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  • 【世界の亀ニュース】ベトナムで希少な「ヨツメイシガメ」が民家の庭に現れる

    【世界の亀ニュース】ベトナムで希少な「ヨツメイシガメ」が民家の庭に現れる

    今回は、ベトナム中部のフエで報じられた、希少な淡水ガメの保護に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    ベトナム中部のフエで、希少なヨツメイシガメが民家の庭に現れました。

    Vietnam Association for Conservation of Nature and Environmentの記事によると、フエ市ビンディエン地区に住む女性が、自宅の庭に迷い込んできた珍しいカメを発見し、すぐに当局へ引き渡しました。その後、このカメは手続きを経て自然へ戻されたとされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ベトナム、フエ市ビンディエン地区
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年6月15日
    情報の種類:新着ニュース・保護活動・野生復帰

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ヨツメイシガメです。

    英語では Four-eyed turtle と呼ばれるカメで、後頭部付近に「目」のように見える模様があることから、その名前で呼ばれています。Peopleの記事でも、この種は中国、ラオス、ベトナムの森林に覆われた山地の沢などに生息する希少なカメとして紹介されています。

    ニュースの要約

    フエ市ビンディエン地区に住む女性は、自宅の庭で見慣れないカメを発見しました。

    そのカメは希少なヨツメイシガメで、住民はすぐに森林保護当局へ連絡しました。
    当局はカメを引き取り、必要な手続きを行ったうえで、自然環境へ戻したと報じられています。

    Peopleの記事では、ヨツメイシガメは違法なエキゾチックペット取引の影響を受けている種でもあり、IUCNでも絶滅危惧種として扱われていると紹介されています。

    同じ時期には、別のフエ市民がキイロアタマハコガメを自主的に引き渡したことも報じられており、地域住民が希少なカメを見つけたときに保護へつなげる動きが見られます。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、希少なカメが、特別な保護施設ではなく、ふつうの民家の庭に現れたというところです。

    ヨツメイシガメは、名前からして不思議な存在です。
    本当の目は前を見ているのに、後頭部にはもうひとつの目のような模様がある。

    まるで、森の奥で何かを見ているカメのようにも感じます。

    でも、その不思議さや美しさが、違法なペット取引の対象にもなってしまう。
    珍しいから守られるのではなく、珍しいから狙われることもある。

    今回のように、地域の人が見つけて、捕まえて売るのではなく、当局へ連絡する。
    その一つの判断が、カメの未来を変えるのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    ヨツメイシガメ欲しいんだよね〜。

    出典

    元記事:Vietnam Association for Conservation of Nature and Environment
    「Rare four-eyed turtle found wandering into Hue resident’s yard」

    関連報道:People
    「Rare ‘Four-Eyed’ Turtle Wanders Into a Woman’s Yard, She Immediately Knew What to Do」

  • 【世界の亀ニュース】6週間で90%の個体が消えた川 16匹から始まったベリンジャーリバータートル復活計画

    【世界の亀ニュース】6週間で90%の個体が消えた川 16匹から始まったベリンジャーリバータートル復活計画

    今回は、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の一本の川だけに生息する希少な淡水ガメを紹介します。

    学名は、

    Myuchelys georgesi

    英語では、

    Bellinger River Snapping Turtle
    または
    Bellinger River Saw-shelled Turtle

    と呼ばれています。

    日本語で広く定着した標準和名は確認できなかったため、この記事では英名をもとに、

    ベリンジャーリバータートル

    と表記します。

    2015年。

    このカメが暮らす川で、突然カメが死に始めました。

    原因は、それまで科学に知られていなかったウイルス。

    わずか6週間。

    その間に、

    野生個体群のおよそ90%が失われました。

    種そのものが、

    一本の川から消える寸前まで追い込まれました。

    今回のニュース

    今回取り上げるのは、一つの出来事というより、

    2015年から現在まで続いている復活計画そのもの

    です。

    2015年の大量死を受け、ニューサウスウェールズ州政府とTaronga Zooなどは緊急対応を開始。

    病気の影響を受けていない健康なカメを探し、

    16匹を保全繁殖の基礎個体として確保しました。

    そこから繁殖が始まります。

    現在、Taronga Zooでは10回の繁殖シーズンを通じて、

    500匹を超える子ガメが孵化。

    その子孫を使って5回の野生復帰が実施され、

    197匹の若いカメがベリンジャー川へ戻された

    と報告されています。

    16匹。

    そこから、

    500匹以上。

    そして、

    再び川へ。

    でも、

    この物語はまだ終わっていません。

    どこの国・地域の話か

    国:オーストラリア
    州:ニューサウスウェールズ州
    地域:ニューサウスウェールズ州北部
    河川:Bellinger River(ベリンジャー川)
    対象種:Myuchelys georgesi
    英名:Bellinger River Snapping Turtle / Bellinger River Saw-shelled Turtle
    情報の種類:淡水ガメ・感染症・飼育下繁殖・野生復帰・河川保全

    このカメの大きな特徴は、

    世界中を探しても、ほぼこの川にしかいない

    ということです。

    オーストラリア政府によると、生息域はニューサウスウェールズ州北部のベリンジャー川流域に限られています。

    つまり、

    この一本の川で何か起きれば、

    世界中の個体群が同時に危険になります。

    登場する亀

    ベリンジャーリバータートルは、

    ヘビクビガメ科に属する短い首の淡水ガメです。

    成体の背甲は楕円形で暗褐色。

    雌は甲長約25cm、

    雄は約18cmまで成長します。

    顎から首にかけて淡い黄色の線が入る個体が多く、

    顎の下には、

    2本の小さな肉質突起=バーベル

    を持つ個体もいます。

    岩のある澄んだ川を好む

    このカメは、

    泥の多い沼を主な生活場所にするタイプではありません。

    好むのは、

    流れのある透明な川。

    特に、

    深さのある淵。

    岩。

    礫。

    小石。

    そうしたものが川底にある場所を利用します。

    オーストラリア政府は、2mを超える深い淵で確認されることも多いとしています。

    水底では、

    水生昆虫などの大型無脊椎動物。

    植物。

    果実。

    などを食べる雑食性です。

    2015年2月、川で異変が起きた

    2015年2月。

    ベリンジャー川の岸で、

    カメが次々と見つかるようになります。

    しかし、

    普通ではありませんでした。

    病気になっている。

    衰弱している。

    そして、

    死んでいく。

    当初、

    原因は分かりませんでした。

    水質汚染なのか。

    毒物なのか。

    細菌なのか。

    未知の感染症なのか。

    調査が始まります。

    そして後に、この大量死と強く関連すると考えられる新しいウイルスが特定されました。

    現在、

    Bellinger River Virus

    と呼ばれています。

    6週間

    数字だけ見ると、

    この事件の異常さが分かります。

    大量死が起こる前、

    野生個体群はおよそ4,000匹だったと推定されています。

    ところが、

    わずか6週間で約90%が死亡。

    2015年末には、

    推定約400匹。

    さらに2019年頃には、

    約150匹まで減少した可能性があります。

    数千匹いたカメが、

    一つの季節の中で、

    ほとんどいなくなりました。

    カメの「パンデミック」

    Taronga Zooは、この出来事を紹介する際、

    Turtle pandemic

    という表現を使っています。

    まさに、

    カメだけのパンデミックです。

    しかも、

    このカメには逃げ場がありません。

    広いオーストラリア大陸のあちこちに生息しているなら、

    一つの川で病気が起きても、

    別の地域の個体群が残る可能性があります。

    でも、

    ベリンジャーリバータートルは違う。

    ほぼ一本の川だけ。

    病気がその川を進めば、

    種そのものを巻き込む可能性がある。

    そこで16匹を川から出した

    大量死が続く中、

    保全チームは一つの決断をします。

    健康なカメを、

    川から避難させる。

    16匹。

    この個体たちが、

    将来の保全繁殖の基礎になりました。

    これは、

    ある意味では非常に怖い選択だったと思います。

    野生動物を自然から取り上げる。

    でも、

    そのまま川に置いておけば、

    ウイルスに感染して死ぬ可能性もある。

    捕まえるリスクと、

    残すリスク。

    その中で、

    種全体を失わないために、

    人間の管理下へ移しました。

    「保険」としての16匹

    この16匹は、

    ただ救助されたカメではありません。

    もし川の個体群が完全に消えてしまっても、

    種そのものを残すための、

    insurance population=保険個体群

    です。

    つまり、

    世界からこのカメがいなくなるかもしれない状況で、

    最後のバックアップを作ったことになります。

    Taronga Zooで繁殖計画が始まり、

    2017年にはSymbio Wildlife Parkにも第二の繁殖個体群が作られました。

    一か所だけではない。

    もし一つの施設で事故や感染症が起きても、

    別の場所に個体群を残す。

    ここにも、

    「種を失わないための保険」

    という考え方があります。

    そして卵を産んだ

    保全施設へ移されたカメたちは、

    繁殖を始めました。

    最初の繁殖成功時には、

    複数の雌が卵を産み、

    小さな子ガメが孵化しました。

    孵化直後の体重は、

    わずか4〜5グラム程度

    ほぼコインほどの大きさです。

    2018年には、

    その年だけで31匹が孵化。

    前年の22匹と合わせ、

    飼育下個体群が急速に増え始めました。

    現在までに500匹以上が孵化

    そして現在。

    Taronga Zooの保全プログラムでは、

    10回連続の繁殖シーズンで、500匹以上が孵化しました。

    2015年。

    16匹を保護する。

    そこから、

    卵。

    子ガメ。

    また卵。

    また子ガメ。

    何世代もつなぐ。

    一度、

    数百匹規模まで落ちた種を、

    もう一度増やそうとしています。

    でも飼育施設で増やすだけでは意味がない

    この「世界の亀ニュース」で何度も出てくる話だけど、

    ここでも同じです。

    動物園で500匹生まれた。

    それは、

    ものすごい成果です。

    でも、

    ベリンジャーリバータートルは、

    動物園のカメではありません。

    ベリンジャー川のカメです。

    だから、

    最終的には川へ戻さなければなりません。

    2018年、最初の10匹

    最初の試験的な野生復帰は、

    2018年。

    飼育下で生まれ育った若いカメ10匹が、

    ベリンジャー川へ放されました。

    初期の追跡では、

    10匹のうち8匹が生存確認され、

    もう1匹も生きている可能性が高いとされました。

    つまり、

    動物園で生まれたカメでも、川で生活できた。

    この結果が、

    次の放流につながります。

    97匹を一度に川へ

    そして2024年。

    それまでで最大規模となる放流が実施されます。

    数は、

    97匹。

    飼育施設で育てられた若いベリンジャーリバータートルが、

    一度に川へ戻りました。

    この放流によって、

    2018年以降に野生へ戻された数は、

    当時合計179匹になりました。

    その後もプログラムは続き、

    Taronga Zooの現在の情報では、

    197匹が川へ戻された

    とされています。

    放したカメを追いかける

    カメを川へ入れる。

    写真を撮る。

    拍手する。

    それで終わりではありません。

    放流された個体は、

    その後も追跡されます。

    生きているか。

    どこへ移動したか。

    どんな水深を使うか。

    病気になっていないか。

    どんな場所に定着するか。

    そうした情報を集めます。

    野生復帰で本当に知りたいのは、

    「放せたか」ではなく、「放したあと生きられたか」

    だからです。

    そして最大の問題は、まだ川にウイルスがいるかもしれないこと

    ここが、

    この保全プロジェクトの難しいところです。

    原因となったウイルスに対して、

    現在も確立した治療法はありません。

    さらに、

    ウイルスがどのように伝播するのか。

    どこに残っているのか。

    再び大規模な流行が起こる可能性はあるのか。

    完全には解明されていません。

    つまり、

    カメを増やして、

    元の川へ戻す。

    でも、

    その川こそが、かつて大量死が起きた場所。

    そこへ戻さなければ、

    野生復帰にはならない。

    でも、

    戻せば病気に遭遇する可能性がある。

    非常に難しい問題です。

    ワクチンまで研究対象になっている

    オーストラリア政府が挙げている将来の重要な保全策の一つには、

    ニドウイルスに対するワクチン開発

    まで含まれています。

    亀の保全というと、

    巣を守る。

    密猟を防ぐ。

    森を残す。

    そんな活動を想像します。

    でも、

    このカメの場合は、

    ウイルス学。

    獣医学。

    免疫。

    ワクチン。

    そうした分野まで必要になります。

    川そのものを監視する

    さらに、

    病気だけ調べればいいわけではありません。

    水質。

    水生昆虫。

    川岸の植物。

    外来種。

    流域の土地利用。

    全部が、

    カメの生活につながります。

    現在もベリンジャー川では水質調査や大型無脊椎動物の調査が続き、2024〜2025年には病気の監視のため30匹以上のカメが健康診断を受けています。

    河岸では、

    17ヘクタール以上の外来植物除去。

    家畜が川岸へ入り込むのを防ぐ約700mのフェンス設置。

    なども進められています。

    カメを守るというより、

    カメが生きている川全体を診察している

    ようなプロジェクトです。

    卵にも敵がいる

    さらに野生へ戻ったあとには、

    感染症以外の危険もあります。

    雌は晩春になると川岸へ上がり、

    砂や礫のある場所へ、

    10〜15個程度の卵を産みます。

    ところが、

    その卵は、

    キツネ。

    オオトカゲ類。

    などに捕食されます。

    そのため、

    重要な産卵地を守ることも、

    現在の保全計画に含まれています。

    一つ問題を解決すると、

    次の問題が出てきます。

    病気から救う。

    繁殖させる。

    川へ戻す。

    卵を守る。

    川を守る。

    亀一種を守るために、一本の川を見る

    僕は、

    このニュースの面白いところはここだと思います。

    最初は、

    「カメが死んでいる」

    という事件でした。

    だから、

    カメを調べる。

    でも、

    だんだん範囲が広がる。

    ウイルスを調べる。

    水を調べる。

    川底を調べる。

    植物を見る。

    外来種を見る。

    農地を見る。

    人間の暮らしを見る。

    最後には、

    一本の川そのものを理解しなければ、カメを守れない

    というところまで行きます。

    小さなカメ一種から、

    川全体が見えてきます。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番注目したいのは、

    16匹という数字です。

    500匹以上生まれた。

    197匹戻った。

    97匹を一度に放した。

    どれも大きな数字です。

    でも、

    そのすべての始まりは、

    16匹だった。

    ウイルスが川を進んでいる。

    カメが次々死ぬ。

    残っている健康な個体を探す。

    見つける。

    捕まえる。

    隔離する。

    その16匹が、

    今の個体群の未来につながっている。

    もし、

    「あまりにも少ないから意味がない」

    と諦めていたら、

    現在の500匹は存在していなかったかもしれません。

    16匹でも、

    始める。

    僕は、

    そこが一番すごいと思います。

    湯川亀吉の一言

    この亀初めてみた!!

    かっこいいなぁ!!

    出典

    Taronga Conservation Society Australia
    「Bellinger River Turtle」
    現在の繁殖状況、生態、500匹以上の孵化、197匹の野生復帰について。
    Taronga Zoo「Bellinger River Turtle」

    Australian Government – Department of Climate Change, Energy, the Environment and Water
    「Bellinger River snapping turtle」
    分布、形態、2015年の大量死、個体数推定、脅威、現在の保全策について。2026年5月26日更新。
    オーストラリア政府の種情報

    NSW Government / Saving our Species
    「From crisis to conservation: almost 100 Bellinger River snapping turtles in largest release yet」
    2024年4月8日。97匹の放流と2015年以降の回復計画について。
    NSW Governmentの記事

    Taronga Conservation Society Australia
    「From crisis to conservation: almost 100 Bellinger River snapping turtles in largest release yet」
    2024年4月5日。
    Taronga Zooの記事

    NSW Government – North Coast Local Land Services
    「Bellinger River snapping turtle conservation」
    2024〜2025年の水質調査、疾病監視、河岸環境の回復活動について。
    現在の河川保全プロジェクト

  • 【世界の亀ニュース】18,000個超の卵を救う ガイアナの先住民が川岸で守る淡水ガメの未来

    【世界の亀ニュース】18,000個超の卵を救う ガイアナの先住民が川岸で守る淡水ガメの未来

    今回は、南米ガイアナのルプヌニ地方で、地域住民が中心となって淡水ガメの産卵地を守り、1万8,000個を超える卵を孵化させた保護活動を紹介します。

    今回のニュース

    ガイアナ南部のルプヌニ地方で、2021年から2025年までの間に、18,000個を超える淡水ガメの卵が保護され、孵化しました

    活動には、Sustainable Wildlife Management Programme、South Rupununi Conservation Society、Caiman House、そして地域の先住民コミュニティが参加しています。保全活動全体では26の先住民コミュニティと連携し、カメの現地活動では123人のレンジャーが関わり、5つの地域コミュニティで131か所の砂浜を見守ってきました。

    成果は2026年5月、Sustainable Use of Wild Species Transformative Partnership Platformによって紹介されました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ガイアナ共和国
    地域:ルプヌニ地方
    対象環境:河川、湿地、砂浜、氾濫原
    活動期間:2021〜2025年
    発表時期:2026年5月
    情報の種類:淡水ガメ・産卵地保全・孵化・地域保全・先住民コミュニティ

    ルプヌニはガイアナ南西部に位置し、森林、サバンナ、河川、湿地が入り組む地域です。地域では魚や野生動物が食文化や生活と深く結びついており、保全と持続可能な利用を同時に考える取り組みが進められています。

    登場する亀

    ルプヌニ地方では、6種類の淡水ガメが確認されています。

    その中でも今回の保全活動で特に重要なのが、モンキヨコクビガメオオヨコクビガメです。研究では、ルプヌニにはモンキヨコクビガメ(Podocnemis unifilis)、オオヨコクビガメ(Podocnemis expansa)のほか、Rhinoclemmys punctularia、マタマタ、Platemys platycephalaMesoclemmys gibbaが生息すると報告されています。

    モンキヨコクビガメ

    学名は Podocnemis unifilis

    英語ではYellow-spotted River Turtleと呼ばれます。

    日本の環境省も「モンキヨコクビガメ」という和名を使用しており、南米のアマゾン川・オリノコ川流域などに広く分布する一方、生息地の減少や卵・成体の過剰利用によって多くの地域で個体数が減少しているとしています。

    幼体では頭部に黄色い斑紋があり、これがこのカメを見分ける大きな特徴です。成長すると模様は薄くなりますが、雄では残る場合があります。

    オオヨコクビガメ

    学名は Podocnemis expansa

    南米最大級の淡水ガメで、アマゾン川、オリノコ川、エセキボ川などの大河川流域に生息します。大型の雌では甲長60センチを大きく超えることがあります。

    今回の活動地域であるガイアナも、本種の自然分布域に含まれています。

    ニュースの要約

    ルプヌニ地方では、淡水ガメの個体群が、卵や成体の過剰利用、ペット取引、洪水などによって減少してきました。

    そこで地域住民が河川の砂浜を巡回し、産卵された巣を確認。

    浸水や捕食などの危険が高い場合には卵を安全な場所へ移し、孵化するまで保護します。孵化した子ガメは、その後ふたたび自然の河川へ戻されます。

    2021年から2025年までの活動で、保護・孵化された卵は1万8,000個を超えました。

    131か所の砂浜を見守る

    この活動で印象的なのは、一つの巨大な保護施設でカメを増やしているわけではないことです。

    保全の現場は、カメが実際に卵を産む川岸です。

    活動では123人のレンジャーが参加し、5つの地域コミュニティにまたがる131か所の砂浜が対象になりました。

    川岸を歩く。

    足跡を探す。

    巣を見つける。

    水位を見る。

    卵が安全な場所にあるか判断する。

    必要な場合だけ、人間が手を加える。

    広い河川を守るには、毎年その川を見て暮らしている地域住民の存在が欠かせません。

    カメの繁殖は「川の水位」とつながっている

    モンキヨコクビガメの繁殖は、川の水位変化と強く結びついています。

    雌は水位が下がり始める乾季に産卵場所へ移動し、砂浜などに卵を産みます。

    つまり、人間から見ればただの川岸でも、カメにとっては期間限定の産卵場所です。

    雨季には水の下にある。

    乾季になると砂浜が現れる。

    そこへ母ガメが上がる。

    そして卵を残す。

    ところが、予想より早く水位が上昇すれば、砂の中の卵は水没します。

    そのため、レンジャーたちは卵だけを見るのではなく、川そのものの変化を観察する必要があります

    卵を動かすべきか、動かさないべきか

    すべての卵を回収して人工的に孵化させるわけではありません。

    2025年にまとめられた「Rupununi Freshwater Turtle Management Plan」では、現地で巣をそのまま守る方法、危険な巣の移動、ヘッドスタート、研究、環境教育、住民への啓発、地域ルールの整備など、複数の方法を組み合わせる方針が示されています。

    重要なのは、

    「人間が全部育てればいい」

    という考え方ではありません。

    安全な巣は、そのまま自然に任せる。

    洪水や捕食の危険が高い巣だけを助ける。

    カメが本来自分たちで繁殖できる状態を残しながら、人間が必要な場所だけ補助する考え方です。

    カメは食料でもある

    ルプヌニ地方での保護が難しい理由の一つに、淡水ガメが地域の食文化や生活と深く関係していることがあります。

    特にモンキヨコクビガメは、南米の多くの地域で長く食料として利用されてきました。

    2025年に発表された研究では、ルプヌニにおいてカメと卵の利用実態を調べながら、地域社会による保全と伝統的利用をどう両立させるかが検討されています。

    「食べる人間」と「守る人間」を単純に分けることはできません。

    同じ地域の人が、昔からカメを利用してきた一方で、今は巣を守るレンジャーにもなっています。

    保護と利用を一緒に考える

    このプロジェクトの目的は、地域住民から野生動物の利用を完全に切り離すことではありません。

    SWM Programmeは、野生動物の個体群と生態系を維持しながら、先住民や農村地域の食料、文化、生活も守ることを目的としています。ガイアナでは、39の先住民コミュニティ、約2万4,000人の生活を含む地域管理の仕組みづくりが進められています。

    カメを守るために人を森や川から追い出すのではない。

    その土地で暮らしてきた人たち自身が、

    「どれだけ利用できるのか」

    「どこは守るべきなのか」

    を考える。

    このニュースの大きな特徴は、そこにあります。

    子どもたちにもカメを伝える

    この活動では、卵や子ガメを守るだけでなく、環境教育も行われています。

    子どもや若者たちに淡水ガメの生態や保全について伝え、次の世代が地域のカメを知る機会を作っています。

    2025年に作られた管理計画でも、環境教育と意識の変化は、巣の保護や研究と並ぶ重要な柱として位置づけられています。

    卵を一つ守れば、その年の子ガメを救えるかもしれない。

    でも、人の考え方が次の世代へ伝われば、その先の何十年も川を守れる可能性があります。

    18,000という数字の向こう側

    18,000個。

    数字だけを見ると、とても大きな成果です。

    でも、実際の保全活動では、一度に18,000個の卵を守ったわけではありません。

    一つの砂浜で、一つの巣を見つける。

    別の日に、また別の巣を見つける。

    水位を確認する。

    孵化を待つ。

    子ガメを川へ戻す。

    それを何年も続けた結果が、18,000という数字になりました。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで注目したいのは、人間がカメを「増やしている」のではなく、カメが自分で増えられる時間を守っていることです。

    卵を産んだのは母ガメです。

    砂の中で育ったのも卵自身です。

    殻を破ったのも子ガメです。

    川へ泳いでいくのもカメです。

    人間がやったことは、

    洪水が来そうなら卵を移す。

    巣を荒らされそうなら見守る。

    子ガメが生まれるまで時間を作る。

    それだけです。

    でも、自然の中では、その「それだけ」がなければ消えてしまう命がたくさんあります。

    湯川亀吉の一言

    南米の亀も買えるうちに買っておこう。

    出典

    Sustainable Use of Wild Species Transformative Partnership Platform
    「Over 18,000 freshwater turtle eggs hatched in Guyana」

    Sustainable Wildlife Management Programme / CIFOR-ICRAF
    「SWM Programme – Guyana」

    Frontiers in Ecology and Evolution
    「Balancing conservation and traditional use of yellow-spotted river turtle Podocnemis unifilis in Southern Rupununi, Guyana」

    環境省
    「モンキヨコクビガメ Podocnemis unifilis

  • 【世界の亀ニュース】ガンジススッポンを衛星で追う インド初の個体がブラマプトラ川へ帰還

    【世界の亀ニュース】ガンジススッポンを衛星で追う インド初の個体がブラマプトラ川へ帰還

    今回は、インド北東部のカジランガ国立公園で、絶滅危惧種のガンジススッポンに衛星発信器を装着し、その行動を追跡する取り組みが始まったニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年5月15日、インド・アッサム州のカジランガ国立公園・トラ保護区で、衛星発信器を装着したガンジススッポン1匹が野生へ戻されました

    ガンジススッポンを衛星追跡する試みとしては、インド初と報じられています。

    健康な成体を捕獲し、獣医師の監督のもとで発信器を取り付けた後、ブラマプトラ川北岸の本来の生息環境へ放しました。今後は衛星から位置情報を取得し、このカメが季節ごとにどこへ移動するのか、どれほどの範囲を利用するのか、どこを繁殖や産卵に使うのかを調べます。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:インド共和国、アッサム州
    場所:カジランガ国立公園・トラ保護区、ブラマプトラ川流域
    放流日:2026年5月15日
    元記事の言語:英語
    情報の種類:淡水ガメ・スッポン・衛星追跡・研究・保護活動

    この調査は、インド環境・森林・気候変動省の取り組みとして、Wildlife Institute of India、カジランガ国立公園、アッサム州森林局が協力して実施し、National Geographic Societyが資金面で支援しています。

    登場する亀

    今回の主役は、ガンジススッポンです。

    学名は Nilssonia gangetica

    日本では「ガンジススッポン」または「インドスッポン」という名称が使われています。経済産業省のワシントン条約関連資料でも、Nilssonia gangeticaに対して「ガンジススッポン(インドスッポン)」という和名が記載されています。

    英語ではGanges Softshell TurtleやIndian Softshell Turtleと呼ばれます。

    一般的なカメのような硬い甲板に覆われた甲羅ではなく、平たく柔らかな甲羅を持つスッポンの仲間です。

    頭部には特徴的な模様があり、報道では頭頂部に見られる矢じりのような模様が、ほかの河川性のスッポンと見分ける特徴の一つとして紹介されています。

    ニュースの要約

    衛星発信器を取り付けられたガンジススッポンは、カジランガ周辺のブラマプトラ川へ戻されました。

    研究チームが特に知りたいのは、

    季節によってどこへ移動するのか。

    一匹がどのくらい広い範囲を利用するのか。

    どの場所で餌を探すのか。

    どこで繁殖するのか。

    そして、どこに重要な産卵場所があるのか。

    ということです。

    Wildlife Institute of Indiaの研究者Abhijit Das氏は、季節的な移動、行動圏、繁殖・産卵に重要な場所を把握することが、ブラマプトラ川流域のスッポン保全に役立つと説明しています。

    川にカメがいることと、カメが川のどこを使っているかは違う

    ガンジススッポンがブラマプトラ川に生息していること自体は、以前から知られています。

    しかし、「いる」という情報だけでは、川のどの部分を守ればよいのかまでは分かりません。

    例えば、一年のほとんどを深い水域で過ごしていても、繁殖期だけ特定の浅瀬へ移動する可能性があります。

    普段は広い川を利用しながら、産卵するときだけ特定の砂州へ上がるかもしれません。

    雨季の増水に合わせて、支流や湿地へ移動する可能性もあります。

    重要な場所が一年中同じとは限りません。

    衛星追跡を行うことで、これまで人間が水面から見ているだけでは分からなかった「一匹のカメが使っている川の地図」が少しずつ見えてきます。

    ブラマプトラ川という巨大な世界

    ブラマプトラ川は、ヒマラヤからインド北東部を通り、バングラデシュ方面へ流れる巨大な河川です。

    カジランガ周辺では、本流だけでなく、砂州、支流、湿地、氾濫原などが複雑につながっています。

    川は毎年同じ形をしているわけではありません。

    増水すれば水域が広がる。

    水が引けば砂州が現れる。

    流路そのものが変わることもあります。

    ガンジススッポンは、そんな動き続ける環境の中で暮らしています。

    研究者が知ろうとしているのは、単に「カメが何メートル移動したか」ではありません。

    変化し続ける川の中で、カメがどの場所を選びながら生きているのかということなのだと思います。

    アッサム州は淡水ガメの重要地域

    アッサム州は、アジアでも淡水ガメの多様性が高い地域の一つです。

    報道によると、州内では21種類のカメが確認されており、インドに生息する8種類のスッポン類のうち、5種類がカジランガで確認されています。

    サイやトラで有名なカジランガですが、その保護区を流れる水の中には、多くのカメやスッポンも暮らしています。

    しかし、大型哺乳類と比べると、水中で暮らすカメは姿を確認することさえ難しい。

    だからこそ、一匹に発信器を付けて追跡することには大きな意味があります。

    ガンジススッポンは川の掃除屋でもある

    ガンジススッポンは、魚類や水生動物などを食べる捕食者である一方、死んだ動物や腐敗した有機物も利用します。

    そのため、河川の食物網の中で捕食者として働くだけでなく、死骸を処理する存在としても重要な役割を持っています。

    大きなスッポンが一匹減ることは、単にカメが一匹いなくなることではありません。

    長い時間をかけて川の中で担ってきた役割も、一緒に失われます。

    広く分布していても安全とは限らない

    ガンジススッポンは、インドの複数の大河川や湖、貯水池などに分布しています。

    しかし、分布範囲が広いからといって安全な種というわけではありません。

    現在、絶滅の危険がある種として扱われており、インドではWildlife Protection ActのSchedule Iに掲載され、厳重な保護対象となっています。

    河川環境の変化、水質汚染、捕獲、砂州の消失など、淡水ガメが直面する問題は一つではありません。

    そして、対策を行うためにはまず、

    「どこを守るべきなのか」

    を知らなければなりません。

    今回の衛星追跡は、その問いへ答えるための調査です。

    一匹の背中から送られてくる位置情報

    今回の計画で興味深いのは、調査対象がまず一匹のカメだということです。

    巨大なブラマプトラ川に、一匹のガンジススッポンがいる。

    その背中に、小さな発信器が付いている。

    カメが動けば、点が動く。

    昨日いた場所から今日の場所へ。

    乾季から雨季へ。

    川の本流から、別の水域へ。

    一つひとつはただの座標です。

    でも、それを何か月、何年と重ねていけば、そのカメが必要としている川の形が見えてくるかもしれません。

    衛星追跡は「監視」ではない

    発信器を取り付けるというと、人間がカメをずっと監視しているようにも感じます。

    しかし、この研究の目的はカメの行動を管理することではありません。

    むしろ逆です。

    人間には分からない場所へ自由に泳いでいくカメを、そのまま泳がせる。

    人間は遠くから位置情報を受け取り、

    「この場所を使っていたのか」

    と後から知る。

    カメの行動に合わせて、人間の保護計画の方を変えていくための技術です。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、一匹のカメに川のことを教えてもらう研究だということです。

    人間が地図を広げて、

    「ここが重要な場所だろう」

    と決めるのではありません。

    まずカメを川へ戻す。

    そして待つ。

    どこへ泳ぐのかを見る。

    どこで止まるのかを見る。

    どの季節に移動するのかを見る。

    カメ自身が、自分に必要な場所を移動によって示していく。

    研究者は、その後ろから地図を描いていきます。

    この順番が、とても面白いと思います。

    湯川亀吉の一言

    とてもいいですね!

    まず事実を確かめること・把握することはとても大きな意味があると思います。

    自分の妄想や思い込みだけで行動するような豚野郎にはなりたくないもんだぜ。

    出典

    The New Indian Express
    「India’s first satellite-tagged Ganges softshell turtle released in Kaziranga」

    The Sentinel Assam
    「First-ever satellite tagging of Ganges softshell turtle in Kaziranga National Park」

    The Times of India
    「Satellite-tagged Ganges softshell turtle released in Kaziranga」

    経済産業省
    「ワシントン条約附属書掲載種・動物」

  • 世界の亀ニュース】メコン川で257匹のカントールマルスッポンが孵化 14巣を守る保全活動

    世界の亀ニュース】メコン川で257匹のカントールマルスッポンが孵化 14巣を守る保全活動

    今回は、カンボジアを流れるメコン川で、絶滅の危機にある大型のスッポン「カントールマルスッポン」の子ども257匹が孵化したニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年、カンボジアのメコン川沿いで、カントールマルスッポンの巣が14か所確認されました。

    5月24日時点で、そのうち12巣から合計257匹の子ガメが孵化しています。

    さらに残る2巣についても、保全チームが引き続き監視を続けています。カンボジア農林水産省傘下の水産当局とWildlife Conservation Society(WCS)Cambodia、地域住民らが協力して巣を守ってきました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:カンボジア
    場所:メコン川流域
    発表日:2026年5月24日
    情報の種類:淡水ガメ・スッポン・繁殖・孵化・産卵地保全

    カンボジアのメコン川では、地域住民と保全チームが産卵期に砂州や河岸を巡回し、カントールマルスッポンの巣を探して保護する活動を続けています。

    登場する亀

    今回の主役は、カントールマルスッポンです。

    学名は Pelochelys cantorii

    日本では「マルスッポン」と呼ばれることもあります。英語ではCantor’s Giant Softshell Turtle、Asian Giant Softshell Turtleなどと呼ばれます。

    スッポン科の中でも非常に大型になる種類で、専門家による種解説では甲長60〜100センチほどに達するとされています。

    硬い甲板に覆われた一般的なカメとは違い、平たく柔らかな甲羅を持ち、魚類、甲殻類、貝類などの水生生物を食べます。

    ニュースの要約

    2026年に保全チームが確認した巣は14か所。

    そのうち12巣から257匹が孵化しました。

    興味深いのは、その後の扱いです。

    257匹すべてを同じ方法で管理したわけではありません。

    43匹は、孵化したあと自分の力でメコン川へ入りました。

    残る214匹は慎重に回収され、ココン爬虫類保全センターへ運ばれました。一定期間安全な環境で育てたあと、将来的に野生へ戻す予定です。

    自然に任せる個体と、人間が一時的に保護する個体。

    二つの方法を組み合わせながら、この種の生存率を高めようとしています。

    川岸の砂の中で生まれる巨大スッポン

    成体のカントールマルスッポンは巨大になります。

    しかし、生まれたときは当然、小さな子ガメです。

    母ガメは河岸や砂州に穴を掘り、そこへ卵を産みます。専門家の種解説では、一度に24〜70個程度の卵を産むとされています。

    卵を産んだあと、母ガメは川へ戻ります。

    そこから先、卵は砂の中で育ちます。

    雨。

    川の増水。

    捕食動物。

    人間による卵の採取。

    孵化するまでには、さまざまな危険があります。

    だから保全チームは、成体のスッポンだけを探すのではなく、川岸そのものを見守っています。

    43匹は自分で川へ入った

    今回のニュースで特に印象的なのが、43匹の子ガメです。

    この43匹は孵化後、人間に運ばれることなく、自分自身でメコン川へ入りました。

    砂の中から地上へ出る。

    川の方向へ進む。

    そして水へ入る。

    非常に短い距離かもしれません。

    しかし、生まれたばかりの子ガメにとっては、最初の野生の移動です。

    残る214匹については保全施設へ移されましたが、この43匹は孵化直後から完全に野生の時間を歩き始めました。

    なぜ214匹は保全施設へ運ばれたのか

    子ガメは非常に小さく、捕食される危険が高い時期です。

    そこで一部の個体を安全な施設で育て、ある程度生存しやすい状態にしてから野生へ戻す方法が使われています。

    今回の214匹は、ココン爬虫類保全センターで保護・飼育されます。

    これはカメを永久に飼育するためではありません。

    目的は、最も危険な成長初期を人間が少しだけ補助し、最終的には再び川へ返すことです。

    一度はカンボジアから消えたと思われていた

    カントールマルスッポンは、カンボジアでは長い間ほとんど確認されなくなっていました。

    WCSによれば、科学者による野生個体の確認が途絶えていた時期がありましたが、その後、クラチエ州とストゥントレン州の間を流れるメコン川で再確認されました。

    現在では、その地域がカンボジアに残る重要な生息地となっています。

    つまり、今回257匹が生まれた川は、

    「たまたま子ガメがたくさん生まれた場所」

    ではありません。

    一度は姿を消したと思われた大型スッポンが、今も繁殖を続けている貴重な場所です。

    2022年には982匹が孵化

    今回の257匹だけを見ると、とても大きな成果に感じます。

    しかし、カンボジアでは以前から大規模な巣の保護が続けられています。

    2022年には63巣、2,155個の卵が確認され、5月20日までに40巣から982匹が孵化しました。

    その年には580匹の子ガメが、世界亀の日に合わせてメコン川へ放されています。

    2021年にも66巣、2,528個の卵が確認され、1,300匹が野生へ戻されました。

    一年だけの成功ではありません。

    砂州を探し、巣を守り、子ガメを川へ返す活動が何年も積み重ねられています。

    カメだけを守っても生き残れない

    カントールマルスッポンの減少には、食用を目的とした捕獲、卵の採取、漁具への混獲、河川環境の破壊などが関係しています。

    つまり、

    卵だけ守ればよい。

    子ガメだけ放せばよい。

    という問題ではありません。

    大きく成長したスッポンが暮らせる深い水域。

    餌を探せる川。

    安全に卵を産める砂州。

    それらが全部残っていなければ、次の世代は続きません。

    メコン川の巨大生物の一員

    カントールマルスッポンが暮らすメコン川には、ほかにも巨大な淡水生物が生息しています。

    WCSは、このスッポンがカワゴンドウや巨大淡水エイなどと同じ深い水域を利用する、メコン川を象徴する生物の一つだと紹介しています。

    水面から見れば、ただ大きな川が流れている。

    でも水の下には、

    巨大な魚がいて、

    エイがいて、

    スッポンが砂へ潜っている。

    カントールマルスッポンを守ることは、そうした巨大河川生態系そのものを残すことにもつながります。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、257匹という数字より、その前に14個の巣を見つけた人がいたことです。

    子ガメが生まれる瞬間は分かりやすい。

    写真にもなる。

    数字にもなる。

    でも、そのずっと前に、

    砂浜を歩く人がいる。

    母ガメの足跡を探す。

    砂の盛り上がりを見る。

    ここに卵があるかもしれないと考える。

    そして、その場所を何週間も守る。

    257匹という結果は、孵化した日に突然生まれた成果ではありません。

    川岸で何も起こらない日にも、砂を見続けた時間の結果なのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    大きなスッポン飼ってみたいと思ったことありますが、めちゃめちゃ大きくなるから飼えないね。

    将来、水族館を作った時には飼育してみたい。

    出典

    Agence Kampuchea Presse(カンボジア国営通信)
    「Over 200 Cantor’s Giant Softshell Turtle Hatchlings Discovered along Mekong River in Cambodia」

    Wildlife Conservation Society Cambodia
    カントールマルスッポン保全活動・メコン川への放流記録。

    IUCN SSC Tortoise and Freshwater Turtle Specialist Group
    「Pelochelys cantorii – Asian Giant Softshell Turtle」

  • 【世界の亀ニュース】絶滅したと思われた「ロイヤルタートル」20匹がカンボジアの川へ

    【世界の亀ニュース】絶滅したと思われた「ロイヤルタートル」20匹がカンボジアの川へ

    今回は、カンボジアで報じられた、世界でも特に絶滅の危機が深刻な淡水ガメの野生復帰に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年4月29日、カンボジアのスレアンベル川水系に、20匹のロイヤルタートルが放流されました。

    このカメは、英語でSouthern river terrapinと呼ばれるBatagur affinisです。カンボジア国内で現在も野生個体が生息し、繁殖していることが確認されている場所は、スレアンベル川水系だけだとされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:カンボジア、スレアンベル川水系
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年4月29日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・野生復帰・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ロイヤルタートルです。

    学名はBatagur affinis。河川や河口付近の水域に暮らす淡水・汽水性のカメで、世界でも特に絶滅の危機が深刻なカメのひとつとされています。

    カンボジアでは2005年に「国の爬虫類」に指定されましたが、かつては国内で絶滅したのではないかと考えられていました。その後、2000年代初頭に再発見され、長期的な保護活動が続けられています。

    ニュースの要約

    今回放流された20匹は、カンボジア水産局や地域行政、Wildlife Conservation Societyなどが進めてきた、長期的な回復事業の一環として川へ戻されました。

    この活動では、野生の巣を守るだけでなく、子ガメをある程度の大きさまで育ててから放流し、その後の行動を追跡する取り組みも行われています。

    さらに、違法漁業、砂の採掘、生息地の消失などから、川全体を守る活動も進められています。過去10年間で、200匹以上のロイヤルタートルが野生へ戻されました。

    回復の兆しも見え始めています。

    2024年には、過去に放流されたメスが野生で産卵したことが初めて確認されました。2025年には巣が確認されませんでしたが、2026年の初めにはスレアンベル川で3つの巣が見つかっています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、かつて卵を採っていた地域の人たちが、現在は巣を守る側になっていることです。

    保護活動では、カメだけを遠くから監視しているわけではありません。

    以前は卵を採集していた人たちが、巣を探し、産卵場所を見守り、卵が無事に孵化できるように守っています。今回の放流式では、25年以上にわたってロイヤルタートルの巣を守ってきた地域の家族も表彰されました。

    人間がカメを減らす側から、守る側へ変わる。

    その変化がなければ、ロイヤルタートルは今も「絶滅したカメ」のままだったかもしれません。

    ただカメを育てて放すだけでは、野生復帰は完成しません。

    産卵できる砂州が残り、川が守られ、地域の人たちが巣を見つけ、次の世代が生まれる。そのすべてがつながって、ようやく野生の個体群が戻っていくのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    ロイヤルタートルの実物を見てみたいぜ。

    出典

    元記事:Wildlife Conservation Society Cambodia
    「Cambodia releases critically endangered royal turtles in Sre Ambel」

  • 【世界の亀ニュース】メキシコで野生ガメ2,000匹超を押収 世界最小のバジャルタドロガメも密輸被害に

    【世界の亀ニュース】メキシコで野生ガメ2,000匹超を押収 世界最小のバジャルタドロガメも密輸被害に

    今回は、メキシコで発覚した大規模なカメの違法取引と、その中に含まれていた絶滅寸前の小さな淡水ガメについて紹介します。

    今回のニュース

    2025年9月、メキシコ・ハリスコ州で行われた摘発によって、野生から捕獲された2,000匹を超える淡水ガメが押収されました。

    カメたちは、ナマコやフカヒレなど、ほかの野生生物由来の品とともに隠されていました。

    押収されたカメには、メキシコ原産のドロガメ類6種とハコガメ類1種が含まれ、その中には、絶滅の危機が極めて高い**バジャルタドロガメ(Kinosternon vogti)**も数十匹含まれていました。

    しかし、すべてのカメが無事だったわけではありません。

    密輸の過程で劣悪な環境に置かれていたため、押収後までに数百匹が死亡したとTurtle Survival Allianceは報告しています。生き残った個体はグアダラハラ動物園へ運ばれ、治療、検疫、感染症検査などを受けました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:メキシコ
    主な場所:ハリスコ州、グアダラハラ
    摘発:2025年9月
    Turtle Survival Alliance発表:2025年10月10日
    情報の種類:淡水ガメ・密輸・違法取引・絶滅危惧種・救護・保護活動

    メキシコ当局のPROFEPAとSEMARNATは9月26日、大規模な摘発後にグアダラハラ動物園へカメの緊急収容を要請しました。その後、獣医師や飼育スタッフが大量の個体を一匹ずつ確認し、隔離と治療を開始しています。

    登場する亀

    今回とくに注目したいのが、バジャルタドロガメです。

    学名は Kinosternon vogti

    日本の公的資料では「キノステルノン・ヴォグティ」と表記され、関連する登録資料では「フォークトドロガメ、バジャルタドロガメ」という名称も確認できます。この記事では、国内の爬虫類愛好家の間でも使われている「バジャルタドロガメ」で統一します。

    このカメが新種として記載されたのは、わずか2018年です。

    そして現在、世界で知られているカメの中でも最小の種とされています。

    雄の平均甲長は約7.6センチ、雌は約7.8センチ。大きな個体でも、雄は9センチ、雌は10センチを超えることがほとんどありません。

    世界最小のカメが暮らす場所

    バジャルタドロガメは、メキシコ西部のハリスコ州とナヤリット州にまたがるバンデラス湾周辺だけに分布する固有種です。

    歴史的な分布域は約263平方キロと推定されていますが、現在実際に利用できる生息域は非常に小さく、推定占有面積は0.3平方キロ未満とされています。

    池、湿地、流れの緩やかな小川などで暮らし、乾季には土中へ潜って数か月間休眠することがあります。

    繁殖は雨季に行われ、雌は一度に1〜5個ほどの卵を産みます。孵化した子ガメの甲長は、わずか19〜23ミリほどです。

    成体ですら手のひらに収まるほど小さい。

    その小さなカメが、生きられる湿地そのものも、非常に小さな範囲しか残っていません。

    2,000匹以上が一度に押収された

    今回の事件では、バジャルタドロガメだけが狙われていたわけではありません。

    押収されたのは、6種類のドロガメと1種類のハコガメを含む2,000匹以上のカメでした。

    これらは野生から捕獲されたとされ、国際市場を対象とした組織的な野生生物取引ネットワークの一部だったと報告されています。メキシコ当局は関係が疑われる3人を起訴しました。

    野生生物やその加工品は、グアダラハラを拠点とする企業を通じて、アメリカ、中国、その他のアジア市場などへ送られることが疑われています。

    一匹の珍しいカメが密かに持ち出された事件ではありません。

    何千匹という単位で野生動物を集め、商品として移動させる仕組みが存在していた可能性があります。

    数百匹は救出まで生き残れなかった

    カメは、見た目以上に過酷な環境へ耐えることがあります。

    長期間餌を食べなくても生きる種類もいる。

    狭い場所で動かず耐えることもできる。

    しかし、その性質は密輸業者にとって「運びやすい動物」として利用されることがあります。

    今回の押収個体も、多数のカメが密集した状態で扱われていたとみられ、数百匹がすでに死亡していました。残った個体の中にも、弱ったカメや病気の疑いがあるカメが確認されています。

    救出したカメを、すぐ野生へ戻せない理由

    違法取引から救出された野生動物を見ると、

    「元いた場所へ放せばいい」

    と思うかもしれません。

    しかし、2,000匹を超えるカメが複数種混ざった状態で運ばれていた場合、それほど簡単ではありません。

    どの個体がどこから捕獲されたのか。

    感染症を持っていないか。

    異なる地域個体群が混ざっていないか。

    長期間の輸送によって健康状態が悪化していないか。

    一つずつ確認する必要があります。

    今回もグアダラハラ動物園では、感染症の拡大を防ぐため、種類や状態に応じた隔離と検査が行われました。とくにカメ類で重大な問題となるラナウイルスについて、慎重な検査が必要だとされています。

    バジャルタドロガメは400匹未満とも

    Turtle Survival Allianceは、野生に残るバジャルタドロガメを400匹未満としています。

    一方、専門家による2025年の種解説では、実際に利用されている生息地が極めて小さいこと、野生個体群が都市開発、道路、違法採集などの圧力を強く受けていることが示されています。IUCNでは「Critically Endangered=深刻な危機」と評価されています。

    数千匹いる種類から数十匹が捕られるのと、

    野生に数百匹しかいない可能性のある種類から数十匹が消えるのとでは、意味が違います。

    密猟者が一度採集しただけでも、地域個体群へ大きな影響を与える可能性があります。

    2025年には保全施設からもカメが盗まれていた

    さらに深刻なのは、野生個体だけが狙われているわけではないことです。

    2025年1月には、プエルト・バジャルタでバジャルタドロガメの保全・繁殖を行っていた施設へ何者かが侵入し、飼育されていた個体が盗まれる事件も発生しました。

    その後、施設には電気柵、高性能の鍵、モーションセンサー、警報装置などが追加されています。

    絶滅から守るために集められたカメが、

    「珍しいから」

    という理由で再び狙われる。

    希少性そのものが、保全活動を難しくしています。

    それでも繁殖は始まっている

    バジャルタドロガメには希望もあります。

    2023年には、オーストリアのTurtle Islandで世界初となる飼育下繁殖に成功しました。

    さらにメキシコでは2024年、バジャルタドロガメを保護・繁殖するための専用保全施設が完成しています。

    グアダラハラ動物園でも繁殖技術の開発が進み、メキシコ国内で初めて飼育下孵化に成功しています。

    つまり、人間にはこの小さなカメを増やす技術が少しずつでき始めています。

    しかし、増やしたカメを帰す湿地が失われれば、飼育下繁殖だけでは問題は解決しません。

    生息地の99%以上が失われた可能性

    Turtle Islandによる現地保全プロジェクトでは、バンデラス湾周辺の都市化によって、バジャルタドロガメが利用してきた湿地環境の99%以上が失われたと報告されています。

    現在知られている生息地は、わずか数か所にまで減っています。

    プエルト・バジャルタ周辺は観光開発が盛んな地域です。

    ホテル。

    道路。

    住宅。

    商業施設。

    人間にとって便利な土地へ変わるほど、小さな湿地は地図から消えていきます。

    世界最小のカメが必要としている場所は、大きなジャングルではありません。

    人間から見れば、埋め立てても大きな変化には見えない、小さな水辺なのです。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番気になるのは、カメの「希少価値」が、そのカメを危険にしてしまうことです。

    新種だった。

    世界最小だった。

    分布域が狭かった。

    絶滅寸前だった。

    本来なら、これらは

    「だから守ろう」

    という理由になるはずです。

    でも、違法なペット市場では、

    「だから欲しい」

    という理由にもなってしまう。

    珍しくなればなるほど値段が上がり、値段が上がるほど野生から持ち出す人間が現れる。

    絶滅へ近づくほど商品価値が高くなるという、ものすごく危険な循環です。

    湯川亀吉の一言

    珍しいから欲しい・高価だから欲しい。

    そんな考えに取り憑かれていた時期が、俺にもありました。

    出典

    Turtle Survival Alliance
    「Over 2,000 Wild Turtles Seized in Mexico; Conservationists Race to Save Survivors」

    IUCN SSC Tortoise and Freshwater Turtle Specialist Group
    「Kinosternon vogti – Vallarta Mud Turtle」

    Turtle Island
    「The Vallarta Mud Turtle | Mexico」

    Mongabay
    メキシコの大規模なカメ密輸摘発に関する報道。

  • 【世界の亀ニュース】絶滅寸前のビルマオオセタカガメ 20匹のオスを川へ戻したら、孤独だった雌から14匹が誕生

    【世界の亀ニュース】絶滅寸前のビルマオオセタカガメ 20匹のオスを川へ戻したら、孤独だった雌から14匹が誕生

    今回は、ミャンマーの大河川に生息する希少な淡水ガメ「ビルマオオセタカガメ」の保全活動を紹介します。

    かつては、

    絶滅したのではないか

    とまで考えられていたカメです。

    しかし、生き残ったわずかな個体を見つけ、卵を守り、子ガメを育て、川へ戻す活動が始まりました。

    そして2018年。

    保全施設で育った若いオス20匹が、チンドウィン川へ放されます。

    その約1年半後。

    長年、無精卵しか産めなかった一匹の野生の雌が19個の卵を産み、

    14匹が孵化しました。

    人間が川へ戻したオスが、

    野生に残っていた雌を見つけた可能性が高いと考えられています。

    今回のニュース

    2020年5月22日、Wildlife Conservation Society(WCS)とTurtle Survival Alliance(TSA)は、ミャンマー北部を流れるチンドウィン川で、ビルマオオセタカガメの繁殖に大きな進展があったと発表しました。

    そこには一匹の野生の雌がいました。

    しかし、その雌は長い間、繁殖相手となる雄と出会えていなかったと考えられています。

    過去に産んだ卵は孵化しませんでした。

    ところが2020年。

    19個の卵を産み、

    そのうち14個が孵化しました。

    研究者たちが考えたのは、

    2018年に放流した若い雄たちです。

    そのときチンドウィン川へ戻されたのは、

    20匹の飼育下育ちの雄。

    そのうち少なくとも一匹が野生の雌と出会い、交尾したと考えられました。

    どこの国・地域の話か

    国:ミャンマー
    主な河川:チンドウィン川
    対象種:ビルマオオセタカガメ
    学名:Batagur trivittata
    英名:Burmese Roofed Turtle
    情報の種類:淡水ガメ・絶滅危惧種・繁殖・ヘッドスタート・野生復帰

    ビルマオオセタカガメはミャンマー固有の大型淡水ガメで、かつてはエーヤワディー川、チンドウィン川、シッタン川、サルウィン川などの大きな河川に広く分布していました。

    日本の経済産業省が公開しているワシントン条約対象種の資料でも、Batagur trivittataには**「ビルマオオセタカガメ」**という和名が使われています。

    登場する亀

    ビルマオオセタカガメは、イシガメ科バタグールガメ属の淡水ガメです。

    大きな川とその支流を主な生息環境とし、河川沿いの砂州を産卵場所として利用します。

    そして、このカメにはとても面白い特徴があります。

    成熟した雄の外見が繁殖期に大きく変わることで知られるカメです。

    名前の「trivittata」も、ラテン語で「3本の帯を持つ」といった意味に由来すると考えられています。

    一度は「絶滅した」と思われた

    ビルマオオセタカガメは、昔から珍しいカメだったわけではありません。

    かつてはミャンマーの大河川で普通に見られたとされています。

    しかし、

    卵の大量採取。

    成体の捕獲。

    漁網への混獲。

    産卵砂州の消失。

    金採掘。

    河川環境の改変。

    こうしたものが重なり、個体数が急激に減少しました。

    1970年代にはすでに、

    「絶滅したのではないか」

    と考えられるようになります。

    2001年、「甲羅」が見つかった

    転機は2001年でした。

    WCSの調査チームがミャンマーで別の希少なカメを探していたとき、

    ある村で、

    最近殺されたと思われるビルマオオセタカガメの甲羅

    を発見しました。

    生きた個体ではありません。

    でも、

    「最近まで生きていたカメの甲羅」がある。

    つまり、

    絶滅していない可能性があります。

    そこから調査が進みました。

    寺院の池に、生き残りがいた

    その後、

    マンダレーの寺院の池で、

    生きたビルマオオセタカガメが発見されます。

    さらにチンドウィン川上流では、

    わずかながら野生で繁殖を続けている個体群も見つかりました。

    絶滅していなかった。

    でも、

    安心できる数ではありません。

    WCSが2020年に発表した時点でも、野生に残る繁殖可能な雌は5匹未満とされていました。

    TSAの現在の種情報では、野生個体群は99%以上減少し、確認される野生の成体雌はさらに少数とされています。

    まず卵を守る

    そこで始まったのが、

    チンドウィン川の産卵地を直接守る活動です。

    毎年2月から3月。

    残された雌が砂州へ上がり、

    卵を産みます。

    保全チームはその卵を探します。

    そして、

    人や動物に掘り返される前に保護します。

    保護された卵は、チンドウィン川沿いの村に設けられた安全な場所で孵化まで管理されます。

    5月から6月。

    子ガメが生まれます。

    でも、

    すぐには川へ戻しません。

    5〜6年間育ててから川へ戻す

    孵化したばかりの子ガメは小さい。

    捕食されやすい。

    漁具にも弱い。

    そこで、

    5〜6年間、人間の管理下で育てます。

    ある程度大きくなり、野外で生存できる可能性が高くなってから川へ戻します。

    いわゆる、

    ヘッドスタート

    です。

    卵を守る。

    孵化させる。

    数年間育てる。

    そして、

    元の川へ返す。

    この循環を何年も続けました。

    飼育個体群は1,000匹近くまで増えた

    保全活動は野生の卵だけではありません。

    マンダレーのYadanabon Zooをはじめ、複数の場所に保全繁殖個体群=assurance colonyが作られました。

    もし野生個体群が完全に消えても、

    種そのものが失われないようにするためです。

    そして繁殖に成功します。

    2020年には、WCSは飼育下個体群が1,000匹近くまで増えたと報告しました。

    数十年前には、

    絶滅したと思われていたカメです。

    それが、

    人間の管理下とはいえ、

    1,000匹近くまで増えました。

    でも、飼育下で1,000匹いても十分ではない

    ここは、

    これまで紹介してきた亀たちにも共通します。

    飼育下で増えた。

    だから成功。

    ではありません。

    このカメは、

    川のカメです。

    大きな川を泳ぐ。

    砂州へ上がる。

    卵を産む。

    流れの中で餌を探す。

    そういう生活をして初めて、

    ビルマオオセタカガメという種が野生に存在していることになります。

    だから、

    増やしたカメをもう一度川へ戻さなければなりません。

    2018年、若い雄20匹を放す

    そこで2018年。

    保全施設で育てた若い雄20匹が、チンドウィン川へ放されました。

    この放流には、

    特別な意味がありました。

    川には雌が残っている。

    でも、

    雄がほとんどいない。

    雌は毎年卵を産んでも、

    受精しない。

    だったら、

    雄を戻す。

    とても単純に聞こえます。

    でも、

    野生復帰というのは、

    「カメの数を増やす」ことだけではない。

    野生に足りなくなった繁殖相手を戻す

    ことでもあります。

    そして一匹の雌が19個の卵を産んだ

    2020年。

    チンドウィン川上流にいた一匹の雌が、

    19個の卵を産みます。

    そして、

    14匹が孵化しました。

    それまで、

    その雌が産んだ卵は受精していませんでした。

    しかし、

    雄を川へ戻したあと、

    初めて子ガメが生まれた。

    もちろん、

    どの雄が父親なのかは、

    このニュースだけでは分かりません。

    それでもWCSとTSAは、

    2018年に放した雄との交尾によって受精した可能性が高いと考えました。

    14匹という数字以上の意味

    14匹。

    飼育施設なら、

    もっとたくさん生まれているかもしれません。

    でも、

    この14匹は意味が違います。

    母親は、

    野生で生き残った雌。

    父親はおそらく、

    人間が育てて野生へ返した雄。

    そこで生まれた子どもです。

    つまり、

    飼育下個体群と野生個体群が、

    もう一度つながった。

    保全施設が、

    単なる避難場所ではなく、

    野生を補強するための場所として機能した瞬間

    だと思います。

    さらに60匹が川へ戻った

    その後も再導入は続きました。

    Turtle Survival Allianceは、ヘッドスタートされた60匹のビルマオオセタカガメをミャンマー西部の2つの河川へ再導入した取り組みを報告しています。

    一度、

    ほとんどカメがいなくなった川。

    そこへ、

    少しずつ戻す。

    20匹。

    60匹。

    また次の世代。

    一度に昔の状態へ戻すことはできません。

    川には、まだ危険がある

    しかし、

    放流すれば終わりではありません。

    川には今も、

    漁網があります。

    産卵砂州の消失があります。

    人による卵の採取があります。

    河川環境の変化があります。

    飼育下で100匹増やしても、

    川で100匹失われれば、

    個体群は復活しません。

    だから、

    カメを育てることと、

    カメが戻れる川を残すこと。

    この二つを同時に進める必要があります。

    卵を集めることが、永遠に続いてはいけない

    現在の保全方法では、

    野生の雌が産んだ卵を人間が保護し、

    子ガメを育てています。

    これは今、

    非常に重要な方法です。

    でも、

    最終的な理想は、

    人間が毎年卵を拾わなくてもいい状態でしょう。

    雌が自分で砂州を選ぶ。

    卵を産む。

    孵化する。

    子ガメが川へ入る。

    成長する。

    そして、

    また繁殖する。

    その循環が、

    人間の手を借りずに続くこと。

    そこまで戻れば、

    本当の意味で野生個体群が復活したと言えるのだと思います。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回の話で僕が一番好きなのは、

    「雄を放したら、雌の卵から子ガメが生まれた」

    というところです。

    保全活動というと、

    とにかく数を増やすことを想像します。

    100匹育てる。

    200匹放す。

    1,000匹まで増やす。

    もちろん、それも大事です。

    でも、

    野生に残っていた一匹の雌に必要だったのは、

    100匹のカメではなかったのかもしれない。

    たった一匹の雄だったかもしれない。

    ずっと同じ川で生きていた。

    毎年卵を産んだ。

    でも、

    相手がいなかった。

    そこへ、

    人間が育てた雄が泳いでくる。

    どこかで出会う。

    そして、

    次の年。

    卵から子ガメが出てくる。

    保全って、

    「たくさん増やす」だけじゃないんだね。

    途切れてしまった生き物同士のつながりを、

    もう一度つなぐ仕事でもあるんだと思います。

    湯川亀吉の一言

    バタグール飼ってみたいね〜

    出典

    Wildlife Conservation Society(WCS)
    「Isolated Female Burmese Roofed Turtle Surprises Conservationists by Laying Fertile Eggs」
    2020年5月22日。野生の雌が19個の卵を産み、14匹が孵化したこと、2018年に雄20匹を放流したことについて。

    Wildlife Conservation Society Myanmar Program
    「Burmese Roofed Turtle Conservation」
    過去の分布、減少、再発見、チンドウィン川での卵保護・ヘッドスタートなどについて。

    Wildlife Conservation Society(WCS)
    「The Turtle that Almost Went Extinct, Now Ready for Its Close-up」
    2020年8月25日。飼育下個体群が約1,000匹まで増加したことなどについて。

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「Burmese Roofed Turtle」
    現在の保全状況、脅威、ヘッドスタート・個体群補強について。

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「Burmese Roofed Turtles Return to the Wild」
    ヘッドスタートされた60匹の野生復帰について。

  • 4万1,000匹超のオオヨコクビガメ、ドローンが捉えた世界最大の集団産卵

    4万1,000匹超のオオヨコクビガメ、ドローンが捉えた世界最大の集団産卵

    南米を流れるグアポレ川/イテネス川の砂州で、4万1,000匹を超えるオオヨコクビガメが産卵のために集まっていたことが、ドローンを使った調査によって確認されました。

    ブラジルとボリビアの国境を流れるこの川では、毎年多数のオオヨコクビガメが同じ砂州へ集まります。2025年に発表された研究では、12日間の産卵期に集まった個体数を、新しい統計手法とドローン画像を組み合わせて推定しました。これは、確認されているものとしては世界最大の淡水ガメの集団産卵とされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ブラジル・ボリビア国境、グアポレ川/イテネス川流域
    元記事の言語:英語
    元記事の公開時期:2025年8月4日
    研究発表:2025年
    情報の種類:過去アーカイブ・淡水ガメ・繁殖・研究・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、オオヨコクビガメです。

    学名はPodocnemis expansa。南米に分布するヨコクビガメの仲間で、ヨコクビガメ類の中では最大種です。鳥羽水族館では甲長が80センチを超える種として紹介され、WCSは最大で全長約1.07メートル、体重約90キロに達すると説明しています。

    首を甲羅の中へまっすぐ引き込むのではなく、横方向へ曲げて収納することが「ヨコクビガメ」という名前の由来です。

    巨大な雌たちは産卵期になると川の砂州へ集まり、砂を掘って卵を産みます。

    ニュースの要約

    これほど多くのカメが同じ場所に集まると、単純に写真を見て数えるだけでは、正確な個体数を把握できません。

    同じ個体を二度数えてしまうこともあれば、別のカメや地形に隠れて見落とされる個体もいます。

    今回の研究では、ドローンで撮影した多数の画像をつなぎ合わせて、砂州全体を一枚の高精細な地図のように再現しました。さらに、移動する個体、重なって見えない個体、二重に記録された個体などを考慮する統計モデルを使い、実際の個体数を推定しています。

    その結果、12日間の産卵期に砂州へ集まったオオヨコクビガメは、4万1,000匹以上と推定されました。

    研究者たちは、この方法を使うことで、ただ壮大な光景を撮影するだけでなく、個体数やその変化を長期間にわたって、より正確に監視できるとしています。

    なぜ今、このニュースを紹介するのか

    このニュースは、単に「たくさんのカメがいた」という話ではありません。

    野生動物の保護では、現在どれだけの個体がいるのかを把握することが重要です。

    けれど、広大なアマゾン流域で、短期間に何万匹ものカメが移動する状況を、人間が地上から正確に数えるのは簡単ではありません。

    ドローンと統計モデルによって個体数を継続的に調べられるようになれば、前年より増えたのか、減ったのか、産卵地に異変が起きていないかを判断するための重要な記録になります。今回開発された方法は、同じように大群をつくる鳥類や海洋哺乳類などの調査にも応用できるとされています。

    4万匹いても安心とは限らない

    4万1,000匹という数字だけを見ると、オオヨコクビガメは非常に多いように感じます。

    しかし、数多くの個体が限られた砂州へ集中するということは、その場所が失われたときの影響も大きいということです。

    水位の変化、砂州の消失、人間による卵や成体の採取、産卵地周辺の開発などが起これば、一度に多くの個体の繁殖が影響を受ける可能性があります。

    WCSは地域住民や行政と協力し、オオヨコクビガメと、その産卵に必要な砂州を守る活動を続けています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、普段は広大な川の中で離れて暮らしているカメたちが、同じ時期に同じ場所へ集まることです。

    一匹だけでも巨大なオオヨコクビガメが、数万匹。

    川の中から次々と姿を現し、砂州へ上がり、土を掘る。

    その光景は、生き物の群れというよりも、遠い昔から続く巨大な儀式のように見えます。

    けれど、その壮大な時間は、産卵できる砂州と、そこへ戻れる川が残っているからこそ続いています。

    数を数えることは、カメを数字へ変えることではありません。

    来年も、10年後も同じ川へ戻ってこられるように、今そこにいるカメたちの存在を記録することなのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    でかい熱帯性の亀を飼いたいよ〜!!

    出典

    Wildlife Conservation Society
    「Novel Counting Method Using Drones Helps to Verify World’s Largest Freshwater Turtle Nesting Event」

    Journal of Applied Ecology
    「Estimating abundance of aggregated populations with drones while accounting for multiple sources of errors」

    鳥羽水族館・生きもの図鑑
    「オオヨコクビガメ」

  • 【亀ニュースアーカイブ】オーストラリアの不思議な淡水ガメ、洪水で繁殖地に大きな打撃

    【亀ニュースアーカイブ】オーストラリアの不思議な淡水ガメ、洪水で繁殖地に大きな打撃

    今回のニュース

    2025年、オーストラリア・クイーンズランド州に生息するメアリーリバータートルが、洪水によって厳しい繁殖シーズンを迎えていると報じられました。

    The Guardianの記事によると、2024年12月の洪水により、メアリーリバータートルの重要な繁殖地であるティアロ周辺では、そのシーズンの巣の約半分が失われたとされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:オーストラリア、クイーンズランド州、メアリー川流域
    元記事の言語:英語
    元記事の公開時期:2025年4月
    情報の種類:過去アーカイブ・淡水ガメ・保護活動・繁殖地被害

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、メアリーリバータートルです。

    メアリーリバータートルは、オーストラリア南東クイーンズランドのメアリー川に生息する淡水ガメです。記事では、総排出腔付近の構造を通じて水中の酸素を取り込むことができる、非常に特殊な淡水ガメとして紹介されています。

    ニュースの要約

    メアリーリバータートルは、すでに厳しい状況に置かれている絶滅危惧の淡水ガメです。

    The Guardianの記事では、この種の野生個体数は推定約10,000匹で、1960年代以降に個体数が約80%減少したと紹介されています。さらに、2024年12月の洪水では川の水位が大きく上がり、ティアロの重要な繁殖地で、そのシーズンの巣の約半分が失われたとされています。

    地域のボランティアたちは、20年以上にわたってメアリーリバータートルの保護に関わってきました。洪水の際には、一部の巣をより高い場所へ移すなどして、少しでも卵を守ろうとしたと報じられています。

    しかし、巣を守る活動だけで問題が解決するわけではありません。

    記事では、繁殖成績の悪化、生息地への影響、捕食、気候変動、そして若い個体が十分に成長していない可能性など、複数の課題が重なっていることも紹介されています。

    なぜ今、このニュースを紹介するのか

    このニュースは2025年の記事ですが、淡水ガメの保護を考えるうえで、とても重要な記録だと思います。

    ウミガメの保護では、砂浜や海岸が注目されることが多い。
    でも、淡水ガメにもまた、卵を産む場所があり、川の流れがあり、増水や洪水に左右される繁殖の時間があります。

    メアリーリバータートルは、川の中で静かに生きているカメです。
    でもその静かな暮らしは、気候や水位、人間の保護活動、地域のボランティアの努力と深くつながっています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、淡水ガメの繁殖地が、思っている以上に繊細だということです。

    川に暮らすカメは、ただ水の中にいればいいわけではありません。
    産卵できる場所があり、卵が流されない高さがあり、子ガメが孵化して川へ向かえる環境が必要です。

    洪水は自然の一部です。
    でも、もともと個体数が減っている種類にとって、ひとつの繁殖シーズンを失うことは大きな痛手になります。

    記事の中では、保護関係者が「毎年が重要だ」という趣旨の危機感を示しています。
    亀は長生きする生き物だけど、だからといって繁殖の失敗を何年も積み重ねていいわけではない。

    長く生きるからこそ、次の世代へつなぐ一回一回の繁殖が重いのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    メアリーリバータートル。

    一度野生の個体を見てみたいぜ。

    オーストラリアから固有種の輸出を許可する未来が訪れますように。

    オーストラリアの亀をもっと知りたいよ〜

    出典

    元記事:The Guardian「‘Every year matters’: Queensland’s critically endangered ‘bum-breathing’ turtle battles the odds」