タグ: 生息地保全

  • 【世界の亀ニュース】8,000万年の系統を絶やすな ベリーズがメキシコカワガメ「ヒカティー」を救う58項目の国家計画を承認

    【世界の亀ニュース】8,000万年の系統を絶やすな ベリーズがメキシコカワガメ「ヒカティー」を救う58項目の国家計画を承認

    今回は、中米ベリーズから、

    一匹のカメを守るために、

    国全体でこれから何をするのかを決めたニュースを紹介します。

    主役は、

    メキシコカワガメ。

    学名は、

    Dermatemys mawii

    英語では、

    Central American River Turtle

    そしてベリーズでは、

    Hicatee(ヒカティー)

    という名前で親しまれています。

    2026年8月。

    ベリーズ水産局は、このヒカティーを絶滅から守るための

    Central American River Turtle (Hicatee) Conservation Action Plan 2026

    を正式に承認しました。

    そこに並んでいる具体的な行動は、

    58項目。

    密猟対策。

    法律。

    教育。

    飼育下繁殖。

    野生復帰。

    研究。

    生息地保全。

    それらを一つの計画にまとめ、

    これから実際に動かしていきます。

    今回のニュース

    Turtle Survival Alliance(TSA)が2026年8月31日に発表したところによると、ベリーズのMinistry of Blue Economy & Marine Conservation傘下のFisheries Departmentが、ヒカティーの新しい保全行動計画を承認しました。

    計画作りを中心となって進めたのは、

    Belize Foundation for Research and Environmental Education(BFREE)

    そこへ、

    Belize Fisheries Department。

    Turtle Survival Alliance。

    Zoo New England。

    研究者。

    大学。

    保全団体。

    行政。

    そして、

    実際にヒカティーを捕ってきた伝統的な漁業地域の人々

    まで参加しました。

    計画づくりそのものは2020年から始まり、オンライン・対面のワークショップや戦略会議を何年も重ねてきました。

    そして2026年8月24日。

    ベリーズのNational Climate Weekで正式に発表。

    ようやく、

    「ヒカティーを守りたい」

    という段階から、

    「誰が、何を、どう進めるのか」

    という実行段階へ移ります。

    どこの国・地域の話か

    国:ベリーズ
    地域:中米
    対象種:メキシコカワガメ
    現地名:Hicatee
    学名:Dermatemys mawii
    英名:Central American River Turtle
    発表:2026年8月24日
    TSA発表:2026年8月31日
    情報の種類:淡水ガメ・国家保全計画・飼育下繁殖・野生復帰・密猟対策・生息地保全

    メキシコカワガメは、

    ベリーズだけのカメではありません。

    現在の自然分布は、

    ベリーズ。

    グアテマラ。

    メキシコ南部。

    この3地域に限られています。

    登場する亀

    今回の主役、

    Dermatemys mawii

    日本ではメキシコカワガメという名前が使われています。

    そして、このカメには、

    とても大きな特徴があります。

    ものすごく水棲傾向が強い。

    川。

    湖。

    三日月湖。

    冠水林。

    そうした淡水環境の中で生活します。

    さらに、

    大型の淡水ガメでありながら、

    ほぼ完全な植物食。

    水中や川沿いの植物を利用します。

    見た目もかなり独特です。

    甲羅は一般的なカメのようにゴツゴツと高く盛り上がらず、

    比較的滑らか。

    頭は丸みがあり、

    鼻先は少し突き出しています。

    完全に、

    「川を泳ぐためのカメ」

    という感じです。

    この一匹しか残っていない「科」

    ここが、

    僕が今回一番驚いたところです。

    メキシコカワガメが所属するのは、

    Dermatemydidae。

    現在、

    この科に生きている種類は、

    Dermatemys mawiiだけ。

    一種類です。

    WCS Belizeによると、

    その最も近い親戚たちは、

    現在では化石でしか知られていません。

    さらに、

    この系統は他の現生カメ類から、

    およそ8,000万年前に分岐したとされています。

    8,000万年前。

    恐竜がいた時代です。

    つまり、

    メキシコカワガメが絶滅するということは、

    一種類がいなくなるだけではありません。

    8,000万年以上続いてきた一本の系統そのものが、現代で途切れる

    ということになります。

    でも、人間が食べてきたカメでもある

    そして、

    このカメの保全を難しくしている理由があります。

    ヒカティーは、

    ベリーズの人々にとって、

    単なる珍しい野生動物ではありません。

    長い間、

    食文化とも結びついてきたカメです。

    そのため、

    捕獲されてきました。

    そして、

    捕獲量が個体群の回復能力を上回るようになった。

    TSAやBFREEは、

    現在の大きな減少原因として、

    食用目的の過剰捕獲

    を挙げています。

    だから今回の計画も、

    単純に、

    「捕るな」

    だけではありません。

    文化。

    地域住民。

    法律。

    教育。

    研究。

    野生個体群。

    全部を一緒に考えています。

    現在も細かい捕獲規制がある

    ベリーズでは現在、

    ヒカティーの売買は禁止されています。

    さらに、

    所持できる数。

    車両で運べる数。

    雌の捕獲に関するサイズ制限。

    5月1日から31日までの禁漁期。

    などの規制があります。

    ここからも、

    このカメと人間との関係の複雑さが分かります。

    完全に、

    人間から切り離された野生動物ではない。

    でも、

    今までと同じように捕り続ければ、

    いなくなる。

    だから、

    「利用」と「存続」をどう両立させるのか

    まで考えなければなりません。

    58の行動

    今回決められた計画には、

    58の具体的な行動が設定されています。

    大きく分けると、

    法執行。

    法律・規制。

    地域教育。

    飼育個体群管理。

    野生復帰。

    研究。

    野生個体群そのものの保全。

    生息地の回復と保護。

    などです。

    つまり、

    「繁殖させればいい」

    ではありません。

    密猟を減らす。

    子どもたちへ伝える。

    川を残す。

    野生の数を調べる。

    飼育個体の血統を管理する。

    カメを戻す。

    そして、

    戻した場所を守る。

    全部必要です。

    2010年から続いてきた

    もちろん、

    2026年に突然始まった活動ではありません。

    BFREEとTSAが本格的にヒカティー保全へ協力し始めたのは、

    2010年。

    翌2011年には、

    Hicatee Conservation & Research Center

    が設立されました。

    そこで、

    飼育下繁殖。

    ヘッドスタート。

    野生個体群調査。

    生態研究。

    教育。

    再導入。

    さまざまな活動が進められてきました。

    15年以上の実践を経て、

    今回、

    それらを国の正式なロードマップにまとめたわけです。

    1,000匹以上を野生へ

    そして、

    すでに結果も出始めています。

    TSAによると、

    これまでに、

    1,000匹以上のヘッドスタート個体が野生へ放されています。

    つまり、

    飼育施設で増やすだけではない。

    育てる。

    野生で生きられるサイズにする。

    そして、

    川へ戻す。

    すでにそこまで進んでいます。

    30,000エーカーを守った

    さらに2021年。

    TSA、BFREEなどの保全パートナーは、

    約30,000エーカー

    の土地の保全につなげました。

    その中には、

    重要なヒカティー生息地であるCox Lagoonも含まれます。

    Cox Lagoonは、

    Belize Riverとつながる重要な淡水環境です。

    1,000匹カメを育てる。

    でも、

    川がなくなったら意味がない。

    だから、

    カメだけでなく、

    カメが帰る場所そのものを確保する。

    ここでも、

    同じ考え方が出てきます。

    学校でも「ヒカティー」を伝える

    保全活動のもう一つの柱が、

    教育です。

    TSAによると、

    これまでにヒカティーを題材とした教育・普及活動へ、

    数千人のベリーズの子どもたち

    が参加しています。

    学校では、

    ヒカティーをテーマにしたバナーなども作られてきました。

    これは、

    かなり重要だと思います。

    今、

    川にいる大人のカメを守る。

    でも、

    20年後に、

    そのカメを捕るか、

    守るかを決めるのは、

    今の子どもたちかもしれない。

    カメの寿命は、

    人間の政策より長い。

    だから、

    次の世代まで含めて保全する必要があります。

    「ベリーズが最後の希望」

    BFREEのJacob Marlin氏は、

    ヒカティーについて、

    ベリーズがこの種の長期的な存続にとって最後の希望だ

    という強い表現を使っています。

    もちろん、

    メキシコやグアテマラにも本種は残っています。

    でも、

    多くの地域ですでに個体群は大幅に減少し、

    場所によっては姿を消しました。

    だからこそ、

    比較的個体群が残っているベリーズで、

    今止められるかどうかが重要になります。

    「計画を作った」で終わらせない

    そして今回、

    一番大事なのはここです。

    58項目を決めた。

    立派な冊子を作った。

    政府が承認した。

    それだけでは、

    カメは一匹も増えません。

    BFREE自身も、

    保全団体だけではヒカティーを救えない

    と明言しています。

    最終的に、

    ヒカティーがベリーズで十分な数を維持できるかどうかを決めるのは、

    ベリーズの人々です。

    だから今回の発表は、

    完成ではありません。

    むしろ、

    スタートラインです。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番面白いと思うのは、

    やっぱり、

    「一種類を失うことと、一つの進化の枝を失うことは同じではない」

    というところです。

    ヒカティーが絶滅する。

    すると、

    Dermatemys mawiiがいなくなる。

    でも、

    それだけじゃない。

    Dermatemydidaeというグループから、

    生きている動物が、

    一匹もいなくなる。

    何千万年も続いた系統が、

    そこで終わる。

    恐竜が歩いていた頃から、

    祖先が形を変えながら、

    ずっと命をつないできた。

    気候が変わった。

    大陸が変わった。

    他の動物が絶滅した。

    それでも、

    この一本だけは、

    2026年まで来た。

    だったら、

    ここで終わらせたくない。

    今回の58項目は、

    その一本の線を、

    未来へもう少し伸ばすための計画なんだと思います。

    湯川亀吉の一言

    ベリーズって国があるということを知らなかった!

    出典

    Belize Fisheries Department
    「Central American River Turtle (Hicatee) Conservation Action Plan 2026」
    ベリーズ政府が正式に公開している保全行動計画。58の戦略的行動と長期的な保全方針について。
    Belize Fisheries Departmentの公式資料ページを見る

    Turtle Survival Alliance
    「Belize Approves Conservation and Action Plan for Critically Endangered Hicatee」
    2026年8月31日。計画の承認、58項目、15年以上の保全活動、1,000匹以上の野生復帰、30,000エーカーの生息地保全について。
    TSAの記事を読む

    Belize Foundation for Research and Environmental Education(BFREE)
    「Hope for the Hicatee」
    2026年8月24日。計画作成の経緯、地域住民・研究者・行政などの参加、Climate Weekでの発表について。
    BFREEの記事を読む

    Wildlife Conservation Society Belize
    「Central American River Turtle」
    本種がDermatemydidae唯一の現生種であること、約8,000万年前に他の現生カメ類から分岐した非常に古い系統であること、分布・食性・脅威について。
    WCS Belizeの種紹介を見る

    IUCN/SSC Tortoise and Freshwater Turtle Specialist Group
    Dermatemys mawii – Central American River Turtle」
    分類、分布、生態、植物食、保全状況について。
    TFTSGの種アカウントを見る

  • 【世界の亀ニュース】遺伝子が示した本当の故郷 保護されたヒョウモンガメ27匹が南アフリカの野生へ

    【世界の亀ニュース】遺伝子が示した本当の故郷 保護されたヒョウモンガメ27匹が南アフリカの野生へ

    今回は、保護施設で暮らしていたヒョウモンガメの出身地域を遺伝子から調べ、本来の生息地に近い場所へ戻した、南アフリカの研究と野生復帰について紹介します。

    今回のニュース

    南アフリカで、保護施設に収容されていたヒョウモンガメの遺伝情報を調べ、出身地域を推定したうえで野生へ戻す取り組みが行われました。

    南アフリカとドイツの研究チームは、野生のヒョウモンガメから集めた遺伝情報を使って地域ごとの特徴をまとめたデータベースを拡張し、保護施設にいた50匹を調査しました。

    その結果、故郷と考えられる地域を判断できた個体を段階的に環境へ慣らし、これまでに27匹が南アフリカ各地の野生へ戻されました。研究成果は2026年に学術誌『Conservation Genetics』で発表され、4月9日にゼンケンベルク自然研究協会が紹介しています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:南アフリカ共和国
    調査に関係する地域:クワズール・ナタール州、東ケープ州、北ケープ州、フリーステイト州、リンポポ州など
    研究協力地域:エスワティニ
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年4月9日
    情報の種類:リクガメ・遺伝子研究・野生復帰・違法取引対策・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ヒョウモンガメです。

    学名は Stigmochelys pardalis。英語ではLeopard Tortoiseと呼ばれます。

    アフリカ中部から南部に分布し、サバンナ、草原、灌木地などに暮らす大型のリクガメです。鳥羽水族館では、最大甲長が70センチを超える種類として紹介されています。

    甲羅には、黄色や黄褐色を基調とした地色に黒や褐色の斑紋が入り、その模様がヒョウを連想させることから、ヒョウモンガメと呼ばれています。

    模様や色合いには個体差があり、成長するにつれて幼体の鮮明な模様が変化していくこともあります。

    ニュースの要約

    保護施設へ収容されるヒョウモンガメの中には、違法に採集された個体、個人によって飼育された後に放棄された個体、飼育場所から逃げ出した個体などが含まれています。

    しかし、保護された場所と、そのカメがもともと暮らしていた場所が同じとは限りません。

    人間によって何百キロ、場合によってはさらに遠くまで運ばれている可能性があるため、保護された地点だけを手がかりに放流場所を決めると、本来とは異なる地域へ放してしまうおそれがあります。

    研究チームは、クワズール・ナタール州とエスワティニの野生個体から得た遺伝情報をデータベースへ加え、保護施設にいた50匹の遺伝子と比較しました。

    すると、クワズール・ナタール州の保護施設にいたカメのうち、遺伝的に同地域の個体と判断されたのは、わずか1匹でした。

    これは、多くのヒョウモンガメが違法取引や人為的な移動によって、本来の分布地域から遠く離れた場所へ運ばれていた可能性を示しています。

    なぜ遺伝子から故郷を調べるのか

    見た目が同じ種類のリクガメであっても、地域ごとの個体群には、長い時間をかけて形成された遺伝的な違いがあります。

    遠く離れた地域の個体を不用意に混ぜると、その土地に適応してきた遺伝的な特徴が失われたり、地域個体群の構成が変化したりする可能性があります。

    また、そのカメが慣れていない気候や植生の地域へ放せば、野生で生き残れないかもしれません。

    そのため研究チームは、単に「ヒョウモンガメが暮らしている場所」へ放すのではなく、遺伝情報を使って、各個体がどの地域に近いのかを調べました。

    遺伝子は、カメが人間によって運ばれた道筋を記録しているわけではありません。

    それでも、どの地域の野生個体と近いのかを比較することで、そのカメが帰るべき場所を考えるための重要な手がかりになります。

    野生へ戻す前の6か月

    放流対象となったヒョウモンガメは、調査が終わるとすぐに野外へ放されたわけではありません。

    まず、将来放す予定の地域に設置された脱走防止用の囲いの中で、およそ6か月間を過ごしました。

    これは「ソフトリリース」と呼ばれる方法です。

    現地の気温、地面、植物、季節の変化などに段階的に慣らし、健康状態や行動を確認した後、最終的に囲いの外へ放します。

    遺伝的な出身地域に応じて、カメたちは別々の場所へ移されました。

    一部は東ケープ州の私設保護区へ、ほかの個体は北ケープ州、フリーステイト州、リンポポ州の保護地域へ戻されています。

    保護施設で一生暮らせばよいのか

    保護されたリクガメを野生へ戻すことには、慎重な判断が必要です。

    病気を持ち込む可能性がある。
    その地域の個体数を過度に増やすかもしれない。
    本来とは異なる個体群を混ぜてしまうかもしれない。
    放した後に生き残れるかも分からない。

    一方で、すべての個体を保護施設で一生飼育することも簡単ではありません。

    ヒョウモンガメは大型で長寿のリクガメです。長期間の飼育には、広い場所、食物、医療、職員、費用が必要になります。

    クワズール・ナタール州のある保護施設では、2016年から2025年までに100匹以上を受け入れ、収容場所が足りず、さらに多くのカメの受け入れを断らなければならない状態になりました。ダーバンの別施設でも、同じ期間に300匹を超える個体が記録されています。

    だからこそ、安全に野生へ戻せる個体については、故郷を慎重に調べ、帰る準備を整える必要があります。

    絶滅危惧種ではなくても守る必要がある

    ヒョウモンガメは広い範囲に分布し、現在は種全体として「低懸念」とされています。

    しかし、南アフリカでは違法な捕獲や飼育、食用や伝統医療への利用、生息地の破壊、都市化、過放牧、野焼き、電気柵による事故など、さまざまな危険にさらされています。

    「絶滅危惧種ではない」という評価は、どの地域の個体群も安全であることを意味しません。

    広い地域に分布している種類であっても、ある土地からカメが次々と持ち出されれば、その場所の個体群は弱くなっていきます。

    そして、人間によって遠くへ運ばれたカメを戻すときには、「どこでもよい」というわけにはいきません。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、保護された場所が、そのカメの故郷とは限らないことです。

    人間は、カメを見つけた場所をその個体の居場所だと思ってしまうことがあります。

    でも、そのカメは誰かに捕まえられ、車に乗せられ、町を越え、州を越えてきたのかもしれない。

    自分の意思とは関係なく遠くへ運ばれ、そこで放棄されたのかもしれない。

    カメは、自分がどこから来たのかを人間の言葉で説明できません。

    けれど、体の中に残された遺伝情報が、その個体の故郷へつながる小さな手がかりになる。

    保護とは、ただ命を助けることだけではなく、その命が本来属していた場所を探すことでもあるのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    俺も生き物飼ってるから言えるけど、生き物飼ってる人間は全員クズだからな。でも、「保護」する奴らも同じクズさ。

    出典

    Senckenberg Nature Research
    「Return to Nature: 27 Leopard Tortoises Released into the Wild in South Africa」

    鳥羽水族館・生きもの図鑑
    「ヒョウモンガメ」

  • 【世界の亀ニュース】砂漠の泉に残るソノイタドロガメ約250匹 国境壁建設を前に緊急避難を検討

    【世界の亀ニュース】砂漠の泉に残るソノイタドロガメ約250匹 国境壁建設を前に緊急避難を検討

    今回は、アメリカとメキシコの国境近くにある砂漠のオアシスで暮らす、絶滅危惧の淡水ガメに関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    アメリカ・アリゾナ州のソノラ砂漠にあるキトバキート・スプリングスで、絶滅危惧のソノイタヒゲナガドロガメを緊急避難させる計画が検討されています。

    キトバキート・スプリングスは、オルガンパイプ・カクタス国定公園内にある小さな泉と池です。アメリカ国内でソノイタヒゲナガドロガメが自然に生息している場所は、ここ一か所しかありません。

    この泉の近くでは、既存の国境壁に加えて、高さ約30フィートの二重目の壁を建設する計画が進められています。

    研究者や保護関係者は、工事に伴う地下水の利用、重機の移動、地形の改変などによって泉や池が維持できなくなる可能性を懸念し、最悪の場合に備えてカメを人工環境へ移す準備を進めています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ合衆国、アリゾナ州
    場所:オルガンパイプ・カクタス国定公園、キトバキート・スプリングス
    元記事の言語:英語
    元記事の公開時期:2026年7月24日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・生息地保全・絶滅危惧種

    キトバキート・スプリングスは、アメリカとメキシコの国境近くにある砂漠のオアシスです。

    周囲約100マイルの範囲でも数少ない安定した水源の一つで、淡水ガメだけでなく、魚や巻き貝、鳥類、哺乳類など、多くの生き物にとって重要な場所になっています。

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、英語でSonoyta mud turtleと呼ばれる淡水ガメです。

    学名は Kinosternon sonoriense longifemorale。ソノラドロガメの亜種で、日本語の標準的な呼称が広く定着しているとは確認できなかったため、この記事では「ソノイタヒゲナガドロガメ」と表記します。

    成体の甲長は最大約13.5センチ。背甲はオリーブ色から暗褐色で、頭部や首には網目状の模様があります。前後に蝶番を持つ腹甲と、指の間にある水かきも特徴です。

    アメリカでは、2017年に絶滅危惧種として保護対象になりました。

    現在確認されている生息地は、アリゾナ州のキトバキート・スプリングスにある一個体群と、メキシコ・ソノラ州のソノイタ川流域に残る複数の個体群です。

    ニュースの要約

    報道によると、現在キトバキートの池には、およそ250匹のソノイタヒゲナガドロガメが生息していると推定されています。

    研究者たちは、池の水が失われたり、堤が損傷したりする最悪の事態を想定し、可能な限り多くのカメを捕獲して、一時的に人工の飼育環境へ移す方法を検討しています。

    アリゾナ・ソノラ砂漠博物館では、野生個体群に何かが起きた場合に備え、すでに約20匹のソノイタヒゲナガドロガメを飼育しています。

    同館は、緊急時にはさらに最大50匹を受け入れる意向を示しています。フェニックス動物園も、カメの受け入れに協力する可能性があります。

    しかし、カメを施設へ移せば問題が解決するわけではありません。

    保護関係者が最も心配しているのは、一時的に避難させたカメを、将来戻せる生息地が残っているかどうかです。人工環境は命をつなぐ場所にはなっても、泉そのものの代わりにはなりません。

    砂漠にある、小さな淡水の世界

    ソノイタヒゲナガドロガメは、砂漠に暮らす淡水ガメです。

    広大な乾燥地帯に大きな川が流れているわけではありません。

    地下から湧き出す水が短い水路を流れ、小さな池を満たす。その限られた水の中で、カメたちは餌を探し、身を隠し、世代をつないできました。

    キトバキート・スプリングスは、ソノイタヒゲナガドロガメだけの生息地ではありません。

    世界でこの泉にしか野生個体が残っていないキトバキート・パプフィッシュや、非常に小さな泉性の巻き貝も生息しています。

    一つの小さな泉が失われれば、複数の生き物が同時に野生の生息地を失う可能性があります。

    なぜ国境壁が泉へ影響するのか

    今回計画されている二重目の国境壁は、既存の壁から約90〜150フィート離れた位置に建設される可能性があります。

    壁そのものだけでなく、工事用道路、資材置き場、重機の通行、地下水の利用などが、泉を支える地下水系や周辺環境へ影響することが懸念されています。

    2020年に行われた最初の国境壁建設でも、コンクリート製造のための地下水利用が問題になりました。

    アメリカ魚類野生生物局が2025年にまとめた状況評価でも、国境壁建設に使われる地下水のくみ上げが、キトバキート・スプリングスを支える水系への新たな負荷として挙げられています。

    一方、アメリカ税関・国境警備局は、キトバキート・スプリングスを避け、希少な自然資源への影響を最小限にするため、魚類野生生物局や国立公園局と協力していると説明しています。

    また、泉から5マイル以内では地下水をくみ上げない方針を示していますが、研究者からは、それだけで泉を守れるかを判断する十分な情報がないとの懸念も出ています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、約250匹のカメが、一つの小さな泉に生存を託していることです。

    250匹という数字だけを見れば、決して一匹や二匹ではありません。

    けれど、そのすべてが同じ池で暮らしている。

    泉の水が止まれば、逃げ込める別の川はない。
    池が失われれば、歩いて隣の湿地へ移ることもできない。

    砂漠の中では、水がある場所そのものが、生き物の世界です。

    カメを捕まえて施設へ運ぶことはできるかもしれない。

    でも、そのカメたちが何世代も生きてきた水、泥、岸辺、季節まで運ぶことはできません。

    絶滅危惧種を守るということは、個体を生かすだけではなく、その個体がカメとして暮らせる場所を残すことなのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    ソノイタヒゲナガドロガメ。

    僕はこの記事を読むまで知らない亀だった。

    この世界には、知らない亀がたくさんいるにちがいない。

    少なくとも僕は、知らない亀と出会うことを生き甲斐にしている。

    僕のような人たちはたくさんいるだろうし、これからもたくさん出てくるだろう。

    まだ見ぬ亀ファンの楽しみを奪うのはナンセンスである。

    どうにかしっかりした保全を行なって欲しいものです。

    余談ですが、僕の故郷の川ではギギやアカザといった魚がたくさん棲んでいました。

    しかし、上流のダム工事があり、今ではすっかり見られなくなってしまいました。

    僕はちょっと寂しいです。

     

    へへ、湿っぽい話しちまったな。

    出典

    The Guardian
    「This desert oasis is a biological wonderland. Trump’s border wall threatens to destroy it」

    U.S. Fish and Wildlife Service
    「Sonoyta Mud Turtle」

    U.S. Fish and Wildlife Service
    「Draft Recovery Plan for Endangered Sonoyta Mud Turtle Available」

    National Park Service
    「Quitobaquito Springs」

  • 【世界の亀ニュース】アマゾンの淡水ガメ「ムツコブヨコクビガメ」、ブラジルで絶滅危惧種に

    【世界の亀ニュース】アマゾンの淡水ガメ「ムツコブヨコクビガメ」、ブラジルで絶滅危惧種に

    今回は、ブラジルで報じられた、アマゾン川流域に生息する淡水ガメの保全状況に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    ブラジルで、アマゾン川流域に暮らすムツコブヨコクビガメが、国内の最新評価で絶滅危惧種に分類されました。

    ムツコブヨコクビガメの学名は、Podocnemis sextuberculata。英語では「Six-tubercled Amazon River Turtle」と呼ばれています。

    報道によると、これまでブラジル国内では「準絶滅危惧」と評価されていましたが、個体数の大幅な減少が確認されたことから、「絶滅危惧」へ引き上げられました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ブラジル、アマゾナス州・パラー州西部を中心とするアマゾン川流域
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年7月15日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・絶滅危惧種・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ムツコブヨコクビガメです。

    アマゾン川とその支流に暮らすヨコクビガメの仲間で、ブラジルのほか、ペルー、コロンビア、ボリビアにも分布しています。

    Podocnemis属の中では比較的小型で、甲長はおよそ34センチ、体重は最大3.5キロほどになるとされています。

    英名の「Six-tubercled」は、幼い個体の腹甲に見られる特徴的な6つの隆起に由来します。

    この隆起は成長するにつれて目立たなくなるため、成体を上から見ただけでは、名前の由来が分かりにくいカメです。

    ニュースの要約

    ブラジルの評価では、アマゾナス州とパラー州西部に生息するムツコブヨコクビガメの個体数が、過去36年間で50%以上減少したと推定されました。

    36年は、この種にとって約3世代に相当します。

    調査対象となった地域には、ムツコブヨコクビガメの分布域全体のおよそ70%が含まれているため、この減少は種全体の将来を考えるうえでも、非常に重いものとされています。

    主な脅威として挙げられているのは、生息環境の悪化、卵や成体の過剰な採取、違法な捕獲などです。

    ムツコブヨコクビガメを含むアマゾンの淡水ガメは、長く地域の食文化と関わってきました。

    そのため、保護を進めるには、単に捕獲を禁止するだけでなく、カメに依存してきた先住民や河川地域の人々の生活と両立できる仕組みが必要だと指摘されています。

    長年の保護活動があっても減少している

    ブラジルでは、アマゾンのカメを守るための大規模な活動が長く続けられてきました。

    ブラジル環境・再生可能天然資源院の「アマゾン・カメ類プログラム」では、ムツコブヨコクビガメや、同じPodocnemis属のトラカジャ、オオヨコクビガメなどを対象に、子ガメの管理、放流、監視が行われています。

    これまでに保護活動の対象となった子ガメは、合計1億匹を超えるとされています。

    それでも、ムツコブヨコクビガメの個体数は減少しました。

    カメをたくさん放流するだけでは、すべての問題は解決しません。

    成体になるまで生きられる川が必要です。
    産卵できる砂州が必要です。
    卵を掘り返されない環境が必要です。
    そして、保護活動が数十年先まで続く仕組みも必要です。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、保護活動が行われている種類でも、安心できるとは限らないということです。

    子ガメが放流される場面は、明るく希望に満ちて見えます。

    でも、その子ガメが成長し、繁殖できる年齢になり、再び砂州へ戻って卵を産むまでには、長い時間がかかります。

    その途中で、捕獲されるかもしれない。
    川の環境が変わるかもしれない。
    産卵場所が失われるかもしれない。

    亀の保護は、放流した瞬間に終わるものではありません。

    一匹の子ガメが、次の世代を残せる成体になるまで生きられる環境を守ること。

    その長い時間まで含めて、保護なのだと思います。

    地域の人々が守るアマゾンの川

    アマゾンでは、地域住民が産卵地や湖を守る保全活動も進められています。

    ジュルア川流域では、地域社会との協力によって砂州や三日月湖を保護し、違法漁業や密猟から淡水生態系を守る取り組みが行われています。

    ムツコブヨコクビガメも、こうした保護対象となる淡水ガメの一種です。

    遠くから来た誰かが亀を守るだけではなく、その川で暮らしてきた人たちが、自分たちの川と亀を守る。

    その形が続かなければ、アマゾンの広大な水域を守りきることはできないのかもしれません。

    湯川亀吉の一言

    アマゾン行ってみたいね〜。

    亀探してみたいし、ピンクのカワイルカも見てみたいね!

    出典

    元記事:Mongabay
    「Brazil lists the Amazon river turtle as endangered for the first time」

    関連情報:The Reptile Database
    「Podocnemis sextuberculata」

    関連情報:ブラジル環境・再生可能天然資源院
    「Programa Quelônios da Amazônia」

  • 【世界の亀ニュース】ジョージア州の島でウミガメの産卵巣が過去最多に

    【世界の亀ニュース】ジョージア州の島でウミガメの産卵巣が過去最多に

    今回は、アメリカ・ジョージア州のタイビー島で報じられた、ウミガメの産卵に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    アメリカ・ジョージア州のタイビー島で、ウミガメの巣の数が過去最多を記録していると報じられました。

    Southern Livingによると、タイビー島では2026年7月15日時点で49か所のウミガメの巣が確認され、これまでの記録だった2022年の35か所を大きく上回ったとされています。保護活動はTybee Island Marine Science CenterとTybee Island Sea Turtle Projectを中心に行われています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ、ジョージア州、タイビー島
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年7月
    情報の種類:新着ニュース・産卵・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、主にアカウミガメです。

    記事によると、タイビー島で確認されるウミガメはアカウミガメが中心で、アカウミガメは自分が生まれた海岸へ戻って産卵する性質があると紹介されています。

    ニュースの要約

    タイビー島では、2026年のウミガメの産卵シーズンに、これまでで最も多い巣が確認されています。

    2026年7月15日時点で確認された巣は49か所。
    これは、これまでの最高記録だった2022年の35か所をすでに超える数です。

    記事では、この増加は継続的な保護活動の成果として紹介されています。
    一方で、タイビー島のような人が多く訪れる海岸では、ビーチに残されたごみ、夜間の光、混雑した浜辺など、人間の活動による影響もあります。観光客や地域の人たちには、浜辺を清潔に保ち、夜の光を減らすことが呼びかけられています。

    また、ジョージア州全体では、2004年には約400か所だったウミガメの巣が、2022年には4,000か所以上に増えたと紹介されています。これは、長く続けられてきた保護活動が少しずつ実を結んでいることを感じさせる数字です。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、巣の数が増えるまでには、長い時間の積み重ねがあるということです。

    ウミガメの保護は、すぐに結果が見えるものではありません。
    卵を守り、砂浜を守り、光を減らし、人に呼びかけ、また次の年を待つ。

    それを何年も、何十年も続けた先に、ようやく「今年は巣が多い」というニュースになる。

    49か所の巣という数字の裏には、海岸を歩いて確認する人たち、ロープで巣を守る人たち、夜の明かりを消す人たち、浜辺のごみを拾う人たちの時間があります。

    亀は、今日守ったから明日増えるわけではない。
    でも、守り続けた場所には、いつか戻ってくるかもしれない。

    このニュースは、そんなウミガメの長い時間を感じさせてくれます。

    湯川亀吉の一言

    何でも、長く続けることがとても大切。

    それでも、望んだ結果を一朝一夕を願う人が多いのはなんでだろうね?

    ま、僕もそんなクソどものうちの一人だけどね。

    出典

    元記事:Southern Living「This Georgia Beach Is Having Its Biggest Sea Turtle Nesting Season Ever」

  • 【世界の亀ニュース】オーストラリアで9,100匹以上のアオウミガメの赤ちゃんが海へ

    【世界の亀ニュース】オーストラリアで9,100匹以上のアオウミガメの赤ちゃんが海へ

    今回は、オーストラリアで報じられた、アオウミガメの卵移動プロジェクトに関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    オーストラリア北部、グレートバリアリーフ北部のアオウミガメに関するニュースです。

    ABC Newsによると、レイン島からサー・チャールズ・ハーディ島へ移されたアオウミガメの卵から、9,100匹以上の赤ちゃんガメが海へ向かったと報じられています。移された卵のうち、約82%が孵化して海へたどり着いたとされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:オーストラリア、グレートバリアリーフ北部
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年6月1日
    情報の種類:新着ニュース・保護活動・繁殖/孵化

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、アオウミガメです。

    舞台になったレイン島は、アオウミガメにとって非常に重要な産卵地として知られています。記事では、この地域のアオウミガメが気候変動や海面上昇、砂浜の温度上昇などの影響を受けていることも紹介されています。

    ニュースの要約

    今回の取り組みでは、アオウミガメの卵がレイン島からサー・チャールズ・ハーディ島へ移されました。

    目的のひとつは、孵化数を増やすことだけではありません。
    砂の温度が高くなりすぎると、アオウミガメの赤ちゃんはメスに偏りやすくなるため、より涼しい環境へ卵を移すことで、オスの赤ちゃんが生まれる可能性を高める狙いもあります。今回、移された卵は約9,000個にのぼり、約82%が孵化して海へ向かったと報じられています。

    また、記事では、この取り組みが10年以上続くレイン島回復プロジェクトの一部であることも紹介されています。伝統的所有者と研究者が協力し、アオウミガメの未来を守ろうとしている点も大切なポイントです。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、ただ「たくさん孵化した」という話ではないところです。

    亀の保護というと、卵を守る、赤ちゃんを海へ帰す、という場面に目が行きます。
    でも今回のニュースでは、砂浜の温度、性別の偏り、海面上昇、産卵地の地形、そしてその土地の人々の文化まで関わっています。

    一匹の赤ちゃんガメが海へ向かう背景には、島の形、気候、研究者、伝統的所有者、そして長く続く保護活動があります。

    亀を守るということは、亀だけを見ることではなく、亀が生まれる場所ごと見つめることなのかもしれません。

    湯川亀吉の一言

    偉いね。

    出典

    元記事:ABC News「Thousands of baby green sea turtles head to sea after successful egg relocation」

  • 【世界の亀ニュース】絶滅したと思われた「ロイヤルタートル」20匹がカンボジアの川へ

    【世界の亀ニュース】絶滅したと思われた「ロイヤルタートル」20匹がカンボジアの川へ

    今回は、カンボジアで報じられた、世界でも特に絶滅の危機が深刻な淡水ガメの野生復帰に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年4月29日、カンボジアのスレアンベル川水系に、20匹のロイヤルタートルが放流されました。

    このカメは、英語でSouthern river terrapinと呼ばれるBatagur affinisです。カンボジア国内で現在も野生個体が生息し、繁殖していることが確認されている場所は、スレアンベル川水系だけだとされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:カンボジア、スレアンベル川水系
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年4月29日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・野生復帰・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ロイヤルタートルです。

    学名はBatagur affinis。河川や河口付近の水域に暮らす淡水・汽水性のカメで、世界でも特に絶滅の危機が深刻なカメのひとつとされています。

    カンボジアでは2005年に「国の爬虫類」に指定されましたが、かつては国内で絶滅したのではないかと考えられていました。その後、2000年代初頭に再発見され、長期的な保護活動が続けられています。

    ニュースの要約

    今回放流された20匹は、カンボジア水産局や地域行政、Wildlife Conservation Societyなどが進めてきた、長期的な回復事業の一環として川へ戻されました。

    この活動では、野生の巣を守るだけでなく、子ガメをある程度の大きさまで育ててから放流し、その後の行動を追跡する取り組みも行われています。

    さらに、違法漁業、砂の採掘、生息地の消失などから、川全体を守る活動も進められています。過去10年間で、200匹以上のロイヤルタートルが野生へ戻されました。

    回復の兆しも見え始めています。

    2024年には、過去に放流されたメスが野生で産卵したことが初めて確認されました。2025年には巣が確認されませんでしたが、2026年の初めにはスレアンベル川で3つの巣が見つかっています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、かつて卵を採っていた地域の人たちが、現在は巣を守る側になっていることです。

    保護活動では、カメだけを遠くから監視しているわけではありません。

    以前は卵を採集していた人たちが、巣を探し、産卵場所を見守り、卵が無事に孵化できるように守っています。今回の放流式では、25年以上にわたってロイヤルタートルの巣を守ってきた地域の家族も表彰されました。

    人間がカメを減らす側から、守る側へ変わる。

    その変化がなければ、ロイヤルタートルは今も「絶滅したカメ」のままだったかもしれません。

    ただカメを育てて放すだけでは、野生復帰は完成しません。

    産卵できる砂州が残り、川が守られ、地域の人たちが巣を見つけ、次の世代が生まれる。そのすべてがつながって、ようやく野生の個体群が戻っていくのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    ロイヤルタートルの実物を見てみたいぜ。

    出典

    元記事:Wildlife Conservation Society Cambodia
    「Cambodia releases critically endangered royal turtles in Sre Ambel」