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  • 【世界の亀ニュース】16巣中13巣が捕食 X線と216ヤードの糸で追うトウブハコガメの産卵

    【世界の亀ニュース】16巣中13巣が捕食 X線と216ヤードの糸で追うトウブハコガメの産卵

    今回は、アメリカ・バージニア州で進められている、トウブハコガメの巣を探し出して孵化までの生存率を調べる研究を紹介します。

    使われているのは、

    X線装置。

    GPS。

    無線発信器。

    自動撮影カメラ。

    そして、

    プラスチックのカップと、細い糸。

    最新技術と驚くほど単純な道具を組み合わせながら、人間にはなかなか見つけることのできない「カメの巣」を追いかけています。

    今回のニュース

    2026年8月14日、Smithsonian’s National Zoo and Conservation Biology Institute(スミソニアン国立動物園・保全生物学研究所)は、バージニア州で進めているトウブハコガメの繁殖調査について発表しました。

    研究チームは約8週間、ほぼ毎日のように野外調査を行い、16か所のトウブハコガメの巣を発見しました。

    しかし、そのうち13巣が産卵後わずか数時間ほどで掘り返され、卵を食べられていました。

    主な捕食者として確認されたのは、アライグマやスカンクです。自動撮影カメラには、アライグマが巣の卵を食べる姿も記録されました。

    16巣中13巣。

    今回確認された巣の約81%が失われたことになります。

    過去の研究でも、ハコガメ類の巣では捕食率が90%に達する場合があるとされており、今回の結果もそれと一致する高い捕食圧を示しました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ合衆国
    州:バージニア州
    研究機関:Smithsonian’s National Zoo and Conservation Biology Institute
    研究チーム:Turtle Conservation Ecology Lab
    発表日:2026年8月14日
    対象:トウブハコガメ
    情報の種類:陸生ガメ・繁殖・産卵・捕食・野外研究・保全

    スミソニアンのTurtle Conservation Ecology Labは、2022年からバージニア州に生息するハコガメの移動、繁殖行動、生息地利用などを調べています。

    今回新たに始めたのが、

    「母ガメがどこへ卵を産み、その卵がどのくらい生き残るのか」

    を調べる研究です。

    登場する亀

    今回の主役は、トウブハコガメです。

    学名は Terrapene carolina carolina

    英語ではEastern Box Turtleと広く呼ばれてきましたが、バージニア州野生生物資源局では現在、Woodland Box Turtleという名称を使用しています。

    トウブハコガメは、バージニア州全域に自然分布する陸生傾向の強いカメです。

    甲長はおよそ11〜20センチ。

    背甲は高く盛り上がり、褐色から黒色の地色に、黄色やオレンジ色の斑点、線、まだら模様が入ります。

    模様には非常に大きな個体差があります。

    名前の由来は「箱」

    ハコガメという名前の大きな理由が、腹甲です。

    トウブハコガメの腹甲には可動する蝶番のような構造があります。

    危険を感じると頭や手足を甲羅の中へ完全に引っ込め、腹甲を閉じることで、まるで箱のような状態になります。

    成熟した個体では、とても頑丈な防御です。

    でも、

    卵にはその甲羅がありません。

    そして孵化したばかりの子ガメにも、大人と同じ防御力はありません。

    今回の研究は、

    頑丈な「箱」を持つようになるずっと前に、どれほど多くの命が失われているのか

    を調べる研究でもあります。

    まず、母ガメを探す

    巣を調べるには、当然ながら最初に巣を見つけなければなりません。

    これが簡単ではありません。

    研究チームが調査している5か所には、無線発信器とGPSタグを装着した56匹のハコガメがいます。

    研究者はVHF受信機を使い、それぞれの個体に割り当てられた電波を探します。

    信号が強くなる方向へ進む。

    草をかき分ける。

    落ち葉を見る。

    そしてようやく、模様によって森の地面へ溶け込んでいる小さな甲羅を見つけます。

    発信器が付いていても見つけるのが難しいほど、ハコガメは森の中へ隠れるのが上手です。

    次にX線を撮る

    母ガメを発見したら、

    今度はその個体が卵を持っているかを調べます。

    雌のハコガメは、形成された卵を体内におよそ30〜60日間保持します。

    バージニア州でこの状態になるのは、主に5月下旬から7月上旬です。

    研究者はまず、後脚付近を慎重に触って硬い卵があるか確認します。

    ただし、触診だけでは確実ではありません。

    そこで登場するのが、

    携帯型X線装置です。

    プラスチックカップが研究器具になる

    野外に大きな病院設備を持ち込むことはできません。

    研究者は車の後ろに簡易的なフィールドステーションを作り、

    携帯型X線装置。

    タブレット。

    無線受信機。

    体重計。

    自動撮影カメラ。

    などを並べます。

    そしてX線を撮るときに使われる、非常に重要な道具があります。

    プラスチックカップです。

    カメを鉛で保護されたプレートとカップの上へ一時的に乗せます。

    カップは、撮影中にカメが歩いてどこかへ行ってしまわない高さになっています。

    その状態で短時間だけX線撮影を行うと、

    体内に卵があるかどうかが、その場で確認できます。

    高度なX線装置と、

    どこにでもありそうなプラスチックカップ。

    この組み合わせで野生の母ガメを調べています。

    卵があったら「糸」を付ける

    X線で卵が確認されたら、

    次に登場するのが糸です。

    研究者は母ガメの甲羅に、重さわずか約2グラムの小さな糸巻きを慎重に取り付けます。

    そしてカメを発見した場所へ戻します。

    糸巻きには、

    216ヤード、約198メートル

    もの糸が巻かれています。

    母ガメが森を歩く。

    その後ろに、細い糸が伸びていく。

    研究者は翌日、その糸をたどります。

    母ガメは簡単には産まない

    卵を持っているからといって、

    すぐにその場所へ産卵するわけではありません。

    ハコガメの雌は、巣を作る場所を何時間、ときには何日もかけて探します。

    土の状態。

    日当たり。

    温度。

    周囲の環境。

    さまざまな条件を確かめながら歩きます。

    研究者が、

    「ここに産むだろう」

    と思った場所から離れ、

    翌朝には約1.5マイル、約2.4キロ離れた山の上で巣を掘っていることさえあると報告されています。

    カメはゆっくり歩きます。

    でも、

    ゆっくりだから移動しないわけではありません。

    時間をかければ、人間が想像する以上の距離を移動します。

    糸をたどれば、巣が見つかる

    翌日。

    研究者は再び母ガメを探します。

    そして体重を測ります。

    もし体重が前日と変わっていなければ、

    まだ産卵していない可能性が高い。

    ところが、

    20〜80グラムほど軽くなっていたら、卵を産んだ可能性があります。

    そこで研究者は、

    母ガメの後ろに残された細い糸を逆方向へたどります。

    草の中。

    落ち葉の中。

    牧草地。

    森。

    何十メートル、場合によっては100メートル以上。

    糸を追っていく。

    そして、

    新しく土が掘り返された場所と糸が交差していれば、

    そこが巣である可能性があります。

    見つけたら、触らない

    巣を発見しても、

    研究者は卵を掘り出して確認するわけではありません。

    可能な限り巣をそのままの状態にします。

    位置を記録し、

    小さな目印を付け、

    自動撮影カメラを設置する。

    そして、

    その後何が起こるのかを見守ります。

    母ガメが選んだ場所を、

    できるだけ母ガメが残した状態のまま観察する。

    そのための研究です。

    20匹の母ガメから16巣を発見

    2026年の調査では、

    研究対象のうち20匹の雌が卵を持っていることが確認されました。

    そのうち研究チームが見つけることができた巣は16か所。

    3匹は研究者が立ち入れない私有地で産卵。

    残る1匹については、最終的に巣を発見できませんでした。

    ここまでは、

    かなり高い精度で母ガメを追跡できています。

    しかし、

    本当に厳しい結果は、その後でした。

    16巣中13巣が失われた

    約8週間の調査で見つかった16巣。

    そのうち13巣が、

    アライグマやスカンクなどによって掘り返されました。

    しかも一部は、

    産卵からわずか数時間後です。

    母ガメが穴を掘る。

    卵を産む。

    土を戻す。

    その日のうちに、

    別の動物がその場所を見つける。

    掘り返す。

    卵を食べる。

    子ガメになる前に、

    そこで命が途切れます。

    カメの最大の敵は「道路」だけではない

    陸生のカメについて考えるとき、

    人間には分かりやすい危険があります。

    道路。

    自動車。

    草刈り機。

    農薬。

    森林開発。

    実際、スミソニアンのこれまでの調査でも、道路、気候の変化、芝刈り機、住宅地周辺の捕食動物などがハコガメ減少に関係している可能性が示されています。

    しかし今回の研究が見せているのは、

    甲羅を持ったカメとして地上へ出てくる前にも、大きな壁がある

    ということです。

    卵の段階です。

    成熟まで10〜20年

    トウブハコガメは、たくさんの子どもを短期間で増やす動物ではありません。

    バージニア州野生生物資源局によると、性成熟までには10〜20年かかります。

    雌が一年に産む卵も、およそ2〜7個です。

    そして今回の調査では、

    その数少ない卵の多くが、孵化する前に捕食されました。

    一匹の雌が10年以上かけて大人になる。

    その雌が数個の卵を産む。

    その多くが孵化前に失われる。

    さらに孵化した子ガメも、捕食、道路、生息地の変化などを越えなければならない。

    ハコガメが個体数を回復するのに時間がかかる理由が見えてきます。

    100年で約32%減少

    バージニア州野生生物資源局は、州内のWoodland Box Turtleについて、過去100年間で個体数がおよそ32%減少したと推定しています。

    生息地の分断や都市化、野生個体の違法なペット取引などが主要な脅威として挙げられています。

    一方で今回の研究は、

    「生まれたカメがなぜ減るのか」

    だけでなく、

    「そもそも、何匹が生まれるところまで到達できているのか」

    という段階へ調査を広げています。

    捕食者を悪者にすればいいのか

    13巣を失った。

    原因はアライグマやスカンク。

    だから捕食動物を排除すればいい。

    そう単純な話でもありません。

    アライグマやスカンクも、その生態系の中で生きている動物です。

    今回の研究の目的も、

    ただ捕食者を見つけることではありません。

    どんな場所に作られた巣が生き残るのか。

    土壌温度はどう違うのか。

    周囲の植生はどうなっているのか。

    巣の微気候はどうなっているのか。

    そうした条件を調べ、

    ハコガメが繁殖できる環境そのものを理解すること

    が目的です。

    来年は「生き残る巣」の条件を調べる

    研究チームは2027年も調査を続ける予定です。

    次の段階では、

    土壌温度。

    巣の位置。

    巣周辺の微気候。

    そのほかの環境条件。

    など、より詳しいデータを集めます。

    「捕食された巣」だけを見るのではありません。

    生き残った巣と比べる。

    そこに何が違うのかを探す。

    もし、

    生き残りやすい巣の条件が分かれば、

    将来、生息地管理や巣の保護方法を考える材料になります。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番面白いと思うのは、

    人間が母ガメに巣の場所を教えてもらっていることです。

    人間が地図を広げて、

    「ここに産むだろう」

    と決めるのではない。

    まずカメを探す。

    卵を持っているか確認する。

    そして、

    カメを元の場所へ戻す。

    そこから先は、

    母ガメに好きなところへ歩いてもらう。

    人間は後ろに残された一本の糸をたどる。

    森の中で、

    細い糸の先にある答えを探す。

    最新のX線装置があっても、

    GPSがあっても、

    最後に必要なのは、

    カメ自身がどこへ行くのかを見ること。

    この研究は、

    人間がカメに正解を教える研究ではありません。

    カメが選んだ場所から、

    人間が正解を教えてもらう研究なのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    亀は成熟に時間がかかるよね!

    僕は熱帯魚や金魚の繁殖をしていたから、亀の繁殖にもそれと同じ感覚で取り組んでしまいました。

    亀の繁殖にはめちゃめちゃ時間がかかる。

    それに、失敗もつきものである。

    プロのブリーダーさんたちの努力・研究には本当に敬服する。

    この記事にはあまり関係ないコメントになってしまったね。

    出典

    Smithsonian’s National Zoo and Conservation Biology Institute
    「How X-Rays, Plastic Cups and Spools of String Help National Zoo Researchers Find Wild Box Turtle Nests」

    Virginia Department of Wildlife Resources
    「Woodland Box Turtle」

    IUCN Red List of Threatened Species
    「Eastern Box Turtle – Terrapene carolina」

  • 【世界の亀ニュース】アカウミガメ922巣で過去最多 サニベル島。しかし4分の1の巣がコヨーテ被害

    今回は、アメリカ・フロリダ州のサニベル島で、アカウミガメの産卵巣が観測史上最多を更新したニュースを紹介します。

    数字だけを見ると、とても嬉しいニュースです。

    しかし、その砂浜では同時に、別の問題も大きくなっていました。

    今回のニュース

    2026年8月12日、Sanibel-Captiva Conservation Foundation(SCCF)は、フロリダ州サニベル島で確認されたアカウミガメの巣が922か所に達し、過去最高記録を更新したと発表しました。

    これまでの最高記録は2023年の878巣。

    2026年は産卵シーズンが完全に終了する前の段階で、それをすでに44巣上回っています。

    しかし、同じ発表にはもう一つ重要な数字があります。

    サニベル島では、922か所のアカウミガメの巣のうち、211か所がコヨーテによる捕食被害を受けました。

    被害率は22.6%。

    隣接するキャプティバ島では、241巣のうち82巣が被害を受け、被害率は33.7%に達しています。

    両島を合わせると、アカウミガメの巣1,163か所のうち293か所、およそ4巣に1巣がコヨーテの被害を受けていることになります。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ合衆国・フロリダ州
    場所:サニベル島、キャプティバ島
    発表日:2026年8月12日
    対象種:アカウミガメ
    情報の種類:ウミガメ・産卵・繁殖・捕食・保護活動

    サニベル島とキャプティバ島では、SCCFが毎日砂浜を巡回し、ウミガメの巣を記録・監視しています。

    この地域のウミガメ調査は1959年に始まっており、フロリダ州でも最も長く継続されているウミガメのモニタリング活動の一つです。

    登場する亀

    今回の主役は、アカウミガメです。

    学名は Caretta caretta

    英語ではLoggerhead Sea Turtleと呼ばれています。

    アカウミガメは世界の温帯から亜熱帯の海に広く分布しており、フロリダ州の砂浜は世界的にも非常に重要な産卵地です。

    フロリダ州魚類野生生物保護委員会(FWC)によると、北西大西洋のアカウミガメ繁殖集団は世界最大規模とされ、その巣のおよそ90%がフロリダ州に集中しています。

    一匹の母ガメが何度も砂浜へ戻る

    922巣あるからといって、922匹の母ガメが来たという意味ではありません。

    一匹の雌は同じ繁殖シーズンに何度も産卵します。

    FWCによると、アカウミガメの雌は繁殖年に約4〜7回巣を作り、およそ14日間隔で再び砂浜へ上陸します。ひとつの巣には約100〜126個の卵が入り、孵化までには約60日かかります。

    つまり砂浜で数えられている「巣」は、

    母ガメが海から上がり、

    砂を掘り、

    卵を産み、

    再び海へ戻った、

    一回一回の繁殖行動の記録です。

    1959年から見続けてきた砂浜

    サニベル島のウミガメ調査は1959年に始まりました。

    当初は研究者Charles LeBuffとCaretta Researchが調査を行い、1992年からSCCFが引き継いでいます。

    2026年の922巣は、67年近く続く記録の中で最も多いアカウミガメの巣数です。

    一つのシーズンだけを見れば、

    「今年は多かった」

    で終わります。

    しかし、半世紀以上同じ砂浜を見続けているからこそ、

    昔と比べて増えたのか。

    減ったのか。

    どの場所へ産卵するようになったのか。

    何が変化しているのか。

    ということが分かります。

    過去最高なのに、安心できない

    2026年の巣数は記録的です。

    しかしSCCFは、巣の数だけを見て今シーズンを成功と判断することには慎重です。

    理由が、コヨーテによる卵の捕食です。

    サニベル島では211巣。

    キャプティバ島では82巣。

    合計293巣が被害を受けています。

    SCCFが引用している連邦政府のアカウミガメ回復計画では、捕食被害率10%が管理上の一つの目安とされています。

    ところがサニベル島では22.6%。

    キャプティバ島では33.7%。

    サニベル島西端のFar West地区では、**42.6%**に達しました。

    ほぼ2巣に1巣です。

    コヨーテが悪いのか

    この話を見ると、

    「コヨーテがウミガメを襲っている」

    と考えてしまいます。

    でも、野生動物の世界を単純に善悪で分けることはできません。

    コヨーテも生きるために餌を探しています。

    砂浜に大量の卵が埋まっていれば、それを見つける個体が現れること自体は不思議ではありません。

    問題なのは、

    現在の捕食圧が、ウミガメ個体群にとって許容できる範囲を超えている可能性があること

    です。

    そこでSCCFでは、一部の巣へ金網状の保護スクリーンを設置し、コヨーテなどが掘り返すことを防ぎながら、孵化した子ガメ自身は網目から外へ出られる仕組みを使っています。

    巣が多くても、子ガメが多いとは限らない

    ここが今回のニュースで、とても重要なところです。

    922巣。

    これは間違いなく大きな記録です。

    でも、

    巣の数と、海へ到達する子ガメの数は同じではありません。

    卵が捕食される。

    高潮で巣が流される。

    孵化しない卵がある。

    生まれても砂から出られない個体がいる。

    人工照明によって海とは反対方向へ進んでしまう場合もあります。

    SCCFも、2026年シーズンの本当の結果は、残っている巣がすべて孵化または失敗し、最終的な子ガメの脱出数が集計されるまで分からないとしています。

    2023年にも同じことが起きていた

    実は、これは初めて起きた問題ではありません。

    2023年も、サニベル島とキャプティバ島ではアカウミガメの巣が過去最高水準を記録しました。

    しかし同時に、両島では約43%の巣が捕食被害を受けました。

    その結果、その年に砂浜から出てきた子ガメの数は、当時として2016年以来最も少なくなりました。

    つまり、

    母ガメがたくさん産卵した。

    だから安心。

    とは言えません。

    卵が孵化して、

    子ガメが砂から出て、

    海へ入って、

    初めて次の段階へ進みます。

    アカウミガメは大人になるまで約35年

    海へ入った子ガメが、すぐ次の世代を作るわけでもありません。

    FWCによると、アカウミガメが性成熟するまでには、およそ35年かかります。

    2026年にサニベル島から海へ入る子ガメが、

    大西洋を泳ぎ、

    成長し、

    さまざまな危険を越え、

    繁殖できる母ガメとなるのは、

    2060年前後になる可能性があります。

    そして雌は、成熟すると自分が生まれた地域に近い砂浜へ戻り、次の卵を産みます。

    今砂浜で見えている母ガメたちは、何十年も前の保護活動の結果でもあります。

    922巣は「今年だけ」の数字ではない

    SCCFは、近年の巣数増加について、過去に行われてきた保全活動の成果が現れている可能性を指摘しています。

    海亀の保護には時間がかかります。

    今日卵を守る。

    明日結果が出る。

    というものではありません。

    数十年前に守られた子ガメが大人になり、

    今、

    砂浜へ戻っている。

    2026年の922巣には、そんな長い時間が含まれています。

    フロリダは世界最大級の産卵地

    フロリダ州は、アカウミガメにとって世界でも特に重要な場所です。

    FWCによると、北西大西洋の繁殖集団のおよそ90%の巣がフロリダ州にあります。

    つまり、フロリダの一つの砂浜で起きていることは、

    その地域だけの話ではありません。

    大西洋を回遊するアカウミガメ個体群全体につながっています。

    人間にもできることがある

    SCCFは、観光客や住民に対して、産卵シーズン中の砂浜でいくつかの行動を呼びかけています。

    夜間は照明を落とす。

    砂浜に掘った穴を埋める。

    ビーチチェアやテント、玩具を夜まで残さない。

    ゴミや釣り糸を放置しない。

    産卵中の母ガメへ近づかない。

    保護用のスクリーンへ触らない。

    どれも巨大な保護施設を作るような活動ではありません。

    でも、一匹の母ガメが安心して卵を産み、

    一匹の子ガメが海まで歩くためには、

    そういう小さなことが重要になります。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番面白いと思うのは、

    「過去最多」という数字の先を見なければならないことです。

    922巣。

    ニュースのタイトルとしては、とても分かりやすい。

    記録更新。

    保護活動成功。

    アカウミガメ復活。

    そう書きたくなる。

    でも砂を掘ってみれば、

    卵がない巣がある。

    コヨーテに食べられた巣がある。

    水に流された巣がある。

    まだ孵化していない巣がある。

    一つの数字だけでは、生き物の状態は分からない。

    たくさん産んだのか。

    何匹生まれたのか。

    何匹海へ入ったのか。

    何匹大人になったのか。

    全部違う数字です。

    だから、

    922という数字を喜びながら、

    その先も見続ける必要がある。

    今回のニュースは、

    「増えた」ということと、「守れた」ということは同じではない

    と教えてくれている気がします。

    湯川亀吉の一言

    ウミガメって、意外とでかいよね。

    出典

    Sanibel-Captiva Conservation Foundation(SCCF)
    「Record-Breaking Loggerhead Nesting on Sanibel Continues to Rise」
    2026年8月12日
    https://sccf.org/2026/08/12/record-breaking-loggerhead-nesting-on-sanibel-continues-to-rise/

    Sanibel-Captiva Conservation Foundation(SCCF)
    「Record-Breaking Loggerhead Nesting Season on Sanibel」
    2026年7月29日
    https://sccf.org/2026/07/29/record-breaking-loggerhead-nesting-season-on-sanibel/

    Florida Fish and Wildlife Conservation Commission(FWC)
    「Loggerhead Nesting in Florida」
    https://myfwc.com/research/wildlife/sea-turtles/nesting/loggerhead/

    Florida Fish and Wildlife Conservation Commission(FWC)
    「Loggerhead Sea Turtle」
    https://myfwc.com/wildlifehabitats/profiles/reptiles/sea-turtles/loggerhead-turtle/

    NOAA Fisheries
    「Loggerhead Turtle」
    https://www.fisheries.noaa.gov/species/loggerhead-turtle

  • 【世界の亀ニュース】アカウミガメの巣4,100個超 米ジョージア州で過去最多を更新

    【世界の亀ニュース】アカウミガメの巣4,100個超 米ジョージア州で過去最多を更新

    今回は、アメリカ・ジョージア州の海岸で、アカウミガメの巣が過去最多を更新したニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年、アメリカ・ジョージア州で確認されたアカウミガメの巣が、これまでの記録を上回りました。

    ジョージア州自然資源局が参加するウミガメ巣穴監視システムによると、8月2日時点で州内の海岸から報告されたウミガメの巣は暫定4,169個。そのうち、4,107個がアカウミガメの巣です。

    これまでの最多記録は、2022年に確認された4,071個でした。2026年の産卵シーズンはまだ完全には終わっておらず、最終的な数はさらに増える可能性があります。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ合衆国、ジョージア州
    主な地域:大西洋沿岸の島々と砂浜
    元記事の言語:英語
    集計時期:2026年8月2日時点
    情報の種類:新着ニュース・ウミガメ・産卵・繁殖・保護活動

    ジョージア州では、カンバーランド島、オサボー島、セントキャサリンズ島、ジキル島、タイビー島など、多数の海岸でウミガメの産卵調査が行われています。

    州の沿岸約150キロを対象に、ボランティア、研究者、行政職員らが巣を探し、保護し、孵化状況を記録しています。

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、アカウミガメです。

    学名は Caretta caretta。英語ではLoggerhead Sea Turtleと呼ばれます。

    名前のとおり、ほかのウミガメと比べて大きく頑丈な頭を持っています。強い顎でカニや貝などの硬い獲物をかみ砕き、大西洋、太平洋、インド洋などの広い海域を移動します。

    アメリカのジョージア州では、海岸へ産卵に来るウミガメの大部分をアカウミガメが占めています。アメリカでは保護対象となっており、ジョージア州のウミガメ保護活動でも中心となる種です。

    ニュースの要約

    2026年の産卵シーズンに、ジョージア州で最初のアカウミガメの巣が確認されたのは5月5日でした。

    それから約3か月の間に、州内の各地で次々と巣が発見されました。

    8月2日時点の暫定集計では、アカウミガメの巣が4,107個、アオウミガメの巣が5個、ケンプヒメウミガメの巣が4個、種を確定できていない巣が53個確認されています。

    産み落とされた卵の推定数は、すでに16万個を超えています。

    一部の巣では孵化も始まり、同日の集計では約5万6,800匹の子ガメが巣から出たと記録されています。ただし、これらは産卵・孵化シーズン途中の暫定値であり、今後も更新されます。

    2022年の記録を超えた

    ジョージア州では、1989年に州内の主要な海岸を対象とした本格的な調査が始まりました。

    それ以降の最多記録は、2022年の4,071個でした。2022年には、26万匹を超えるアカウミガメの子どもが海へ向かったとされています。

    2026年は、産卵シーズンが始まる前から、巣の多い年になると予測されていました。

    6月22日の時点ですでに2,366個の巣が確認され、その後も急速に数が増えました。そして8月初め、アカウミガメだけで4,100個を超え、2022年の記録を更新しました。

    なぜ今年は巣が多いのか

    アカウミガメの雌は、毎年必ず産卵するわけではありません。

    一度の産卵シーズンに複数回の巣を作ったあと、次の産卵まで2年から3年ほど間を空ける個体もいます。

    そのため、巣の数は毎年一定ではなく、数年おきに大きく増えることがあります。ジョージア州の研究者たちは、2026年がそうした「多くの雌が同じ年に戻ってくる年」になると予測していました。

    ただし、2026年には、例年より多くの雌が同じ時期に集中して産卵する「波」のような動きも確認されています。

    なぜ産卵の時期がこれほど重なったのかは、まだ完全には分かっていません。研究者たちは卵から採取したDNAや産卵記録を調べ、その原因を探っています。

    タイビー島でも島の記録を更新

    観光地として知られるタイビー島でも、2026年は過去最多の産卵シーズンとなりました。

    これまでの島の最多記録は2022年の35個でしたが、7月15日の時点ですでに49個へ到達。その後も増え続け、8月2日時点の監視記録では、53個のアカウミガメの巣が報告されています。

    タイビー島では毎朝、訓練を受けたボランティアが海岸を歩き、前夜に残された母ガメの足跡を探しています。

    巣が見つかると場所を特定し、印を付けて保護します。高潮による浸水の危険が高い場所では、許可を受けた担当者が卵を安全な位置へ移すこともあります。

    数が増えても、すべての卵が孵化するわけではない

    巣の数が過去最多になったことは、大きな希望です。

    しかし、産み落とされた卵がすべて子ガメになるわけではありません。

    高潮や嵐で巣が浸水することもあります。捕食者に卵を食べられることもあります。砂浜に残された深い穴や椅子、テント、ゴミが、母ガメや子ガメの進路を塞ぐこともあります。

    さらに、海岸沿いの人工照明は、子ガメが進む方向を狂わせます。子ガメは本来、暗い砂浜から海側の明るい地平線へ向かいますが、建物や道路の光に引き寄せられると、海とは反対側へ進んでしまうことがあります。

    タイビー島の保護関係者は、海岸を「平らに、きれいに、暗く」保つよう呼びかけています。

    砂の穴を埋める。
    砂の城を崩す。
    ゴミや道具を持ち帰る。
    夜は海岸に向けた照明を消す。

    一つひとつは小さな行動ですが、母ガメが巣を作り、子ガメが海へ向かうためには重要なことです。

    長い保護活動が数字になって現れた

    ジョージア州では、1990年代初めにウミガメ保護活動が本格化して以降、アカウミガメの巣が平均して年間約4%ずつ増加してきたとされています。

    毎朝、海岸を歩く。

    足跡を見つける。

    砂の下の卵を確認する。

    巣を囲い、嵐や捕食者、人間の活動から守る。

    そして、子ガメが海へ向かったあと、巣を調査して結果を記録する。

    2026年の4,100個を超える巣は、突然現れた数字ではありません。

    何十年も前から続けられてきた調査と保護の結果が、長い時間を経て現れ始めたものだと考えられます。

    記録更新でも、保護は終わらない

    巣が過去最多になったからといって、アカウミガメが完全に安全になったわけではありません。

    アカウミガメは現在も保護対象であり、海岸の開発、人工照明、漁業による混獲、海洋ごみ、生息環境の変化など、さまざまな危険にさらされています。

    また、巣が増えたことと、海で暮らすアカウミガメ全体の個体数が同じ割合で回復したことは、必ずしも同じではありません。

    子ガメが海へ入り、成長し、再び産卵できる年齢になるまでには長い時間がかかります。

    2026年に生まれた子ガメたちが、いつか同じ砂浜へ戻ってくる。その未来まで保護が続いて、初めて今回の記録が次の世代へつながるのだと思います。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、4,100個を超える巣の一つひとつに、一匹の母ガメの移動があることです。

    海の中から砂浜へ上がる。

    重い体を前肢で引きずりながら、波の届きにくい場所まで進む。

    砂を掘り、卵を産み、穴を埋める。

    そして、再び大西洋へ帰っていく。

    人間が記録するのは「巣の数」です。

    でも、その数字の中には、夜の砂浜を進んだ母ガメたちの時間が積み重なっています。

    4,107という数字は、4,107個の穴があったというだけではない。

    何千回もの上陸と産卵が、同じ海岸で繰り返されたということです。

    湯川亀吉の一言

    良かったね。

    出典

    Georgia DNR Sea Turtle Conservation Program
    「Sea Turtle Nest Monitoring System」

    Georgia Public Broadcasting
    「Georgia is on track for a record-high turtle nesting season. What’s behind the good news」

    Tybee Island Marine Science Center
    「Sea Turtle Nesting Season Updates」

    NOAA Fisheries
    「Loggerhead Turtle: Science」

  • 【世界の亀ニュース】バージニア州でオサガメが初産卵 世界最大のウミガメが軍施設の海岸へ

    【世界の亀ニュース】バージニア州でオサガメが初産卵 世界最大のウミガメが軍施設の海岸へ

    今回は、アメリカ・バージニア州で初めて確認された、オサガメの歴史的な営巣に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    アメリカ・バージニア州の海岸で、オサガメの巣が記録上初めて確認されました

    巣が見つかったのは、バージニアビーチにあるアメリカ海軍航空基地オシアナの施設、ダムネック・アネックスの海岸です。

    海岸に残された大きな足跡を自然資源管理チームが確認し、調査した結果、オサガメが卵を産んだ巣であることが判明しました。

    発見後、巣の周囲には柵が設置され、卵が安全に孵化できるよう保護と監視が始まっています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ合衆国、バージニア州バージニアビーチ
    発見場所:海軍航空基地オシアナ・ダムネック・アネックス
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年7月23日
    情報の種類:新着ニュース・ウミガメ・産卵・繁殖・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、オサガメです。

    学名は Dermochelys coriacea。英語ではLeatherback Turtleと呼ばれます。

    オサガメは、現生するカメの中で最大の種類です。一般的なウミガメのような硬い鱗板のある甲羅を持たず、背中は厚く弾力のある皮膚で覆われています。

    背中には前後へ伸びる7本の隆起があり、大きな前肢を使って外洋を長距離移動します。個体によっては、産卵地と餌場の間を年間1万マイル以上移動することもあります。

    ニュースの要約

    今回確認された巣は、バージニア州で記録された最初のオサガメの営巣です。

    バージニア州では、オサガメが海を泳ぐ姿は以前から確認されていました。しかし、2025年にまとめられた州のウミガメ保全計画には、それまで州内でオサガメの営巣は一度も記録されていないと明記されていました。

    オサガメは主に、フロリダ州、カリブ海地域などの熱帯・亜熱帯の砂浜で産卵します。

    それより北に位置するバージニア州で巣が確認されたことは、州のウミガメ観測史に残る出来事です。

    巣が見つかったダムネック・アネックスには、約3.2マイルにわたる大西洋沿岸の海岸があります。

    軍事施設であるため一般の人が自由に立ち入れる場所ではなく、観光客の往来や夜間照明などの影響を受けにくい環境です。今回の巣も、発見後すぐに周囲を囲って保護されました。

    軍事施設の海岸で始まった保護

    今回の保護活動には、海軍航空基地オシアナの自然資源管理チームだけでなく、バージニア水族館、バージニア州野生生物資源局、バックベイ国立野生生物保護区などが協力しています。族館、バージニア州野生生[object Object],[object Object],[object Object][object Object],[object Object],[object Object]の発見以前から海岸環境を守る活動が行われていました。

    2026年4月には、海岸の清掃と砂丘の修復作業が実施され、592本の使用済みクリスマスツリーが約1,097フィートにわたって配置されました。木によって砂を受け止め。

    作業では、産卵するウミガメの通り道を妨げないよう、木の配置にも注意が払われていました。citeturn897331search17

    その数か月後、同じ海岸にオサガメが現れた。

    今回の営巣が砂丘修復の直接的な成果だったと断定することはできません。

    それでも、人間が海岸を守ろうとしてきた場所に、世界最大のウミガメが卵を残したという事実には、大きな意味があるように感じます。

    卵が孵化するまで

    オサガメの雌は夜の砂浜へ上がり、体全体が入るほどの大きなくぼみと、深い産卵穴を掘って卵を産みます。

    一度に産む卵はおよそ100個で、通常はから12日ほどの間隔を空けて複数回産卵することがあります。citeturn490649search0turn490649search1

    ただし、卵が無事に産み落とされたからといって、必ず孵化できるわけではありません。

    高潮や嵐による浸水、砂浜の温度、捕食者、人間の光や活動など、孵化までには多くの危険があります。

    今回の巣が無事に孵化し、バージニア州で初めてのオサガメの子どもたちが大西洋へ向かえるかどうか、関係者による監視が続きます。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、オサガメが、それまで産卵記録のなかった場所へ現れたことです。

    一匹の雌が、暗い海からバージニア州の砂浜へ上がった。

    砂を掘り、卵を産み、また大西洋へ帰っていった。

    その行動によって、バージニア州のウミガメの記録が書き換えられました。

    なぜ今回、この海岸が選ばれたのか。

    母ガメがさらに北へ移動するようになったのか。
    海や砂浜の環境に変化があったのか。
    それとも、これまでも人間が見つけられなかっただけなのか。

    一つの巣だけでは、理由を決めることはできません。

    それでも、これまで存在しなかった記録が生まれたということは、海の中で何かが動いていることを感じさせます。

    湯川亀吉の一言

    オサガメ見たことないんです。

    見てみたいな〜♡

    出典

    FOX Weather
    「World’s largest ss in Virginia for first time in recorded history」citeturn755526view0

    WTKR News 3
    「Leatherback sea turtle lay Dam Neck Annex — the first recorded in Virginia」citeturn755526view2

    Virginia Departmees
    「Virginia Sea Turtle Conservation 26view4

    NOAA Fisheries
    「Leatherback Turtle」citeturn490649search0

  • 【世界の亀ニュース】犬や嵐からヒメウミガメの巣を守る パラワン島で地域住民が夜の浜を巡回

    【世界の亀ニュース】犬や嵐からヒメウミガメの巣を守る パラワン島で地域住民が夜の浜を巡回

    今回は、フィリピン・パラワン島の砂浜で、地域住民と研究者が協力してヒメウミガメの巣を守っているニュースを紹介します。

    今回のニュース

    フィリピン西部のパラワン島にあるサン・ビセンテでは、ヒメウミガメの産卵期になると、地域住民と研究者が夜通し砂浜を巡回しています。

    活動の中心となっているのは、フィリピンの海洋保全団体Large Marine Vertebrates Research Institute Philippines、通称LAMAVEと、海岸沿いの村で暮らす地域住民です。

    母ガメの上陸を確認し、産卵を見守り、犬や高潮などの危険がある巣は保護用の孵化場へ移します。卵から出てきた子ガメが無事に海へ向かうまで、地域全体で見守る活動が続けられています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:フィリピン共和国、パラワン州
    場所:サン・ビセンテ、サント・ニーニョ村など
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年7月17日
    情報の種類:新着ニュース・ウミガメ・産卵・孵化・地域保全

    サン・ビセンテは農業と漁業が行われている町で、その海岸はアジアに残る重要なヒメウミガメの産卵地の一つです。町には約284キロに及ぶ砂浜や小さな入り江があり、例年11月中旬から3月ごろにかけて、多数のヒメウミガメが夜の海岸へ上がります。

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ヒメウミガメです。

    学名は Lepidochelys olivacea。英語ではOlive Ridley Sea Turtleと呼ばれ、日本語では「オリーブヒメウミガメ」と表記されることもあります。

    ヒメウミガメは小型のウミガメで、甲長と甲幅の差が少なく、上から見ると甲羅の外周が円形に近く見えるのが特徴です。世界の熱帯・亜熱帯の海域に広く分布し、フィリピンの海岸でも産卵します。

    ニュースの要約

    産卵期のサン・ビセンテでは、地域の巡回員やボランティア、LAMAVEの研究者たちが交代で夜の砂浜を歩きます。

    最も忙しい時期には、一晩から早朝にかけて五つの時間帯に分かれ、合計5マイル、約8キロ以上の海岸を巡回します。

    母ガメを見つけても、すぐには近づきません。

    産卵が終わるまで静かに待ち、犬が近づけば追い払い、母ガメが海へ戻る前に甲羅の大きさを測ります。さらに、頭部にある鱗の模様を写真に記録し、将来同じ個体が戻ってきたときに識別できるようにします。遺伝子調査のため、ひれから小さな試料を採取する場合もあります。

    卵を動かさなければならない巣

    母ガメが選んだ場所であっても、すべての巣をそのまま残せるとは限りません。

    波に近すぎる場所では、高潮や嵐によって巣が浸水する可能性があります。人や車が頻繁に通る場所では、砂が踏み固められたり、卵が傷つけられたりする危険もあります。

    安全に孵化できないと判断された巣では、卵の向きを大きく変えないよう慎重に掘り出し、保護用の孵化場へ移します。孵化場では、巣の位置や卵の数、移動した日時などを記録しながら、子ガメが出てくる日を待ちます。

    卵を移すこと自体にも危険があります。

    移動方法や砂の深さ、温度などが適切でなければ、孵化率を下げてしまう可能性があるからです。

    そのためLAMAVEは、地域の巡回員に産卵調査、巣の移動、孵化場の管理、子ガメの放流などの技術を伝え、地域の人たち自身が長期的に海岸を守れる仕組みづくりを進めています。

    巣を襲う犬

    サン・ビセンテで現在、最も身近な脅威とされているのが、海岸を歩き回る犬です。

    犬は砂の中にある卵の匂いを見つけ、巣を掘り返します。孵化したばかりの子ガメが砂から出た直後に襲われることもあります。

    巡回員たちは母ガメの産卵中だけでなく、巣の周辺や子ガメの放流時にも犬が近づかないよう見守っています。

    これは犬を悪者にするという話ではありません。どんなときも、悪いのは人間です。

    放し飼いや野良犬の増加など、人間の暮らし方によって生まれた問題です。

    海岸のウミガメを守るためには、巣に柵を設置するだけでなく、地域の飼い犬の管理や住民への理解を広げる必要があります。

    気候変動と観光開発

    ヒメウミガメの巣を脅かしているのは、犬だけではありません。

    海面上昇、高潮、海岸浸食、激しい嵐によって、これまで安全だった産卵場所が水につかる可能性が高まっています。また、砂の温度は子ガメの性別や発生にも関係するため、海岸の高温化も重要な問題です。

    パラワン島では、観光開発も進んでいます。

    道路、宿泊施設、海岸照明、人や車の往来が増えれば、母ガメが上陸を諦めたり、子ガメが海とは反対側の光へ向かったりする可能性があります。

    自然豊かな海岸が観光地として注目されることと、ウミガメが産卵できる暗く静かな砂浜を残すこと。その二つをどう両立させるかが、これからの大きな課題です。

    卵で遊んでいた少年が、巣を守る側へ

    今回のニュースで紹介された地域巡回員の一人が、ジェラルド・マフサイさんです。

    マフサイさんは子どものころ、海岸でウミガメの卵をよく見つけていました。しかし、その卵がなぜ大切なのかを知らず、友人たちと遊びに使っていたと振り返っています。

    2023年、マフサイさんはLAMAVEの地域巡回員として働き始めました。そして現在は、巡回チームの責任者と、ウミガメ調査の研究助手を務めています。

    かつて卵の意味を知らなかった少年が、今では夜の浜を歩き、母ガメを記録し、同じ卵を犬や嵐から守っている。

    この変化は、一人の考えが変わったというだけではありません。

    地域に知識と仕事が生まれ、海岸で暮らしてきた人が保護活動の中心になったことを示しています。

    地域の人が守る意味

    遠くから研究者がやって来て、数年間だけ調査することはできます。

    しかし、ヒメウミガメは毎年同じ地域へ戻り、夜中や嵐の前後にも産卵します。

    海岸の変化を毎日見ているのは、そこで暮らす人たちです。

    どの場所に犬が多いのか。
    どの浜が高潮で削られるのか。
    どの時間帯に母ガメが上がりやすいのか。

    地域住民が持つ経験と、研究者が持つ調査技術を組み合わせることで、広い海岸を長期間見守れるようになります。LAMAVEの活動は、ウミガメだけを保護するのではなく、地域の人が自分たちの海岸を守り続けられる体制を作ることも目的としています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、ウミガメを守っているのが、特別な施設の中ではなく、人が暮らしている普通の砂浜だということです。

    母ガメが上陸する浜の近くには、家がある。

    漁へ出る船がある。

    犬が歩き、子どもが遊び、これから観光施設が建つかもしれない。

    人間の暮らしとウミガメの産卵地は、離れた二つの世界ではありません。

    同じ砂浜を使っています。

    だからこそ、ウミガメを守るには、その土地で暮らす人を保護活動の外側に置くことはできません。

    夜の浜を歩く地域巡回員の存在は、人間と亀が同じ場所で生きていくための、小さくても重要な接点なのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    人がいる限り難しい問題だね。
    人が悪だってことじゃないよ。
    良いだの悪いだの、正しいだの間違っているだのの判断軸を持っている人間がいることがクソなのさ。

    出典

    Mongabay
    「How a community is helping sea turtles hatch in the Philippines」

    Large Marine Vertebrates Research Institute Philippines
    「Marine Turtle Nesting Beach Monitoring and Conservation Project: An Overview」

    Island Innovation
    「How a Community is Helping Sea Turtles Hatch in the Philippines’ Palawan」

    World Wildlife Fund
    「Constructing climate-resilient hatcheries for endangered sea turtles in the Philippines」

    沖縄美ら海水族館
    「ヒメウミガメ」

  • 【世界の亀ニュース】ジョージア州の島でウミガメの産卵巣が過去最多に

    【世界の亀ニュース】ジョージア州の島でウミガメの産卵巣が過去最多に

    今回は、アメリカ・ジョージア州のタイビー島で報じられた、ウミガメの産卵に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    アメリカ・ジョージア州のタイビー島で、ウミガメの巣の数が過去最多を記録していると報じられました。

    Southern Livingによると、タイビー島では2026年7月15日時点で49か所のウミガメの巣が確認され、これまでの記録だった2022年の35か所を大きく上回ったとされています。保護活動はTybee Island Marine Science CenterとTybee Island Sea Turtle Projectを中心に行われています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ、ジョージア州、タイビー島
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年7月
    情報の種類:新着ニュース・産卵・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、主にアカウミガメです。

    記事によると、タイビー島で確認されるウミガメはアカウミガメが中心で、アカウミガメは自分が生まれた海岸へ戻って産卵する性質があると紹介されています。

    ニュースの要約

    タイビー島では、2026年のウミガメの産卵シーズンに、これまでで最も多い巣が確認されています。

    2026年7月15日時点で確認された巣は49か所。
    これは、これまでの最高記録だった2022年の35か所をすでに超える数です。

    記事では、この増加は継続的な保護活動の成果として紹介されています。
    一方で、タイビー島のような人が多く訪れる海岸では、ビーチに残されたごみ、夜間の光、混雑した浜辺など、人間の活動による影響もあります。観光客や地域の人たちには、浜辺を清潔に保ち、夜の光を減らすことが呼びかけられています。

    また、ジョージア州全体では、2004年には約400か所だったウミガメの巣が、2022年には4,000か所以上に増えたと紹介されています。これは、長く続けられてきた保護活動が少しずつ実を結んでいることを感じさせる数字です。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、巣の数が増えるまでには、長い時間の積み重ねがあるということです。

    ウミガメの保護は、すぐに結果が見えるものではありません。
    卵を守り、砂浜を守り、光を減らし、人に呼びかけ、また次の年を待つ。

    それを何年も、何十年も続けた先に、ようやく「今年は巣が多い」というニュースになる。

    49か所の巣という数字の裏には、海岸を歩いて確認する人たち、ロープで巣を守る人たち、夜の明かりを消す人たち、浜辺のごみを拾う人たちの時間があります。

    亀は、今日守ったから明日増えるわけではない。
    でも、守り続けた場所には、いつか戻ってくるかもしれない。

    このニュースは、そんなウミガメの長い時間を感じさせてくれます。

    湯川亀吉の一言

    何でも、長く続けることがとても大切。

    それでも、望んだ結果を一朝一夕を願う人が多いのはなんでだろうね?

    ま、僕もそんなクソどものうちの一人だけどね。

    出典

    元記事:Southern Living「This Georgia Beach Is Having Its Biggest Sea Turtle Nesting Season Ever」

  • 【世界の亀ニュース】オーストラリアで9,100匹以上のアオウミガメの赤ちゃんが海へ

    【世界の亀ニュース】オーストラリアで9,100匹以上のアオウミガメの赤ちゃんが海へ

    今回は、オーストラリアで報じられた、アオウミガメの卵移動プロジェクトに関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    オーストラリア北部、グレートバリアリーフ北部のアオウミガメに関するニュースです。

    ABC Newsによると、レイン島からサー・チャールズ・ハーディ島へ移されたアオウミガメの卵から、9,100匹以上の赤ちゃんガメが海へ向かったと報じられています。移された卵のうち、約82%が孵化して海へたどり着いたとされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:オーストラリア、グレートバリアリーフ北部
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年6月1日
    情報の種類:新着ニュース・保護活動・繁殖/孵化

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、アオウミガメです。

    舞台になったレイン島は、アオウミガメにとって非常に重要な産卵地として知られています。記事では、この地域のアオウミガメが気候変動や海面上昇、砂浜の温度上昇などの影響を受けていることも紹介されています。

    ニュースの要約

    今回の取り組みでは、アオウミガメの卵がレイン島からサー・チャールズ・ハーディ島へ移されました。

    目的のひとつは、孵化数を増やすことだけではありません。
    砂の温度が高くなりすぎると、アオウミガメの赤ちゃんはメスに偏りやすくなるため、より涼しい環境へ卵を移すことで、オスの赤ちゃんが生まれる可能性を高める狙いもあります。今回、移された卵は約9,000個にのぼり、約82%が孵化して海へ向かったと報じられています。

    また、記事では、この取り組みが10年以上続くレイン島回復プロジェクトの一部であることも紹介されています。伝統的所有者と研究者が協力し、アオウミガメの未来を守ろうとしている点も大切なポイントです。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、ただ「たくさん孵化した」という話ではないところです。

    亀の保護というと、卵を守る、赤ちゃんを海へ帰す、という場面に目が行きます。
    でも今回のニュースでは、砂浜の温度、性別の偏り、海面上昇、産卵地の地形、そしてその土地の人々の文化まで関わっています。

    一匹の赤ちゃんガメが海へ向かう背景には、島の形、気候、研究者、伝統的所有者、そして長く続く保護活動があります。

    亀を守るということは、亀だけを見ることではなく、亀が生まれる場所ごと見つめることなのかもしれません。

    湯川亀吉の一言

    偉いね。

    出典

    元記事:ABC News「Thousands of baby green sea turtles head to sea after successful egg relocation」

  • 世界の亀ニュース】メコン川で257匹のカントールマルスッポンが孵化 14巣を守る保全活動

    世界の亀ニュース】メコン川で257匹のカントールマルスッポンが孵化 14巣を守る保全活動

    今回は、カンボジアを流れるメコン川で、絶滅の危機にある大型のスッポン「カントールマルスッポン」の子ども257匹が孵化したニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年、カンボジアのメコン川沿いで、カントールマルスッポンの巣が14か所確認されました。

    5月24日時点で、そのうち12巣から合計257匹の子ガメが孵化しています。

    さらに残る2巣についても、保全チームが引き続き監視を続けています。カンボジア農林水産省傘下の水産当局とWildlife Conservation Society(WCS)Cambodia、地域住民らが協力して巣を守ってきました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:カンボジア
    場所:メコン川流域
    発表日:2026年5月24日
    情報の種類:淡水ガメ・スッポン・繁殖・孵化・産卵地保全

    カンボジアのメコン川では、地域住民と保全チームが産卵期に砂州や河岸を巡回し、カントールマルスッポンの巣を探して保護する活動を続けています。

    登場する亀

    今回の主役は、カントールマルスッポンです。

    学名は Pelochelys cantorii

    日本では「マルスッポン」と呼ばれることもあります。英語ではCantor’s Giant Softshell Turtle、Asian Giant Softshell Turtleなどと呼ばれます。

    スッポン科の中でも非常に大型になる種類で、専門家による種解説では甲長60〜100センチほどに達するとされています。

    硬い甲板に覆われた一般的なカメとは違い、平たく柔らかな甲羅を持ち、魚類、甲殻類、貝類などの水生生物を食べます。

    ニュースの要約

    2026年に保全チームが確認した巣は14か所。

    そのうち12巣から257匹が孵化しました。

    興味深いのは、その後の扱いです。

    257匹すべてを同じ方法で管理したわけではありません。

    43匹は、孵化したあと自分の力でメコン川へ入りました。

    残る214匹は慎重に回収され、ココン爬虫類保全センターへ運ばれました。一定期間安全な環境で育てたあと、将来的に野生へ戻す予定です。

    自然に任せる個体と、人間が一時的に保護する個体。

    二つの方法を組み合わせながら、この種の生存率を高めようとしています。

    川岸の砂の中で生まれる巨大スッポン

    成体のカントールマルスッポンは巨大になります。

    しかし、生まれたときは当然、小さな子ガメです。

    母ガメは河岸や砂州に穴を掘り、そこへ卵を産みます。専門家の種解説では、一度に24〜70個程度の卵を産むとされています。

    卵を産んだあと、母ガメは川へ戻ります。

    そこから先、卵は砂の中で育ちます。

    雨。

    川の増水。

    捕食動物。

    人間による卵の採取。

    孵化するまでには、さまざまな危険があります。

    だから保全チームは、成体のスッポンだけを探すのではなく、川岸そのものを見守っています。

    43匹は自分で川へ入った

    今回のニュースで特に印象的なのが、43匹の子ガメです。

    この43匹は孵化後、人間に運ばれることなく、自分自身でメコン川へ入りました。

    砂の中から地上へ出る。

    川の方向へ進む。

    そして水へ入る。

    非常に短い距離かもしれません。

    しかし、生まれたばかりの子ガメにとっては、最初の野生の移動です。

    残る214匹については保全施設へ移されましたが、この43匹は孵化直後から完全に野生の時間を歩き始めました。

    なぜ214匹は保全施設へ運ばれたのか

    子ガメは非常に小さく、捕食される危険が高い時期です。

    そこで一部の個体を安全な施設で育て、ある程度生存しやすい状態にしてから野生へ戻す方法が使われています。

    今回の214匹は、ココン爬虫類保全センターで保護・飼育されます。

    これはカメを永久に飼育するためではありません。

    目的は、最も危険な成長初期を人間が少しだけ補助し、最終的には再び川へ返すことです。

    一度はカンボジアから消えたと思われていた

    カントールマルスッポンは、カンボジアでは長い間ほとんど確認されなくなっていました。

    WCSによれば、科学者による野生個体の確認が途絶えていた時期がありましたが、その後、クラチエ州とストゥントレン州の間を流れるメコン川で再確認されました。

    現在では、その地域がカンボジアに残る重要な生息地となっています。

    つまり、今回257匹が生まれた川は、

    「たまたま子ガメがたくさん生まれた場所」

    ではありません。

    一度は姿を消したと思われた大型スッポンが、今も繁殖を続けている貴重な場所です。

    2022年には982匹が孵化

    今回の257匹だけを見ると、とても大きな成果に感じます。

    しかし、カンボジアでは以前から大規模な巣の保護が続けられています。

    2022年には63巣、2,155個の卵が確認され、5月20日までに40巣から982匹が孵化しました。

    その年には580匹の子ガメが、世界亀の日に合わせてメコン川へ放されています。

    2021年にも66巣、2,528個の卵が確認され、1,300匹が野生へ戻されました。

    一年だけの成功ではありません。

    砂州を探し、巣を守り、子ガメを川へ返す活動が何年も積み重ねられています。

    カメだけを守っても生き残れない

    カントールマルスッポンの減少には、食用を目的とした捕獲、卵の採取、漁具への混獲、河川環境の破壊などが関係しています。

    つまり、

    卵だけ守ればよい。

    子ガメだけ放せばよい。

    という問題ではありません。

    大きく成長したスッポンが暮らせる深い水域。

    餌を探せる川。

    安全に卵を産める砂州。

    それらが全部残っていなければ、次の世代は続きません。

    メコン川の巨大生物の一員

    カントールマルスッポンが暮らすメコン川には、ほかにも巨大な淡水生物が生息しています。

    WCSは、このスッポンがカワゴンドウや巨大淡水エイなどと同じ深い水域を利用する、メコン川を象徴する生物の一つだと紹介しています。

    水面から見れば、ただ大きな川が流れている。

    でも水の下には、

    巨大な魚がいて、

    エイがいて、

    スッポンが砂へ潜っている。

    カントールマルスッポンを守ることは、そうした巨大河川生態系そのものを残すことにもつながります。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、257匹という数字より、その前に14個の巣を見つけた人がいたことです。

    子ガメが生まれる瞬間は分かりやすい。

    写真にもなる。

    数字にもなる。

    でも、そのずっと前に、

    砂浜を歩く人がいる。

    母ガメの足跡を探す。

    砂の盛り上がりを見る。

    ここに卵があるかもしれないと考える。

    そして、その場所を何週間も守る。

    257匹という結果は、孵化した日に突然生まれた成果ではありません。

    川岸で何も起こらない日にも、砂を見続けた時間の結果なのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    大きなスッポン飼ってみたいと思ったことありますが、めちゃめちゃ大きくなるから飼えないね。

    将来、水族館を作った時には飼育してみたい。

    出典

    Agence Kampuchea Presse(カンボジア国営通信)
    「Over 200 Cantor’s Giant Softshell Turtle Hatchlings Discovered along Mekong River in Cambodia」

    Wildlife Conservation Society Cambodia
    カントールマルスッポン保全活動・メコン川への放流記録。

    IUCN SSC Tortoise and Freshwater Turtle Specialist Group
    「Pelochelys cantorii – Asian Giant Softshell Turtle」

  • 【世界の亀ニュース】絶滅寸前のビルマオオセタカガメ 20匹のオスを川へ戻したら、孤独だった雌から14匹が誕生

    【世界の亀ニュース】絶滅寸前のビルマオオセタカガメ 20匹のオスを川へ戻したら、孤独だった雌から14匹が誕生

    今回は、ミャンマーの大河川に生息する希少な淡水ガメ「ビルマオオセタカガメ」の保全活動を紹介します。

    かつては、

    絶滅したのではないか

    とまで考えられていたカメです。

    しかし、生き残ったわずかな個体を見つけ、卵を守り、子ガメを育て、川へ戻す活動が始まりました。

    そして2018年。

    保全施設で育った若いオス20匹が、チンドウィン川へ放されます。

    その約1年半後。

    長年、無精卵しか産めなかった一匹の野生の雌が19個の卵を産み、

    14匹が孵化しました。

    人間が川へ戻したオスが、

    野生に残っていた雌を見つけた可能性が高いと考えられています。

    今回のニュース

    2020年5月22日、Wildlife Conservation Society(WCS)とTurtle Survival Alliance(TSA)は、ミャンマー北部を流れるチンドウィン川で、ビルマオオセタカガメの繁殖に大きな進展があったと発表しました。

    そこには一匹の野生の雌がいました。

    しかし、その雌は長い間、繁殖相手となる雄と出会えていなかったと考えられています。

    過去に産んだ卵は孵化しませんでした。

    ところが2020年。

    19個の卵を産み、

    そのうち14個が孵化しました。

    研究者たちが考えたのは、

    2018年に放流した若い雄たちです。

    そのときチンドウィン川へ戻されたのは、

    20匹の飼育下育ちの雄。

    そのうち少なくとも一匹が野生の雌と出会い、交尾したと考えられました。

    どこの国・地域の話か

    国:ミャンマー
    主な河川:チンドウィン川
    対象種:ビルマオオセタカガメ
    学名:Batagur trivittata
    英名:Burmese Roofed Turtle
    情報の種類:淡水ガメ・絶滅危惧種・繁殖・ヘッドスタート・野生復帰

    ビルマオオセタカガメはミャンマー固有の大型淡水ガメで、かつてはエーヤワディー川、チンドウィン川、シッタン川、サルウィン川などの大きな河川に広く分布していました。

    日本の経済産業省が公開しているワシントン条約対象種の資料でも、Batagur trivittataには**「ビルマオオセタカガメ」**という和名が使われています。

    登場する亀

    ビルマオオセタカガメは、イシガメ科バタグールガメ属の淡水ガメです。

    大きな川とその支流を主な生息環境とし、河川沿いの砂州を産卵場所として利用します。

    そして、このカメにはとても面白い特徴があります。

    成熟した雄の外見が繁殖期に大きく変わることで知られるカメです。

    名前の「trivittata」も、ラテン語で「3本の帯を持つ」といった意味に由来すると考えられています。

    一度は「絶滅した」と思われた

    ビルマオオセタカガメは、昔から珍しいカメだったわけではありません。

    かつてはミャンマーの大河川で普通に見られたとされています。

    しかし、

    卵の大量採取。

    成体の捕獲。

    漁網への混獲。

    産卵砂州の消失。

    金採掘。

    河川環境の改変。

    こうしたものが重なり、個体数が急激に減少しました。

    1970年代にはすでに、

    「絶滅したのではないか」

    と考えられるようになります。

    2001年、「甲羅」が見つかった

    転機は2001年でした。

    WCSの調査チームがミャンマーで別の希少なカメを探していたとき、

    ある村で、

    最近殺されたと思われるビルマオオセタカガメの甲羅

    を発見しました。

    生きた個体ではありません。

    でも、

    「最近まで生きていたカメの甲羅」がある。

    つまり、

    絶滅していない可能性があります。

    そこから調査が進みました。

    寺院の池に、生き残りがいた

    その後、

    マンダレーの寺院の池で、

    生きたビルマオオセタカガメが発見されます。

    さらにチンドウィン川上流では、

    わずかながら野生で繁殖を続けている個体群も見つかりました。

    絶滅していなかった。

    でも、

    安心できる数ではありません。

    WCSが2020年に発表した時点でも、野生に残る繁殖可能な雌は5匹未満とされていました。

    TSAの現在の種情報では、野生個体群は99%以上減少し、確認される野生の成体雌はさらに少数とされています。

    まず卵を守る

    そこで始まったのが、

    チンドウィン川の産卵地を直接守る活動です。

    毎年2月から3月。

    残された雌が砂州へ上がり、

    卵を産みます。

    保全チームはその卵を探します。

    そして、

    人や動物に掘り返される前に保護します。

    保護された卵は、チンドウィン川沿いの村に設けられた安全な場所で孵化まで管理されます。

    5月から6月。

    子ガメが生まれます。

    でも、

    すぐには川へ戻しません。

    5〜6年間育ててから川へ戻す

    孵化したばかりの子ガメは小さい。

    捕食されやすい。

    漁具にも弱い。

    そこで、

    5〜6年間、人間の管理下で育てます。

    ある程度大きくなり、野外で生存できる可能性が高くなってから川へ戻します。

    いわゆる、

    ヘッドスタート

    です。

    卵を守る。

    孵化させる。

    数年間育てる。

    そして、

    元の川へ返す。

    この循環を何年も続けました。

    飼育個体群は1,000匹近くまで増えた

    保全活動は野生の卵だけではありません。

    マンダレーのYadanabon Zooをはじめ、複数の場所に保全繁殖個体群=assurance colonyが作られました。

    もし野生個体群が完全に消えても、

    種そのものが失われないようにするためです。

    そして繁殖に成功します。

    2020年には、WCSは飼育下個体群が1,000匹近くまで増えたと報告しました。

    数十年前には、

    絶滅したと思われていたカメです。

    それが、

    人間の管理下とはいえ、

    1,000匹近くまで増えました。

    でも、飼育下で1,000匹いても十分ではない

    ここは、

    これまで紹介してきた亀たちにも共通します。

    飼育下で増えた。

    だから成功。

    ではありません。

    このカメは、

    川のカメです。

    大きな川を泳ぐ。

    砂州へ上がる。

    卵を産む。

    流れの中で餌を探す。

    そういう生活をして初めて、

    ビルマオオセタカガメという種が野生に存在していることになります。

    だから、

    増やしたカメをもう一度川へ戻さなければなりません。

    2018年、若い雄20匹を放す

    そこで2018年。

    保全施設で育てた若い雄20匹が、チンドウィン川へ放されました。

    この放流には、

    特別な意味がありました。

    川には雌が残っている。

    でも、

    雄がほとんどいない。

    雌は毎年卵を産んでも、

    受精しない。

    だったら、

    雄を戻す。

    とても単純に聞こえます。

    でも、

    野生復帰というのは、

    「カメの数を増やす」ことだけではない。

    野生に足りなくなった繁殖相手を戻す

    ことでもあります。

    そして一匹の雌が19個の卵を産んだ

    2020年。

    チンドウィン川上流にいた一匹の雌が、

    19個の卵を産みます。

    そして、

    14匹が孵化しました。

    それまで、

    その雌が産んだ卵は受精していませんでした。

    しかし、

    雄を川へ戻したあと、

    初めて子ガメが生まれた。

    もちろん、

    どの雄が父親なのかは、

    このニュースだけでは分かりません。

    それでもWCSとTSAは、

    2018年に放した雄との交尾によって受精した可能性が高いと考えました。

    14匹という数字以上の意味

    14匹。

    飼育施設なら、

    もっとたくさん生まれているかもしれません。

    でも、

    この14匹は意味が違います。

    母親は、

    野生で生き残った雌。

    父親はおそらく、

    人間が育てて野生へ返した雄。

    そこで生まれた子どもです。

    つまり、

    飼育下個体群と野生個体群が、

    もう一度つながった。

    保全施設が、

    単なる避難場所ではなく、

    野生を補強するための場所として機能した瞬間

    だと思います。

    さらに60匹が川へ戻った

    その後も再導入は続きました。

    Turtle Survival Allianceは、ヘッドスタートされた60匹のビルマオオセタカガメをミャンマー西部の2つの河川へ再導入した取り組みを報告しています。

    一度、

    ほとんどカメがいなくなった川。

    そこへ、

    少しずつ戻す。

    20匹。

    60匹。

    また次の世代。

    一度に昔の状態へ戻すことはできません。

    川には、まだ危険がある

    しかし、

    放流すれば終わりではありません。

    川には今も、

    漁網があります。

    産卵砂州の消失があります。

    人による卵の採取があります。

    河川環境の変化があります。

    飼育下で100匹増やしても、

    川で100匹失われれば、

    個体群は復活しません。

    だから、

    カメを育てることと、

    カメが戻れる川を残すこと。

    この二つを同時に進める必要があります。

    卵を集めることが、永遠に続いてはいけない

    現在の保全方法では、

    野生の雌が産んだ卵を人間が保護し、

    子ガメを育てています。

    これは今、

    非常に重要な方法です。

    でも、

    最終的な理想は、

    人間が毎年卵を拾わなくてもいい状態でしょう。

    雌が自分で砂州を選ぶ。

    卵を産む。

    孵化する。

    子ガメが川へ入る。

    成長する。

    そして、

    また繁殖する。

    その循環が、

    人間の手を借りずに続くこと。

    そこまで戻れば、

    本当の意味で野生個体群が復活したと言えるのだと思います。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回の話で僕が一番好きなのは、

    「雄を放したら、雌の卵から子ガメが生まれた」

    というところです。

    保全活動というと、

    とにかく数を増やすことを想像します。

    100匹育てる。

    200匹放す。

    1,000匹まで増やす。

    もちろん、それも大事です。

    でも、

    野生に残っていた一匹の雌に必要だったのは、

    100匹のカメではなかったのかもしれない。

    たった一匹の雄だったかもしれない。

    ずっと同じ川で生きていた。

    毎年卵を産んだ。

    でも、

    相手がいなかった。

    そこへ、

    人間が育てた雄が泳いでくる。

    どこかで出会う。

    そして、

    次の年。

    卵から子ガメが出てくる。

    保全って、

    「たくさん増やす」だけじゃないんだね。

    途切れてしまった生き物同士のつながりを、

    もう一度つなぐ仕事でもあるんだと思います。

    湯川亀吉の一言

    バタグール飼ってみたいね〜

    出典

    Wildlife Conservation Society(WCS)
    「Isolated Female Burmese Roofed Turtle Surprises Conservationists by Laying Fertile Eggs」
    2020年5月22日。野生の雌が19個の卵を産み、14匹が孵化したこと、2018年に雄20匹を放流したことについて。

    Wildlife Conservation Society Myanmar Program
    「Burmese Roofed Turtle Conservation」
    過去の分布、減少、再発見、チンドウィン川での卵保護・ヘッドスタートなどについて。

    Wildlife Conservation Society(WCS)
    「The Turtle that Almost Went Extinct, Now Ready for Its Close-up」
    2020年8月25日。飼育下個体群が約1,000匹まで増加したことなどについて。

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「Burmese Roofed Turtle」
    現在の保全状況、脅威、ヘッドスタート・個体群補強について。

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「Burmese Roofed Turtles Return to the Wild」
    ヘッドスタートされた60匹の野生復帰について。

  • 4万1,000匹超のオオヨコクビガメ、ドローンが捉えた世界最大の集団産卵

    4万1,000匹超のオオヨコクビガメ、ドローンが捉えた世界最大の集団産卵

    南米を流れるグアポレ川/イテネス川の砂州で、4万1,000匹を超えるオオヨコクビガメが産卵のために集まっていたことが、ドローンを使った調査によって確認されました。

    ブラジルとボリビアの国境を流れるこの川では、毎年多数のオオヨコクビガメが同じ砂州へ集まります。2025年に発表された研究では、12日間の産卵期に集まった個体数を、新しい統計手法とドローン画像を組み合わせて推定しました。これは、確認されているものとしては世界最大の淡水ガメの集団産卵とされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ブラジル・ボリビア国境、グアポレ川/イテネス川流域
    元記事の言語:英語
    元記事の公開時期:2025年8月4日
    研究発表:2025年
    情報の種類:過去アーカイブ・淡水ガメ・繁殖・研究・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、オオヨコクビガメです。

    学名はPodocnemis expansa。南米に分布するヨコクビガメの仲間で、ヨコクビガメ類の中では最大種です。鳥羽水族館では甲長が80センチを超える種として紹介され、WCSは最大で全長約1.07メートル、体重約90キロに達すると説明しています。

    首を甲羅の中へまっすぐ引き込むのではなく、横方向へ曲げて収納することが「ヨコクビガメ」という名前の由来です。

    巨大な雌たちは産卵期になると川の砂州へ集まり、砂を掘って卵を産みます。

    ニュースの要約

    これほど多くのカメが同じ場所に集まると、単純に写真を見て数えるだけでは、正確な個体数を把握できません。

    同じ個体を二度数えてしまうこともあれば、別のカメや地形に隠れて見落とされる個体もいます。

    今回の研究では、ドローンで撮影した多数の画像をつなぎ合わせて、砂州全体を一枚の高精細な地図のように再現しました。さらに、移動する個体、重なって見えない個体、二重に記録された個体などを考慮する統計モデルを使い、実際の個体数を推定しています。

    その結果、12日間の産卵期に砂州へ集まったオオヨコクビガメは、4万1,000匹以上と推定されました。

    研究者たちは、この方法を使うことで、ただ壮大な光景を撮影するだけでなく、個体数やその変化を長期間にわたって、より正確に監視できるとしています。

    なぜ今、このニュースを紹介するのか

    このニュースは、単に「たくさんのカメがいた」という話ではありません。

    野生動物の保護では、現在どれだけの個体がいるのかを把握することが重要です。

    けれど、広大なアマゾン流域で、短期間に何万匹ものカメが移動する状況を、人間が地上から正確に数えるのは簡単ではありません。

    ドローンと統計モデルによって個体数を継続的に調べられるようになれば、前年より増えたのか、減ったのか、産卵地に異変が起きていないかを判断するための重要な記録になります。今回開発された方法は、同じように大群をつくる鳥類や海洋哺乳類などの調査にも応用できるとされています。

    4万匹いても安心とは限らない

    4万1,000匹という数字だけを見ると、オオヨコクビガメは非常に多いように感じます。

    しかし、数多くの個体が限られた砂州へ集中するということは、その場所が失われたときの影響も大きいということです。

    水位の変化、砂州の消失、人間による卵や成体の採取、産卵地周辺の開発などが起これば、一度に多くの個体の繁殖が影響を受ける可能性があります。

    WCSは地域住民や行政と協力し、オオヨコクビガメと、その産卵に必要な砂州を守る活動を続けています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、普段は広大な川の中で離れて暮らしているカメたちが、同じ時期に同じ場所へ集まることです。

    一匹だけでも巨大なオオヨコクビガメが、数万匹。

    川の中から次々と姿を現し、砂州へ上がり、土を掘る。

    その光景は、生き物の群れというよりも、遠い昔から続く巨大な儀式のように見えます。

    けれど、その壮大な時間は、産卵できる砂州と、そこへ戻れる川が残っているからこそ続いています。

    数を数えることは、カメを数字へ変えることではありません。

    来年も、10年後も同じ川へ戻ってこられるように、今そこにいるカメたちの存在を記録することなのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    でかい熱帯性の亀を飼いたいよ〜!!

    出典

    Wildlife Conservation Society
    「Novel Counting Method Using Drones Helps to Verify World’s Largest Freshwater Turtle Nesting Event」

    Journal of Applied Ecology
    「Estimating abundance of aggregated populations with drones while accounting for multiple sources of errors」

    鳥羽水族館・生きもの図鑑
    「オオヨコクビガメ」