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  • 【世界の亀ニュース】ガラパゴスの島に巨大リクガメが約180年ぶりに戻る

    【世界の亀ニュース】ガラパゴスの島に巨大リクガメが約180年ぶりに戻る

    今回は、エクアドル・ガラパゴス諸島で報じられた、巨大リクガメの再導入に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    ガラパゴス諸島のフロレアナ島に、158頭の若い巨大リクガメが放たれました。

    Charles Darwin Foundationによると、フロレアナ島に巨大リクガメが戻るのは180年以上ぶりで、島の生態系回復にとって歴史的な節目とされています。放たれたのは、フロレアナ系統の血を引く若い巨大リクガメたちです。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:エクアドル、ガラパゴス諸島、フロレアナ島
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年2月20日
    情報の種類:新着ニュース・再導入・生態系回復

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、フロレアナ系統の巨大リクガメです。

    フロレアナ島にもともといた巨大リクガメは、過去の人間活動などにより島から姿を消しました。報道では、1800年代以降、長いあいだフロレアナ島に巨大リクガメがいない状態が続いていたと紹介されています。

    ニュースの要約

    今回放たれた158頭の若いリクガメは、フロレアナ島の失われた巨大リクガメの系統を回復するための長期プロジェクトの一部です。

    AP通信によると、これらの個体は8〜13歳で、絶滅したとされるフロレアナ島のリクガメの遺伝的要素を持つ個体として育てられてきました。今回の放流は、将来的に合計700頭を島へ戻す計画の第一歩とされています。

    また、Charles Darwin Foundationは、この再導入をフロレアナ島の生態系回復にとって重要な出来事と位置付けています。巨大リクガメは、草を食べ、種を運び、地形や植生に影響を与える存在であり、単に「一種類の動物が戻った」というだけではなく、島全体の自然の流れを取り戻す意味を持っています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、巨大リクガメが“島をつくる存在”として見られていることです。

    リクガメは、ただのんびり歩いているだけの生き物ではありません。
    植物を食べ、種を運び、土を踏み、道を作り、何十年もかけて島の風景に影響を与えていきます。

    人間の時間では「歩みが遅い」と感じる亀も、島の時間で見れば、風景を変えていく力を持っている。

    約180年ぶりに巨大リクガメがフロレアナ島を歩くというのは、単なる保護ニュースではなく、失われた島のリズムをもう一度動かし始める出来事なのかもしれません。

    湯川亀吉の一言

    いつかガラパゴス諸島に行ってみたいな〜。

    出典

    元記事:Charles Darwin Foundation「158 endangered tortoises released onto Floreana Island, Galapagos, for first time in over 180 years」

    関連報道:AP News「Galápagos park releases 158 juvenile hybrid tortoises on Floreana to restore the ecosystem」

  • 【世界の亀ニュース】メキシコで野生ガメ2,000匹超を押収 世界最小のバジャルタドロガメも密輸被害に

    【世界の亀ニュース】メキシコで野生ガメ2,000匹超を押収 世界最小のバジャルタドロガメも密輸被害に

    今回は、メキシコで発覚した大規模なカメの違法取引と、その中に含まれていた絶滅寸前の小さな淡水ガメについて紹介します。

    今回のニュース

    2025年9月、メキシコ・ハリスコ州で行われた摘発によって、野生から捕獲された2,000匹を超える淡水ガメが押収されました。

    カメたちは、ナマコやフカヒレなど、ほかの野生生物由来の品とともに隠されていました。

    押収されたカメには、メキシコ原産のドロガメ類6種とハコガメ類1種が含まれ、その中には、絶滅の危機が極めて高い**バジャルタドロガメ(Kinosternon vogti)**も数十匹含まれていました。

    しかし、すべてのカメが無事だったわけではありません。

    密輸の過程で劣悪な環境に置かれていたため、押収後までに数百匹が死亡したとTurtle Survival Allianceは報告しています。生き残った個体はグアダラハラ動物園へ運ばれ、治療、検疫、感染症検査などを受けました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:メキシコ
    主な場所:ハリスコ州、グアダラハラ
    摘発:2025年9月
    Turtle Survival Alliance発表:2025年10月10日
    情報の種類:淡水ガメ・密輸・違法取引・絶滅危惧種・救護・保護活動

    メキシコ当局のPROFEPAとSEMARNATは9月26日、大規模な摘発後にグアダラハラ動物園へカメの緊急収容を要請しました。その後、獣医師や飼育スタッフが大量の個体を一匹ずつ確認し、隔離と治療を開始しています。

    登場する亀

    今回とくに注目したいのが、バジャルタドロガメです。

    学名は Kinosternon vogti。

    日本の公的資料では「キノステルノン・ヴォグティ」と表記され、関連する登録資料では「フォークトドロガメ、バジャルタドロガメ」という名称も確認できます。この記事では、国内の爬虫類愛好家の間でも使われている「バジャルタドロガメ」で統一します。

    このカメが新種として記載されたのは、わずか2018年です。

    そして現在、世界で知られているカメの中でも最小の種とされています。

    雄の平均甲長は約7.6センチ、雌は約7.8センチ。大きな個体でも、雄は9センチ、雌は10センチを超えることがほとんどありません。

    世界最小のカメが暮らす場所

    バジャルタドロガメは、メキシコ西部のハリスコ州とナヤリット州にまたがるバンデラス湾周辺だけに分布する固有種です。

    歴史的な分布域は約263平方キロと推定されていますが、現在実際に利用できる生息域は非常に小さく、推定占有面積は0.3平方キロ未満とされています。

    池、湿地、流れの緩やかな小川などで暮らし、乾季には土中へ潜って数か月間休眠することがあります。

    繁殖は雨季に行われ、雌は一度に1〜5個ほどの卵を産みます。孵化した子ガメの甲長は、わずか19〜23ミリほどです。

    成体ですら手のひらに収まるほど小さい。

    その小さなカメが、生きられる湿地そのものも、非常に小さな範囲しか残っていません。

    2,000匹以上が一度に押収された

    今回の事件では、バジャルタドロガメだけが狙われていたわけではありません。

    押収されたのは、6種類のドロガメと1種類のハコガメを含む2,000匹以上のカメでした。

    これらは野生から捕獲されたとされ、国際市場を対象とした組織的な野生生物取引ネットワークの一部だったと報告されています。メキシコ当局は関係が疑われる3人を起訴しました。

    野生生物やその加工品は、グアダラハラを拠点とする企業を通じて、アメリカ、中国、その他のアジア市場などへ送られることが疑われています。

    一匹の珍しいカメが密かに持ち出された事件ではありません。

    何千匹という単位で野生動物を集め、商品として移動させる仕組みが存在していた可能性があります。

    数百匹は救出まで生き残れなかった

    カメは、見た目以上に過酷な環境へ耐えることがあります。

    長期間餌を食べなくても生きる種類もいる。

    狭い場所で動かず耐えることもできる。

    しかし、その性質は密輸業者にとって「運びやすい動物」として利用されることがあります。

    今回の押収個体も、多数のカメが密集した状態で扱われていたとみられ、数百匹がすでに死亡していました。残った個体の中にも、弱ったカメや病気の疑いがあるカメが確認されています。

    救出したカメを、すぐ野生へ戻せない理由

    違法取引から救出された野生動物を見ると、

    「元いた場所へ放せばいい」

    と思うかもしれません。

    しかし、2,000匹を超えるカメが複数種混ざった状態で運ばれていた場合、それほど簡単ではありません。

    どの個体がどこから捕獲されたのか。

    感染症を持っていないか。

    異なる地域個体群が混ざっていないか。

    長期間の輸送によって健康状態が悪化していないか。

    一つずつ確認する必要があります。

    今回もグアダラハラ動物園では、感染症の拡大を防ぐため、種類や状態に応じた隔離と検査が行われました。とくにカメ類で重大な問題となるラナウイルスについて、慎重な検査が必要だとされています。

    バジャルタドロガメは400匹未満とも

    Turtle Survival Allianceは、野生に残るバジャルタドロガメを400匹未満としています。

    一方、専門家による2025年の種解説では、実際に利用されている生息地が極めて小さいこと、野生個体群が都市開発、道路、違法採集などの圧力を強く受けていることが示されています。IUCNでは「Critically Endangered=深刻な危機」と評価されています。

    数千匹いる種類から数十匹が捕られるのと、

    野生に数百匹しかいない可能性のある種類から数十匹が消えるのとでは、意味が違います。

    密猟者が一度採集しただけでも、地域個体群へ大きな影響を与える可能性があります。

    2025年には保全施設からもカメが盗まれていた

    さらに深刻なのは、野生個体だけが狙われているわけではないことです。

    2025年1月には、プエルト・バジャルタでバジャルタドロガメの保全・繁殖を行っていた施設へ何者かが侵入し、飼育されていた個体が盗まれる事件も発生しました。

    その後、施設には電気柵、高性能の鍵、モーションセンサー、警報装置などが追加されています。

    絶滅から守るために集められたカメが、

    「珍しいから」

    という理由で再び狙われる。

    希少性そのものが、保全活動を難しくしています。

    それでも繁殖は始まっている

    バジャルタドロガメには希望もあります。

    2023年には、オーストリアのTurtle Islandで世界初となる飼育下繁殖に成功しました。

    さらにメキシコでは2024年、バジャルタドロガメを保護・繁殖するための専用保全施設が完成しています。

    グアダラハラ動物園でも繁殖技術の開発が進み、メキシコ国内で初めて飼育下孵化に成功しています。

    つまり、人間にはこの小さなカメを増やす技術が少しずつでき始めています。

    しかし、増やしたカメを帰す湿地が失われれば、飼育下繁殖だけでは問題は解決しません。

    生息地の99%以上が失われた可能性

    Turtle Islandによる現地保全プロジェクトでは、バンデラス湾周辺の都市化によって、バジャルタドロガメが利用してきた湿地環境の99%以上が失われたと報告されています。

    現在知られている生息地は、わずか数か所にまで減っています。

    プエルト・バジャルタ周辺は観光開発が盛んな地域です。

    ホテル。

    道路。

    住宅。

    商業施設。

    人間にとって便利な土地へ変わるほど、小さな湿地は地図から消えていきます。

    世界最小のカメが必要としている場所は、大きなジャングルではありません。

    人間から見れば、埋め立てても大きな変化には見えない、小さな水辺なのです。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番気になるのは、カメの「希少価値」が、そのカメを危険にしてしまうことです。

    新種だった。

    世界最小だった。

    分布域が狭かった。

    絶滅寸前だった。

    本来なら、これらは

    「だから守ろう」

    という理由になるはずです。

    でも、違法なペット市場では、

    「だから欲しい」

    という理由にもなってしまう。

    珍しくなればなるほど値段が上がり、値段が上がるほど野生から持ち出す人間が現れる。

    絶滅へ近づくほど商品価値が高くなるという、ものすごく危険な循環です。

    湯川亀吉の一言

    珍しいから欲しい・高価だから欲しい。

    そんな考えに取り憑かれていた時期が、俺にもありました。

    出典

    Turtle Survival Alliance
    「Over 2,000 Wild Turtles Seized in Mexico; Conservationists Race to Save Survivors」

    IUCN SSC Tortoise and Freshwater Turtle Specialist Group
    「Kinosternon vogti – Vallarta Mud Turtle」

    Turtle Island
    「The Vallarta Mud Turtle | Mexico」

    Mongabay
    メキシコの大規模なカメ密輸摘発に関する報道。

  • 【世界の亀ニュース】絶滅寸前のビルマオオセタカガメ 20匹のオスを川へ戻したら、孤独だった雌から14匹が誕生

    【世界の亀ニュース】絶滅寸前のビルマオオセタカガメ 20匹のオスを川へ戻したら、孤独だった雌から14匹が誕生

    今回は、ミャンマーの大河川に生息する希少な淡水ガメ「ビルマオオセタカガメ」の保全活動を紹介します。

    かつては、

    絶滅したのではないか

    とまで考えられていたカメです。

    しかし、生き残ったわずかな個体を見つけ、卵を守り、子ガメを育て、川へ戻す活動が始まりました。

    そして2018年。

    保全施設で育った若いオス20匹が、チンドウィン川へ放されます。

    その約1年半後。

    長年、無精卵しか産めなかった一匹の野生の雌が19個の卵を産み、

    14匹が孵化しました。

    人間が川へ戻したオスが、

    野生に残っていた雌を見つけた可能性が高いと考えられています。

    今回のニュース

    2020年5月22日、Wildlife Conservation Society(WCS)とTurtle Survival Alliance(TSA)は、ミャンマー北部を流れるチンドウィン川で、ビルマオオセタカガメの繁殖に大きな進展があったと発表しました。

    そこには一匹の野生の雌がいました。

    しかし、その雌は長い間、繁殖相手となる雄と出会えていなかったと考えられています。

    過去に産んだ卵は孵化しませんでした。

    ところが2020年。

    19個の卵を産み、

    そのうち14個が孵化しました。

    研究者たちが考えたのは、

    2018年に放流した若い雄たちです。

    そのときチンドウィン川へ戻されたのは、

    20匹の飼育下育ちの雄。

    そのうち少なくとも一匹が野生の雌と出会い、交尾したと考えられました。

    どこの国・地域の話か

    国:ミャンマー
    主な河川:チンドウィン川
    対象種:ビルマオオセタカガメ
    学名:Batagur trivittata
    英名:Burmese Roofed Turtle
    情報の種類:淡水ガメ・絶滅危惧種・繁殖・ヘッドスタート・野生復帰

    ビルマオオセタカガメはミャンマー固有の大型淡水ガメで、かつてはエーヤワディー川、チンドウィン川、シッタン川、サルウィン川などの大きな河川に広く分布していました。

    日本の経済産業省が公開しているワシントン条約対象種の資料でも、Batagur trivittataには**「ビルマオオセタカガメ」**という和名が使われています。

    登場する亀

    ビルマオオセタカガメは、イシガメ科バタグールガメ属の淡水ガメです。

    大きな川とその支流を主な生息環境とし、河川沿いの砂州を産卵場所として利用します。

    そして、このカメにはとても面白い特徴があります。

    成熟した雄の外見が繁殖期に大きく変わることで知られるカメです。

    名前の「trivittata」も、ラテン語で「3本の帯を持つ」といった意味に由来すると考えられています。

    一度は「絶滅した」と思われた

    ビルマオオセタカガメは、昔から珍しいカメだったわけではありません。

    かつてはミャンマーの大河川で普通に見られたとされています。

    しかし、

    卵の大量採取。

    成体の捕獲。

    漁網への混獲。

    産卵砂州の消失。

    金採掘。

    河川環境の改変。

    こうしたものが重なり、個体数が急激に減少しました。

    1970年代にはすでに、

    「絶滅したのではないか」

    と考えられるようになります。

    2001年、「甲羅」が見つかった

    転機は2001年でした。

    WCSの調査チームがミャンマーで別の希少なカメを探していたとき、

    ある村で、

    最近殺されたと思われるビルマオオセタカガメの甲羅

    を発見しました。

    生きた個体ではありません。

    でも、

    「最近まで生きていたカメの甲羅」がある。

    つまり、

    絶滅していない可能性があります。

    そこから調査が進みました。

    寺院の池に、生き残りがいた

    その後、

    マンダレーの寺院の池で、

    生きたビルマオオセタカガメが発見されます。

    さらにチンドウィン川上流では、

    わずかながら野生で繁殖を続けている個体群も見つかりました。

    絶滅していなかった。

    でも、

    安心できる数ではありません。

    WCSが2020年に発表した時点でも、野生に残る繁殖可能な雌は5匹未満とされていました。

    TSAの現在の種情報では、野生個体群は99%以上減少し、確認される野生の成体雌はさらに少数とされています。

    まず卵を守る

    そこで始まったのが、

    チンドウィン川の産卵地を直接守る活動です。

    毎年2月から3月。

    残された雌が砂州へ上がり、

    卵を産みます。

    保全チームはその卵を探します。

    そして、

    人や動物に掘り返される前に保護します。

    保護された卵は、チンドウィン川沿いの村に設けられた安全な場所で孵化まで管理されます。

    5月から6月。

    子ガメが生まれます。

    でも、

    すぐには川へ戻しません。

    5〜6年間育ててから川へ戻す

    孵化したばかりの子ガメは小さい。

    捕食されやすい。

    漁具にも弱い。

    そこで、

    5〜6年間、人間の管理下で育てます。

    ある程度大きくなり、野外で生存できる可能性が高くなってから川へ戻します。

    いわゆる、

    ヘッドスタート

    です。

    卵を守る。

    孵化させる。

    数年間育てる。

    そして、

    元の川へ返す。

    この循環を何年も続けました。

    飼育個体群は1,000匹近くまで増えた

    保全活動は野生の卵だけではありません。

    マンダレーのYadanabon Zooをはじめ、複数の場所に保全繁殖個体群=assurance colonyが作られました。

    もし野生個体群が完全に消えても、

    種そのものが失われないようにするためです。

    そして繁殖に成功します。

    2020年には、WCSは飼育下個体群が1,000匹近くまで増えたと報告しました。

    数十年前には、

    絶滅したと思われていたカメです。

    それが、

    人間の管理下とはいえ、

    1,000匹近くまで増えました。

    でも、飼育下で1,000匹いても十分ではない

    ここは、

    これまで紹介してきた亀たちにも共通します。

    飼育下で増えた。

    だから成功。

    ではありません。

    このカメは、

    川のカメです。

    大きな川を泳ぐ。

    砂州へ上がる。

    卵を産む。

    流れの中で餌を探す。

    そういう生活をして初めて、

    ビルマオオセタカガメという種が野生に存在していることになります。

    だから、

    増やしたカメをもう一度川へ戻さなければなりません。

    2018年、若い雄20匹を放す

    そこで2018年。

    保全施設で育てた若い雄20匹が、チンドウィン川へ放されました。

    この放流には、

    特別な意味がありました。

    川には雌が残っている。

    でも、

    雄がほとんどいない。

    雌は毎年卵を産んでも、

    受精しない。

    だったら、

    雄を戻す。

    とても単純に聞こえます。

    でも、

    野生復帰というのは、

    「カメの数を増やす」ことだけではない。

    野生に足りなくなった繁殖相手を戻す

    ことでもあります。

    そして一匹の雌が19個の卵を産んだ

    2020年。

    チンドウィン川上流にいた一匹の雌が、

    19個の卵を産みます。

    そして、

    14匹が孵化しました。

    それまで、

    その雌が産んだ卵は受精していませんでした。

    しかし、

    雄を川へ戻したあと、

    初めて子ガメが生まれた。

    もちろん、

    どの雄が父親なのかは、

    このニュースだけでは分かりません。

    それでもWCSとTSAは、

    2018年に放した雄との交尾によって受精した可能性が高いと考えました。

    14匹という数字以上の意味

    14匹。

    飼育施設なら、

    もっとたくさん生まれているかもしれません。

    でも、

    この14匹は意味が違います。

    母親は、

    野生で生き残った雌。

    父親はおそらく、

    人間が育てて野生へ返した雄。

    そこで生まれた子どもです。

    つまり、

    飼育下個体群と野生個体群が、

    もう一度つながった。

    保全施設が、

    単なる避難場所ではなく、

    野生を補強するための場所として機能した瞬間

    だと思います。

    さらに60匹が川へ戻った

    その後も再導入は続きました。

    Turtle Survival Allianceは、ヘッドスタートされた60匹のビルマオオセタカガメをミャンマー西部の2つの河川へ再導入した取り組みを報告しています。

    一度、

    ほとんどカメがいなくなった川。

    そこへ、

    少しずつ戻す。

    20匹。

    60匹。

    また次の世代。

    一度に昔の状態へ戻すことはできません。

    川には、まだ危険がある

    しかし、

    放流すれば終わりではありません。

    川には今も、

    漁網があります。

    産卵砂州の消失があります。

    人による卵の採取があります。

    河川環境の変化があります。

    飼育下で100匹増やしても、

    川で100匹失われれば、

    個体群は復活しません。

    だから、

    カメを育てることと、

    カメが戻れる川を残すこと。

    この二つを同時に進める必要があります。

    卵を集めることが、永遠に続いてはいけない

    現在の保全方法では、

    野生の雌が産んだ卵を人間が保護し、

    子ガメを育てています。

    これは今、

    非常に重要な方法です。

    でも、

    最終的な理想は、

    人間が毎年卵を拾わなくてもいい状態でしょう。

    雌が自分で砂州を選ぶ。

    卵を産む。

    孵化する。

    子ガメが川へ入る。

    成長する。

    そして、

    また繁殖する。

    その循環が、

    人間の手を借りずに続くこと。

    そこまで戻れば、

    本当の意味で野生個体群が復活したと言えるのだと思います。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回の話で僕が一番好きなのは、

    「雄を放したら、雌の卵から子ガメが生まれた」

    というところです。

    保全活動というと、

    とにかく数を増やすことを想像します。

    100匹育てる。

    200匹放す。

    1,000匹まで増やす。

    もちろん、それも大事です。

    でも、

    野生に残っていた一匹の雌に必要だったのは、

    100匹のカメではなかったのかもしれない。

    たった一匹の雄だったかもしれない。

    ずっと同じ川で生きていた。

    毎年卵を産んだ。

    でも、

    相手がいなかった。

    そこへ、

    人間が育てた雄が泳いでくる。

    どこかで出会う。

    そして、

    次の年。

    卵から子ガメが出てくる。

    保全って、

    「たくさん増やす」だけじゃないんだね。

    途切れてしまった生き物同士のつながりを、

    もう一度つなぐ仕事でもあるんだと思います。

    湯川亀吉の一言

    バタグール飼ってみたいね〜

    出典

    Wildlife Conservation Society(WCS)
    「Isolated Female Burmese Roofed Turtle Surprises Conservationists by Laying Fertile Eggs」
    2020年5月22日。野生の雌が19個の卵を産み、14匹が孵化したこと、2018年に雄20匹を放流したことについて。

    Wildlife Conservation Society Myanmar Program
    「Burmese Roofed Turtle Conservation」
    過去の分布、減少、再発見、チンドウィン川での卵保護・ヘッドスタートなどについて。

    Wildlife Conservation Society(WCS)
    「The Turtle that Almost Went Extinct, Now Ready for Its Close-up」
    2020年8月25日。飼育下個体群が約1,000匹まで増加したことなどについて。

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「Burmese Roofed Turtle」
    現在の保全状況、脅威、ヘッドスタート・個体群補強について。

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「Burmese Roofed Turtles Return to the Wild」
    ヘッドスタートされた60匹の野生復帰について。

  • 4万1,000匹超のオオヨコクビガメ、ドローンが捉えた世界最大の集団産卵

    4万1,000匹超のオオヨコクビガメ、ドローンが捉えた世界最大の集団産卵

    南米を流れるグアポレ川/イテネス川の砂州で、4万1,000匹を超えるオオヨコクビガメが産卵のために集まっていたことが、ドローンを使った調査によって確認されました。

    ブラジルとボリビアの国境を流れるこの川では、毎年多数のオオヨコクビガメが同じ砂州へ集まります。2025年に発表された研究では、12日間の産卵期に集まった個体数を、新しい統計手法とドローン画像を組み合わせて推定しました。これは、確認されているものとしては世界最大の淡水ガメの集団産卵とされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ブラジル・ボリビア国境、グアポレ川/イテネス川流域
    元記事の言語:英語
    元記事の公開時期:2025年8月4日
    研究発表:2025年
    情報の種類:過去アーカイブ・淡水ガメ・繁殖・研究・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、オオヨコクビガメです。

    学名はPodocnemis expansa。南米に分布するヨコクビガメの仲間で、ヨコクビガメ類の中では最大種です。鳥羽水族館では甲長が80センチを超える種として紹介され、WCSは最大で全長約1.07メートル、体重約90キロに達すると説明しています。

    首を甲羅の中へまっすぐ引き込むのではなく、横方向へ曲げて収納することが「ヨコクビガメ」という名前の由来です。

    巨大な雌たちは産卵期になると川の砂州へ集まり、砂を掘って卵を産みます。

    ニュースの要約

    これほど多くのカメが同じ場所に集まると、単純に写真を見て数えるだけでは、正確な個体数を把握できません。

    同じ個体を二度数えてしまうこともあれば、別のカメや地形に隠れて見落とされる個体もいます。

    今回の研究では、ドローンで撮影した多数の画像をつなぎ合わせて、砂州全体を一枚の高精細な地図のように再現しました。さらに、移動する個体、重なって見えない個体、二重に記録された個体などを考慮する統計モデルを使い、実際の個体数を推定しています。

    その結果、12日間の産卵期に砂州へ集まったオオヨコクビガメは、4万1,000匹以上と推定されました。

    研究者たちは、この方法を使うことで、ただ壮大な光景を撮影するだけでなく、個体数やその変化を長期間にわたって、より正確に監視できるとしています。

    なぜ今、このニュースを紹介するのか

    このニュースは、単に「たくさんのカメがいた」という話ではありません。

    野生動物の保護では、現在どれだけの個体がいるのかを把握することが重要です。

    けれど、広大なアマゾン流域で、短期間に何万匹ものカメが移動する状況を、人間が地上から正確に数えるのは簡単ではありません。

    ドローンと統計モデルによって個体数を継続的に調べられるようになれば、前年より増えたのか、減ったのか、産卵地に異変が起きていないかを判断するための重要な記録になります。今回開発された方法は、同じように大群をつくる鳥類や海洋哺乳類などの調査にも応用できるとされています。

    4万匹いても安心とは限らない

    4万1,000匹という数字だけを見ると、オオヨコクビガメは非常に多いように感じます。

    しかし、数多くの個体が限られた砂州へ集中するということは、その場所が失われたときの影響も大きいということです。

    水位の変化、砂州の消失、人間による卵や成体の採取、産卵地周辺の開発などが起これば、一度に多くの個体の繁殖が影響を受ける可能性があります。

    WCSは地域住民や行政と協力し、オオヨコクビガメと、その産卵に必要な砂州を守る活動を続けています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、普段は広大な川の中で離れて暮らしているカメたちが、同じ時期に同じ場所へ集まることです。

    一匹だけでも巨大なオオヨコクビガメが、数万匹。

    川の中から次々と姿を現し、砂州へ上がり、土を掘る。

    その光景は、生き物の群れというよりも、遠い昔から続く巨大な儀式のように見えます。

    けれど、その壮大な時間は、産卵できる砂州と、そこへ戻れる川が残っているからこそ続いています。

    数を数えることは、カメを数字へ変えることではありません。

    来年も、10年後も同じ川へ戻ってこられるように、今そこにいるカメたちの存在を記録することなのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    でかい熱帯性の亀を飼いたいよ〜!!

    出典

    Wildlife Conservation Society
    「Novel Counting Method Using Drones Helps to Verify World’s Largest Freshwater Turtle Nesting Event」

    Journal of Applied Ecology
    「Estimating abundance of aggregated populations with drones while accounting for multiple sources of errors」

    鳥羽水族館・生きもの図鑑
    「オオヨコクビガメ」

  • 【亀ニュースアーカイブ】オーストラリアの不思議な淡水ガメ、洪水で繁殖地に大きな打撃

    【亀ニュースアーカイブ】オーストラリアの不思議な淡水ガメ、洪水で繁殖地に大きな打撃

    今回のニュース

    2025年、オーストラリア・クイーンズランド州に生息するメアリーリバータートルが、洪水によって厳しい繁殖シーズンを迎えていると報じられました。

    The Guardianの記事によると、2024年12月の洪水により、メアリーリバータートルの重要な繁殖地であるティアロ周辺では、そのシーズンの巣の約半分が失われたとされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:オーストラリア、クイーンズランド州、メアリー川流域
    元記事の言語:英語
    元記事の公開時期:2025年4月
    情報の種類:過去アーカイブ・淡水ガメ・保護活動・繁殖地被害

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、メアリーリバータートルです。

    メアリーリバータートルは、オーストラリア南東クイーンズランドのメアリー川に生息する淡水ガメです。記事では、総排出腔付近の構造を通じて水中の酸素を取り込むことができる、非常に特殊な淡水ガメとして紹介されています。

    ニュースの要約

    メアリーリバータートルは、すでに厳しい状況に置かれている絶滅危惧の淡水ガメです。

    The Guardianの記事では、この種の野生個体数は推定約10,000匹で、1960年代以降に個体数が約80%減少したと紹介されています。さらに、2024年12月の洪水では川の水位が大きく上がり、ティアロの重要な繁殖地で、そのシーズンの巣の約半分が失われたとされています。

    地域のボランティアたちは、20年以上にわたってメアリーリバータートルの保護に関わってきました。洪水の際には、一部の巣をより高い場所へ移すなどして、少しでも卵を守ろうとしたと報じられています。

    しかし、巣を守る活動だけで問題が解決するわけではありません。

    記事では、繁殖成績の悪化、生息地への影響、捕食、気候変動、そして若い個体が十分に成長していない可能性など、複数の課題が重なっていることも紹介されています。

    なぜ今、このニュースを紹介するのか

    このニュースは2025年の記事ですが、淡水ガメの保護を考えるうえで、とても重要な記録だと思います。

    ウミガメの保護では、砂浜や海岸が注目されることが多い。
    でも、淡水ガメにもまた、卵を産む場所があり、川の流れがあり、増水や洪水に左右される繁殖の時間があります。

    メアリーリバータートルは、川の中で静かに生きているカメです。
    でもその静かな暮らしは、気候や水位、人間の保護活動、地域のボランティアの努力と深くつながっています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、淡水ガメの繁殖地が、思っている以上に繊細だということです。

    川に暮らすカメは、ただ水の中にいればいいわけではありません。
    産卵できる場所があり、卵が流されない高さがあり、子ガメが孵化して川へ向かえる環境が必要です。

    洪水は自然の一部です。
    でも、もともと個体数が減っている種類にとって、ひとつの繁殖シーズンを失うことは大きな痛手になります。

    記事の中では、保護関係者が「毎年が重要だ」という趣旨の危機感を示しています。
    亀は長生きする生き物だけど、だからといって繁殖の失敗を何年も積み重ねていいわけではない。

    長く生きるからこそ、次の世代へつなぐ一回一回の繁殖が重いのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    メアリーリバータートル。

    一度野生の個体を見てみたいぜ。

    オーストラリアから固有種の輸出を許可する未来が訪れますように。

    オーストラリアの亀をもっと知りたいよ〜

    出典

    元記事:The Guardian「‘Every year matters’: Queensland’s critically endangered ‘bum-breathing’ turtle battles the odds」

  • 【世界の亀ニュース】マダガスカルで洪水に流された絶滅危惧のリクガメたちを救助

    【世界の亀ニュース】マダガスカルで洪水に流された絶滅危惧のリクガメたちを救助

    今回のニュース

    2025年1月、マダガスカル南部で、絶滅危惧種のリクガメたちが洪水に巻き込まれ、大規模な救助活動が行われました。

    AP通信によると、サイクロン「Dikeledi」の影響で、Lavavolo Tortoise Centerが洪水に見舞われ、保護されていたホウシャガメやクモノスガメなど約12,000匹が流される事態になりました。これらのリクガメの多くは、もともと違法取引から保護された個体だったと報じられています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:マダガスカル南部
    元記事の言語:英語
    元記事の公開時期:2025年1月
    情報の種類:過去アーカイブ・救助・保護活動・災害

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、主にホウシャガメとクモノスガメです。

    ホウシャガメは、黒い甲羅に黄色い放射状の模様を持つ美しいリクガメとして知られています。AP通信の記事では、ホウシャガメは100年以上生きることもある長寿のリクガメであり、マダガスカルでは生息地破壊や密猟、違法ペット取引などにより深刻な危機にあると紹介されています。

    ニュースの要約

    Lavavolo Tortoise Centerには、約12,000匹のホウシャガメやクモノスガメが保護されていました。

    しかし、サイクロンによる洪水で施設が浸水し、多くのリクガメたちが流されてしまいました。
    記事によると、施設スタッフ、地域住民、警察官たちが協力し、水の中を歩きながら容器を使ってリクガメを集めたり、壊れた建物の一部を即席のいかだのように使ったりして救助にあたったとされています。

    Turtle Survival Allianceのマダガスカル責任者は、10,000匹以上を救えた可能性があるとしつつも、約700匹の死亡も確認されたと報じられています。多くの個体は施設に戻されましたが、洪水によって保護施設そのものにも大きな被害が出ました。

    なぜ今、このニュースを紹介するのか

    このニュースは2025年の記事ですが、「亀を守る」ということを考えるうえで、とても重要な記録だと思います。

    これらのリクガメたちは、違法取引から救われたあと、保護施設で守られていました。
    けれど、その保護施設もまた、自然災害によって危機にさらされる。

    亀を守るということは、密猟や違法取引と戦うだけではありません。
    保護したあとの場所をどう守るのか。
    災害が起きたとき、どう救うのか。
    地域の人たちとどう協力するのか。

    そういう現実まで含めて、亀の保護なのだと感じます。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、地域の人たちがリクガメを救うために動いたことです。

    水に流された何千匹ものリクガメを見つけ、集め、運び、戻す。
    それは簡単なことではありません。

    しかも相手は、ただの「数」ではない。
    一匹一匹が、長い時間を生きるリクガメです。

    25歳から50歳くらいの個体でも、リクガメの世界ではまだ若い個体として表現されています。人間の感覚とはまったく違う時間を生きる生き物たちが、洪水の中で必死に生き延びようとしていた。そう思うと、このニュースは単なる災害救助ではなく、亀たちの時間を守るための出来事に見えてきます。

    湯川亀吉の一言

    なるほど。

    出典

    元記事:AP News「Thousands of endangered tortoises are rescued in Madagascar after their sanctuary is flooded」

  • 【世界の亀ニュース】湖の水から世界最希少のカメを探す――シャンハイハナスッポンの環境DNA調査

    【世界の亀ニュース】湖の水から世界最希少のカメを探す――シャンハイハナスッポンの環境DNA調査

    今回のニュース

    2025年1月、世界で最も希少なカメの一つとされるシャンハイハナスッポンを探すため、現地へ持ち運べる新しい環境DNA検査が開発されたと発表されました。

    この検査は、湖や貯水池から採取した水を調べ、そこにシャンハイハナスッポンのDNAが含まれているかを現場で判定するものです。目視だけでは発見が難しい巨大な湖でも、カメが存在する可能性を調べられるようになります。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ベトナム北部
    主な調査地:ハノイ近郊のドンモ湖など
    元記事の言語:英語
    元記事の公開時期:2025年1月15日
    情報の種類:過去アーカイブ・淡水ガメ・環境DNA・保護研究

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、シャンハイハナスッポンです。

    学名はRafetus swinhoei。中国南部とベトナムに分布していた巨大なスッポンの仲間で、英語ではSwinhoe’s Softshell TurtleやYangtze Giant Softshell Turtleなどと呼ばれています。河川や湖などの淡水域に生息し、現存する淡水ガメの中でも特に大型になる種類です。

    甲羅には一般的なカメのような硬い鱗板がなく、皮膚で覆われた平たい体をしています。

    鼻先は管のように伸び、水面へ顔全体を出さなくても呼吸しやすい形になっています。巨大な体でありながら、深い湖の濁った水中に潜れば、人間が姿を確認することは簡単ではありません。

    ニュースの要約

    環境DNAとは、生き物が水中へ残した皮膚の細胞、排泄物などに含まれるDNAのことです。

    カメの姿を直接見つけられなくても、水を採取して分析すれば、その場所に対象種が存在した可能性を調べられます。今回の検査では、対象となるDNAを増幅して検出するqPCRという技術が利用されています。

    従来の環境DNA調査では、採取した水や試料を専門的な研究施設へ運び、結果が出るまで長い時間がかかることがありました。

    今回開発された装置は現地へ持ち運ぶことができるため、研究者や保護関係者が湖の近くで検査を進められます。国外の研究施設へ試料を輸送する必要も減り、調査結果を早く保護活動へ反映できる可能性があります。

    開発チームは、約1,260ヘクタールに及ぶベトナムのドンモ湖で検査を実施し、非常に広い水域でもシャンハイハナスッポンのDNAを検出できることを示しました。

    複数地点から採取した水をまとめて調べる方法も検討され、限られた検査回数で広い範囲を調査するための工夫が行われています。

    なぜこのカメを探しているのか

    シャンハイハナスッポンは、絶滅寸前まで減少しています。

    2025年の発表時点では、中国の蘇州動物園で飼育されている高齢の雄と、ベトナムの湖に存在すると考えられていた野生個体が紹介されていました。新たな個体、特に繁殖可能な雌を見つけられなければ、種を将来へ残すことは極めて難しい状況です。

    その後も状況は非常に厳しく、2026年の保全情報では、確実に生存が確認されている個体は中国で飼育されている雄一匹とされています。

    一方、ベトナム北部では未確認個体の存在を示す情報や、別の湖で撮影された候補個体も報告されており、保護団体は環境DNA、聞き取り調査、ドローン、カメラなどを使った捜索を続けています。

    姿が見えなくても、存在を探せる

    巨大なカメが湖にいるなら、簡単に見つけられそうにも思えます。

    でも、湖は広く、水は濁り、カメは長時間水中へ潜っています。

    湖面に鼻先だけを出して呼吸し、再び水中へ沈んでしまえば、遠くから見つけるのはほとんど不可能です。

    環境DNA調査の重要なところは、カメそのものを目撃できなくても、そのカメが水中へ残した痕跡を探せることです。

    一滴の水の中に、まだ人間が出会っていない一匹の存在が残されているかもしれません。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、一匹を探すために、巨大な湖そのものを調べていることです。

    普通の生物調査では、ある程度まとまった個体数がいることを前提にする場合があります。

    でも、シャンハイハナスッポンの場合は違います。

    探しているのは、群れではない。
    何十匹でもない。

    世界のどこかに残っているかもしれない、たった一匹です。

    その一匹が雄なのか雌なのかによって、種の未来が変わる可能性があります。

    だから研究者たちは、水をすくい、その中に残された目に見えない痕跡を調べています。

    湯川亀吉の一言

    そういえば、4年前にホアンキエム湖に行ったな!!

    でかいシャンハイハナスッポンのオブジェを見ましたよ?

    写真撮っておけばよかった。

    行商のお姉さんから買ったライチが超美味しかった。

    出典

    Wildlife Conservation Society
    「Scientists Develop First Portable eDNA Test Which Is Able to Detect One of the Rarest of the Rare Wildlife Species, a Swinhoe’s Softshell Turtle, in a Massive Body of Water」

    The Reptile Database
    「Rafetus swinhoei」

    Turtle Survival Alliance
    「Swinhoe’s Giant Softshell Turtle」

  • 【世界の亀ニュース】一軒の家から10,976匹 密輸から救われたホウシャガメを、もう一度マダガスカルの森へ

    【世界の亀ニュース】一軒の家から10,976匹 密輸から救われたホウシャガメを、もう一度マダガスカルの森へ

    今回は、マダガスカルにしか生息しない美しいリクガメ、ホウシャガメをめぐる大規模な救護と野生復帰のニュースを紹介します。

    2018年4月。

    マダガスカル南西部のトゥリアラで、一軒の民家から発見されたホウシャガメは、

    10,976匹。

    数十匹でも、

    数百匹でもありません。

    一万匹を超えるカメが、一つの建物に集められていました。

    そこから始まったのは、

    カメを押収して終わる保護活動ではありませんでした。

    救護する。

    健康を取り戻す。

    何年も育てる。

    野生へ戻せる個体を選ぶ。

    帰る森を確保する。

    地域住民と一緒にその場所を守る。

    そして、

    もう一度、人間の手から離す。

    長い時間をかけた「密輸から野生復帰へ」の計画です。

    今回のニュース

    2018年4月10日、マダガスカル南西部の都市トゥリアラで、警察と環境当局が一軒の住宅を捜索しました。

    そこで確認されたのが、

    10,976匹のホウシャガメでした。

    発見されたカメの多くは若い個体で、十分な水や餌を得られない状態に置かれていました。

    Turtle Survival Alliance(TSA)を中心に、マダガスカル国内外の動物園、獣医師、飼育スタッフなどが救護に参加。

    生き残った個体は、トゥリアラから北へ約29km離れたIfatyの保護施設へ移され、健康確認や水分補給、治療、個体識別などが進められました。

    この事件は、

    TSAがそれまで経験した中でも最大規模のリクガメ救護の一つとなりました。

    どこの国・地域の話か

    国:マダガスカル
    最初の大量押収:トゥリアラ周辺
    発見日:2018年4月10日
    対象種:ホウシャガメ
    学名:Astrochelys radiata
    英名:Radiated Tortoise
    情報の種類:リクガメ・密輸・違法取引・救護・野生復帰・地域保全

    ホウシャガメは、マダガスカル南部から南西部にのみ自然分布する固有種です。

    乾燥した低木林、トゲの多いスパイニーフォレストなどに暮らしています。

    登場する亀

    今回の主役は、

    ホウシャガメ。

    学名は、

    Astrochelys radiata。

    英語ではRadiated Tortoiseと呼ばれます。

    京都市動物園でも「ホウシャガメ」という和名が使われており、最大甲長は約40cmと紹介されています。

    名前の由来は、

    甲羅です。

    黒っぽい甲板の中心から、

    黄色い線が外側へ向かって伸びる。

    まるで光が放射しているように見えます。

    Smithsonian’s National Zooは、この放射模様について、インドホシガメなど他の星模様を持つリクガメよりも細かく複雑であることを特徴として挙げています。

    世界で最も美しいカメの一つ

    ホウシャガメは、その甲羅の美しさから、

    「世界で最も美しいリクガメの一つ」

    として紹介されることがあります。

    美しい。

    珍しい。

    欲しい。

    その評価が、

    このカメを追い詰める理由にもなりました。

    野生個体は国際的なペット取引のために捕獲され、さらにマダガスカル国内では食用目的の捕獲も続いてきました。

    生息地そのものも、農地化や炭づくりなどによって失われています。

    昔は「触ってはいけないカメ」だった

    マダガスカル南部の一部地域には、

    ホウシャガメを傷つけたり食べたりすることを禁じる伝統的な**「fady(ファディ)」**があります。

    祖先と結び付けて考えられる地域もあり、

    長い間、

    文化そのものがホウシャガメを守ってきました。

    しかし、

    地域外から人が入る。

    価値の高いカメとして売買される。

    伝統的な禁忌を共有しない人が捕る。

    その結果、

    文化だけでは個体群を守れなくなっていきました。

    2018年4月、一軒の家に10,976匹

    そして2018年4月10日。

    トゥリアラの住宅で、

    10,976匹。

    とてつもない数のホウシャガメが発見されました。

    普通に考えれば、

    一日や二日で集められる数ではありません。

    一匹。

    また一匹。

    別の場所からも一匹。

    それが積み重なって、

    一万匹を超えた。

    その数だけ、

    野生の森からホウシャガメが消えていたことになります。

    そして半年後、また数千匹

    さらに同じ2018年10月にも、大規模な押収が発生しました。

    TSAによると、2018年だけで保護下へ入ったホウシャガメは17,000匹を超えました。

    つまり、

    4月の事件は、

    一度だけ起きた異常な出来事ではありませんでした。

    それだけ大規模な捕獲と違法取引が、

    このカメを取り巻いていたということです。

    保護した瞬間から、別の問題が始まる

    密輸されるカメを見つけた。

    押収した。

    助かった。

    そう思いたくなります。

    でも、

    一万匹を保護した瞬間、

    今度は人間が一万匹を生かさなければなりません。

    水。

    餌。

    飼育場所。

    病気の確認。

    衛生管理。

    個体識別。

    獣医療。

    スタッフ。

    そして、

    何年間も続く費用。

    TSAはマダガスカルに複数の保全施設を整備し、押収されたホウシャガメの大規模な飼育体制を作りました。現在のTSAのマダガスカル事業でも、違法取引から救出したホウシャガメの救護、長期飼育、野生復帰が主要活動になっています。

    でも、ずっと飼うことが目的ではない

    何万匹も保護している。

    だったら、

    大きな保護施設を作って、

    そこで一生飼えばいい。

    そう考えることもできます。

    でも、

    ホウシャガメは本来、

    飼育施設にいる動物ではありません。

    マダガスカル南部の森を歩くリクガメです。

    そこでTSAは、

    Confiscation to Reintroduction Strategy

    という考え方を進めました。

    日本語にすると、

    「押収から再導入へ」。

    密輸から救出したカメを、

    可能な限り、

    もう一度野生へ戻していく計画です。

    ただ森へ置けばいいわけではない

    一度長期間飼育したカメを、

    空いている森へ置けばいい。

    そんな単純な話でもありません。

    その地域に病気を持ち込まないか。

    健康状態は十分か。

    野生で餌を取れるか。

    その森に十分な食物があるか。

    再び密猟されないか。

    地域の人々が保護に協力してくれるか。

    一つずつ確認する必要があります。

    そのため、放流候補となった個体には獣医師による健康検査が行われています。

    感染症検査も含め、

    「放しても大丈夫なカメか」

    を確認します。

    2021年、最初の1,000匹

    そして2021年。

    大きな転換点が来ます。

    TSAは、

    1,000匹のホウシャガメを、マダガスカル南部の地域住民が保護する森林へ移しました。

    違法取引から救出され、

    何年間も人間の管理下で暮らしてきたカメたちです。

    ただし、

    いきなり森全体へ自由にしたわけではありません。

    まず約6ヘクタールの順応エリアに入り、

    その土地で生活する期間が設けられました。

    そして2022年3月、

    囲いが開かれ、

    カメたちは周囲のスパイニーフォレストへ自由に移動できるようになりました。

    「ソフトリリース」という考え方

    これは、

    soft release(ソフトリリース)

    と呼ばれる方法です。

    人間の管理下から、

    いきなり完全な野生へ移すのではない。

    まず、

    これから暮らす場所に慣れてもらう。

    気温。

    植物。

    地面。

    匂い。

    雨。

    その土地そのものを覚える。

    そして、

    囲いを開ける。

    カメは、

    自分の意思で外へ歩いていきます。

    カメに発信器を付ける

    放したら、

    それで終わりではありません。

    再導入個体の一部には、

    VHF無線発信器やGPSロガーが装着されました。

    どこへ歩くのか。

    どのくらい移動するのか。

    生き残っているのか。

    どの環境を利用するのか。

    そうした情報を調べます。

    人間の視界から消える。

    でも、

    完全には見失わない。

    それが、

    次に何千匹ものカメを戻すためのデータになります。

    2024年、さらに1,000匹

    取り組みは、

    最初の1,000匹で終わりませんでした。

    2024年5月23日。

    World Turtle Day。

    TSAは、

    さらに1,000匹のホウシャガメを、マダガスカル南西部の地域保護林へ放しました。

    この個体たちも、放流前に健康評価を受け、

    6か月間の隔離期間を経ています。

    2018年に押収された膨大な数のカメたちが、

    少しずつ、

    森へ帰り始めています。

    最終目標は2万匹以上

    TSAは、

    保護下にいるホウシャガメのうち、

    2万匹以上を将来的に野生へ戻す

    という大規模な計画を掲げています。

    2万匹。

    想像するのも難しい数です。

    でも、

    そもそもそれほど多くのカメが、

    人間によって森から持ち出されました。

    だから、

    今度は逆の流れを作ろうとしています。

    森から人間へ。

    ではなく、

    人間から森へ。

    カメだけ戻しても意味がない

    ただし、

    森が安全でなければ、

    2万匹戻しても意味がありません。

    もう一度捕られるかもしれない。

    生息地が失われるかもしれない。

    だから再導入地は、

    地域住民自身が管理する保護林

    として整備されています。

    カメを運ぶだけではない。

    森を守る。

    地域住民と話す。

    監視する人を育てる。

    地域の暮らしと保全を両立させる。

    そこまで作ってから、

    カメを戻します。

    人間がいるから減った。でも、人間がいるから戻せる

    今回のニュースには、

    少し不思議なところがあります。

    ホウシャガメを減らした大きな原因の一つは、

    人間です。

    人間が捕った。

    人間が売った。

    人間が森を変えた。

    でも、

    今ホウシャガメを戻しているのも、

    人間です。

    警察。

    獣医師。

    飼育スタッフ。

    研究者。

    地域住民。

    政府。

    動物園。

    世界中の人が関わっています。

    人間が原因だから、

    人間は何もしないほうがいい。

    ではない。

    壊した側だからこそ、戻す仕事もできる。

    そんな例だと思います。

    京都市動物園にも「密輸から救われたホウシャガメ」がいる

    この話は、

    遠いマダガスカルだけの話でもありません。

    京都市動物園が飼育しているホウシャガメの中にも、

    日本へ密輸される途中、空港で摘発されて保護された個体がいます。

    日本にも、

    違法取引の終着点になった歴史があります。

    「珍しいカメを飼いたい」

    という需要は、

    地球の反対側の野生個体群につながっています。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番注目したいのは、

    保護されたカメを、ずっと「保護されたカメ」のままにしないことです。

    10,976匹。

    押収する。

    助ける。

    それだけでも、

    とてつもない仕事です。

    でも、

    そこで終わらなかった。

    何年も育てる。

    健康を戻す。

    森を探す。

    地域住民と一緒に守る仕組みを作る。

    順応させる。

    囲いを開ける。

    そして、

    一匹ずつ歩いていく。

    人間から遠ざかっていく。

    僕は、

    そこがすごくいいと思います。

    カメを救った証拠は、

    人間の飼育施設に何万匹いることではない。

    人間がどこにいるのか分からなくなるくらい、森へ散らばっていくこと。

    それが最終的な成功なんじゃないかな。

    湯川亀吉の一言

    人間はクズってことだな。
    密猟するやつも、保護するやつも、同じクズだ。

    出典

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「Radiated Tortoise Press Release 2018」
    2018年4月の10,976匹の大量押収と救護活動について。
    URL:
    https://shop.turtlesurvival.org/blogs/news/radiated-tortoise-press-release-2018/

    San Diego Zoo Wildlife Alliance
    「Turtle Survival Alliance Leads Rescue Mission to Save 10,976 Critically Endangered Radiated Tortoises Discovered in Massive Poaching Bust」
    2018年4月19日。
    URL:
    https://sandiegozoowildlifealliance.org/story-hub/2018/04/19/turtle-survival-alliance-leads-rescue-mission-to-save-10976-critically

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「1,000 Radiated Tortoises Return to the Wild」
    2021年8月9日。最初の大規模野生復帰計画について。
    URL:
    https://shop.turtlesurvival.org/blogs/news/1000-radiated-tortoises-return-to-the-wild

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「1,000 Radiated Tortoises Released on World Turtle Day®」
    2024年6月4日。2回目の1,000匹規模の放流について。
    URL:
    https://turtlesurvival.org/1000-radiated-tortoises-released-on-world-turtle-day/

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「Species Spotlight: Radiated Tortoise」
    大量押収、保全繁殖、野生復帰について。
    URL:
    https://turtlesurvival.org/turtleoftheweek-radiated-tortoise/

    Smithsonian’s National Zoo and Conservation Biology Institute
    「Radiated tortoise」
    形態、生息地、食性、保全状況について。
    URL:
    https://nationalzoo.si.edu/animals/radiated-tortoise

    京都市動物園
    「ホウシャガメ/Radiated Tortoise」
    和名、分布、形態について。
    URL:
    https://zoo.city.kyoto.lg.jp/zoo/animals/g_radiata

  • 【世界の亀ニュース】112年ぶりに現れた幻のゾウガメ 絶滅したと思われたフェルナンディナゾウガメ「フェルナンダ」

    【世界の亀ニュース】112年ぶりに現れた幻のゾウガメ 絶滅したと思われたフェルナンディナゾウガメ「フェルナンダ」

    今回は、エクアドル・ガラパゴス諸島で、100年以上絶滅したと考えられていたフェルナンディナゾウガメが再発見されたニュースを紹介します。

    一匹の雌。

    名前は、

    Fernanda(フェルナンダ)。

    2019年に見つかったこの一匹によって、

    「すでに絶滅した」

    と思われていた種の歴史が、もう一度動き始めました。

    今回のニュース

    2019年2月、ガラパゴス諸島のフェルナンディナ島で、一匹の雌の巨大なリクガメが発見されました。

    発見したのは、ガラパゴス国立公園とGalápagos Conservancyの調査チームです。

    フェルナンディナ島で、その島固有のゾウガメが最後に正式に確認されたのは1906年。

    つまり、

    112年以上にわたって、生きた個体が確認されていなかった場所で見つかった一匹でした。

    しかし、発見しただけでは、

    「フェルナンディナゾウガメが生き残っていた」

    とは断定できませんでした。

    なぜなら、

    その一匹の姿が、1906年に採集された唯一の標本とかなり違っていたからです。

    どこの国・地域の話か

    国:エクアドル
    地域:ガラパゴス諸島
    島:フェルナンディナ島
    再発見:2019年2月
    遺伝学的な確認:2021〜2022年
    対象種:フェルナンディナゾウガメ
    学名:Chelonoidis phantasticus
    情報の種類:リクガメ・再発見・遺伝子解析・絶滅危惧種・保全

    フェルナンディナ島は、ガラパゴス諸島西部に位置する火山島です。

    島の中心には活火山があり、溶岩地帯が広がる非常に厳しい環境です。科学論文では、フェルナンディナ島は地球上でも特に原始的な自然が残された大きな島の一つとして紹介されています。

    登場する亀

    今回の主役は、

    フェルナンディナゾウガメ。

    学名は、

    Chelonoidis phantasticus。

    英語ではFernandina Giant Tortoise、Fernandina Island Galápagos Tortoiseなどと呼ばれています。

    日本でも「フェルナンディナゾウガメ」という和名が使われています。

    ガラパゴスゾウガメの仲間ですが、フェルナンディナ島だけに成立した独自の系統です。

    すべては1906年の一匹から始まった

    この種について科学者が持っていた証拠は、長い間ほとんど一つしかありませんでした。

    1906年。

    California Academy of Sciencesの探検隊に参加していたRollo Beckが、フェルナンディナ島で一匹の雄のゾウガメを採集します。

    その個体が、

    フェルナンディナゾウガメとして知られる唯一の確実な標本

    になりました。

    その雄は非常に特徴的な甲羅を持っていました。

    甲羅前方が大きく持ち上がった、

    いわゆる鞍型(サドルバック型)。

    さらに縁甲板も大きく張り出していました。

    科学論文では、その形態は他のガラパゴスゾウガメと比較しても非常に特徴的だったとされています。

    ところが、

    その後、同じカメが見つからない。

    100年以上、姿を見せなかった

    1906年以降、生きたフェルナンディナゾウガメが正式に確認されることはありませんでした。

    ただし、

    完全に何の証拠もなかったわけではありません。

    その後の調査では、

    ゾウガメらしい糞。

    歩いた跡。

    植物を食べた痕跡。

    などが何度か見つかっていました。

    つまり、

    「もしかしたら、まだいるのではないか」

    という疑いは残っていた。

    でも、

    カメそのものが見つからない。

    フェルナンディナ島には広大な溶岩地帯があります。

    足場は悪い。

    気温は高い。

    植生の濃い場所もある。

    人間が島全体をくまなく探すことは簡単ではありません。

    2019年、一匹の雌が現れた

    そして2019年。

    調査チームがフェルナンディナ島へ入りました。

    その中で、

    Washington Tapia氏とガラパゴス国立公園レンジャーのJeffreys Málaga氏らが、一匹の雌のゾウガメを発見します。

    100年以上見つからなかった島で、

    本当にゾウガメがいた。

    巨大なニュースでした。

    この雌には、島の名前Fernandinaから、

    Fernanda

    という愛称が付けられました。

    でも、姿が違った

    ところが問題があります。

    フェルナンダは、

    1906年の雄とあまり似ていませんでした。

    1906年の標本は、非常に強いサドルバック型。

    一方のフェルナンダは、

    それほど極端な形をしていません。

    さらに体も比較的小さい。

    そのため、

    別のガラパゴスゾウガメが過去に人間によってフェルナンディナ島へ運ばれ、その子孫が残っていた可能性も否定できませんでした。

    つまり、

    島で見つかったからといって、

    フェルナンディナゾウガメとは限らなかった。

    113年前の標本とDNAを比較する

    そこで科学者が使ったのが、

    DNAです。

    フェルナンダから遺伝情報を取得する。

    そして比較対象にしたのが、

    1906年に採集された雄の博物館標本でした。

    100年以上前のカメと、

    今生きているカメ。

    そのゲノムを比較します。

    さらに、他のガラパゴスゾウガメ各系統のゲノムとも比較しました。

    結果は「同じ系統」

    2022年6月9日。

    科学誌Communications Biologyに論文が発表されました。

    タイトルは、

    “The Galapagos giant tortoise Chelonoidis phantasticus is not extinct”

    つまり、

    「フェルナンディナゾウガメは絶滅していない」

    です。

    ゲノム解析の結果、

    フェルナンダと1906年の雄は、

    同じフェルナンディナ島固有の系統に属することが確認されました。

    しかも、その系統は他のガラパゴスゾウガメとは遺伝的に区別されていました。

    一匹のカメによって、

    100年以上前に止まっていた種の記録がつながりました。

    見た目が違っても、同じ種だった

    この結果はとても面白いと思います。

    1906年の雄とフェルナンダ。

    甲羅の形はかなり違う。

    でもDNAでは、

    同じ系統だった。

    つまり、

    一匹の標本だけを見て、

    「この種類は必ずこの形」

    と考えることには危険があります。

    性別。

    年齢。

    生活環境。

    栄養状態。

    個体差。

    さまざまな要因によって、生き物の形は変化します。

    実際、研究者はフェルナンダが比較的小さい理由について、島の限られた植生環境によって成長が抑えられた可能性も指摘しています。

    「一匹見つかった」は復活ではない

    ここで終われば、

    「絶滅したカメが復活した!」

    という、とても明るい話になります。

    でも、

    実際にはもっと厳しい。

    フェルナンダは、

    確認されている唯一の生きたフェルナンディナゾウガメです。

    一匹だけでは、

    次の世代を作れません。

    必要なのは、

    もう一匹。

    特に繁殖可能な雄です。

    島中で仲間を探す

    フェルナンダが見つかったあと、ガラパゴス国立公園とGalápagos Conservancyは、何度もフェルナンディナ島へ調査隊を送りました。

    目的はただ一つ。

    フェルナンダの仲間を探すこと。

    2022年の大規模調査では18人のチームが島へ入り、約65平方キロメートルを捜索しました。

    火山島。

    溶岩。

    暑さ。

    険しい地形。

    そこを歩きながら、

    カメを探します。

    「いる」痕跡はある

    興味深いことに、

    フェルナンダ以外のカメがいる可能性を示す痕跡は見つかっています。

    歩いた跡。

    糞。

    カメが休んだような場所。

    Galápagos ConservancyのWashington Tapia氏は、こうした痕跡から少なくとも数匹が島にいる可能性を考えていました。

    しかし、

    実物が見つからない。

    痕跡はある。

    でもカメがいない。

    フェルナンディナ島は、

    今でも答えを簡単には見せてくれません。

    2023年になっても、仲間は見つからなかった

    2023年12月、Galápagos Conservancyはフェルナンダについて改めて報告しています。

    それまで実施された大規模な調査でも、

    新たなフェルナンディナゾウガメは確認できませんでした。

    そのためフェルナンダが、この種の最後の一匹、いわゆるendlingである可能性も現実味を帯びています。

    かつてピンタゾウガメの最後の一匹、

    「ロンサム・ジョージ」

    が歩いた道と重なります。

    「絶滅していなかった」と「助かった」は違う

    今回のニュースで重要なのは、

    この二つを分けることだと思います。

    絶滅していなかった。

    これは事実です。

    でも、

    種が救われた。

    これはまだ言えません。

    一匹見つかっただけだからです。

    もしフェルナンダ以外の個体が本当にいなければ、

    彼女がどれだけ長く生きても、

    その先で系統は途切れます。

    だから、

    再発見はゴールではない。

    むしろ、

    そこから保全が始まります。

    博物館の一匹が、100年後に役立った

    もう一つ注目したいのが、

    1906年の標本です。

    100年以上前、

    一匹の雄が採集されました。

    その個体はもう生きていません。

    でも、

    標本として残っていた。

    そのDNAがあったから、

    2019年に見つかったフェルナンダの正体を確かめることができました。

    昔の博物館資料が、

    100年以上後の絶滅危惧種保全に使われたことになります。

    標本は、

    ただ昔の生き物を展示するものではない。

    未来の科学者がまだ想像していない方法で、

    情報を取り出せる「記録」でもあります。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番面白いと思うのは、

    「見つからない」と「いない」は同じではない

    というところです。

    1906年。

    一匹見つかる。

    それから100年以上、

    見つからない。

    普通なら、

    もういないと思う。

    それでも、

    糞がある。

    足跡がある。

    何かがおかしい。

    そして2019年。

    本当に一匹出てきた。

    亀という動物は、

    人間が思っている以上に、

    見つからないまま生きることができるのかもしれません。

    しかも舞台は、

    巨大な火山島。

    もしかすると、

    今この瞬間も、

    人間がまだ見つけていないフェルナンディナゾウガメが、

    溶岩の向こう側を歩いているのかもしれません。

    その可能性がゼロではない。

    僕はそこに、このニュースの魅力を感じます。

    湯川亀吉の一言

    人間の本質はクソだってことがよくわかったよ。

    ま、俺が世界で一番クソだけどね。

    出典

    Communications Biology / Nature
    「The Galapagos giant tortoise Chelonoidis phantasticus is not extinct」
    2022年6月9日。フェルナンダと1906年標本の全ゲノム解析を行った科学論文。

    Galápagos Conservancy
    「Breaking: Female Tortoise Found on Fernandina Island」
    2019年2月19日。フェルナンダ発見時の公式発表。

    Galápagos Conservancy
    「Publication Confirms Fernanda as Fernandina Giant Tortoise」
    DNA解析によってフェルナンダの種が確認されたことを紹介。

    Princeton University
    「’Fantastic giant tortoise,’ believed extinct, confirmed alive in the Galápagos」
    2022年6月9日。ゲノム研究とフェルナンダの再発見について。

    Galápagos Conservancy
    「The Enigma Of Fernanda – A Lone Survivor In Galápagos」
    2023年12月19日。仲間を探す調査とフェルナンダの状況について。

  • 【亀ニュースアーカイブ】絶滅したと思われたフェルナンディナゾウガメ、100年以上ぶりに発見

    【亀ニュースアーカイブ】絶滅したと思われたフェルナンディナゾウガメ、100年以上ぶりに発見

    2019年2月、エクアドルのガラパゴス諸島にあるフェルナンディナ島で、一匹の雌のゾウガメが発見されました。

    この島に固有のフェルナンディナゾウガメは、1906年に一匹の雄が採集されて以来、100年以上も生きた個体が確認されず、絶滅したと考えられていました。発見された雌は、島の名前にちなんで「フェルナンダ」と名付けられました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:エクアドル、ガラパゴス諸島、フェルナンディナ島
    元記事の言語:英語
    発見時期:2019年2月
    遺伝的確認:2022年
    情報の種類:過去アーカイブ・再発見・研究・絶滅危惧種

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、フェルナンディナゾウガメです。

    学名はChelonoidis phantasticus。フェルナンディナ島だけに生息していたとされるガラパゴスゾウガメの一種です。

    長いあいだ科学的に知られていたのは、1906年に採集され、博物館に保存された雄の標本一匹だけでした。

    ニュースの要約

    2019年の調査で発見されたフェルナンダは、サンタクルス島にあるガラパゴス国立公園の繁殖施設へ移され、血液や遺伝情報の調査が行われました。

    しかし、フェルナンダの姿は、1906年に採集された雄の標本とは大きく異なっていました。

    雄の標本は、甲羅の前方が大きく持ち上がった、非常に特徴的な鞍型の甲羅を持っていました。一方、フェルナンダは体が小さく、甲羅も比較的なめらかだったため、本当に同じ種類なのか疑問視する研究者もいました。限られた植物しかない火山島で成長したため、発育が抑えられた可能性も考えられています。

    研究チームは、フェルナンダと1906年の標本から得たゲノムを比較しました。

    その結果、二匹は同じ系統に属し、ほかのガラパゴスゾウガメとは遺伝的に異なることが確認されました。フェルナンディナゾウガメは、絶滅していなかったのです。

    たった一匹なのか

    フェルナンディナ島では、ゾウガメらしい足跡や糞など、ほかの個体が存在する可能性を示す痕跡も報告されました。けれど、その後も生きた別個体は確認されていません。2025年時点でも、フェルナンダはこの種で唯一確認されている生存個体です。

    フェルナンディナ島は、広大な溶岩原が広がる火山島です。鋭い溶岩が島の内部への移動を妨げるため、調査は非常に困難です。人間がまだ到達できていない場所に、別のゾウガメが生きている可能性も完全には否定できません。

    なぜ今、このニュースを紹介するのか

    このニュースが発生したのは2019年ですが、絶滅と再発見について考えるうえで、とても重要な記録です。

    人間が「絶滅した」と判断したあとも、フェルナンダは火山島のどこかで生き続けていました。

    誰にも見つからず、仲間がいるかどうかもわからない場所で、何十年もの時間を生きていた。

    存在を確認できないことと、存在していないことは、同じではありません。

    世界のどこかには、僕たちが失ったと思い込んでいるだけで、今も静かに生きている亀がいるのかもしれません。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、一匹の亀が、種の絶滅という判断を覆したことです。

    1906年の標本と、2019年に発見されたフェルナンダ。

    科学的に確認されているのは、わずか二匹です。しかも二匹が生きていた時代は重なっていません。

    それでも、博物館に残された100年以上前の標本と、現代の一匹の遺伝情報を比較することで、失われたと思われていた種の存在が証明されました。

    古い標本も、現在を生きる一匹も、未来の保護につながる重要な記録なのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    絶滅したと思われていた亀が、火山島の奥で見つかった。

    ロマンが溢れてやがるぜ。

    出典

    Galápagos Conservancy「Breaking: Female Tortoise Found on Fernandina Island」

    Princeton University「“Fantastic giant tortoise,” believed extinct, confirmed alive in the Galápagos」

    Galápagos Conservancy「Publication Confirms Fernanda as Fernandina Giant Tortoise