁殖・研究・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、オオヨコクビガメです。

    学名はPodocnemis expansa。南米に分布するヨコクビガメの仲間で、ヨコクビガメ類の中では最大種です。鳥羽水族館では甲長が80センチを超える種として紹介され、WCSは最大で全長約1.07メートル、体重約90キロに達すると説明しています。

    首を甲羅の中へまっすぐ引き込むのではなく、横方向へ曲げて収納することが「ヨコクビガメ」という名前の由来です。

    巨大な雌たちは産卵期になると川の砂州へ集まり、砂を掘って卵を産みます。

    ニュースの要約

    これほど多くのカメが同じ場所に集まると、単純に写真を見て数えるだけでは、正確な個体数を把握できません。

    同じ個体を二度数えてしまうこともあれば、別のカメや地形に隠れて見落とされる個体もいます。

    今回の研究では、ドローンで撮影した多数の画像をつなぎ合わせて、砂州全体を一枚の高精細な地図のように再現しました。さらに、移動する個体、重なって見えない個体、二重に記録された個体などを考慮する統計モデルを使い、実際の個体数を推定しています。

    その結果、12日間の産卵期に砂州へ集まったオオヨコクビガメは、4万1,000匹以上と推定されました。

    研究者たちは、この方法を使うことで、ただ壮大な光景を撮影するだけでなく、個体数やその変化を長期間にわたって、より正確に監視できるとしています。

    なぜ今、このニュースを紹介するのか

    このニュースは、単に「たくさんのカメがいた」という話ではありません。

    野生動物の保護では、現在どれだけの個体がいるのかを把握することが重要です。

    けれど、広大なアマゾン流域で、短期間に何万匹ものカメが移動する状況を、人間が地上から正確に数えるのは簡単ではありません。

    ドローンと統計モデルによって個体数を継続的に調べられるようになれば、前年より増えたのか、減ったのか、産卵地に異変が起きていないかを判断するための重要な記録になります。今回開発された方法は、同じように大群をつくる鳥類や海洋哺乳類などの調査にも応用できるとされています。

    4万匹いても安心とは限らない

    4万1,000匹という数字だけを見ると、オオヨコクビガメは非常に多いように感じます。

    しかし、数多くの個体が限られた砂州へ集中するということは、その場所が失われたときの影響も大きいということです。

    水位の変化、砂州の消失、人間による卵や成体の採取、産卵地周辺の開発などが起これば、一度に多くの個体の繁殖が影響を受ける可能性があります。

    WCSは地域住民や行政と協力し、オオヨコクビガメと、その産卵に必要な砂州を守る活動を続けています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、普段は広大な川の中で離れて暮らしているカメたちが、同じ時期に同じ場所へ集まることです。

    一匹だけでも巨大なオオヨコクビガメが、数万匹。

    川の中から次々と姿を現し、砂州へ上がり、土を掘る。

    その光景は、生き物の群れというよりも、遠い昔から続く巨大な儀式のように見えます。

    けれど、その壮大な時間は、産卵できる砂州と、そこへ戻れる川が残っているからこそ続いています。

    数を数えることは、カメを数字へ変えることではありません。

    来年も、10年後も同じ川へ戻ってこられるように、今そこにいるカメたちの存在を記録することなのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    でかい熱帯性の亀を飼いたいよ〜!!

    出典

    Wildlife Conservation Society
    「Novel Counting Method Using Drones Helps to Verify World’s Largest Freshwater Turtle Nesting Event」

    Journal of Applied Ecology
    「Estimating abundance of aggregated populations with drones while accounting for multiple sources of errors」

    鳥羽水族館・生きもの図鑑
    「オオヨコクビガメ」

  • 【亀ニュースアーカイブ】オーストラリアの不思議な淡水ガメ、洪水で繁殖地に大きな打撃

    【亀ニュースアーカイブ】オーストラリアの不思議な淡水ガメ、洪水で繁殖地に大きな打撃

    今回のニュース

    2025年、オーストラリア・クイーンズランド州に生息するメアリーリバータートルが、洪水によって厳しい繁殖シーズンを迎えていると報じられました。

    The Guardianの記事によると、2024年12月の洪水により、メアリーリバータートルの重要な繁殖地であるティアロ周辺では、そのシーズンの巣の約半分が失われたとされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:オーストラリア、クイーンズランド州、メアリー川流域
    元記事の言語:英語
    元記事の公開時期:2025年4月
    情報の種類:過去アーカイブ・淡水ガメ・保護活動・繁殖地被害

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、メアリーリバータートルです。

    メアリーリバータートルは、オーストラリア南東クイーンズランドのメアリー川に生息する淡水ガメです。記事では、総排出腔付近の構造を通じて水中の酸素を取り込むことができる、非常に特殊な淡水ガメとして紹介されています。

    ニュースの要約

    メアリーリバータートルは、すでに厳しい状況に置かれている絶滅危惧の淡水ガメです。

    The Guardianの記事では、この種の野生個体数は推定約10,000匹で、1960年代以降に個体数が約80%減少したと紹介されています。さらに、2024年12月の洪水では川の水位が大きく上がり、ティアロの重要な繁殖地で、そのシーズンの巣の約半分が失われたとされています。

    地域のボランティアたちは、20年以上にわたってメアリーリバータートルの保護に関わってきました。洪水の際には、一部の巣をより高い場所へ移すなどして、少しでも卵を守ろうとしたと報じられています。

    しかし、巣を守る活動だけで問題が解決するわけではありません。

    記事では、繁殖成績の悪化、生息地への影響、捕食、気候変動、そして若い個体が十分に成長していない可能性など、複数の課題が重なっていることも紹介されています。

    なぜ今、このニュースを紹介するのか

    このニュースは2025年の記事ですが、淡水ガメの保護を考えるうえで、とても重要な記録だと思います。

    ウミガメの保護では、砂浜や海岸が注目されることが多い。
    でも、淡水ガメにもまた、卵を産む場所があり、川の流れがあり、増水や洪水に左右される繁殖の時間があります。

    メアリーリバータートルは、川の中で静かに生きているカメです。
    でもその静かな暮らしは、気候や水位、人間の保護活動、地域のボランティアの努力と深くつながっています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、淡水ガメの繁殖地が、思っている以上に繊細だということです。

    川に暮らすカメは、ただ水の中にいればいいわけではありません。
    産卵できる場所があり、卵が流されない高さがあり、子ガメが孵化して川へ向かえる環境が必要です。

    洪水は自然の一部です。
    でも、もともと個体数が減っている種類にとって、ひとつの繁殖シーズンを失うことは大きな痛手になります。

    記事の中では、保護関係者が「毎年が重要だ」という趣旨の危機感を示しています。
    亀は長生きする生き物だけど、だからといって繁殖の失敗を何年も積み重ねていいわけではない。

    長く生きるからこそ、次の世代へつなぐ一回一回の繁殖が重いのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    メアリーリバータートル。

    一度野生の個体を見てみたいぜ。

    オーストラリアから固有種の輸出を許可する未来が訪れますように。

    オーストラリアの亀をもっと知りたいよ〜

    出典

    元記事:The Guardian「‘Every year matters’: Queensland’s critically endangered ‘bum-breathing’ turtle battles the odds」

  • 【世界の亀ニュース】マダガスカルで洪水に流された絶滅危惧のリクガメたちを救助

    【世界の亀ニュース】マダガスカルで洪水に流された絶滅危惧のリクガメたちを救助

    今回のニュース

    2025年1月、マダガスカル南部で、絶滅危惧種のリクガメたちが洪水に巻き込まれ、大規模な救助活動が行われました。

    AP通信によると、サイクロン「Dikeledi」の影響で、Lavavolo Tortoise Centerが洪水に見舞われ、保護されていたホウシャガメやクモノスガメなど約12,000匹が流される事態になりました。これらのリクガメの多くは、もともと違法取引から保護された個体だったと報じられています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:マダガスカル南部
    元記事の言語:英語
    元記事の公開時期:2025年1月
    情報の種類:過去アーカイブ・救助・保護活動・災害

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、主にホウシャガメとクモノスガメです。

    ホウシャガメは、黒い甲羅に黄色い放射状の模様を持つ美しいリクガメとして知られています。AP通信の記事では、ホウシャガメは100年以上生きることもある長寿のリクガメであり、マダガスカルでは生息地破壊や密猟、違法ペット取引などにより深刻な危機にあると紹介されています。

    ニュースの要約

    Lavavolo Tortoise Centerには、約12,000匹のホウシャガメやクモノスガメが保護されていました。

    しかし、サイクロンによる洪水で施設が浸水し、多くのリクガメたちが流されてしまいました。
    記事によると、施設スタッフ、地域住民、警察官たちが協力し、水の中を歩きながら容器を使ってリクガメを集めたり、壊れた建物の一部を即席のいかだのように使ったりして救助にあたったとされています。

    Turtle Survival Allianceのマダガスカル責任者は、10,000匹以上を救えた可能性があるとしつつも、約700匹の死亡も確認されたと報じられています。多くの個体は施設に戻されましたが、洪水によって保護施設そのものにも大きな被害が出ました。

    なぜ今、このニュースを紹介するのか

    このニュースは2025年の記事ですが、「亀を守る」ということを考えるうえで、とても重要な記録だと思います。

    これらのリクガメたちは、違法取引から救われたあと、保護施設で守られていました。
    けれど、その保護施設もまた、自然災害によって危機にさらされる。

    亀を守るということは、密猟や違法取引と戦うだけではありません。
    保護したあとの場所をどう守るのか。
    災害が起きたとき、どう救うのか。
    地域の人たちとどう協力するのか。

    そういう現実まで含めて、亀の保護なのだと感じます。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、地域の人たちがリクガメを救うために動いたことです。

    水に流された何千匹ものリクガメを見つけ、集め、運び、戻す。
    それは簡単なことではありません。

    しかも相手は、ただの「数」ではない。
    一匹一匹が、長い時間を生きるリクガメです。

    25歳から50歳くらいの個体でも、リクガメの世界ではまだ若い個体として表現されています。人間の感覚とはまったく違う時間を生きる生き物たちが、洪水の中で必死に生き延びようとしていた。そう思うと、このニュースは単なる災害救助ではなく、亀たちの時間を守るための出来事に見えてきます。

    湯川亀吉の一言

    なるほど。

    出典

    元記事:AP News「Thousands of endangered tortoises are rescued in Madagascar after their sanctuary is flooded」

  • 【世界の亀ニュース】湖の水から世界最希少のカメを探す――シャンハイハナスッポンの環境DNA調査

    【世界の亀ニュース】湖の水から世界最希少のカメを探す――シャンハイハナスッポンの環境DNA調査

    今回のニュース

    2025年1月、世界で最も希少なカメの一つとされるシャンハイハナスッポンを探すため、現地へ持ち運べる新しい環境DNA検査が開発されたと発表されました。

    この検査は、湖や貯水池から採取した水を調べ、そこにシャンハイハナスッポンのDNAが含まれているかを現場で判定するものです。目視だけでは発見が難しい巨大な湖でも、カメが存在する可能性を調べられるようになります。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ベトナム北部
    主な調査地:ハノイ近郊のドンモ湖など
    元記事の言語:英語
    元記事の公開時期:2025年1月15日
    情報の種類:過去アーカイブ・淡水ガメ・環境DNA・保護研究

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、シャンハイハナスッポンです。

    学名はRafetus swinhoei。中国南部とベトナムに分布していた巨大なスッポンの仲間で、英語ではSwinhoe’s Softshell TurtleやYangtze Giant Softshell Turtleなどと呼ばれています。河川や湖などの淡水域に生息し、現存する淡水ガメの中でも特に大型になる種類です。

    甲羅には一般的なカメのような硬い鱗板がなく、皮膚で覆われた平たい体をしています。

    鼻先は管のように伸び、水面へ顔全体を出さなくても呼吸しやすい形になっています。巨大な体でありながら、深い湖の濁った水中に潜れば、人間が姿を確認することは簡単ではありません。

    ニュースの要約

    環境DNAとは、生き物が水中へ残した皮膚の細胞、排泄物などに含まれるDNAのことです。

    カメの姿を直接見つけられなくても、水を採取して分析すれば、その場所に対象種が存在した可能性を調べられます。今回の検査では、対象となるDNAを増幅して検出するqPCRという技術が利用されています。

    従来の環境DNA調査では、採取した水や試料を専門的な研究施設へ運び、結果が出るまで長い時間がかかることがありました。

    今回開発された装置は現地へ持ち運ぶことができるため、研究者や保護関係者が湖の近くで検査を進められます。国外の研究施設へ試料を輸送する必要も減り、調査結果を早く保護活動へ反映できる可能性があります。

    開発チームは、約1,260ヘクタールに及ぶベトナムのドンモ湖で検査を実施し、非常に広い水域でもシャンハイハナスッポンのDNAを検出できることを示しました。

    複数地点から採取した水をまとめて調べる方法も検討され、限られた検査回数で広い範囲を調査するための工夫が行われています。

    なぜこのカメを探しているのか

    シャンハイハナスッポンは、絶滅寸前まで減少しています。

    2025年の発表時点では、中国の蘇州動物園で飼育されている高齢の雄と、ベトナムの湖に存在すると考えられていた野生個体が紹介されていました。新たな個体、特に繁殖可能な雌を見つけられなければ、種を将来へ残すことは極めて難しい状況です。

    その後も状況は非常に厳しく、2026年の保全情報では、確実に生存が確認されている個体は中国で飼育されている雄一匹とされています。

    一方、ベトナム北部では未確認個体の存在を示す情報や、別の湖で撮影された候補個体も報告されており、保護団体は環境DNA、聞き取り調査、ドローン、カメラなどを使った捜索を続けています。

    姿が見えなくても、存在を探せる

    巨大なカメが湖にいるなら、簡単に見つけられそうにも思えます。

    でも、湖は広く、水は濁り、カメは長時間水中へ潜っています。

    湖面に鼻先だけを出して呼吸し、再び水中へ沈んでしまえば、遠くから見つけるのはほとんど不可能です。

    環境DNA調査の重要なところは、カメそのものを目撃できなくても、そのカメが水中へ残した痕跡を探せることです。

    一滴の水の中に、まだ人間が出会っていない一匹の存在が残されているかもしれません。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、一匹を探すために、巨大な湖そのものを調べていることです。

    普通の生物調査では、ある程度まとまった個体数がいることを前提にする場合があります。

    でも、シャンハイハナスッポンの場合は違います。

    探しているのは、群れではない。
    何十匹でもない。

    世界のどこかに残っているかもしれない、たった一匹です。

    その一匹が雄なのか雌なのかによって、種の未来が変わる可能性があります。

    だから研究者たちは、水をすくい、その中に残された目に見えない痕跡を調べています。

    湯川亀吉の一言

    そういえば、4年前にホアンキエム湖に行ったな!!

    でかいシャンハイハナスッポンのオブジェを見ましたよ?

    写真撮っておけばよかった。

    行商のお姉さんから買ったライチが超美味しかった。

    出典

    Wildlife Conservation Society
    「Scientists Develop First Portable eDNA Test Which Is Able to Detect One of the Rarest of the Rare Wildlife Species, a Swinhoe’s Softshell Turtle, in a Massive Body of Water」

    The Reptile Database
    「Rafetus swinhoei」

    Turtle Survival Alliance
    「Swinhoe’s Giant Softshell Turtle」

  • 【世界の亀ニュース】一軒の家から10,976匹 密輸から救われたホウシャガメを、もう一度マダガスカルの森へ

    【世界の亀ニュース】一軒の家から10,976匹 密輸から救われたホウシャガメを、もう一度マダガスカルの森へ

    今回は、マダガスカルにしか生息しない美しいリクガメ、ホウシャガメをめぐる大規模な救護と野生復帰のニュースを紹介します。

    2018年4月。

    マダガスカル南西部のトゥリアラで、一軒の民家から発見されたホウシャガメは、

    10,976匹。

    数十匹でも、

    数百匹でもありません。

    一万匹を超えるカメが、一つの建物に集められていました。

    そこから始まったのは、

    カメを押収して終わる保護活動ではありませんでした。

    救護する。

    健康を取り戻す。

    何年も育てる。

    野生へ戻せる個体を選ぶ。

    帰る森を確保する。

    地域住民と一緒にその場所を守る。

    そして、

    もう一度、人間の手から離す。

    長い時間をかけた「密輸から野生復帰へ」の計画です。

    今回のニュース

    2018年4月10日、マダガスカル南西部の都市トゥリアラで、警察と環境当局が一軒の住宅を捜索しました。

    そこで確認されたのが、

    10,976匹のホウシャガメでした。

    発見されたカメの多くは若い個体で、十分な水や餌を得られない状態に置かれていました。

    Turtle Survival Alliance(TSA)を中心に、マダガスカル国内外の動物園、獣医師、飼育スタッフなどが救護に参加。

    生き残った個体は、トゥリアラから北へ約29km離れたIfatyの保護施設へ移され、健康確認や水分補給、治療、個体識別などが進められました。

    この事件は、

    TSAがそれまで経験した中でも最大規模のリクガメ救護の一つとなりました。

    どこの国・地域の話か

    国:マダガスカル
    最初の大量押収:トゥリアラ周辺
    発見日:2018年4月10日
    対象種:ホウシャガメ
    学名:Astrochelys radiata
    英名:Radiated Tortoise
    情報の種類:リクガメ・密輸・違法取引・救護・野生復帰・地域保全

    ホウシャガメは、マダガスカル南部から南西部にのみ自然分布する固有種です。

    乾燥した低木林、トゲの多いスパイニーフォレストなどに暮らしています。

    登場する亀

    今回の主役は、

    ホウシャガメ。

    学名は、

    Astrochelys radiata。

    英語ではRadiated Tortoiseと呼ばれます。

    京都市動物園でも「ホウシャガメ」という和名が使われており、最大甲長は約40cmと紹介されています。

    名前の由来は、

    甲羅です。

    黒っぽい甲板の中心から、

    黄色い線が外側へ向かって伸びる。

    まるで光が放射しているように見えます。

    Smithsonian’s National Zooは、この放射模様について、インドホシガメなど他の星模様を持つリクガメよりも細かく複雑であることを特徴として挙げています。

    世界で最も美しいカメの一つ

    ホウシャガメは、その甲羅の美しさから、

    「世界で最も美しいリクガメの一つ」

    として紹介されることがあります。

    美しい。

    珍しい。

    欲しい。

    その評価が、

    このカメを追い詰める理由にもなりました。

    野生個体は国際的なペット取引のために捕獲され、さらにマダガスカル国内では食用目的の捕獲も続いてきました。

    生息地そのものも、農地化や炭づくりなどによって失われています。

    昔は「触ってはいけないカメ」だった

    マダガスカル南部の一部地域には、

    ホウシャガメを傷つけたり食べたりすることを禁じる伝統的な**「fady(ファディ)」**があります。

    祖先と結び付けて考えられる地域もあり、

    長い間、

    文化そのものがホウシャガメを守ってきました。

    しかし、

    地域外から人が入る。

    価値の高いカメとして売買される。

    伝統的な禁忌を共有しない人が捕る。

    その結果、

    文化だけでは個体群を守れなくなっていきました。

    2018年4月、一軒の家に10,976匹

    そして2018年4月10日。

    トゥリアラの住宅で、

    10,976匹。

    とてつもない数のホウシャガメが発見されました。

    普通に考えれば、

    一日や二日で集められる数ではありません。

    一匹。

    また一匹。

    別の場所からも一匹。

    それが積み重なって、

    一万匹を超えた。

    その数だけ、

    野生の森からホウシャガメが消えていたことになります。

    そして半年後、また数千匹

    さらに同じ2018年10月にも、大規模な押収が発生しました。

    TSAによると、2018年だけで保護下へ入ったホウシャガメは17,000匹を超えました。

    つまり、

    4月の事件は、

    一度だけ起きた異常な出来事ではありませんでした。

    それだけ大規模な捕獲と違法取引が、

    このカメを取り巻いていたということです。

    保護した瞬間から、別の問題が始まる

    密輸されるカメを見つけた。

    押収した。

    助かった。

    そう思いたくなります。

    でも、

    一万匹を保護した瞬間、

    今度は人間が一万匹を生かさなければなりません。

    水。

    餌。

    飼育場所。

    病気の確認。

    衛生管理。

    個体識別。

    獣医療。

    スタッフ。

    そして、

    何年間も続く費用。

    TSAはマダガスカルに複数の保全施設を整備し、押収されたホウシャガメの大規模な飼育体制を作りました。現在のTSAのマダガスカル事業でも、違法取引から救出したホウシャガメの救護、長期飼育、野生復帰が主要活動になっています。

    でも、ずっと飼うことが目的ではない

    何万匹も保護している。

    だったら、

    大きな保護施設を作って、

    そこで一生飼えばいい。

    そう考えることもできます。

    でも、

    ホウシャガメは本来、

    飼育施設にいる動物ではありません。

    マダガスカル南部の森を歩くリクガメです。

    そこでTSAは、

    Confiscation to Reintroduction Strategy

    という考え方を進めました。

    日本語にすると、

    「押収から再導入へ」。

    密輸から救出したカメを、

    可能な限り、

    もう一度野生へ戻していく計画です。

    ただ森へ置けばいいわけではない

    一度長期間飼育したカメを、

    空いている森へ置けばいい。

    そんな単純な話でもありません。

    その地域に病気を持ち込まないか。

    健康状態は十分か。

    野生で餌を取れるか。

    その森に十分な食物があるか。

    再び密猟されないか。

    地域の人々が保護に協力してくれるか。

    一つずつ確認する必要があります。

    そのため、放流候補となった個体には獣医師による健康検査が行われています。

    感染症検査も含め、

    「放しても大丈夫なカメか」

    を確認します。

    2021年、最初の1,000匹

    そして2021年。

    大きな転換点が来ます。

    TSAは、

    1,000匹のホウシャガメを、マダガスカル南部の地域住民が保護する森林へ移しました。

    違法取引から救出され、

    何年間も人間の管理下で暮らしてきたカメたちです。

    ただし、

    いきなり森全体へ自由にしたわけではありません。

    まず約6ヘクタールの順応エリアに入り、

    その土地で生活する期間が設けられました。

    そして2022年3月、

    囲いが開かれ、

    カメたちは周囲のスパイニーフォレストへ自由に移動できるようになりました。

    「ソフトリリース」という考え方

    これは、

    soft release(ソフトリリース)

    と呼ばれる方法です。

    人間の管理下から、

    いきなり完全な野生へ移すのではない。

    まず、

    これから暮らす場所に慣れてもらう。

    気温。

    植物。

    地面。

    匂い。

    雨。

    その土地そのものを覚える。

    そして、

    囲いを開ける。

    カメは、

    自分の意思で外へ歩いていきます。

    カメに発信器を付ける

    放したら、

    それで終わりではありません。

    再導入個体の一部には、

    VHF無線発信器やGPSロガーが装着されました。

    どこへ歩くのか。

    どのくらい移動するのか。

    生き残っているのか。

    どの環境を利用するのか。

    そうした情報を調べます。

    人間の視界から消える。

    でも、

    完全には見失わない。

    それが、

    次に何千匹ものカメを戻すためのデータになります。

    2024年、さらに1,000匹

    取り組みは、

    最初の1,000匹で終わりませんでした。

    2024年5月23日。

    World Turtle Day。

    TSAは、

    さらに1,000匹のホウシャガメを、マダガスカル南西部の地域保護林へ放しました。

    この個体たちも、放流前に健康評価を受け、

    6か月間の隔離期間を経ています。

    2018年に押収された膨大な数のカメたちが、

    少しずつ、

    森へ帰り始めています。

    最終目標は2万匹以上

    TSAは、

    保護下にいるホウシャガメのうち、

    2万匹以上を将来的に野生へ戻す

    という大規模な計画を掲げています。

    2万匹。

    想像するのも難しい数です。

    でも、

    そもそもそれほど多くのカメが、

    人間によって森から持ち出されました。

    だから、

    今度は逆の流れを作ろうとしています。

    森から人間へ。

    ではなく、

    人間から森へ。

    カメだけ戻しても意味がない

    ただし、

    森が安全でなければ、

    2万匹戻しても意味がありません。

    もう一度捕られるかもしれない。

    生息地が失われるかもしれない。

    だから再導入地は、

    地域住民自身が管理する保護林

    として整備されています。

    カメを運ぶだけではない。

    森を守る。

    地域住民と話す。

    監視する人を育てる。

    地域の暮らしと保全を両立させる。

    そこまで作ってから、

    カメを戻します。

    人間がいるから減った。でも、人間がいるから戻せる

    今回のニュースには、

    少し不思議なところがあります。

    ホウシャガメを減らした大きな原因の一つは、

    人間です。

    人間が捕った。

    人間が売った。

    人間が森を変えた。

    でも、

    今ホウシャガメを戻しているのも、

    人間です。

    警察。

    獣医師。

    飼育スタッフ。

    研究者。

    地域住民。

    政府。

    動物園。

    世界中の人が関わっています。

    人間が原因だから、

    人間は何もしないほうがいい。

    ではない。

    壊した側だからこそ、戻す仕事もできる。

    そんな例だと思います。

    京都市動物園にも「密輸から救われたホウシャガメ」がいる

    この話は、

    遠いマダガスカルだけの話でもありません。

    京都市動物園が飼育しているホウシャガメの中にも、

    日本へ密輸される途中、空港で摘発されて保護された個体がいます。

    日本にも、

    違法取引の終着点になった歴史があります。

    「珍しいカメを飼いたい」

    という需要は、

    地球の反対側の野生個体群につながっています。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番注目したいのは、

    保護されたカメを、ずっと「保護されたカメ」のままにしないことです。

    10,976匹。

    押収する。

    助ける。

    それだけでも、

    とてつもない仕事です。

    でも、

    そこで終わらなかった。

    何年も育てる。

    健康を戻す。

    森を探す。

    地域住民と一緒に守る仕組みを作る。

    順応させる。

    囲いを開ける。

    そして、

    一匹ずつ歩いていく。

    人間から遠ざかっていく。

    僕は、

    そこがすごくいいと思います。

    カメを救った証拠は、

    人間の飼育施設に何万匹いることではない。

    人間がどこにいるのか分からなくなるくらい、森へ散らばっていくこと。

    それが最終的な成功なんじゃないかな。

    湯川亀吉の一言

    人間はクズってことだな。
    密猟するやつも、保護するやつも、同じクズだ。

    出典

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「Radiated Tortoise Press Release 2018」
    2018年4月の10,976匹の大量押収と救護活動について。
    URL:
    https://shop.turtlesurvival.org/blogs/news/radiated-tortoise-press-release-2018/

    San Diego Zoo Wildlife Alliance
    「Turtle Survival Alliance Leads Rescue Mission to Save 10,976 Critically Endangered Radiated Tortoises Discovered in Massive Poaching Bust」
    2018年4月19日。
    URL:
    https://sandiegozoowildlifealliance.org/story-hub/2018/04/19/turtle-survival-alliance-leads-rescue-mission-to-save-10976-critically

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「1,000 Radiated Tortoises Return to the Wild」
    2021年8月9日。最初の大規模野生復帰計画について。
    URL:
    https://shop.turtlesurvival.org/blogs/news/1000-radiated-tortoises-return-to-the-wild

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「1,000 Radiated Tortoises Released on World Turtle Day®」
    2024年6月4日。2回目の1,000匹規模の放流について。
    URL:
    https://turtlesurvival.org/1000-radiated-tortoises-released-on-world-turtle-day/

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「Species Spotlight: Radiated Tortoise」
    大量押収、保全繁殖、野生復帰について。
    URL:
    https://turtlesurvival.org/turtleoftheweek-radiated-tortoise/

    Smithsonian’s National Zoo and Conservation Biology Institute
    「Radiated tortoise」
    形態、生息地、食性、保全状況について。
    URL:
    https://nationalzoo.si.edu/animals/radiated-tortoise

    京都市動物園
    「ホウシャガメ/Radiated Tortoise」
    和名、分布、形態について。
    URL:
    https://zoo.city.kyoto.lg.jp/zoo/animals/g_radiata

  • 【世界の亀ニュース】112年ぶりに現れた幻のゾウガメ 絶滅したと思われたフェルナンディナゾウガメ「フェルナンダ」

    【世界の亀ニュース】112年ぶりに現れた幻のゾウガメ 絶滅したと思われたフェルナンディナゾウガメ「フェルナンダ」

    今回は、エクアドル・ガラパゴス諸島で、100年以上絶滅したと考えられていたフェルナンディナゾウガメが再発見されたニュースを紹介します。

    一匹の雌。

    名前は、

    Fernanda(フェルナンダ)。

    2019年に見つかったこの一匹によって、

    「すでに絶滅した」

    と思われていた種の歴史が、もう一度動き始めました。

    今回のニュース

    2019年2月、ガラパゴス諸島のフェルナンディナ島で、一匹の雌の巨大なリクガメが発見されました。

    発見したのは、ガラパゴス国立公園とGalápagos Conservancyの調査チームです。

    フェルナンディナ島で、その島固有のゾウガメが最後に正式に確認されたのは1906年。

    つまり、

    112年以上にわたって、生きた個体が確認されていなかった場所で見つかった一匹でした。

    しかし、発見しただけでは、

    「フェルナンディナゾウガメが生き残っていた」

    とは断定できませんでした。

    なぜなら、

    その一匹の姿が、1906年に採集された唯一の標本とかなり違っていたからです。

    どこの国・地域の話か

    国:エクアドル
    地域:ガラパゴス諸島
    島:フェルナンディナ島
    再発見:2019年2月
    遺伝学的な確認:2021〜2022年
    対象種:フェルナンディナゾウガメ
    学名:Chelonoidis phantasticus
    情報の種類:リクガメ・再発見・遺伝子解析・絶滅危惧種・保全

    フェルナンディナ島は、ガラパゴス諸島西部に位置する火山島です。

    島の中心には活火山があり、溶岩地帯が広がる非常に厳しい環境です。科学論文では、フェルナンディナ島は地球上でも特に原始的な自然が残された大きな島の一つとして紹介されています。

    登場する亀

    今回の主役は、

    フェルナンディナゾウガメ。

    学名は、

    Chelonoidis phantasticus。

    英語ではFernandina Giant Tortoise、Fernandina Island Galápagos Tortoiseなどと呼ばれています。

    日本でも「フェルナンディナゾウガメ」という和名が使われています。

    ガラパゴスゾウガメの仲間ですが、フェルナンディナ島だけに成立した独自の系統です。

    すべては1906年の一匹から始まった

    この種について科学者が持っていた証拠は、長い間ほとんど一つしかありませんでした。

    1906年。

    California Academy of Sciencesの探検隊に参加していたRollo Beckが、フェルナンディナ島で一匹の雄のゾウガメを採集します。

    その個体が、

    フェルナンディナゾウガメとして知られる唯一の確実な標本

    になりました。

    その雄は非常に特徴的な甲羅を持っていました。

    甲羅前方が大きく持ち上がった、

    いわゆる鞍型(サドルバック型)。

    さらに縁甲板も大きく張り出していました。

    科学論文では、その形態は他のガラパゴスゾウガメと比較しても非常に特徴的だったとされています。

    ところが、

    その後、同じカメが見つからない。

    100年以上、姿を見せなかった

    1906年以降、生きたフェルナンディナゾウガメが正式に確認されることはありませんでした。

    ただし、

    完全に何の証拠もなかったわけではありません。

    その後の調査では、

    ゾウガメらしい糞。

    歩いた跡。

    植物を食べた痕跡。

    などが何度か見つかっていました。

    つまり、

    「もしかしたら、まだいるのではないか」

    という疑いは残っていた。

    でも、

    カメそのものが見つからない。

    フェルナンディナ島には広大な溶岩地帯があります。

    足場は悪い。

    気温は高い。

    植生の濃い場所もある。

    人間が島全体をくまなく探すことは簡単ではありません。

    2019年、一匹の雌が現れた

    そして2019年。

    調査チームがフェルナンディナ島へ入りました。

    その中で、

    Washington Tapia氏とガラパゴス国立公園レンジャーのJeffreys Málaga氏らが、一匹の雌のゾウガメを発見します。

    100年以上見つからなかった島で、

    本当にゾウガメがいた。

    巨大なニュースでした。

    この雌には、島の名前Fernandinaから、

    Fernanda

    という愛称が付けられました。

    でも、姿が違った

    ところが問題があります。

    フェルナンダは、

    1906年の雄とあまり似ていませんでした。

    1906年の標本は、非常に強いサドルバック型。

    一方のフェルナンダは、

    それほど極端な形をしていません。

    さらに体も比較的小さい。

    そのため、

    別のガラパゴスゾウガメが過去に人間によってフェルナンディナ島へ運ばれ、その子孫が残っていた可能性も否定できませんでした。

    つまり、

    島で見つかったからといって、

    フェルナンディナゾウガメとは限らなかった。

    113年前の標本とDNAを比較する

    そこで科学者が使ったのが、

    DNAです。

    フェルナンダから遺伝情報を取得する。

    そして比較対象にしたのが、

    1906年に採集された雄の博物館標本でした。

    100年以上前のカメと、

    今生きているカメ。

    そのゲノムを比較します。

    さらに、他のガラパゴスゾウガメ各系統のゲノムとも比較しました。

    結果は「同じ系統」

    2022年6月9日。

    科学誌Communications Biologyに論文が発表されました。

    タイトルは、

    “The Galapagos giant tortoise Chelonoidis phantasticus is not extinct”

    つまり、

    「フェルナンディナゾウガメは絶滅していない」

    です。

    ゲノム解析の結果、

    フェルナンダと1906年の雄は、

    同じフェルナンディナ島固有の系統に属することが確認されました。

    しかも、その系統は他のガラパゴスゾウガメとは遺伝的に区別されていました。

    一匹のカメによって、

    100年以上前に止まっていた種の記録がつながりました。

    見た目が違っても、同じ種だった

    この結果はとても面白いと思います。

    1906年の雄とフェルナンダ。

    甲羅の形はかなり違う。

    でもDNAでは、

    同じ系統だった。

    つまり、

    一匹の標本だけを見て、

    「この種類は必ずこの形」

    と考えることには危険があります。

    性別。

    年齢。

    生活環境。

    栄養状態。

    個体差。

    さまざまな要因によって、生き物の形は変化します。

    実際、研究者はフェルナンダが比較的小さい理由について、島の限られた植生環境によって成長が抑えられた可能性も指摘しています。

    「一匹見つかった」は復活ではない

    ここで終われば、

    「絶滅したカメが復活した!」

    という、とても明るい話になります。

    でも、

    実際にはもっと厳しい。

    フェルナンダは、

    確認されている唯一の生きたフェルナンディナゾウガメです。

    一匹だけでは、

    次の世代を作れません。

    必要なのは、

    もう一匹。

    特に繁殖可能な雄です。

    島中で仲間を探す

    フェルナンダが見つかったあと、ガラパゴス国立公園とGalápagos Conservancyは、何度もフェルナンディナ島へ調査隊を送りました。

    目的はただ一つ。

    フェルナンダの仲間を探すこと。

    2022年の大規模調査では18人のチームが島へ入り、約65平方キロメートルを捜索しました。

    火山島。

    溶岩。

    暑さ。

    険しい地形。

    そこを歩きながら、

    カメを探します。

    「いる」痕跡はある

    興味深いことに、

    フェルナンダ以外のカメがいる可能性を示す痕跡は見つかっています。

    歩いた跡。

    糞。

    カメが休んだような場所。

    Galápagos ConservancyのWashington Tapia氏は、こうした痕跡から少なくとも数匹が島にいる可能性を考えていました。

    しかし、

    実物が見つからない。

    痕跡はある。

    でもカメがいない。

    フェルナンディナ島は、

    今でも答えを簡単には見せてくれません。

    2023年になっても、仲間は見つからなかった

    2023年12月、Galápagos Conservancyはフェルナンダについて改めて報告しています。

    それまで実施された大規模な調査でも、

    新たなフェルナンディナゾウガメは確認できませんでした。

    そのためフェルナンダが、この種の最後の一匹、いわゆるendlingである可能性も現実味を帯びています。

    かつてピンタゾウガメの最後の一匹、

    「ロンサム・ジョージ」

    が歩いた道と重なります。

    「絶滅していなかった」と「助かった」は違う

    今回のニュースで重要なのは、

    この二つを分けることだと思います。

    絶滅していなかった。

    これは事実です。

    でも、

    種が救われた。

    これはまだ言えません。

    一匹見つかっただけだからです。

    もしフェルナンダ以外の個体が本当にいなければ、

    彼女がどれだけ長く生きても、

    その先で系統は途切れます。

    だから、

    再発見はゴールではない。

    むしろ、

    そこから保全が始まります。

    博物館の一匹が、100年後に役立った

    もう一つ注目したいのが、

    1906年の標本です。

    100年以上前、

    一匹の雄が採集されました。

    その個体はもう生きていません。

    でも、

    標本として残っていた。

    そのDNAがあったから、

    2019年に見つかったフェルナンダの正体を確かめることができました。

    昔の博物館資料が、

    100年以上後の絶滅危惧種保全に使われたことになります。

    標本は、

    ただ昔の生き物を展示するものではない。

    未来の科学者がまだ想像していない方法で、

    情報を取り出せる「記録」でもあります。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番面白いと思うのは、

    「見つからない」と「いない」は同じではない

    というところです。

    1906年。

    一匹見つかる。

    それから100年以上、

    見つからない。

    普通なら、

    もういないと思う。

    それでも、

    糞がある。

    足跡がある。

    何かがおかしい。

    そして2019年。

    本当に一匹出てきた。

    亀という動物は、

    人間が思っている以上に、

    見つからないまま生きることができるのかもしれません。

    しかも舞台は、

    巨大な火山島。

    もしかすると、

    今この瞬間も、

    人間がまだ見つけていないフェルナンディナゾウガメが、

    溶岩の向こう側を歩いているのかもしれません。

    その可能性がゼロではない。

    僕はそこに、このニュースの魅力を感じます。

    湯川亀吉の一言

    人間の本質はクソだってことがよくわかったよ。

    ま、俺が世界で一番クソだけどね。

    出典

    Communications Biology / Nature
    「The Galapagos giant tortoise Chelonoidis phantasticus is not extinct」
    2022年6月9日。フェルナンダと1906年標本の全ゲノム解析を行った科学論文。

    Galápagos Conservancy
    「Breaking: Female Tortoise Found on Fernandina Island」
    2019年2月19日。フェルナンダ発見時の公式発表。

    Galápagos Conservancy
    「Publication Confirms Fernanda as Fernandina Giant Tortoise」
    DNA解析によってフェルナンダの種が確認されたことを紹介。

    Princeton University
    「’Fantastic giant tortoise,’ believed extinct, confirmed alive in the Galápagos」
    2022年6月9日。ゲノム研究とフェルナンダの再発見について。

    Galápagos Conservancy
    「The Enigma Of Fernanda – A Lone Survivor In Galápagos」
    2023年12月19日。仲間を探す調査とフェルナンダの状況について。