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  • 【世界の亀ニュース】米西海岸で史上初のウミガメ産卵 ヒメウミガメはなぜカリフォルニアの浜を選んだのか?

    【世界の亀ニュース】米西海岸で史上初のウミガメ産卵 ヒメウミガメはなぜカリフォルニアの浜を選んだのか?

    2026年9月16日。

    アメリカ・カリフォルニア州。

    ロサンゼルスの南にある、

    Seal Beach(シールビーチ)。

    砂浜へ、一匹のウミガメが上がってきました。

    穴を掘る。

    卵を産む。

    砂をかける。

    そして、

    海へ戻っていく。

    世界各地の熱帯の海岸なら、

    珍しくない光景かもしれません。

    でも、

    ここはカリフォルニア。

    しかも、

    アメリカ西海岸です。

    産卵していたのは、

    ヒメウミガメ
    Lepidochelys olivacea
    。

    NOAA Fisheriesによると、

    これは、

    アメリカ西海岸で記録された、あらゆるウミガメを含めて史上初の自然産卵

    だといいます。

    つまり、

    ヒメウミガメだけの初記録ではありません。

    アオウミガメでも、

    アカウミガメでも、

    オサガメでもない。

    「ウミガメがアメリカ西海岸で自然に産卵した」という出来事そのものが初めて確認された。

    かなり大きなニュースです。

    今回のニュース

    最初の産卵が確認されたのは、

    2026年9月16日。

    場所は、

    カリフォルニア州オレンジ郡のシールビーチ周辺。

    雌のヒメウミガメが砂浜へ上陸し、

    巣穴を掘って産卵する様子が確認されました。

    そして、

    その3日後。

    今度は数km離れた、

    Huntington Beach(ハンティントンビーチ)

    でもウミガメが上陸。

    現地報道では、こちらでも産卵が確認されています。

    同じ雌が二度産卵した可能性もありますが、NOAAは少なくとも当初、

    同一個体か別個体かは確定していない

    としていました。

    つまり現在確認されているのは、

    一匹かもしれない。

    二匹かもしれない。

    でも、

    少なくとも二つの産卵地点が現れた。

    ここが重要です。

    どこの国・地域の話か

    国:アメリカ合衆国
    州:カリフォルニア州
    郡:オレンジ郡
    最初の場所:Seal Beach周辺
    最初の確認日:2026年9月16日
    その後の確認:Huntington Beach周辺
    種類:ヒメウミガメ
    学名:Lepidochelys olivacea
    英名:Olive Ridley Sea Turtle
    ニュースの種類:産卵記録・分布・生態・海洋環境

    主役は「ヒメウミガメ」

    今回のカメは、

    ヒメウミガメ。

    学名、

    Lepidochelys olivacea。

    NOAAによると、

    世界のウミガメの中では小型の種類で、

    成体でも体重はおよそ100ポンド、

    約45kgまで。

    甲長は、

    およそ60〜75cmほどです。

    甲羅は名前の通り、

    オリーブ色から灰緑色。

    上から見ると、

    少しハート型に見える甲羅を持っています。

    日本語名の「ヒメ」も、

    比較的小型のウミガメであることから来ています。

    でも、ものすごく遠くまで泳ぐ

    小さいから、

    行動範囲も小さい。

    ――わけではありません。

    ヒメウミガメは、

    熱帯を中心に、

    太平洋。

    インド洋。

    大西洋。

    という、

    非常に広い海域に分布しています。

    外洋性が強く、

    岸から数千km離れた場所で確認されることもあります。

    NOAAは東太平洋での分布を、

    南カリフォルニアからチリ北部

    までとしています。

    つまり、

    カリフォルニア沖にヒメウミガメがいること自体は、

    完全な異常ではありません。

    問題は、

    そこで産卵したこと。

    です。

    海にいることと、卵を産むことは全然違う

    ウミガメは、

    海の中なら広い範囲を移動できます。

    餌を探す。

    海流に乗る。

    水温の高い海域へ移動する。

    だから、

    本来の主要産卵地からかなり離れた場所で見つかることがあります。

    でも、

    産卵となると話が違います。

    雌は、

    砂浜へ上がる。

    穴を掘る。

    卵を産む。

    そして、

    卵は何週間も砂の中で発生しなければなりません。

    つまり産卵地には、

    海だけでなく、

    砂の温度、湿度、地形、波、高潮など、さまざまな条件

    が必要になります。

    だから、

    「泳いできた」

    と、

    「ここで子孫を残そうとした」

    の間には、

    大きな違いがあります。

    普段はどこで産卵している?

    東太平洋のヒメウミガメの主要な産卵地は、

    もっと南にあります。

    メキシコ。

    ニカラグア。

    コスタリカ。

    パナマ。

    特に有名なのが、

    メキシコのLa Escobilla。

    NOAAによれば、

    ここでは推定約45万匹もの雌が産卵に参加します。

    コスタリカの主要産卵地でも、

    大規模な繁殖集団が知られています。

    それに対して、

    カリフォルニア。

    今まで、

    産卵記録はありませんでした。

    NOAAも今回、

    ヒメウミガメは暖かい海流に伴って南カリフォルニアで時折見られるものの、

    アメリカ本土で産卵した記録はこれまでなかった

    と説明しています。

    ヒメウミガメには二つの産卵方法がある

    このカメには、

    面白い特徴があります。

    産卵方法が、

    一つではありません。

    一つは、

    普通のウミガメと同じ、

    単独産卵。

    そしてもう一つが、

    ヒメウミガメで有名な、

    Arribada(アリバダ)。

    スペイン語で、

    「到着」

    という意味です。

    数百。

    数千。

    場所によっては、

    何万匹もの雌が、

    ほぼ同時に砂浜へ押し寄せます。

    夜の砂浜が、

    ウミガメで埋め尽くされる。

    世界でも特に壮観なウミガメの繁殖行動です。

    この集団産卵を行うのは、

    ヒメウミガメとケンプヒメウミガメを含むLepidochelys属だけです。

    今回のカリフォルニア産卵は、

    もちろんアリバダではありません。

    一匹あるいは少数の雌による、

    単独産卵

    です。

    一つの巣にはどれくらい卵がある?

    ヒメウミガメは一般に、

    一度の産卵で、

    およそ100個前後の卵を産みます。

    NOAAは、

    一頭の雌が1シーズンに1〜3回産卵することがあるとしています。

    今回のカリフォルニアの巣については、

    現地報道では、

    一つの巣に推定50〜100個程度

    とされています。

    孵化までの期間は、

    およそ、

    45〜60日。

    だから、

    2026年9月中旬に産まれた卵なら、

    順調に発生すれば、

    10月末から11月ごろに何らかの動きが見られる可能性があります。

    ただし現時点では、

    実際に孵化するかどうかはまだ分かりません。

    ここからが、一番面白い

    なぜ、

    この雌は、

    カリフォルニアを選んだのでしょう。

    これまで産卵記録がなかった場所です。

    間違えたのか。

    海流に運ばれたのか。

    昔から稀に産卵していたけれど、

    人間が見つけていなかっただけなのか。

    それとも、

    海の環境そのものが変わり始めているのか。

    今は、

    分かりません。

    でも、

    ここで一つ、

    非常に気になることがあります。

    2026年のカリフォルニア沖は暖かい

    NOAA Fisheriesは、

    9月3日の時点で、

    南・中央カリフォルニア沖の海水温が異常に高い

    と報告していました。

    ただし、

    ここは重要です。

    NOAAは、

    その高水温について、

    2026年のエルニーニョそのものが直接原因ではなく、

    それ以前から続いている海洋熱波の影響

    だと説明しています。

    同時に、

    2026年6月には熱帯太平洋でエルニーニョが成立しており、

    今後その影響がアメリカ西海岸へ及ぶ可能性をNOAAが監視しています。

    つまり、

    「エルニーニョだからヒメウミガメが産卵した」

    とは、

    現時点では言えません。

    ここを結び付けて断定するのは早すぎます。

    でも、

    普段より暖かい海と、史上初の産卵記録が同じ年に起きた。

    これは、

    今後研究する価値のある現象です。

    暖かければ、北へ産卵地が広がるのか?

    単純に考えると、

    そう思ってしまいます。

    海が暖かくなる。

    南のカメが北へ来る。

    そこで産卵する。

    でも、

    自然はそんなに単純ではありません。

    ウミガメの繁殖には、

    海水温だけでなく、

    砂の温度。

    湿度。

    潮位。

    産卵浜の幅。

    嵐。

    捕食者。

    人工照明。

    そして、

    雌自身の出生地への帰巣行動。

    たくさんの要素が関係します。

    今回一匹が産卵したからといって、

    カリフォルニアが新しい産卵地になった

    とは言えません。

    一匹が産んだだけでも意味がある

    とはいえ、

    こういう偶発的な産卵は、

    長い時間で見ると非常に重要かもしれません。

    NOAAは過去、

    ハワイ・オアフ島で稀なヒメウミガメの産卵が確認された際、

    こうした通常と異なる場所への産卵が、

    将来的に新しい繁殖地が形成される一つの方法になり得る

    と説明しています。

    一匹の雌が、

    いつもと違う浜へ行く。

    卵を産む。

    その子ガメの一部が成長する。

    何十年後。

    その雌たちが、

    同じ浜へ帰ってくる。

    また産む。

    これが何世代も続けば、

    やがて、

    そこが「産卵地」になります。

    もちろん、

    今回のカリフォルニアでそうなるかどうかは、

    誰にも分かりません。

    むしろ現時点では、

    一度きりの非常に珍しい出来事

    として見るべきです。

    だから、この巣は「未来」を含んでいる

    僕は、

    今回のニュースの面白さは、

    卵そのものにもあると思います。

    もし孵化したとしても、

    その子ガメたちが成熟するまでには、

    長い時間がかかります。

    海へ出る。

    広い太平洋を生きる。

    大部分は、

    成熟する前に死ぬ。

    でも、

    もし何匹かが生き残ったら。

    そして、

    雌が、

    生まれた浜へ戻ってきたら。

    今回のニュースの続きは、

    2026年ではなく、

    2040年代、2050年代

    に起こるかもしれません。

    僕たちは、

    答えを見ることができるかもしれない。

    もう一つ気になること――昼間に上陸した

    今回確認された雌は、

    行動にも少し変わった点がありました。

    NOAA関係者は現地メディアに、

    通常は夜間に産卵することが多いヒメウミガメが、

    今回、

    日中から日没近くに上陸した

    と説明しています。

    なぜなのか。

    これも、

    まだ分かりません。

    初めての場所だったからなのか。

    個体差なのか。

    水温や潮のタイミングなのか。

    単なる偶然なのか。

    分からないことが、

    また一つ増えました。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで、

    僕が一番注目したいのは、

    「分布」と「繁殖地」は固定された地図ではない

    ということです。

    図鑑を見る。

    分布図を見る。

    ここまでが生息域。

    ここが産卵地。

    線が引いてある。

    でも、

    カメは、

    その線を知りません。

    海流が変わる。

    水温が変わる。

    一匹の雌が、

    いつもと違う方向へ泳ぐ。

    そして、

    地図の外側へ上がる。

    穴を掘る。

    卵を産む。

    その瞬間、

    人間が作っていた地図に、

    新しい一点

    が加わります。

    自然の分布図は、

    完成した地図ではない。

    今も、

    書き換わっている。

    今回のヒメウミガメは、

    それを見せてくれた気がします。

    湯川亀吉の一言

    ウミガメ飼ってみたいね。

    出典

    NOAA Fisheries — Olive Ridley Turtle
    ヒメウミガメの形態、世界分布、東太平洋の主要産卵地、アリバダ、繁殖などの基本情報。
    NOAA Fisheriesのヒメウミガメ解説を見る

    NOAA Fisheries West Coast発表を基にした報道
    2026年9月16日のSeal Beachでの産卵が、米国西海岸における史上初の自然産卵記録であること、3日後の別の上陸、孵化期間など。

    ABC7 Los Angeles
    二つの産卵地点、日中〜日没付近の上陸、推定卵数などについてNOAA Fisheries関係者に取材。
    ABC7の現地報道を見る

    NOAA Fisheries — West Coast Ocean Conditions
    2026年9月時点の南・中央カリフォルニア沖の異常高水温と、海洋熱波・エルニーニョの関係について。
    NOAAの西海岸海洋環境解説を見る

  • 【世界の亀ニュース】30年ぶりにガンジス川へ 20匹のニシキセタカガメが始める「失われた個体群」の再建

    【世界の亀ニュース】30年ぶりにガンジス川へ 20匹のニシキセタカガメが始める「失われた個体群」の再建

    今回は、インドを代表する大河川・ガンジス川で始まった、絶滅寸前の淡水ガメを復活させる取り組みを紹介します。

    主役は、

    ニシキセタカガメ。

    学名は、

    Batagur kachuga。

    英語では、

    Red-crowned Roofed Turtle

    と呼ばれています。

    かつてはガンジス川流域の広い範囲に生息していました。

    しかし、成体や卵の捕獲、漁業、砂の採取、ダムによる水位変化、河岸の農地化などによって急減。

    現在、野生でまとまった個体群が残っているのは、ほぼチャンバル川だけになっています。2026年に報じられた最新の整理では、チャンバル川に残る成体は1,000匹未満、そのうち繁殖可能な雌は約500匹と推定されています。

    そして2025年。

    人間は、このカメを、

    「まだ残っている場所で守る」

    だけではなく、

    「消えてしまった川へ戻す」

    段階へ進みました。

    今回のニュース

    2025年4月26日。

    インド・ウッタルプラデシュ州のGarhaita Turtle Conservation Centerで育てられた20匹のニシキセタカガメが、ガンジス川水系のHaiderpur Wetland周辺へ移されました。

    インド政府による公式発表は、この取り組みを、

    ニシキセタカガメを約30年ぶりにガンジス川へ戻す再導入

    として紹介しています。

    20匹には、

    音響発信器(acoustic / sonic transmitter)

    が取り付けられました。

    つまり、放したあとも、

    どこへ泳ぐのか。

    どこに留まるのか。

    生き残れるのか。

    湿地と川をどのように利用するのか。

    その動きを追跡できます。

    調査は今後約2年間続けられる計画です。

    どこの国・地域の話か

    国:インド
    州:ウッタルプラデシュ州
    水系:ガンジス川
    主な放流地域:Haiderpur Wetland Complex周辺
    放流日:2025年4月26日
    対象種:ニシキセタカガメ
    学名:Batagur kachuga
    英名:Red-crowned Roofed Turtle
    情報の種類:淡水ガメ・再導入・ヘッドスタート・テレメトリー・河川保全・絶滅危惧種

    日本の環境省資料でも、Batagur kachugaには**「ニシキセタカガメ」**という和名が使われています。

    登場する亀

    ニシキセタカガメは、イシガメ科バタグールガメ属の大型淡水ガメです。

    大きな雌では甲長50cmを超えることがあり、大河川に適応したかなり立派なカメです。インド政府のガンジス川保全資料では、甲長は最大約56cm、体重は最大約25kgと紹介されています。

    でも、このカメで何より目を引くのは、

    オスの顔です。

    繁殖期になると、成熟したオスの頭部には赤、黄、白、青などの鮮烈な色彩が現れます。

    特に頭頂部が鮮やかな赤色になるため、

    Red-crowned=赤い冠を持つ

    という英名が付いています。

    一方、雌はずっと落ち着いた灰褐色〜オリーブ系の色彩。

    同じ種類とは思えないほど印象が違います。

    今後ヒーロー画像を作るなら、繁殖期の雄を描くか、雌を描くかで全く違う作品になる種類だね。

    かつてはガンジス川のカメだった

    ニシキセタカガメは、もともとガンジス川流域の広い範囲に生息していました。

    インドだけでなく、歴史的にはネパールやバングラデシュにも分布していたとされています。

    2026年のDown To Earthによる整理では、かつての分布域はガンジス川流域の主要河川・支流を含む、約40万平方キロメートル規模に及んでいました。

    つまり、

    もともとは、

    「チャンバル川だけの珍しいカメ」

    ではありませんでした。

    ガンジス川水系を代表する大型淡水ガメの一種だった。

    それが、ほとんどの地域から消えていきました。

    何がカメを消したのか

    原因は一つではありません。

    成体の捕獲。

    卵の採取。

    違法な国際ペット取引。

    漁網への混獲。

    砂の採掘。

    産卵する砂州での農業。

    ダムからの不規則な放水。

    河川環境そのものの変化。

    複数の圧力が重なりました。

    特にこのカメにとって重要なのが、

    砂州です。

    ニシキセタカガメの雌は春になると川から上がり、乾いた砂州へ穴を掘って卵を産みます。

    2026年の報告では、通常15〜20個ほどの卵を産み、約60〜65日の孵化期間を経て子ガメが川へ向かうとされています。

    つまり、

    川の水だけ守っても駄目。

    川の横にある砂まで必要なんです。

    1993年にはいた

    インド政府によると、1993年の調査ではBijnore Barrage周辺でニシキセタカガメが確認されていました。

    ところが、その後の調査では見つからなくなります。

    2020年にはHaiderpur Wetland周辺でカメ類の調査が行われました。

    9種類のカメが確認された。

    でも、

    ニシキセタカガメはいない。

    インド政府は2025年の再導入発表で、ガンジス川本流では約30年間、成体の確実な記録がなかったと説明しています。

    しかし、本当に完全に消えていたわけではなかった

    ここが面白いところです。

    2021年。

    ウッタルプラデシュ州Hapur地区で、

    一匹の成体雌

    が確認されました。

    さらに2023年。

    Bulandshahr地区のAhar村で、

    2つの巣

    が見つかります。

    27個の卵から、

    21匹の子ガメが孵化しました。

    つまり、

    ガンジス川から完全に絶滅していたわけではない可能性が出てきました。

    人間が見つけられないところで、

    わずかな個体が残っていた。

    少なくとも、

    産卵できる雌がいた。

    そして、

    繁殖も起きていた。

    でも、

    それだけで個体群が復活するとは限りません。

    最後の大きな砦はチャンバル川

    現在、このカメの生存を支えているのが、

    チャンバル川です。

    ガンジス川水系の支流で、National Chambal Sanctuaryという河川保護区があります。

    2024年の研究論文では、

    チャンバル川がニシキセタカガメの最後に知られる野生個体群を支えている

    とされています。

    そこでは2006年から、

    かなり大規模な保全活動が続いています。

    巣を探す

    毎年、

    2月から5月。

    保全チームが川沿いを歩きます。

    目的は、

    カメの巣。

    そのままでも安全な場所ならいい。

    でも、

    水位が上がれば沈みそうな巣。

    人に掘られる可能性がある巣。

    ジャッカルや野犬に襲われそうな巣。

    そうした危険な巣は、

    卵を慎重に回収します。

    そして、

    川沿いに設置された保護孵化場へ移します。

    6,500以上の巣

    2006年から2020年までの14繁殖シーズン。

    ニシキセタカガメと近縁のミスジセタカガメを合わせて、

    6,500以上の巣

    が保護されました。

    そして孵化した子ガメの多くは、

    その巣がもともとあった場所へ戻されます。

    2024年の論文によると、このプロジェクトを通じて両種合わせて12万匹以上の子ガメがチャンバル川へ放されています。

    とてつもない数です。

    でも、一部の子ガメだけは川へ戻さない

    孵化した子ガメをすぐ川へ戻す。

    それが基本です。

    でも、

    毎年その中から一部だけを選びます。

    その子たちは、

    すぐには放しません。

    保全施設で育てます。

    これが、

    head-starting=ヘッドスタート

    です。

    小さな子ガメは、

    魚や鳥など多くの捕食者に狙われます。

    そこで、

    ある程度大きくなるまで人間が育てる。

    体が大きくなり、

    捕食されにくくなってから川へ戻す。

    生存率を少しでも上げるための方法です。

    786匹を育てた

    2020年までに、

    この施設でヘッドスタートされたニシキセタカガメは、

    786匹。

    さらに近縁種のBatagur dhongokaも66匹が育てられました。

    2022年には、

    ヘッドスタートされたニシキセタカガメ100匹がチャンバル川へ放流されています。

    つまり、

    卵を守る。

    子ガメを生ませる。

    一部を育てる。

    川へ返す。

    この循環を、

    何年も何年も繰り返しています。

    そして次の段階へ

    ここまでは、

    残っている個体群を増やす保全でした。

    でも、

    2025年の20匹は意味が違います。

    放した場所は、

    最後の砦であるチャンバル川ではありません。

    かつて暮らしていたガンジス川水系。

    つまり、

    個体群を補強するのではなく、

    失われた分布域そのものを取り戻そうとしている。

    2024年の研究論文でも、長期目標としてニシキセタカガメを歴史的分布域へ再導入することが明記されていました。

    翌2025年、

    それが実際に始まりました。

    20匹を二つのグループに分ける

    今回の放流は、

    単純ではありません。

    20匹を、

    10匹ずつ二つのグループ

    へ分けました。

    一方は、

    Haiderpur Wetlandの堰より上流側。

    もう一方は、

    下流側のガンジス川本流。

    さらに報道では、それぞれ雄5匹・雌5匹で構成されたとされています。

    なぜ分けたのか。

    どちらの放流方法・環境のほうが再導入に適しているのかを比較するためです。

    「ソフト」と「ハード」を比べる

    インド政府は今回、

    soft releaseとhard releaseを比較する最初の再導入試験

    と説明しています。

    簡単に言えば、

    新しい環境へ少しずつ慣らしてから自由にする方法と、

    直接野生環境へ放す方法の違いです。

    どちらが良いかは、

    種類によっても、

    場所によっても変わります。

    だから、

    実際のカメを追跡して確かめます。

    20匹全員に発信器

    ここで重要になるのが、

    音響発信器です。

    カメが見えなくなっても、

    発信器から出る信号を追えば、

    移動を確認できます。

    2026年のDown To Earthによれば、初期の追跡では、放流個体について生存と分散に前向きな結果が得られていると報じられています。

    ただし、

    まだ始まったばかりです。

    本当の成功は、

    20匹が生きていることだけではありません。

    最終的には、人間が放さなくても増えること

    再導入されたカメが、

    ガンジス川で餌を見つける。

    生き残る。

    成長する。

    雄と雌が出会う。

    交尾する。

    雌が砂州へ上がる。

    巣を掘る。

    卵を産む。

    そして、

    人間が持ってきたのではない子ガメが、

    ガンジス川へ入る。

    そこまでいけば、

    ようやく、

    個体群の再建が始まった

    と言えるのだと思います。

    20匹を放すことは、

    ゴールではありません。

    本当の目的は、

    いつか、

    21匹目を人間が放さなくてもいい状態を作ることです。

    国際取引からも強く守られるようになった

    ニシキセタカガメは、

    IUCNレッドリストで**Critically Endangered(深刻な危機)**に分類されています。

    さらに2022年のCITES第19回締約国会議では、インドが提出した提案によって、国際取引規制を附属書IIから附属書Iへ強化することが全会一致で承認されました。現在のCITES附属書にもBatagur kachugaは附属書Iとして掲載されています。

    背景には、

    違法なペット取引があります。

    特に繁殖期の雄は、

    その異常なほど鮮やかな色彩から、

    コレクターの対象になってきました。

    実際、過去には複数個体がスーツケースへ詰め込まれ、国外へ運ばれようとして摘発された事件もあります。

    美しいことが、危険になる。

    野生動物では、

    何度も起きている問題です。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番面白いと思うのは、

    「守る場所を増やす」という考え方です。

    チャンバル川に、

    最後の個体群が残っている。

    だったら、

    そこだけを徹底的に守ればいい。

    そう考えることもできます。

    でも、

    一か所だけに全個体群が集中することには危険があります。

    大規模な洪水。

    水質事故。

    感染症。

    ダム。

    開発。

    たった一つの川で何かが起きれば、

    種全体が危険になる。

    だから、

    昔いた場所へ、

    もう一つの個体群を作る。

    さらに、

    もう一つ。

    そうやって、

    絶滅の危険を分散させる。

    僕は、

    今回の20匹は、

    単にカメを放した数字ではなく、

    「ニシキセタカガメの世界を、もう一度広げる最初の20匹」

    なんだと思います。

    湯川亀吉の一言

    ニシキセタカガメ、本当に欲しかったんだよ!

    広いスペースさえあれば買ってたのにな〜!

    ちくちょう!!

    自然界でどんどん増えて、また日本に輸出してくれ!!

    出典

    Government of India / Press Information Bureau・Ministry of Jal Shakti
    「Unique Success of the Namami Gange Mission: The Return of the Red-Crowned Roofed Turtle to the Ganga After Three Decades」
    2025年4月29日。20匹の再導入、音響発信器、2グループによる放流試験、約2年間の追跡について。
    インド政府の公式発表を見る

    Down To Earth
    「Turning turtle」
    2026年3月28日。過去の分布、現在のチャンバル川個体群、2021年の成体雌、2023年の巣、再導入後の状況などを整理。
    Down To Earthの記事を読む

    The Herpetological Bulletin
    「Conservation recovery of Batagur kachuga and Batagur dhongoka turtles in India: Development and operation of a head-starting facility」
    2024年。2006年からの巣保護、孵化場、ヘッドスタート、歴史的分布域への再導入計画についての研究論文。
    研究論文を見る

    India Turtle Conservation Program
    「Batagur Recovery Project along Chambal-Yamuna River」
    チャンバル川での巣保護、孵化、個体群減少、地域との連携について。
    保全プロジェクトを見る

    Turtle Survival Alliance
    「Red-crowned Roofed Turtles Get a Head Start in India」
    ヘッドスタート、巣の移設、孵化・放流と脅威について。
    TSAの記事を読む

    CITES
    2025年2月7日版の附属書。Batagur kachugaはAppendix Iに掲載。
    CITES附属書を見る

    環境省
    日本国内資料でBatagur kachugaの和名「ニシキセタカガメ」を確認。
    環境省資料を見る

  • 【世界の亀ニュース】100年ぶりに再発見されたカメを「未来の湿地」へ 気候変動から救うオーストラリアの移住計画

    【世界の亀ニュース】100年ぶりに再発見されたカメを「未来の湿地」へ 気候変動から救うオーストラリアの移住計画

    今回は、オーストラリア西部に生息する、世界でも特に希少な淡水ガメの保全活動を紹介します。

    学名は、

    Pseudemydura umbrina。

    日本の法令では、

    オーストラリアヌマガメモドキ

    という和名が使われています。

    一方、日本の爬虫類関連資料などでは、

    クビカシゲガメ

    という名前も使われています。

    このカメは、

    一度は絶滅したと思われました。

    再発見された。

    繁殖に成功した。

    1,000匹以上を野生へ戻した。

    普通なら、

    ここまででも大成功です。

    でも、

    問題が一つ残っていました。

    カメが暮らしてきた湿地そのものが、だんだん乾いている。

    そこで研究者たちは、

    過去にこのカメが生息していなかった、

    もっと南の、

    もっと涼しく、

    もっと長く水が残る湿地へ、

    カメを移し始めました。

    今回のニュース

    大きな転換点の一つが、2016年です。

    西オーストラリア州政府、Perth Zoo、University of Western Australiaなどの保全チームは、飼育下で繁殖した24匹のオーストラリアヌマガメモドキを、西オーストラリア州南西部の新しい候補地へ移しました。

    重要なのは、

    そこが単なる「別の放流場所」ではなかったことです。

    本来このカメが知られていた歴史的な分布域よりも、

    さらに南側。

    将来の気候変動を考え、

    より涼しく、

    より湿潤な環境を探して選ばれました。

    この方法は、

    assisted colonisation

    と呼ばれます。

    日本語なら、

    「人為的移住」

    「保全的移住」

    あるいは、

    「分布域外への計画的移送」

    に近い考え方です。

    どこの国・地域の話か

    国:オーストラリア
    州:西オーストラリア州
    従来の主な生息地域:パース近郊・スワン沿岸平野
    新たな移住候補地:西オーストラリア州南西部
    対象種:オーストラリアヌマガメモドキ
    学名:Pseudemydura umbrina
    英名:Western Swamp Tortoise / Western Swamp Turtle
    情報の種類:淡水ガメ・飼育下繁殖・野生復帰・気候変動・保全的移住

    現在、オーストラリア政府も本種の重要な保全策として、気候変動下でも生息可能な場所へ新しい個体群を作ることを挙げています。

    登場する亀

    オーストラリアヌマガメモドキは、

    ヘビクビガメ科に属する非常に小型の淡水ガメです。

    成体でも甲長はおよそ11〜13cm程度。

    体重は300〜450gほど。

    首は短く、

    頭頂部には大きな一枚の鱗板があります。

    足には水かきがあり、

    各足に5本の爪を持ちます。

    見た目は、

    派手ではありません。

    巨大でもない。

    奇抜な模様もない。

    茶色。

    黒。

    泥や湿地に溶け込むような小さなカメです。

    でも、

    進化的には非常に独特な存在です。

    Pseudemydura属で現在生きているのは、この一種だけ。

    オーストラリア政府の回復計画では、近縁のカメとは大きく異なる遺存的な系統であることが紹介されています。

    1839年、一匹だけ見つかった

    このカメの科学的な物語は、

    1839年に始まります。

    オーストリア人の博物学者Ludwig Preissが、西オーストラリアで一匹の標本を採集。

    その標本は、

    ウィーン自然史博物館へ送られました。

    しかし、

    その後が続きません。

    一匹も見つからない。

    何十年経っても、

    見つからない。

    1901年、

    博物館に保存されていた標本をもとに、

    Pseudemydura umbrina

    として正式に記載されます。

    でも、

    生きたカメが見つからない状態は続きました。

    100年以上、誰も見つけられなかった

    1839年から、

    1953年まで。

    114年間。

    新しい標本は確認されませんでした。

    そのため、

    このカメは絶滅したのではないかと考えられていました。

    そして1953年。

    物語が突然動きます。

    見つけたのは少年だった

    西オーストラリア州Upper Swan。

    そこで一匹の小さなカメを見つけたのは、

    Robert Boydという少年でした。

    彼はそのカメを、

    Western Australian Naturalists’ Clubの野生動物展示会へ持っていきます。

    そこで、

    「これは普通のカメではない」

    と気付かれました。

    100年以上、

    科学者にも見つからなかったカメ。

    その再発見のきっかけを作ったのは、

    一人の少年でした。

    探してみると、二つの小さな個体群があった

    再発見後、

    周辺で調査が行われます。

    そして、

    パース北東部に、

    二つの小さな生息地が見つかりました。

    現在の、

    Ellen Brook Nature Reserve。

    Twin Swamps Nature Reserve。

    この二つです。

    1962年には、

    残された生息環境を守るため、

    自然保護区が設けられました。

    一度は絶滅したと思われたカメに、

    ようやく保護区ができました。

    でも、生息地そのものが消えていった

    問題は、

    カメを捕る人だけではありませんでした。

    このカメが暮らしていたスワンバレー周辺は、

    パース都市圏に近い場所です。

    農業。

    宅地開発。

    道路。

    粘土採掘。

    排水。

    かつて湿地だった土地の多くが、

    別の用途へ変わっていきました。

    オーストラリア政府によると、本来利用していた粘土質の湿地の大部分は、現在では都市化・農業利用・粘土採掘などによって失われています。

    1980年代、30匹未満

    保護区まで作った。

    それでも、

    減少は止まりませんでした。

    1980年代。

    野生に残った個体は、

    30匹未満。

    Perth Zooは、

    この時期を本種が絶滅寸前まで追い詰められた時代として紹介しています。

    100年ぶりに見つかった。

    そのわずか30年後、

    今度は本当に消えそうになりました。

    1989年、動物園で繁殖を始める

    そこで、

    Perth Zooを中心とした飼育下繁殖プログラムが本格化します。

    開始は1989年。

    親ガメを繁殖させる。

    卵を見つける。

    掘り出す。

    孵卵器へ移す。

    孵化させる。

    子ガメを育てる。

    そして、

    十分に成長してから野生へ戻す。

    現在、Perth Zooでは、子ガメがおよそ100g、約3歳になった頃を一つの目安として野生復帰させています。

    1,300匹以上が生まれた

    その積み重ねは、

    大きな数字になりました。

    Perth Zooによると、

    1989年以降、

    1,300匹以上のオーストラリアヌマガメモドキが同園で繁殖。

    2024年6月時点で、

    そのうち1,125匹が野生環境へ放されています。

    30匹未満まで減ったカメです。

    そこから、

    1,000匹を超えるカメを、

    再び自然へ送り出せるところまで来ました。

    だったら、もう安心?

    ここまで読むと、

    保全は成功したように見えます。

    でも、

    新しい問題が出てきました。

    雨が減っている。

    このカメは、

    一年中水の中にいるわけではありません。

    冬から春。

    雨によって一時的な湿地に水がたまる。

    カメはそこで活動します。

    餌を食べる。

    成長する。

    繁殖に必要なエネルギーを蓄える。

    そして夏。

    湿地が乾くと、

    地面の穴や深い落ち葉の中へ入り、

    活動を抑えて暑い時期を乗り切ります。

    つまり、

    一定期間、湿地に水が残ること

    が非常に重要です。

    ところが、水のある期間が短くなっている

    気候が暖かく、

    乾燥するようになる。

    雨が減る。

    湿地が早く乾く。

    すると、

    カメが水中で餌を取れる期間が短くなります。

    昔は半年近く使えた湿地でも、

    水が残る期間が数か月まで短くなる可能性がある。

    そうなると、

    カメは十分に食べられません。

    成長できない。

    繁殖できない。

    つまり、

    保護区そのものは残っていても、カメが暮らせなくなる

    可能性があります。

    そこで発想を逆にした

    普通の保全なら、

    「本来の生息地を守ろう」

    と考えます。

    それはもちろん重要です。

    でも、

    本来の場所の気候そのものが変わってしまったら?

    そこで研究者たちは、

    違う問いを立てました。

    カメを守る場所を、もっと南へ作れないか。

    西オーストラリア州南西部。

    パース周辺より、

    涼しい。

    雨が多い。

    湿地に長く水が残る。

    将来、

    現在の生息地が暑く乾燥したとき、

    そこがカメの避難場所になる可能性があります。

    2016年、歴史的分布域の外へ

    2016年。

    24匹の飼育下繁殖個体が、

    Meerup周辺とAugusta東部の保全地域へ試験的に放されました。

    西オーストラリア州政府は当時、この試みを、

    将来の気候変動に備えて脊椎動物を歴史的分布域外へ移す試み

    として紹介しました。

    カメを、

    「昔いた場所」

    へ戻すのではない。

    「未来でも生きられそうな場所」へ移す。

    保全の考え方そのものが変わっています。

    「カメがいなかった場所へ放していいのか」

    でも、

    これは簡単な問題ではありません。

    ある生き物を、

    本来いなかった地域へ持ち込む。

    人間は過去、

    これを何度もやっています。

    そして、

    外来生物問題を起こしてきました。

    だから、

    assisted colonisationには議論があります。

    移したカメが、

    新しい生態系へ悪影響を与えないか。

    他の希少種と競合しないか。

    病気を持ち込まないか。

    新しい場所で本当に繁殖できるか。

    気候だけでは決められません。

    コンピューターまで使って「未来の湿地」を探す

    そこで研究者たちは、

    現在の生息地だけを見ません。

    気温。

    降水量。

    湿地に水が残る期間。

    カメの活動。

    卵の発生。

    将来の気候予測。

    さまざまな条件をモデル化し、

    これから先もカメが暮らせそうな場所

    を探しました。

    University of Western Australiaの研究者たちは、

    この理想的な場所を、

    “Goldilocks wetlands”

    と表現しています。

    暑すぎない。

    寒すぎない。

    乾きすぎない。

    カメにとって、

    「ちょうどいい湿地」です。

    2021年、さらに73匹

    試験は続きます。

    2021年には、

    Perth Zooで繁殖した73匹が、

    西オーストラリア州南西部の二つの場所へ放されました。

    Augusta東部へ16匹。

    Scott National Parkへ57匹。

    このうち48匹には、

    無線発信器やデータロガーが装着されました。

    見るのは、

    単に生死だけではありません。

    どこへ移動するか。

    いつ活動するか。

    体温はどう変化するか。

    どれくらい成長するか。

    新しい環境で、

    カメが本当に「普通に暮らせるか」を調べます。

    2022年、191匹を一度に放流

    翌2022年。

    さらに大きな放流が行われました。

    合計、

    191匹。

    44匹がScott National Park。

    147匹がMoore River Nature Reserve。

    飼育下繁殖プログラム開始以来、

    当時最大規模の放流でした。

    Scott National Parkの個体群は特に、

    気候変動への避難先として新しい個体群を作れるか

    を確かめる重要な試みになっています。

    2024年、さらに20匹

    保全は現在も続いています。

    2024年には、

    Perth ZooとAdelaide Zooで育った20匹が、

    Moore River近郊へ放されました。

    年齢は、

    2歳から13歳。

    放流前には無線発信器が取り付けられ、

    既にその場所で暮らしている個体と行動を比較する研究も始まりました。

    同発表時点で、

    Perth Zooでは1,300匹以上が繁殖し、

    1,145匹が野生へ放された

    とされています。

    「元の場所へ戻す」だけが保全ではなくなった

    これまで、

    野生復帰という言葉には、

    一つの分かりやすい形がありました。

    捕まえられた場所へ戻す。

    昔いた場所へ戻す。

    本来の生息地へ戻す。

    でも、

    気候変動は、

    その考え方を難しくしています。

    場所は残っている。

    保護区にもなっている。

    密猟者もいない。

    それでも、

    気候だけが昔とは違う。

    だったら、

    カメを過去へ戻すのではなく、

    未来へ移す必要があるのかもしれない。

    オーストラリアヌマガメモドキの保全は、

    その難しい問いを、

    実際のカメを使って考えているプロジェクトです。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回の話で僕が一番面白いと思うのは、

    「生息地とは何なのか」

    というところです。

    カメが昔からいた場所。

    それが生息地。

    普通はそう考えます。

    でも、

    気温が変わる。

    雨が減る。

    湿地が乾く。

    すると、

    地図上では同じ場所でも、

    カメにとっては、

    もう同じ場所ではない。

    逆に、

    昔はカメがいなかった南の湿地が、

    50年後には、

    カメにとって一番暮らしやすい場所になるかもしれない。

    保全というのは、

    昔の状態をそのまま保存する仕事だと思っていたけれど、

    このカメを見ていると、

    そうではないのかもしれない。

    変わっていく世界の中で、生き物が生き続けられる場所を探す仕事

    でもあるのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    他人が持っていない亀って、なんで欲しくなるんでしょうね?

    僕の性格が捻くれてるせいかな?

    欲しいなぁ〜オーストラリアヌマガメモドキ

    出典

    Perth Zoo
    「Western Swamp Tortoise Breeding Program」
    再発見、1980年代の個体数、繁殖プログラム、現在の繁殖・放流実績、気候変動に対応した新しい放流地について。
    URL:Perth Zooの保全プログラムを見る

    Western Australia Department of Biodiversity, Conservation and Attractions
    「Record release for critically endangered Western Swamp Tortoise」
    2022年。44匹と147匹、合計191匹の記録的な放流について。
    URL:DBCAの記事を読む

    National Environmental Science Program – Threatened Species Recovery Hub
    「Western swamp tortoises move to a cool new home」
    2016年。気候変動に備えて24匹を歴史的分布域外へ移した初期のassisted colonisationについて。
    URL:2016年の移住計画を見る

    The University of Western Australia
    「Bold plan to find ‘Goldilocks’ wetlands for Western Swamp Tortoise」
    2022年9月7日。気候変動に耐えられる新しい湿地を探す研究について。
    URL:UWAの記事を読む

    Australian Government – DCCEEW
    「Western swamp tortoise」
    本種の脅威と、気候変動避難地への新個体群創出を含む現在の保全方針。
    URL:オーストラリア政府の種情報を見る

    e-Gov 法令検索
    Pseudemydura umbrinaの日本語名「オーストラリアヌマガメモドキ」の確認。
    URL:e-Govの法令情報を見る

  • 【世界の亀ニュース】エロンガータリクガメ201匹が誕生 カンボジアの保全繁殖で過去最高記録

    【世界の亀ニュース】エロンガータリクガメ201匹が誕生 カンボジアの保全繁殖で過去最高記録

    今回は、カンボジアで絶滅の危機にあるエロンガータリクガメの子どもが、2026年だけで201匹誕生したニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年8月、カンボジアのアンコール生物多様性保全センター(Angkor Centre for Conservation of Biodiversity:ACCB)は、今年の繁殖シーズンにエロンガータリクガメ201匹の孵化に成功したと発表しました。

    これは、ACCBが行ってきたエロンガータリクガメの保全繁殖プログラムとして過去最高の記録です。

    これまでの最高記録は2024年の169匹。

    2026年は8月時点ですでに201匹に達し、前回の記録を約19%上回りました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:カンボジア
    施設:アンコール生物多様性保全センター(ACCB)
    地域:シェムリアップ州
    発表:2026年8月8日
    報道:2026年8月10日
    情報の種類:リクガメ・飼育下繁殖・孵化・野生復帰・絶滅危惧種

    ACCBはカンボジアの絶滅危惧動物を対象に、救護、飼育下繁殖、野生復帰、放逐後の追跡などを行う保全施設です。

    登場する亀

    今回の主役は、エロンガータリクガメです。

    学名は Indotestudo elongata。

    英語ではElongated Tortoiseと呼ばれています。

    日本の動物園でも「エロンガータリクガメ」という和名が使われています。背甲はやや扁平で、上から見ると前後に細長い形をしています。最大甲長は30センチ前後から、大型個体では約36センチに達します。

    インド北東部からネパール、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、マレー半島、中国南部など、南アジアから東南アジアにかけて分布しています。

    201匹という新記録

    ACCBでは、2026年に入ってから201匹のエロンガータリクガメが孵化しました。

    2024年の年間記録169匹を、8月の段階ですでに超えています。

    ACCBは2026年を、この繁殖プログラムにとってこれまでで最も成功した年としています。

    201匹の子ガメたちは現在、ACCBの施設内で育てられています。

    すぐに野生へ放すわけではありません。

    捕食者に簡単に襲われない大きさまで成長させ、その後、条件が整った個体から野生復帰を目指します。

    世界最大規模の飼育個体群

    ACCBは、エロンガータリクガメについて世界最大の飼育下個体群を維持する施設としています。

    2025年にACCBの担当者が紹介した内容では、同センターでは約600匹のエロンガータリクガメが飼育されていました。

    これは単に「たくさん飼っている」という意味ではありません。

    野生個体群が大きく減少している種類について、遺伝的な多様性をできるだけ維持しながら繁殖させ、将来的に野生個体群を補強するための個体群です。

    こうした個体群は、野生で何か大きな問題が起きたときに種そのものが失われることを防ぐ、いわば保険のような役割も持っています。

    90年間で80%以上減少

    エロンガータリクガメは、広い範囲に分布しているカメです。

    しかし、

    「広く分布している=安全」

    ではありません。

    ACCBによる保全活動の紹介では、違法な食用捕獲、国際的な野生生物取引、生息地の劣化と分断などによって、過去約90年間で個体数が少なくとも80%減少したとされています。

    現在はIUCNレッドリストで「Critically Endangered」、つまり「深刻な危機」に分類されています。

    一見すると普通に見える中型のリクガメが、実際には世界的な絶滅危惧種になっています。

    森の中で暮らすリクガメ

    エロンガータリクガメは、乾燥した砂漠を歩くタイプのリクガメではありません。

    東南アジアの落葉広葉樹林など、比較的湿度のある森林環境を利用します。

    植物の葉。

    果実。

    花。

    キノコ。

    タケノコ。

    そして、ときにはカタツムリなどの小動物や動物の死骸も利用する、植物食傾向の強い雑食性のカメです。

    森の中で落ちた果実を食べ、別の場所へ移動し、糞と一緒に種子を運びます。

    ACCBの保全担当者は、エロンガータリクガメが種子散布に関わり、森林の再生にも役割を持つと説明しています。

    リクガメを戻すことは、森の機能を戻すこと

    リクガメが一匹いなくなる。

    それだけを見ると、生態系への影響は分かりにくいかもしれません。

    しかし、森の中で果実を食べる大型の動物が減れば、植物の種が運ばれる距離も変わります。

    土を掘る動物が減れば、地面の状態も変わります。

    ACCBは、エロンガータリクガメが種子を運ぶだけでなく、土を掘る行動によって土壌へ空気を送り込み、小さな生物が利用する環境を作ることにもつながると説明しています。

    つまり、リクガメを森へ戻すことは、

    「カメの数を増やす」

    だけの活動ではありません。

    森の中から失われつつある機能を、一つずつ戻す活動でもあります。

    すでに100匹を森へ戻す計画が始まっている

    ACCBでは繁殖だけでなく、実際の野生復帰も進めています。

    2023年4月、飼育下で育てられた100匹のエロンガータリクガメが、カンボジア北部の保護地域へ移されました。

    しかし、到着したその日に放されたわけではありません。

    まず約1ヘクタールの順応用エリアへ入れられ、野生の気温、植物、地面、雨、餌などに慣れる期間が設けられました。

    そして約8か月後。

    2024年1月12日、囲いが開放されました。

    100匹のリクガメは、そこから自分の意思で森の中へ散らばっていきました。

    「放して終わり」ではない

    野生復帰で難しいのは、

    カメを森へ置くことではありません。

    そのあと、本当に生きていけるのかを確かめることです。

    ACCBでは放された個体の一部に、GPSとVHF発信器を取り付けています。

    どこへ移動するのか。

    どんな場所で休むのか。

    どれくらい広い範囲を利用するのか。

    健康状態は維持できているのか。

    そうした情報を収集しています。

    放したカメが森の中へ消えてしまえば、

    「野生復帰成功」

    と考えたくなります。

    でも、本当の答えはその先にあります。

    森を歩く「Tortoise Guardians」

    放されたカメを追跡するために、現地では3人のTortoise Guardians=リクガメの守り手が訓練されました。

    彼らは実際にその森で暮らしている地域住民です。

    発信器の信号を追い、

    カメの位置を確認し、

    行動や環境データを集めます。

    ACCBのスタッフも定期的に森へ入り、GPSデータを回収したり、発信器を交換したりしています。

    さらに半年ごとに獣医師が健康状態を確認します。

    飼育施設で生まれたカメが、

    森へ入る。

    人間の視界から消える。

    でも遠くから、その生活を少しだけ見守る。

    繁殖施設と野生の森が、そこでつながっています。

    201匹は、まだ「成果の途中」

    201匹が孵化した。

    それだけでも大きなニュースです。

    でも、保全という視点では、この201匹はまだスタート地点に立ったばかりです。

    成長する。

    健康を維持する。

    野生へ戻せる大きさになる。

    新しい環境へ慣れる。

    森へ放される。

    野生の餌を見つける。

    雨季と乾季を越える。

    そして何年も生き、成長し、最終的には自分たちで繁殖する。

    そこまで到達して初めて、人間が育てた一世代が、野生の個体群へ本当に加わったと言えるのだと思います。

    飼育下繁殖はゴールではない

    動物園や保全施設で絶滅危惧種がたくさん生まれると、

    「もう大丈夫なのでは?」

    と思うことがあります。

    しかし、野生の森そのものが失われれば、帰る場所はありません。

    エロンガータリクガメが減少してきた背景には、捕獲だけではなく、森林の劣化や分断もあります。

    だからACCBでは、

    飼育下繁殖。

    野生復帰。

    放逐後の追跡。

    地域住民との協力。

    生息地の保全。

    それらを一つの流れとして進めています。

    201匹の子ガメを育てることと、

    その201匹が帰れる森を残すこと。

    どちらか一方だけでは成立しません。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が特に注目したいのは、

    「たくさん生まれた」というニュースの先に、森があることです。

    201匹。

    数字として見ると、とても分かりやすい成果です。

    でも、本当に重要なのは、

    その201匹を水槽の中で増やし続けることではない。

    いつか、

    人間が餌を与えなくても、

    人間が温度を管理しなくても、

    人間が毎日姿を確認しなくても、

    森の中で勝手に生きていること。

    そして、

    そのカメ自身が次の卵を産むこと。

    飼育下繁殖が成功するほど、

    次に問われるのは、

    「帰る場所を残せているか」

    なのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    エロンガータかっこいいよね!

    家にスペースがあったら飼育してみたいな〜

    出典

    Angkor Centre for Conservation of Biodiversity(ACCB)
    2026年エロンガータリクガメ繁殖記録。

    Cambodianess
    「Over 200 Hatchlings of Tortoises Show Successful Breeding Year」
    2026年8月10日。

    British and Irish Association of Zoos and Aquariums(BIAZA)
    「The Long (but Slow) Walk Home – Restoring Elongated Tortoise Populations in Cambodia’s Forests」

    京都市動物園
    「エロンガータリクガメ/Elongated Tortoise」

  • 【世界の亀ニュース】絶滅危惧種を含む5種7匹の子ガメが誕生 テネシー水族館で淡水ガメのベビーブーム

    【世界の亀ニュース】絶滅危惧種を含む5種7匹の子ガメが誕生 テネシー水族館で淡水ガメのベビーブーム

    今回は、アメリカのテネシー水族館で、5種類の淡水ガメの子どもが相次いで誕生したニュースを紹介します。

    今回のニュース

    アメリカ・テネシー州チャタヌーガにあるテネシー水族館で、2026年5月中旬以降、5種類、合計7匹の淡水ガメが孵化しました。

    誕生したのは、ヨツメイシガメ3匹、ジャノメイシガメ1匹、キボシイシガメ1匹、ワモンチズガメ1匹、ヒラリーカエルガメ1匹です。

    このうち多くは、絶滅の危機に直面している種類です。さらに水族館の孵卵器では、別のワモンチズガメやモリイシガメ類などの卵も発生を続けています。テネシー水族館が7月7日に発表し、アメリカ動物園水族館協会が7月31日に改めて紹介しました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ合衆国、テネシー州
    場所:チャタヌーガ、テネシー水族館
    元記事の言語:英語
    水族館による発表:2026年7月7日
    アメリカ動物園水族館協会による紹介:2026年7月31日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・繁殖・孵化・動物園・絶滅危惧種

    テネシー水族館は、一般公開されているものとしては北米最大規模の淡水ガメコレクションを持つ施設です。1992年の開館から今回の発表までに、56種類・亜種、合計1,166匹のカメを孵化させてきました。

    誕生した5種類のカメ

    今回孵化したのは、次の5種類です。

    ヨツメイシガメ 3匹

    学名は Sacalia quadriocellata。

    頭部の左右にある眼状斑によって、本物の目と合わせて四つの目があるように見えることが、和名の由来です。今回誕生した種類の中では最も多い3匹が孵化しました。

    ジャノメイシガメ 1匹

    学名は Sacalia bealei。

    英語ではBeal’s four-eyed turtle、またはBeal’s eyed turtleと呼ばれます。ヨツメイシガメと同じSacalia属ですが、甲羅や頭部の模様に違いがあります。日本では「ジャノメイシガメ」という和名が使われています。

    キボシイシガメ 1匹

    学名は Clemmys guttata。

    黒い甲羅や皮膚に黄色い斑点が散らばる、小型の北米産淡水ガメです。英語ではSpotted turtleと呼ばれています。

    ワモンチズガメ 1匹

    学名は Graptemys oculifera。

    甲羅に輪のような模様が現れるチズガメの仲間で、英語名はRinged map turtleです。アメリカ南部の限られた水系に分布する種類です。

    ヒラリーカエルガメ 1匹

    学名は Phrynops hilarii。

    南米に分布するヨコクビガメ類の一種です。首を甲羅へまっすぐ引き込むのではなく、横へ曲げて収納します。顎にある2本のヒゲ状突起も特徴です。

    ニュースの要約

    今回の孵化では、ヨツメイシガメが3匹、そのほかの4種類が1匹ずつ誕生しました。

    テネシー水族館の記事では、ヨツメイシガメは「深刻な絶滅危機」、ジャノメイシガメ、キボシイシガメ、ワモンチズガメは「絶滅危惧」と紹介されています。

    ヒラリーカエルガメは同じ評価対象には含まれていませんが、異なる大陸や環境で進化した5種類が、同じ時期に一つの水族館で孵化したことになります。

    水族館の孵卵器では、さらに2匹のワモンチズガメが孵化直前とみられています。

    また、チュウオウアメリカモリイシガメとキボシチズガメの卵も、順調な発生を示していると報告されました。ワモンチズガメがテネシー水族館で孵化したのは、1998年以来です。

    孵卵器の中に季節を作る

    カメの卵を孵化させるには、温度を一定に保つだけでは十分ではありません。

    土や砂などの床材、水分量、空気の温度、湿度といった条件を、その種類が野生で経験する環境に近づける必要があります。

    飼育下での繁殖例が少ない種類では、どの条件が適しているのか、まだ十分に分かっていない場合もあります。飼育担当者は、卵の状態を観察しながら、野生の季節変化を孵卵器の中で再現します。

    特に複雑だったのが、ヒラリーカエルガメの孵化です。

    このカメが生息する南米では、卵が産み落とされる時期と、子ガメが安全に活動できる雨季との間に時間があります。

    卵の発生や孵化はすぐに進むのではなく、条件が整うまで遅らせられることがあります。雨季の嵐や水位上昇などの環境変化が、子ガメにとって外へ出る合図になります。

    テネシー水族館では、最初に卵を低温・低湿度に近い条件で管理しました。

    その後、少しずつ温度を上げ、時折水を吹きかけることで、乾季から雨季へ移り変わる環境を再現しました。

    つまり、飼育員は孵卵器の中で南米の季節を進め、子ガメが卵から出る時期を待ったのです。

    2007年から続くヨツメイシガメの繁殖

    テネシー水族館は、ヨツメイシガメの繁殖で特に大きな成果を残してきました。

    同館では2007年、飼育下では世界初とされたヨツメイシガメの孵化に成功しました。それ以降、今回の3匹を含め、飼育下個体群へ加わったヨツメイシガメは合計72匹になりました。

    水族館で誕生した個体の一部は、ブロンクス動物園、ノックスビル動物園、キャメロンパーク動物園など、アメリカ動物園水族館協会に加盟する別の施設へ移されています。

    一つの施設だけで個体を抱えるのではなく、複数の施設で分散して飼育・繁殖することで、災害や病気などによって一度に個体群を失う危険を減らせます。

    飼育下で残す「もう一つの個体群」

    今回誕生した子ガメが、すぐに野生へ放されるわけではありません。

    動物園や水族館で維持される希少種の個体群には、野生の個体群がさらに減少した場合に備える「保険」のような役割があります。

    適切な血統管理を行いながら繁殖を続けることで、その種類そのものと、飼育・繁殖に必要な知識を将来へ残します。テネシー水族館は、こうした個体群を野生絶滅への備えとなる「assurance population」と説明しています。

    ただし、水族館で繁殖できることと、野生のカメを守ることは同じではありません。

    川や湿地そのものが失われれば、帰る場所はなくなります。

    飼育下繁殖は野生環境の代わりではなく、野生の個体群と生息地を守る活動を支える、もう一つの方法なのだと思います。

    飼育技術も次の施設へ受け継がれる

    テネシー水族館では、繁殖に成功した方法を施設内だけの秘密にはしていません。

    卵を管理した温度、湿度、床材、孵化までの変化などを、ほかの動物園や水族館の専門家と共有しています。

    以前は飼育下での孵化が難しかった種類でも、複数の施設が知識を共有することで、繁殖例を増やせる可能性があります。

    一匹の子ガメが誕生するまでに得られた知識は、その一匹だけのものではありません。

    次の卵を孵化させる人へ伝わり、別の水族館へ伝わり、その種類全体を守るための技術へ変わっていきます。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、5種類のカメが、それぞれ違う季節と環境を卵の中に持っていることです。

    同じ孵卵器へ入れて、同じ温度にすれば孵化するわけではありません。

    アジアの山地に暮らすカメ。

    北米の湿地に暮らすカメ。

    南米の乾季と雨季を生きるカメ。

    卵は小さく、外から見ればよく似ています。

    でも、その卵が待っている雨や温度、湿度、孵化の時期は、それぞれ違います。

    飼育員は卵を見ながら、その中にある遠い川や森の季節を想像します。

    カメを増やすというより、カメが何百万年もかけて身につけた時間の進み方を、人間が少しずつ学んでいるのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    繁殖は楽しいよね!

    出典

    Tennessee Aquarium
    「Hatching bonanza adds 7 adorable baby turtles from 5 species to Aquarium」

    Association of Zoos and Aquariums
    「Tennessee Aquarium Welcomes Seven Baby Turtles From Five Species」

  • 【世界の亀ニュース】アカウミガメの巣4,100個超 米ジョージア州で過去最多を更新

    【世界の亀ニュース】アカウミガメの巣4,100個超 米ジョージア州で過去最多を更新

    今回は、アメリカ・ジョージア州の海岸で、アカウミガメの巣が過去最多を更新したニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年、アメリカ・ジョージア州で確認されたアカウミガメの巣が、これまでの記録を上回りました。

    ジョージア州自然資源局が参加するウミガメ巣穴監視システムによると、8月2日時点で州内の海岸から報告されたウミガメの巣は暫定4,169個。そのうち、4,107個がアカウミガメの巣です。

    これまでの最多記録は、2022年に確認された4,071個でした。2026年の産卵シーズンはまだ完全には終わっておらず、最終的な数はさらに増える可能性があります。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ合衆国、ジョージア州
    主な地域:大西洋沿岸の島々と砂浜
    元記事の言語:英語
    集計時期:2026年8月2日時点
    情報の種類:新着ニュース・ウミガメ・産卵・繁殖・保護活動

    ジョージア州では、カンバーランド島、オサボー島、セントキャサリンズ島、ジキル島、タイビー島など、多数の海岸でウミガメの産卵調査が行われています。

    州の沿岸約150キロを対象に、ボランティア、研究者、行政職員らが巣を探し、保護し、孵化状況を記録しています。

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、アカウミガメです。

    学名は Caretta caretta。英語ではLoggerhead Sea Turtleと呼ばれます。

    名前のとおり、ほかのウミガメと比べて大きく頑丈な頭を持っています。強い顎でカニや貝などの硬い獲物をかみ砕き、大西洋、太平洋、インド洋などの広い海域を移動します。

    アメリカのジョージア州では、海岸へ産卵に来るウミガメの大部分をアカウミガメが占めています。アメリカでは保護対象となっており、ジョージア州のウミガメ保護活動でも中心となる種です。

    ニュースの要約

    2026年の産卵シーズンに、ジョージア州で最初のアカウミガメの巣が確認されたのは5月5日でした。

    それから約3か月の間に、州内の各地で次々と巣が発見されました。

    8月2日時点の暫定集計では、アカウミガメの巣が4,107個、アオウミガメの巣が5個、ケンプヒメウミガメの巣が4個、種を確定できていない巣が53個確認されています。

    産み落とされた卵の推定数は、すでに16万個を超えています。

    一部の巣では孵化も始まり、同日の集計では約5万6,800匹の子ガメが巣から出たと記録されています。ただし、これらは産卵・孵化シーズン途中の暫定値であり、今後も更新されます。

    2022年の記録を超えた

    ジョージア州では、1989年に州内の主要な海岸を対象とした本格的な調査が始まりました。

    それ以降の最多記録は、2022年の4,071個でした。2022年には、26万匹を超えるアカウミガメの子どもが海へ向かったとされています。

    2026年は、産卵シーズンが始まる前から、巣の多い年になると予測されていました。

    6月22日の時点ですでに2,366個の巣が確認され、その後も急速に数が増えました。そして8月初め、アカウミガメだけで4,100個を超え、2022年の記録を更新しました。

    なぜ今年は巣が多いのか

    アカウミガメの雌は、毎年必ず産卵するわけではありません。

    一度の産卵シーズンに複数回の巣を作ったあと、次の産卵まで2年から3年ほど間を空ける個体もいます。

    そのため、巣の数は毎年一定ではなく、数年おきに大きく増えることがあります。ジョージア州の研究者たちは、2026年がそうした「多くの雌が同じ年に戻ってくる年」になると予測していました。

    ただし、2026年には、例年より多くの雌が同じ時期に集中して産卵する「波」のような動きも確認されています。

    なぜ産卵の時期がこれほど重なったのかは、まだ完全には分かっていません。研究者たちは卵から採取したDNAや産卵記録を調べ、その原因を探っています。

    タイビー島でも島の記録を更新

    観光地として知られるタイビー島でも、2026年は過去最多の産卵シーズンとなりました。

    これまでの島の最多記録は2022年の35個でしたが、7月15日の時点ですでに49個へ到達。その後も増え続け、8月2日時点の監視記録では、53個のアカウミガメの巣が報告されています。

    タイビー島では毎朝、訓練を受けたボランティアが海岸を歩き、前夜に残された母ガメの足跡を探しています。

    巣が見つかると場所を特定し、印を付けて保護します。高潮による浸水の危険が高い場所では、許可を受けた担当者が卵を安全な位置へ移すこともあります。

    数が増えても、すべての卵が孵化するわけではない

    巣の数が過去最多になったことは、大きな希望です。

    しかし、産み落とされた卵がすべて子ガメになるわけではありません。

    高潮や嵐で巣が浸水することもあります。捕食者に卵を食べられることもあります。砂浜に残された深い穴や椅子、テント、ゴミが、母ガメや子ガメの進路を塞ぐこともあります。

    さらに、海岸沿いの人工照明は、子ガメが進む方向を狂わせます。子ガメは本来、暗い砂浜から海側の明るい地平線へ向かいますが、建物や道路の光に引き寄せられると、海とは反対側へ進んでしまうことがあります。

    タイビー島の保護関係者は、海岸を「平らに、きれいに、暗く」保つよう呼びかけています。

    砂の穴を埋める。
    砂の城を崩す。
    ゴミや道具を持ち帰る。
    夜は海岸に向けた照明を消す。

    一つひとつは小さな行動ですが、母ガメが巣を作り、子ガメが海へ向かうためには重要なことです。

    長い保護活動が数字になって現れた

    ジョージア州では、1990年代初めにウミガメ保護活動が本格化して以降、アカウミガメの巣が平均して年間約4%ずつ増加してきたとされています。

    毎朝、海岸を歩く。

    足跡を見つける。

    砂の下の卵を確認する。

    巣を囲い、嵐や捕食者、人間の活動から守る。

    そして、子ガメが海へ向かったあと、巣を調査して結果を記録する。

    2026年の4,100個を超える巣は、突然現れた数字ではありません。

    何十年も前から続けられてきた調査と保護の結果が、長い時間を経て現れ始めたものだと考えられます。

    記録更新でも、保護は終わらない

    巣が過去最多になったからといって、アカウミガメが完全に安全になったわけではありません。

    アカウミガメは現在も保護対象であり、海岸の開発、人工照明、漁業による混獲、海洋ごみ、生息環境の変化など、さまざまな危険にさらされています。

    また、巣が増えたことと、海で暮らすアカウミガメ全体の個体数が同じ割合で回復したことは、必ずしも同じではありません。

    子ガメが海へ入り、成長し、再び産卵できる年齢になるまでには長い時間がかかります。

    2026年に生まれた子ガメたちが、いつか同じ砂浜へ戻ってくる。その未来まで保護が続いて、初めて今回の記録が次の世代へつながるのだと思います。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、4,100個を超える巣の一つひとつに、一匹の母ガメの移動があることです。

    海の中から砂浜へ上がる。

    重い体を前肢で引きずりながら、波の届きにくい場所まで進む。

    砂を掘り、卵を産み、穴を埋める。

    そして、再び大西洋へ帰っていく。

    人間が記録するのは「巣の数」です。

    でも、その数字の中には、夜の砂浜を進んだ母ガメたちの時間が積み重なっています。

    4,107という数字は、4,107個の穴があったというだけではない。

    何千回もの上陸と産卵が、同じ海岸で繰り返されたということです。

    湯川亀吉の一言

    良かったね。

    出典

    Georgia DNR Sea Turtle Conservation Program
    「Sea Turtle Nest Monitoring System」

    Georgia Public Broadcasting
    「Georgia is on track for a record-high turtle nesting season. What’s behind the good news」

    Tybee Island Marine Science Center
    「Sea Turtle Nesting Season Updates」

    NOAA Fisheries
    「Loggerhead Turtle: Science」

  • 【世界の亀ニュース】バージニア州でオサガメが初産卵 世界最大のウミガメが軍施設の海岸へ

    【世界の亀ニュース】バージニア州でオサガメが初産卵 世界最大のウミガメが軍施設の海岸へ

    今回は、アメリカ・バージニア州で初めて確認された、オサガメの歴史的な営巣に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    アメリカ・バージニア州の海岸で、オサガメの巣が記録上初めて確認されました。

    巣が見つかったのは、バージニアビーチにあるアメリカ海軍航空基地オシアナの施設、ダムネック・アネックスの海岸です。

    海岸に残された大きな足跡を自然資源管理チームが確認し、調査した結果、オサガメが卵を産んだ巣であることが判明しました。

    発見後、巣の周囲には柵が設置され、卵が安全に孵化できるよう保護と監視が始まっています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ合衆国、バージニア州バージニアビーチ
    発見場所:海軍航空基地オシアナ・ダムネック・アネックス
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年7月23日
    情報の種類:新着ニュース・ウミガメ・産卵・繁殖・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、オサガメです。

    学名は Dermochelys coriacea。英語ではLeatherback Turtleと呼ばれます。

    オサガメは、現生するカメの中で最大の種類です。一般的なウミガメのような硬い鱗板のある甲羅を持たず、背中は厚く弾力のある皮膚で覆われています。

    背中には前後へ伸びる7本の隆起があり、大きな前肢を使って外洋を長距離移動します。個体によっては、産卵地と餌場の間を年間1万マイル以上移動することもあります。

    ニュースの要約

    今回確認された巣は、バージニア州で記録された最初のオサガメの営巣です。

    バージニア州では、オサガメが海を泳ぐ姿は以前から確認されていました。しかし、2025年にまとめられた州のウミガメ保全計画には、それまで州内でオサガメの営巣は一度も記録されていないと明記されていました。

    オサガメは主に、フロリダ州、カリブ海地域などの熱帯・亜熱帯の砂浜で産卵します。

    それより北に位置するバージニア州で巣が確認されたことは、州のウミガメ観測史に残る出来事です。

    巣が見つかったダムネック・アネックスには、約3.2マイルにわたる大西洋沿岸の海岸があります。

    軍事施設であるため一般の人が自由に立ち入れる場所ではなく、観光客の往来や夜間照明などの影響を受けにくい環境です。今回の巣も、発見後すぐに周囲を囲って保護されました。

    軍事施設の海岸で始まった保護

    今回の保護活動には、海軍航空基地オシアナの自然資源管理チームだけでなく、バージニア水族館、バージニア州野生生物資源局、バックベイ国立野生生物保護区などが協力しています。族館、バージニア州野生生[object Object],[object Object],[object Object][object Object],[object Object],[object Object]の発見以前から海岸環境を守る活動が行われていました。

    2026年4月には、海岸の清掃と砂丘の修復作業が実施され、592本の使用済みクリスマスツリーが約1,097フィートにわたって配置されました。木によって砂を受け止め。

    作業では、産卵するウミガメの通り道を妨げないよう、木の配置にも注意が払われていました。citeturn897331search17

    その数か月後、同じ海岸にオサガメが現れた。

    今回の営巣が砂丘修復の直接的な成果だったと断定することはできません。

    それでも、人間が海岸を守ろうとしてきた場所に、世界最大のウミガメが卵を残したという事実には、大きな意味があるように感じます。

    卵が孵化するまで

    オサガメの雌は夜の砂浜へ上がり、体全体が入るほどの大きなくぼみと、深い産卵穴を掘って卵を産みます。

    一度に産む卵はおよそ100個で、通常はから12日ほどの間隔を空けて複数回産卵することがあります。citeturn490649search0turn490649search1

    ただし、卵が無事に産み落とされたからといって、必ず孵化できるわけではありません。

    高潮や嵐による浸水、砂浜の温度、捕食者、人間の光や活動など、孵化までには多くの危険があります。

    今回の巣が無事に孵化し、バージニア州で初めてのオサガメの子どもたちが大西洋へ向かえるかどうか、関係者による監視が続きます。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、オサガメが、それまで産卵記録のなかった場所へ現れたことです。

    一匹の雌が、暗い海からバージニア州の砂浜へ上がった。

    砂を掘り、卵を産み、また大西洋へ帰っていった。

    その行動によって、バージニア州のウミガメの記録が書き換えられました。

    なぜ今回、この海岸が選ばれたのか。

    母ガメがさらに北へ移動するようになったのか。
    海や砂浜の環境に変化があったのか。
    それとも、これまでも人間が見つけられなかっただけなのか。

    一つの巣だけでは、理由を決めることはできません。

    それでも、これまで存在しなかった記録が生まれたということは、海の中で何かが動いていることを感じさせます。

    湯川亀吉の一言

    オサガメ見たことないんです。

    見てみたいな〜♡

    出典

    FOX Weather
    「World’s largest ss in Virginia for first time in recorded history」citeturn755526view0

    WTKR News 3
    「Leatherback sea turtle lay Dam Neck Annex — the first recorded in Virginia」citeturn755526view2

    Virginia Departmees
    「Virginia Sea Turtle Conservation 26view4

    NOAA Fisheries
    「Leatherback Turtle」citeturn490649search0

  • 【世界の亀ニュース】ジョージア州の島でウミガメの産卵巣が過去最多に

    【世界の亀ニュース】ジョージア州の島でウミガメの産卵巣が過去最多に

    今回は、アメリカ・ジョージア州のタイビー島で報じられた、ウミガメの産卵に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    アメリカ・ジョージア州のタイビー島で、ウミガメの巣の数が過去最多を記録していると報じられました。

    Southern Livingによると、タイビー島では2026年7月15日時点で49か所のウミガメの巣が確認され、これまでの記録だった2022年の35か所を大きく上回ったとされています。保護活動はTybee Island Marine Science CenterとTybee Island Sea Turtle Projectを中心に行われています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ、ジョージア州、タイビー島
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年7月
    情報の種類:新着ニュース・産卵・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、主にアカウミガメです。

    記事によると、タイビー島で確認されるウミガメはアカウミガメが中心で、アカウミガメは自分が生まれた海岸へ戻って産卵する性質があると紹介されています。

    ニュースの要約

    タイビー島では、2026年のウミガメの産卵シーズンに、これまでで最も多い巣が確認されています。

    2026年7月15日時点で確認された巣は49か所。
    これは、これまでの最高記録だった2022年の35か所をすでに超える数です。

    記事では、この増加は継続的な保護活動の成果として紹介されています。
    一方で、タイビー島のような人が多く訪れる海岸では、ビーチに残されたごみ、夜間の光、混雑した浜辺など、人間の活動による影響もあります。観光客や地域の人たちには、浜辺を清潔に保ち、夜の光を減らすことが呼びかけられています。

    また、ジョージア州全体では、2004年には約400か所だったウミガメの巣が、2022年には4,000か所以上に増えたと紹介されています。これは、長く続けられてきた保護活動が少しずつ実を結んでいることを感じさせる数字です。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、巣の数が増えるまでには、長い時間の積み重ねがあるということです。

    ウミガメの保護は、すぐに結果が見えるものではありません。
    卵を守り、砂浜を守り、光を減らし、人に呼びかけ、また次の年を待つ。

    それを何年も、何十年も続けた先に、ようやく「今年は巣が多い」というニュースになる。

    49か所の巣という数字の裏には、海岸を歩いて確認する人たち、ロープで巣を守る人たち、夜の明かりを消す人たち、浜辺のごみを拾う人たちの時間があります。

    亀は、今日守ったから明日増えるわけではない。
    でも、守り続けた場所には、いつか戻ってくるかもしれない。

    このニュースは、そんなウミガメの長い時間を感じさせてくれます。

    湯川亀吉の一言

    何でも、長く続けることがとても大切。

    それでも、望んだ結果を一朝一夕を願う人が多いのはなんでだろうね?

    ま、僕もそんなクソどものうちの一人だけどね。

    出典

    元記事:Southern Living「This Georgia Beach Is Having Its Biggest Sea Turtle Nesting Season Ever」

  • 【世界の亀ニュース】オーストラリアで9,100匹以上のアオウミガメの赤ちゃんが海へ

    【世界の亀ニュース】オーストラリアで9,100匹以上のアオウミガメの赤ちゃんが海へ

    今回は、オーストラリアで報じられた、アオウミガメの卵移動プロジェクトに関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    オーストラリア北部、グレートバリアリーフ北部のアオウミガメに関するニュースです。

    ABC Newsによると、レイン島からサー・チャールズ・ハーディ島へ移されたアオウミガメの卵から、9,100匹以上の赤ちゃんガメが海へ向かったと報じられています。移された卵のうち、約82%が孵化して海へたどり着いたとされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:オーストラリア、グレートバリアリーフ北部
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年6月1日
    情報の種類:新着ニュース・保護活動・繁殖/孵化

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、アオウミガメです。

    舞台になったレイン島は、アオウミガメにとって非常に重要な産卵地として知られています。記事では、この地域のアオウミガメが気候変動や海面上昇、砂浜の温度上昇などの影響を受けていることも紹介されています。

    ニュースの要約

    今回の取り組みでは、アオウミガメの卵がレイン島からサー・チャールズ・ハーディ島へ移されました。

    目的のひとつは、孵化数を増やすことだけではありません。
    砂の温度が高くなりすぎると、アオウミガメの赤ちゃんはメスに偏りやすくなるため、より涼しい環境へ卵を移すことで、オスの赤ちゃんが生まれる可能性を高める狙いもあります。今回、移された卵は約9,000個にのぼり、約82%が孵化して海へ向かったと報じられています。

    また、記事では、この取り組みが10年以上続くレイン島回復プロジェクトの一部であることも紹介されています。伝統的所有者と研究者が協力し、アオウミガメの未来を守ろうとしている点も大切なポイントです。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、ただ「たくさん孵化した」という話ではないところです。

    亀の保護というと、卵を守る、赤ちゃんを海へ帰す、という場面に目が行きます。
    でも今回のニュースでは、砂浜の温度、性別の偏り、海面上昇、産卵地の地形、そしてその土地の人々の文化まで関わっています。

    一匹の赤ちゃんガメが海へ向かう背景には、島の形、気候、研究者、伝統的所有者、そして長く続く保護活動があります。

    亀を守るということは、亀だけを見ることではなく、亀が生まれる場所ごと見つめることなのかもしれません。

    湯川亀吉の一言

    偉いね。

    出典

    元記事:ABC News「Thousands of baby green sea turtles head to sea after successful egg relocation」

  • 【世界の亀ニュース】絶滅寸前だったキタブチイシガメ37匹、35年続く保護活動で湿地へ

    【世界の亀ニュース】絶滅寸前だったキタブチイシガメ37匹、35年続く保護活動で湿地へ

    今回は、アメリカ・ワシントン州で報じられた、希少な淡水ガメの野生復帰に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年7月、アメリカ・ワシントン州で、37匹の若いキタブチイシガメが保護された湿地へ放されました。

    この放流は、ワシントン州魚類野生生物局とウッドランドパーク動物園が協力して進める「Western Pond Turtle Recovery Project」の一環です。

    プロジェクトは2026年で開始から35年を迎えました。絶滅寸前だったカメを守るため、卵や子ガメを一時的に安全な環境で育て、野生で生き残りやすい大きさになってから湿地へ戻す活動が続けられています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:アメリカ、ワシントン州
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年7月10日
    情報の種類:新着ニュース・淡水ガメ・野生復帰・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、キタブチイシガメです。

    学名は Actinemys marmorata。英語ではWestern Pond TurtleやNorthern Pacific Pond Turtleと呼ばれています。分類や日本語資料によっては、単に「ブチイシガメ」と表記されることもありますが、この記事ではキタブチイシガメとします。

    キタブチイシガメは、池や湿地、流れの緩やかな水辺などに暮らす北米原産の淡水ガメです。

    ワシントン州では個体数が激減し、1990年の時点で残っていたのは、二つの個体群に合計約150匹だけでした。絶滅を防ぐため、1991年に動物園と州当局による本格的な回復事業が始まり、1993年には州の絶滅危惧種に指定されました。

    ニュースの要約

    キタブチイシガメの保護活動では、野生の巣から卵や孵化したばかりの子ガメを集め、ウッドランドパーク動物園やオレゴン動物園で一時的に育てます。

    孵化直後の子ガメは、硬貨ほどの小ささです。

    そのまま野生へ出ると、外来種のウシガエルをはじめとする捕食者に食べられる危険性が高いため、動物園で冬を越しながら、魚やミミズなどを与えて成長させます。

    目標となるのは、体重がおよそ2〜3オンス、約57〜85グラムに達することです。

    この大きさまで育つと、子ガメはウシガエルの口に入りにくくなり、野生で生き残れる可能性が高まります。

    健康状態を確認した後、カメたちは保護された湿地へ戻されます。放流後も、州の生物学者たちが生存状況や移動を追跡します。

    小さなカメに「先行時間」を与える

    この方法は、英語で「ヘッドスタート」と呼ばれています。

    野生動物を一生飼育するのではなく、最も命を落としやすい幼少期だけを安全な環境で過ごさせ、ある程度成長してから本来の生息地へ戻す方法です。

    キタブチイシガメは、性成熟するまでに約10〜12年かかります。孵化した子ガメが成体となり、次の世代を残すまでには、長い時間が必要です。

    だからこそ、最初の数か月を生き延びられるかどうかが、何十年後の個体群に大きく影響します。

    動物園で過ごす一度の冬は、このカメたちにとって、野生へ帰る前に与えられた「先行時間」なのかもしれません。

    35年間で2,300匹以上を野生へ

    35年間にわたる共同事業によって、これまでに2,300匹以上のキタブチイシガメがヘッドスタートを経て野生へ戻されました。

    その結果、ピュージェット湾地域とコロンビア川峡谷では、再び個体群が形成されています。調査では、ヘッドスタート個体と野生で生まれた個体を合わせ、約800匹が生き残っていると推定されています。

    1996年に最初の16匹が放されたワシントン州南部の回復地では、長年の放流によって個体数が200匹を超えるまでに回復した記録もあります。

    約150匹まで減ったカメを、何十年もかけて少しずつ増やしてきた。

    今回放された37匹も、その長い回復の物語につながる新しい世代です。

    回復を脅かす甲羅の病気

    保護活動には、大きな課題も残されています。

    野生個体群では、甲羅に病変が現れる深刻な病気が広がっており、野生個体の80%以上に影響が確認されていると報告されています。

    症状が重くなると、健康状態や生存に影響する可能性があります。現在、シェッド水族館やイリノイ大学の研究者たちが、微生物や環境との関係を含めて病気の原因を調べています。

    外来種から子ガメを守り、生息地を整え、野生へ戻す。

    それだけでも長い時間がかかります。

    さらに、新しく現れた病気にも対応しながら、保護活動を次の世代まで続けなければなりません。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、亀を守る活動そのものも、亀のようにゆっくり進んでいることです。

    1991年に始まった活動が、2026年で35年。

    卵を見つけ、孵化させ、冬のあいだ育て、湿地へ戻す。
    それを毎年繰り返す。

    放した子ガメが成長し、繁殖できるようになるまでには、さらに10年以上かかります。

    一度の放流だけで、絶滅危惧種が回復するわけではありません。

    今日放された37匹が大人になり、その子どもが生まれ、さらに次の世代へ命がつながるまで、保護する人たちは待ち続けます。

    亀は遅い。

    でも、亀を守る活動もまた、急ぐことのできない仕事なのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    孵化したばかりの子ガメは、硬貨ほどの大きさしかない。

    その小さな甲羅では、ウシガエルの口から逃げることも難しい。

    だから人間は、一度だけその命を預かる。

    冬のあいだ食べ物を与え、少しだけ大きく育てて、また湿地へ返す。

    守り続けるのではない。
    野生で生きられるところまで、一緒に時間を進める。

    35年間で2,300匹以上。

    一匹ずつを見れば、小さなカメだ。
    でも、その小さな甲羅を一つずつ湿地へ戻してきた時間は、とても大きい。

    亀はゆっくり育つ。
    だから、人間も急がずに守り続けなければならない。

    今回放された37匹が、いつか泥の岸辺で卵を産む日まで。

    この保護活動は、まだ終わらないのだと思います。

    出典

    Woodland Park Zoo
    「Endangered turtles released to the wild」

    Washington Department of Fish and Wildlife
    「South Puget Sound Wildlife Area Management Plan」

    The Reptile Database
    「Actinemys marmorata」