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  • 【世界の亀ニュース】遺伝子が示した本当の故郷 保護されたヒョウモンガメ27匹が南アフリカの野生へ

    【世界の亀ニュース】遺伝子が示した本当の故郷 保護されたヒョウモンガメ27匹が南アフリカの野生へ

    今回は、保護施設で暮らしていたヒョウモンガメの出身地域を遺伝子から調べ、本来の生息地に近い場所へ戻した、南アフリカの研究と野生復帰について紹介します。

    今回のニュース

    南アフリカで、保護施設に収容されていたヒョウモンガメの遺伝情報を調べ、出身地域を推定したうえで野生へ戻す取り組みが行われました。

    南アフリカとドイツの研究チームは、野生のヒョウモンガメから集めた遺伝情報を使って地域ごとの特徴をまとめたデータベースを拡張し、保護施設にいた50匹を調査しました。

    その結果、故郷と考えられる地域を判断できた個体を段階的に環境へ慣らし、これまでに27匹が南アフリカ各地の野生へ戻されました。研究成果は2026年に学術誌『Conservation Genetics』で発表され、4月9日にゼンケンベルク自然研究協会が紹介しています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:南アフリカ共和国
    調査に関係する地域:クワズール・ナタール州、東ケープ州、北ケープ州、フリーステイト州、リンポポ州など
    研究協力地域:エスワティニ
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年4月9日
    情報の種類:リクガメ・遺伝子研究・野生復帰・違法取引対策・保護活動

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ヒョウモンガメです。

    学名は Stigmochelys pardalis。英語ではLeopard Tortoiseと呼ばれます。

    アフリカ中部から南部に分布し、サバンナ、草原、灌木地などに暮らす大型のリクガメです。鳥羽水族館では、最大甲長が70センチを超える種類として紹介されています。

    甲羅には、黄色や黄褐色を基調とした地色に黒や褐色の斑紋が入り、その模様がヒョウを連想させることから、ヒョウモンガメと呼ばれています。

    模様や色合いには個体差があり、成長するにつれて幼体の鮮明な模様が変化していくこともあります。

    ニュースの要約

    保護施設へ収容されるヒョウモンガメの中には、違法に採集された個体、個人によって飼育された後に放棄された個体、飼育場所から逃げ出した個体などが含まれています。

    しかし、保護された場所と、そのカメがもともと暮らしていた場所が同じとは限りません。

    人間によって何百キロ、場合によってはさらに遠くまで運ばれている可能性があるため、保護された地点だけを手がかりに放流場所を決めると、本来とは異なる地域へ放してしまうおそれがあります。

    研究チームは、クワズール・ナタール州とエスワティニの野生個体から得た遺伝情報をデータベースへ加え、保護施設にいた50匹の遺伝子と比較しました。

    すると、クワズール・ナタール州の保護施設にいたカメのうち、遺伝的に同地域の個体と判断されたのは、わずか1匹でした。

    これは、多くのヒョウモンガメが違法取引や人為的な移動によって、本来の分布地域から遠く離れた場所へ運ばれていた可能性を示しています。

    なぜ遺伝子から故郷を調べるのか

    見た目が同じ種類のリクガメであっても、地域ごとの個体群には、長い時間をかけて形成された遺伝的な違いがあります。

    遠く離れた地域の個体を不用意に混ぜると、その土地に適応してきた遺伝的な特徴が失われたり、地域個体群の構成が変化したりする可能性があります。

    また、そのカメが慣れていない気候や植生の地域へ放せば、野生で生き残れないかもしれません。

    そのため研究チームは、単に「ヒョウモンガメが暮らしている場所」へ放すのではなく、遺伝情報を使って、各個体がどの地域に近いのかを調べました。

    遺伝子は、カメが人間によって運ばれた道筋を記録しているわけではありません。

    それでも、どの地域の野生個体と近いのかを比較することで、そのカメが帰るべき場所を考えるための重要な手がかりになります。

    野生へ戻す前の6か月

    放流対象となったヒョウモンガメは、調査が終わるとすぐに野外へ放されたわけではありません。

    まず、将来放す予定の地域に設置された脱走防止用の囲いの中で、およそ6か月間を過ごしました。

    これは「ソフトリリース」と呼ばれる方法です。

    現地の気温、地面、植物、季節の変化などに段階的に慣らし、健康状態や行動を確認した後、最終的に囲いの外へ放します。

    遺伝的な出身地域に応じて、カメたちは別々の場所へ移されました。

    一部は東ケープ州の私設保護区へ、ほかの個体は北ケープ州、フリーステイト州、リンポポ州の保護地域へ戻されています。

    保護施設で一生暮らせばよいのか

    保護されたリクガメを野生へ戻すことには、慎重な判断が必要です。

    病気を持ち込む可能性がある。
    その地域の個体数を過度に増やすかもしれない。
    本来とは異なる個体群を混ぜてしまうかもしれない。
    放した後に生き残れるかも分からない。

    一方で、すべての個体を保護施設で一生飼育することも簡単ではありません。

    ヒョウモンガメは大型で長寿のリクガメです。長期間の飼育には、広い場所、食物、医療、職員、費用が必要になります。

    クワズール・ナタール州のある保護施設では、2016年から2025年までに100匹以上を受け入れ、収容場所が足りず、さらに多くのカメの受け入れを断らなければならない状態になりました。ダーバンの別施設でも、同じ期間に300匹を超える個体が記録されています。

    だからこそ、安全に野生へ戻せる個体については、故郷を慎重に調べ、帰る準備を整える必要があります。

    絶滅危惧種ではなくても守る必要がある

    ヒョウモンガメは広い範囲に分布し、現在は種全体として「低懸念」とされています。

    しかし、南アフリカでは違法な捕獲や飼育、食用や伝統医療への利用、生息地の破壊、都市化、過放牧、野焼き、電気柵による事故など、さまざまな危険にさらされています。

    「絶滅危惧種ではない」という評価は、どの地域の個体群も安全であることを意味しません。

    広い地域に分布している種類であっても、ある土地からカメが次々と持ち出されれば、その場所の個体群は弱くなっていきます。

    そして、人間によって遠くへ運ばれたカメを戻すときには、「どこでもよい」というわけにはいきません。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、保護された場所が、そのカメの故郷とは限らないことです。

    人間は、カメを見つけた場所をその個体の居場所だと思ってしまうことがあります。

    でも、そのカメは誰かに捕まえられ、車に乗せられ、町を越え、州を越えてきたのかもしれない。

    自分の意思とは関係なく遠くへ運ばれ、そこで放棄されたのかもしれない。

    カメは、自分がどこから来たのかを人間の言葉で説明できません。

    けれど、体の中に残された遺伝情報が、その個体の故郷へつながる小さな手がかりになる。

    保護とは、ただ命を助けることだけではなく、その命が本来属していた場所を探すことでもあるのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    俺も生き物飼ってるから言えるけど、生き物飼ってる人間は全員クズだからな。でも、「保護」する奴らも同じクズさ。

    出典

    Senckenberg Nature Research
    「Return to Nature: 27 Leopard Tortoises Released into the Wild in South Africa」

    鳥羽水族館・生きもの図鑑
    「ヒョウモンガメ」

  • 【世界の亀ニュース】バリ島で保護対象のアオウミガメ21匹の違法取引を摘発

    【世界の亀ニュース】バリ島で保護対象のアオウミガメ21匹の違法取引を摘発

    今回は、インドネシア・バリ島で報じられた、アオウミガメの違法取引に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    インドネシアのバリ島で、保護対象となっているアオウミガメ21匹の違法取引が摘発されました。

    AP通信によると、現地警察は2026年6月10日、バリ島のPegametan海岸で捜査を行い、保護対象のアオウミガメ21匹を確認し、容疑者1名を逮捕したと報じられています。容疑者は、東ジャワのマドゥラ島付近から亀を受け取り、販売目的で流通させようとしていた疑いがあるとされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:インドネシア、バリ島
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年6月
    情報の種類:新着ニュース・密輸/違法取引・保護対象種

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、アオウミガメです。

    アオウミガメは世界各地の暖かい海に生息するウミガメの仲間です。今回の報道では、インドネシアでは1990年以降、国内の海に生息するすべてのウミガメ類が法的に保護されており、取引は禁止されていると紹介されています。

    ニュースの要約

    今回、バリ島の警察は、地域住民からの情報をもとにPegametan海岸を捜査しました。

    その結果、保護対象のアオウミガメ21匹が確認され、67歳の容疑者が逮捕されました。報道によると、容疑者は別の人物から亀を受け取り、販売目的で流通させようとしていた疑いが持たれています。警察は、背後にいる可能性のある他の関係者についても捜査を続けているとされています。

    記事では、インドネシアではウミガメの取引が禁止されている一方で、食肉利用、伝統的利用、儀式的な需要などを背景に、過去にも違法取引が問題になってきたことが紹介されています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、保護対象の亀が、いまだに人間の需要によって流通の対象になってしまう現実です。

    アオウミガメは、美しい海を泳ぐ象徴的な存在として語られることが多い亀です。
    でも一方で、地域によっては今も食用や伝統的利用の対象になり、違法取引の危険にさらされています。

    今回のニュースは、単に「悪い人が捕まった」という話だけではありません。
    亀を守るためには、法律、地域社会、文化、経済、そして現場で情報を寄せる人たちの存在が関わっていることを感じさせるニュースです。

    保護活動というのは、海岸で赤ちゃんガメを見送るような美しい場面だけではなく、こうした暗い流通の入口を止めることも含まれているのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    大変だね。

    出典

    元記事:AP News「Police in Bali foil an attempt to trade protected 21 live green sea turtles and arrest a suspect」

  • 【世界の亀ニュース】ベトナムで希少な「ヨツメイシガメ」が民家の庭に現れる

    【世界の亀ニュース】ベトナムで希少な「ヨツメイシガメ」が民家の庭に現れる

    今回は、ベトナム中部のフエで報じられた、希少な淡水ガメの保護に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    ベトナム中部のフエで、希少なヨツメイシガメが民家の庭に現れました。

    Vietnam Association for Conservation of Nature and Environmentの記事によると、フエ市ビンディエン地区に住む女性が、自宅の庭に迷い込んできた珍しいカメを発見し、すぐに当局へ引き渡しました。その後、このカメは手続きを経て自然へ戻されたとされています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ベトナム、フエ市ビンディエン地区
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年6月15日
    情報の種類:新着ニュース・保護活動・野生復帰

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、ヨツメイシガメです。

    英語では Four-eyed turtle と呼ばれるカメで、後頭部付近に「目」のように見える模様があることから、その名前で呼ばれています。Peopleの記事でも、この種は中国、ラオス、ベトナムの森林に覆われた山地の沢などに生息する希少なカメとして紹介されています。

    ニュースの要約

    フエ市ビンディエン地区に住む女性は、自宅の庭で見慣れないカメを発見しました。

    そのカメは希少なヨツメイシガメで、住民はすぐに森林保護当局へ連絡しました。
    当局はカメを引き取り、必要な手続きを行ったうえで、自然環境へ戻したと報じられています。

    Peopleの記事では、ヨツメイシガメは違法なエキゾチックペット取引の影響を受けている種でもあり、IUCNでも絶滅危惧種として扱われていると紹介されています。

    同じ時期には、別のフエ市民がキイロアタマハコガメを自主的に引き渡したことも報じられており、地域住民が希少なカメを見つけたときに保護へつなげる動きが見られます。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、希少なカメが、特別な保護施設ではなく、ふつうの民家の庭に現れたというところです。

    ヨツメイシガメは、名前からして不思議な存在です。
    本当の目は前を見ているのに、後頭部にはもうひとつの目のような模様がある。

    まるで、森の奥で何かを見ているカメのようにも感じます。

    でも、その不思議さや美しさが、違法なペット取引の対象にもなってしまう。
    珍しいから守られるのではなく、珍しいから狙われることもある。

    今回のように、地域の人が見つけて、捕まえて売るのではなく、当局へ連絡する。
    その一つの判断が、カメの未来を変えるのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    ヨツメイシガメ欲しいんだよね〜。

    出典

    元記事:Vietnam Association for Conservation of Nature and Environment
    「Rare four-eyed turtle found wandering into Hue resident’s yard」

    関連報道:People
    「Rare ‘Four-Eyed’ Turtle Wanders Into a Woman’s Yard, She Immediately Knew What to Do」

  • 【世界の亀ニュース】メキシコで野生ガメ2,000匹超を押収 世界最小のバジャルタドロガメも密輸被害に

    【世界の亀ニュース】メキシコで野生ガメ2,000匹超を押収 世界最小のバジャルタドロガメも密輸被害に

    今回は、メキシコで発覚した大規模なカメの違法取引と、その中に含まれていた絶滅寸前の小さな淡水ガメについて紹介します。

    今回のニュース

    2025年9月、メキシコ・ハリスコ州で行われた摘発によって、野生から捕獲された2,000匹を超える淡水ガメが押収されました。

    カメたちは、ナマコやフカヒレなど、ほかの野生生物由来の品とともに隠されていました。

    押収されたカメには、メキシコ原産のドロガメ類6種とハコガメ類1種が含まれ、その中には、絶滅の危機が極めて高い**バジャルタドロガメ(Kinosternon vogti)**も数十匹含まれていました。

    しかし、すべてのカメが無事だったわけではありません。

    密輸の過程で劣悪な環境に置かれていたため、押収後までに数百匹が死亡したとTurtle Survival Allianceは報告しています。生き残った個体はグアダラハラ動物園へ運ばれ、治療、検疫、感染症検査などを受けました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:メキシコ
    主な場所:ハリスコ州、グアダラハラ
    摘発:2025年9月
    Turtle Survival Alliance発表:2025年10月10日
    情報の種類:淡水ガメ・密輸・違法取引・絶滅危惧種・救護・保護活動

    メキシコ当局のPROFEPAとSEMARNATは9月26日、大規模な摘発後にグアダラハラ動物園へカメの緊急収容を要請しました。その後、獣医師や飼育スタッフが大量の個体を一匹ずつ確認し、隔離と治療を開始しています。

    登場する亀

    今回とくに注目したいのが、バジャルタドロガメです。

    学名は Kinosternon vogti

    日本の公的資料では「キノステルノン・ヴォグティ」と表記され、関連する登録資料では「フォークトドロガメ、バジャルタドロガメ」という名称も確認できます。この記事では、国内の爬虫類愛好家の間でも使われている「バジャルタドロガメ」で統一します。

    このカメが新種として記載されたのは、わずか2018年です。

    そして現在、世界で知られているカメの中でも最小の種とされています。

    雄の平均甲長は約7.6センチ、雌は約7.8センチ。大きな個体でも、雄は9センチ、雌は10センチを超えることがほとんどありません。

    世界最小のカメが暮らす場所

    バジャルタドロガメは、メキシコ西部のハリスコ州とナヤリット州にまたがるバンデラス湾周辺だけに分布する固有種です。

    歴史的な分布域は約263平方キロと推定されていますが、現在実際に利用できる生息域は非常に小さく、推定占有面積は0.3平方キロ未満とされています。

    池、湿地、流れの緩やかな小川などで暮らし、乾季には土中へ潜って数か月間休眠することがあります。

    繁殖は雨季に行われ、雌は一度に1〜5個ほどの卵を産みます。孵化した子ガメの甲長は、わずか19〜23ミリほどです。

    成体ですら手のひらに収まるほど小さい。

    その小さなカメが、生きられる湿地そのものも、非常に小さな範囲しか残っていません。

    2,000匹以上が一度に押収された

    今回の事件では、バジャルタドロガメだけが狙われていたわけではありません。

    押収されたのは、6種類のドロガメと1種類のハコガメを含む2,000匹以上のカメでした。

    これらは野生から捕獲されたとされ、国際市場を対象とした組織的な野生生物取引ネットワークの一部だったと報告されています。メキシコ当局は関係が疑われる3人を起訴しました。

    野生生物やその加工品は、グアダラハラを拠点とする企業を通じて、アメリカ、中国、その他のアジア市場などへ送られることが疑われています。

    一匹の珍しいカメが密かに持ち出された事件ではありません。

    何千匹という単位で野生動物を集め、商品として移動させる仕組みが存在していた可能性があります。

    数百匹は救出まで生き残れなかった

    カメは、見た目以上に過酷な環境へ耐えることがあります。

    長期間餌を食べなくても生きる種類もいる。

    狭い場所で動かず耐えることもできる。

    しかし、その性質は密輸業者にとって「運びやすい動物」として利用されることがあります。

    今回の押収個体も、多数のカメが密集した状態で扱われていたとみられ、数百匹がすでに死亡していました。残った個体の中にも、弱ったカメや病気の疑いがあるカメが確認されています。

    救出したカメを、すぐ野生へ戻せない理由

    違法取引から救出された野生動物を見ると、

    「元いた場所へ放せばいい」

    と思うかもしれません。

    しかし、2,000匹を超えるカメが複数種混ざった状態で運ばれていた場合、それほど簡単ではありません。

    どの個体がどこから捕獲されたのか。

    感染症を持っていないか。

    異なる地域個体群が混ざっていないか。

    長期間の輸送によって健康状態が悪化していないか。

    一つずつ確認する必要があります。

    今回もグアダラハラ動物園では、感染症の拡大を防ぐため、種類や状態に応じた隔離と検査が行われました。とくにカメ類で重大な問題となるラナウイルスについて、慎重な検査が必要だとされています。

    バジャルタドロガメは400匹未満とも

    Turtle Survival Allianceは、野生に残るバジャルタドロガメを400匹未満としています。

    一方、専門家による2025年の種解説では、実際に利用されている生息地が極めて小さいこと、野生個体群が都市開発、道路、違法採集などの圧力を強く受けていることが示されています。IUCNでは「Critically Endangered=深刻な危機」と評価されています。

    数千匹いる種類から数十匹が捕られるのと、

    野生に数百匹しかいない可能性のある種類から数十匹が消えるのとでは、意味が違います。

    密猟者が一度採集しただけでも、地域個体群へ大きな影響を与える可能性があります。

    2025年には保全施設からもカメが盗まれていた

    さらに深刻なのは、野生個体だけが狙われているわけではないことです。

    2025年1月には、プエルト・バジャルタでバジャルタドロガメの保全・繁殖を行っていた施設へ何者かが侵入し、飼育されていた個体が盗まれる事件も発生しました。

    その後、施設には電気柵、高性能の鍵、モーションセンサー、警報装置などが追加されています。

    絶滅から守るために集められたカメが、

    「珍しいから」

    という理由で再び狙われる。

    希少性そのものが、保全活動を難しくしています。

    それでも繁殖は始まっている

    バジャルタドロガメには希望もあります。

    2023年には、オーストリアのTurtle Islandで世界初となる飼育下繁殖に成功しました。

    さらにメキシコでは2024年、バジャルタドロガメを保護・繁殖するための専用保全施設が完成しています。

    グアダラハラ動物園でも繁殖技術の開発が進み、メキシコ国内で初めて飼育下孵化に成功しています。

    つまり、人間にはこの小さなカメを増やす技術が少しずつでき始めています。

    しかし、増やしたカメを帰す湿地が失われれば、飼育下繁殖だけでは問題は解決しません。

    生息地の99%以上が失われた可能性

    Turtle Islandによる現地保全プロジェクトでは、バンデラス湾周辺の都市化によって、バジャルタドロガメが利用してきた湿地環境の99%以上が失われたと報告されています。

    現在知られている生息地は、わずか数か所にまで減っています。

    プエルト・バジャルタ周辺は観光開発が盛んな地域です。

    ホテル。

    道路。

    住宅。

    商業施設。

    人間にとって便利な土地へ変わるほど、小さな湿地は地図から消えていきます。

    世界最小のカメが必要としている場所は、大きなジャングルではありません。

    人間から見れば、埋め立てても大きな変化には見えない、小さな水辺なのです。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番気になるのは、カメの「希少価値」が、そのカメを危険にしてしまうことです。

    新種だった。

    世界最小だった。

    分布域が狭かった。

    絶滅寸前だった。

    本来なら、これらは

    「だから守ろう」

    という理由になるはずです。

    でも、違法なペット市場では、

    「だから欲しい」

    という理由にもなってしまう。

    珍しくなればなるほど値段が上がり、値段が上がるほど野生から持ち出す人間が現れる。

    絶滅へ近づくほど商品価値が高くなるという、ものすごく危険な循環です。

    湯川亀吉の一言

    珍しいから欲しい・高価だから欲しい。

    そんな考えに取り憑かれていた時期が、俺にもありました。

    出典

    Turtle Survival Alliance
    「Over 2,000 Wild Turtles Seized in Mexico; Conservationists Race to Save Survivors」

    IUCN SSC Tortoise and Freshwater Turtle Specialist Group
    「Kinosternon vogti – Vallarta Mud Turtle」

    Turtle Island
    「The Vallarta Mud Turtle | Mexico」

    Mongabay
    メキシコの大規模なカメ密輸摘発に関する報道。

  • 【世界の亀ニュース】マダガスカルで洪水に流された絶滅危惧のリクガメたちを救助

    【世界の亀ニュース】マダガスカルで洪水に流された絶滅危惧のリクガメたちを救助

    今回のニュース

    2025年1月、マダガスカル南部で、絶滅危惧種のリクガメたちが洪水に巻き込まれ、大規模な救助活動が行われました。

    AP通信によると、サイクロン「Dikeledi」の影響で、Lavavolo Tortoise Centerが洪水に見舞われ、保護されていたホウシャガメやクモノスガメなど約12,000匹が流される事態になりました。これらのリクガメの多くは、もともと違法取引から保護された個体だったと報じられています。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:マダガスカル南部
    元記事の言語:英語
    元記事の公開時期:2025年1月
    情報の種類:過去アーカイブ・救助・保護活動・災害

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、主にホウシャガメクモノスガメです。

    ホウシャガメは、黒い甲羅に黄色い放射状の模様を持つ美しいリクガメとして知られています。AP通信の記事では、ホウシャガメは100年以上生きることもある長寿のリクガメであり、マダガスカルでは生息地破壊や密猟、違法ペット取引などにより深刻な危機にあると紹介されています。

    ニュースの要約

    Lavavolo Tortoise Centerには、約12,000匹のホウシャガメやクモノスガメが保護されていました。

    しかし、サイクロンによる洪水で施設が浸水し、多くのリクガメたちが流されてしまいました。
    記事によると、施設スタッフ、地域住民、警察官たちが協力し、水の中を歩きながら容器を使ってリクガメを集めたり、壊れた建物の一部を即席のいかだのように使ったりして救助にあたったとされています。

    Turtle Survival Allianceのマダガスカル責任者は、10,000匹以上を救えた可能性があるとしつつも、約700匹の死亡も確認されたと報じられています。多くの個体は施設に戻されましたが、洪水によって保護施設そのものにも大きな被害が出ました。

    なぜ今、このニュースを紹介するのか

    このニュースは2025年の記事ですが、「亀を守る」ということを考えるうえで、とても重要な記録だと思います。

    これらのリクガメたちは、違法取引から救われたあと、保護施設で守られていました。
    けれど、その保護施設もまた、自然災害によって危機にさらされる。

    亀を守るということは、密猟や違法取引と戦うだけではありません。
    保護したあとの場所をどう守るのか。
    災害が起きたとき、どう救うのか。
    地域の人たちとどう協力するのか。

    そういう現実まで含めて、亀の保護なのだと感じます。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、地域の人たちがリクガメを救うために動いたことです。

    水に流された何千匹ものリクガメを見つけ、集め、運び、戻す。
    それは簡単なことではありません。

    しかも相手は、ただの「数」ではない。
    一匹一匹が、長い時間を生きるリクガメです。

    25歳から50歳くらいの個体でも、リクガメの世界ではまだ若い個体として表現されています。人間の感覚とはまったく違う時間を生きる生き物たちが、洪水の中で必死に生き延びようとしていた。そう思うと、このニュースは単なる災害救助ではなく、亀たちの時間を守るための出来事に見えてきます。

    湯川亀吉の一言

    なるほど。

    出典

    元記事:AP News「Thousands of endangered tortoises are rescued in Madagascar after their sanctuary is flooded」

  • 【世界の亀ニュース】一軒の家から10,976匹 密輸から救われたホウシャガメを、もう一度マダガスカルの森へ

    【世界の亀ニュース】一軒の家から10,976匹 密輸から救われたホウシャガメを、もう一度マダガスカルの森へ

    今回は、マダガスカルにしか生息しない美しいリクガメ、ホウシャガメをめぐる大規模な救護と野生復帰のニュースを紹介します。

    2018年4月。

    マダガスカル南西部のトゥリアラで、一軒の民家から発見されたホウシャガメは、

    10,976匹。

    数十匹でも、

    数百匹でもありません。

    一万匹を超えるカメが、一つの建物に集められていました。

    そこから始まったのは、

    カメを押収して終わる保護活動ではありませんでした。

    救護する。

    健康を取り戻す。

    何年も育てる。

    野生へ戻せる個体を選ぶ。

    帰る森を確保する。

    地域住民と一緒にその場所を守る。

    そして、

    もう一度、人間の手から離す。

    長い時間をかけた「密輸から野生復帰へ」の計画です。

    今回のニュース

    2018年4月10日、マダガスカル南西部の都市トゥリアラで、警察と環境当局が一軒の住宅を捜索しました。

    そこで確認されたのが、

    10,976匹のホウシャガメでした。

    発見されたカメの多くは若い個体で、十分な水や餌を得られない状態に置かれていました。

    Turtle Survival Alliance(TSA)を中心に、マダガスカル国内外の動物園、獣医師、飼育スタッフなどが救護に参加。

    生き残った個体は、トゥリアラから北へ約29km離れたIfatyの保護施設へ移され、健康確認や水分補給、治療、個体識別などが進められました。

    この事件は、

    TSAがそれまで経験した中でも最大規模のリクガメ救護の一つとなりました。

    どこの国・地域の話か

    国:マダガスカル
    最初の大量押収:トゥリアラ周辺
    発見日:2018年4月10日
    対象種:ホウシャガメ
    学名:Astrochelys radiata
    英名:Radiated Tortoise
    情報の種類:リクガメ・密輸・違法取引・救護・野生復帰・地域保全

    ホウシャガメは、マダガスカル南部から南西部にのみ自然分布する固有種です。

    乾燥した低木林、トゲの多いスパイニーフォレストなどに暮らしています。

    登場する亀

    今回の主役は、

    ホウシャガメ

    学名は、

    Astrochelys radiata

    英語ではRadiated Tortoiseと呼ばれます。

    京都市動物園でも「ホウシャガメ」という和名が使われており、最大甲長は約40cmと紹介されています。

    名前の由来は、

    甲羅です。

    黒っぽい甲板の中心から、

    黄色い線が外側へ向かって伸びる。

    まるで光が放射しているように見えます。

    Smithsonian’s National Zooは、この放射模様について、インドホシガメなど他の星模様を持つリクガメよりも細かく複雑であることを特徴として挙げています。

    世界で最も美しいカメの一つ

    ホウシャガメは、その甲羅の美しさから、

    「世界で最も美しいリクガメの一つ」

    として紹介されることがあります。

    美しい。

    珍しい。

    欲しい。

    その評価が、

    このカメを追い詰める理由にもなりました。

    野生個体は国際的なペット取引のために捕獲され、さらにマダガスカル国内では食用目的の捕獲も続いてきました。

    生息地そのものも、農地化や炭づくりなどによって失われています。

    昔は「触ってはいけないカメ」だった

    マダガスカル南部の一部地域には、

    ホウシャガメを傷つけたり食べたりすることを禁じる伝統的な**「fady(ファディ)」**があります。

    祖先と結び付けて考えられる地域もあり、

    長い間、

    文化そのものがホウシャガメを守ってきました。

    しかし、

    地域外から人が入る。

    価値の高いカメとして売買される。

    伝統的な禁忌を共有しない人が捕る。

    その結果、

    文化だけでは個体群を守れなくなっていきました。

    2018年4月、一軒の家に10,976匹

    そして2018年4月10日。

    トゥリアラの住宅で、

    10,976匹。

    とてつもない数のホウシャガメが発見されました。

    普通に考えれば、

    一日や二日で集められる数ではありません。

    一匹。

    また一匹。

    別の場所からも一匹。

    それが積み重なって、

    一万匹を超えた。

    その数だけ、

    野生の森からホウシャガメが消えていたことになります。

    そして半年後、また数千匹

    さらに同じ2018年10月にも、大規模な押収が発生しました。

    TSAによると、2018年だけで保護下へ入ったホウシャガメは17,000匹を超えました。

    つまり、

    4月の事件は、

    一度だけ起きた異常な出来事ではありませんでした。

    それだけ大規模な捕獲と違法取引が、

    このカメを取り巻いていたということです。

    保護した瞬間から、別の問題が始まる

    密輸されるカメを見つけた。

    押収した。

    助かった。

    そう思いたくなります。

    でも、

    一万匹を保護した瞬間、

    今度は人間が一万匹を生かさなければなりません。

    水。

    餌。

    飼育場所。

    病気の確認。

    衛生管理。

    個体識別。

    獣医療。

    スタッフ。

    そして、

    何年間も続く費用。

    TSAはマダガスカルに複数の保全施設を整備し、押収されたホウシャガメの大規模な飼育体制を作りました。現在のTSAのマダガスカル事業でも、違法取引から救出したホウシャガメの救護、長期飼育、野生復帰が主要活動になっています。

    でも、ずっと飼うことが目的ではない

    何万匹も保護している。

    だったら、

    大きな保護施設を作って、

    そこで一生飼えばいい。

    そう考えることもできます。

    でも、

    ホウシャガメは本来、

    飼育施設にいる動物ではありません。

    マダガスカル南部の森を歩くリクガメです。

    そこでTSAは、

    Confiscation to Reintroduction Strategy

    という考え方を進めました。

    日本語にすると、

    「押収から再導入へ」。

    密輸から救出したカメを、

    可能な限り、

    もう一度野生へ戻していく計画です。

    ただ森へ置けばいいわけではない

    一度長期間飼育したカメを、

    空いている森へ置けばいい。

    そんな単純な話でもありません。

    その地域に病気を持ち込まないか。

    健康状態は十分か。

    野生で餌を取れるか。

    その森に十分な食物があるか。

    再び密猟されないか。

    地域の人々が保護に協力してくれるか。

    一つずつ確認する必要があります。

    そのため、放流候補となった個体には獣医師による健康検査が行われています。

    感染症検査も含め、

    「放しても大丈夫なカメか」

    を確認します。

    2021年、最初の1,000匹

    そして2021年。

    大きな転換点が来ます。

    TSAは、

    1,000匹のホウシャガメを、マダガスカル南部の地域住民が保護する森林へ移しました。

    違法取引から救出され、

    何年間も人間の管理下で暮らしてきたカメたちです。

    ただし、

    いきなり森全体へ自由にしたわけではありません。

    まず約6ヘクタールの順応エリアに入り、

    その土地で生活する期間が設けられました。

    そして2022年3月、

    囲いが開かれ、

    カメたちは周囲のスパイニーフォレストへ自由に移動できるようになりました。

    「ソフトリリース」という考え方

    これは、

    soft release(ソフトリリース)

    と呼ばれる方法です。

    人間の管理下から、

    いきなり完全な野生へ移すのではない。

    まず、

    これから暮らす場所に慣れてもらう。

    気温。

    植物。

    地面。

    匂い。

    雨。

    その土地そのものを覚える。

    そして、

    囲いを開ける。

    カメは、

    自分の意思で外へ歩いていきます。

    カメに発信器を付ける

    放したら、

    それで終わりではありません。

    再導入個体の一部には、

    VHF無線発信器やGPSロガーが装着されました。

    どこへ歩くのか。

    どのくらい移動するのか。

    生き残っているのか。

    どの環境を利用するのか。

    そうした情報を調べます。

    人間の視界から消える。

    でも、

    完全には見失わない。

    それが、

    次に何千匹ものカメを戻すためのデータになります。

    2024年、さらに1,000匹

    取り組みは、

    最初の1,000匹で終わりませんでした。

    2024年5月23日。

    World Turtle Day。

    TSAは、

    さらに1,000匹のホウシャガメを、マダガスカル南西部の地域保護林へ放しました。

    この個体たちも、放流前に健康評価を受け、

    6か月間の隔離期間を経ています。

    2018年に押収された膨大な数のカメたちが、

    少しずつ、

    森へ帰り始めています。

    最終目標は2万匹以上

    TSAは、

    保護下にいるホウシャガメのうち、

    2万匹以上を将来的に野生へ戻す

    という大規模な計画を掲げています。

    2万匹。

    想像するのも難しい数です。

    でも、

    そもそもそれほど多くのカメが、

    人間によって森から持ち出されました。

    だから、

    今度は逆の流れを作ろうとしています。

    森から人間へ。

    ではなく、

    人間から森へ。

    カメだけ戻しても意味がない

    ただし、

    森が安全でなければ、

    2万匹戻しても意味がありません。

    もう一度捕られるかもしれない。

    生息地が失われるかもしれない。

    だから再導入地は、

    地域住民自身が管理する保護林

    として整備されています。

    カメを運ぶだけではない。

    森を守る。

    地域住民と話す。

    監視する人を育てる。

    地域の暮らしと保全を両立させる。

    そこまで作ってから、

    カメを戻します。

    人間がいるから減った。でも、人間がいるから戻せる

    今回のニュースには、

    少し不思議なところがあります。

    ホウシャガメを減らした大きな原因の一つは、

    人間です。

    人間が捕った。

    人間が売った。

    人間が森を変えた。

    でも、

    今ホウシャガメを戻しているのも、

    人間です。

    警察。

    獣医師。

    飼育スタッフ。

    研究者。

    地域住民。

    政府。

    動物園。

    世界中の人が関わっています。

    人間が原因だから、

    人間は何もしないほうがいい。

    ではない。

    壊した側だからこそ、戻す仕事もできる。

    そんな例だと思います。

    京都市動物園にも「密輸から救われたホウシャガメ」がいる

    この話は、

    遠いマダガスカルだけの話でもありません。

    京都市動物園が飼育しているホウシャガメの中にも、

    日本へ密輸される途中、空港で摘発されて保護された個体がいます。

    日本にも、

    違法取引の終着点になった歴史があります。

    「珍しいカメを飼いたい」

    という需要は、

    地球の反対側の野生個体群につながっています。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番注目したいのは、

    保護されたカメを、ずっと「保護されたカメ」のままにしないことです。

    10,976匹。

    押収する。

    助ける。

    それだけでも、

    とてつもない仕事です。

    でも、

    そこで終わらなかった。

    何年も育てる。

    健康を戻す。

    森を探す。

    地域住民と一緒に守る仕組みを作る。

    順応させる。

    囲いを開ける。

    そして、

    一匹ずつ歩いていく。

    人間から遠ざかっていく。

    僕は、

    そこがすごくいいと思います。

    カメを救った証拠は、

    人間の飼育施設に何万匹いることではない。

    人間がどこにいるのか分からなくなるくらい、森へ散らばっていくこと。

    それが最終的な成功なんじゃないかな。

    湯川亀吉の一言

    人間はクズってことだな。
    密猟するやつも、保護するやつも、同じクズだ。

    出典

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「Radiated Tortoise Press Release 2018」
    2018年4月の10,976匹の大量押収と救護活動について。
    URL:
    https://shop.turtlesurvival.org/blogs/news/radiated-tortoise-press-release-2018/

    San Diego Zoo Wildlife Alliance
    「Turtle Survival Alliance Leads Rescue Mission to Save 10,976 Critically Endangered Radiated Tortoises Discovered in Massive Poaching Bust」
    2018年4月19日。
    URL:
    https://sandiegozoowildlifealliance.org/story-hub/2018/04/19/turtle-survival-alliance-leads-rescue-mission-to-save-10976-critically

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「1,000 Radiated Tortoises Return to the Wild」
    2021年8月9日。最初の大規模野生復帰計画について。
    URL:
    https://shop.turtlesurvival.org/blogs/news/1000-radiated-tortoises-return-to-the-wild

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「1,000 Radiated Tortoises Released on World Turtle Day®」
    2024年6月4日。2回目の1,000匹規模の放流について。
    URL:
    https://turtlesurvival.org/1000-radiated-tortoises-released-on-world-turtle-day/

    Turtle Survival Alliance(TSA)
    「Species Spotlight: Radiated Tortoise」
    大量押収、保全繁殖、野生復帰について。
    URL:
    https://turtlesurvival.org/turtleoftheweek-radiated-tortoise/

    Smithsonian’s National Zoo and Conservation Biology Institute
    「Radiated tortoise」
    形態、生息地、食性、保全状況について。
    URL:
    https://nationalzoo.si.edu/animals/radiated-tortoise

    京都市動物園
    「ホウシャガメ/Radiated Tortoise」
    和名、分布、形態について。
    URL:
    https://zoo.city.kyoto.lg.jp/zoo/animals/g_radiata

  • 【世界の亀ニュース】175匹から1万4,000匹へ 野生絶滅寸前のビルマホシガメを救った13年間

    【世界の亀ニュース】175匹から1万4,000匹へ 野生絶滅寸前のビルマホシガメを救った13年間

    今回は、ミャンマーだけに生息する絶滅危惧種「ビルマホシガメ」が、違法取引によって野生からほとんど姿を消したあと、飼育下繁殖と野生復帰によって劇的な回復を遂げたニュースを紹介します。

    最初に保全繁殖の基礎となったのは、

    およそ175匹。

    その多くは、違法な野生生物取引から押収されたカメでした。

    それから13年。

    2017年には、保全下にあるビルマホシガメの数は1万4,000匹を超えました。

    今回のニュース

    2017年10月11日、Wildlife Conservation Society(WCS)は、ミャンマーで進められてきたビルマホシガメの保全繁殖によって、個体数が1万4,000匹以上まで回復したと発表しました。

    2000年代初頭には数百匹程度しか残っていないと推定され、野生では繁殖可能な個体群を確認できないほど減少していました。

    ところが2004年から本格的な保全繁殖が始まり、その後、繁殖施設では年間約37%という勢いで個体数が増加。

    2017年の発表時点では、約750匹がすでに保護区内の野生環境へ戻されていました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:ミャンマー
    主な地域:ミャンマー中央部の乾燥地帯
    主な保護区:Minzontaung Wildlife Sanctuary、Shwe Settaw Wildlife Sanctuaryなど
    WCS発表日:2017年10月11日
    対象種:ビルマホシガメ
    情報の種類:リクガメ・絶滅危惧種・飼育下繁殖・密猟・野生復帰・長期保全

    ビルマホシガメは、ミャンマー中央部の乾燥地帯だけに自然分布する固有種です。乾燥した落葉樹林や草原などに生息します。

    登場する亀

    今回の主役は、ビルマホシガメです。

    学名は Geochelone platynota

    英語ではBurmese Star Tortoiseと呼ばれます。

    黒っぽい甲羅に黄色い放射状の線が入り、それが星のように見えることから「ホシガメ」と呼ばれます。福岡市動物園によると、甲長は20〜30cmほどで、大型個体では体重5kgを超えます。

    現在もIUCNレッドリストでは**Critically Endangered(CR/深刻な危機)**に分類され、ワシントン条約では附属書Iに掲載されています。

    1990年代、突然いなくなった

    ビルマホシガメが急激に減少した大きな原因の一つが、野生生物取引でした。

    WCSによると、1990年代半ばから中国南部の市場で食用や伝統医療用途として需要が高まり、その後は国際的なペット市場からも狙われるようになりました。

    もともと生息地の限られたカメです。

    そこから大量の個体が捕獲される。

    成体が消える。

    繁殖できる雌が減る。

    新しい子ガメが生まれなくなる。

    そして短期間のうちに、野生で繁殖可能な個体群を確認することが難しくなりました。

    「生態学的絶滅」と呼ばれる状態へ

    ビルマホシガメについて、当時使われた言葉が、

    ecologically extinct

    です。

    「世界から一匹残らず絶滅した」という意味ではありません。

    どこかに少数個体が残っていた可能性はあります。

    しかし、

    自然の中で個体群を維持できるだけのカメが確認できない。

    つまり、野生生態系の中では実質的に機能できなくなっている状態です。

    WCSは、2000年代初頭にはビルマホシガメがそのような状態まで追い詰められていたと説明しています。

    2004年、175匹から始める

    2004年。

    ミャンマー政府の自然保護部門とWCS、Turtle Survival Alliance(TSA)は、ビルマホシガメを絶滅から守るため、3か所に**「assurance colony(保全繁殖個体群)」**を設けました。

    スタート時の個体数は、

    推定約175匹。

    しかも、その多くは違法な野生生物取引から押収された個体でした。

    普通なら、

    「密輸から救出されたカメ」

    としてそこで話が終わるかもしれません。

    しかし、この175匹は違いました。

    ここから、

    もう一度、野生個体群を作るための親ガメ

    になりました。

    最初は飼い方から調べなければならなかった

    希少なカメを集めれば、すぐ繁殖できるわけではありません。

    何を食べるのか。

    どのくらい与えるのか。

    どのような環境で繁殖するのか。

    卵をどう管理するのか。

    孵化した子ガメをどう育てるのか。

    保全チームは、ビルマホシガメの飼育方法そのものを確立する必要がありました。

    WCSのBronx Zooの爬虫類専門家も施設設計や飼育技術に協力し、獣医師や分子生物学者は感染症の検査にも参加しました。

    そして、爆発的に増え始めた

    繁殖方法が確立されると、状況が変わります。

    繁殖施設では多数の子ガメが生まれるようになりました。

    WCSの記録では、2014〜2015年の繁殖シーズンだけでも、約3,000匹の子ガメが誕生しています。

    2017年には、繁殖施設の個体群は年間約37%というペースで増加。

    そして保全開始から約13年で、

    1万4,000匹以上。

    175匹から始まった個体群が、80倍近い規模まで増えました。

    でも「1万4,000匹飼うこと」が目的ではない

    ここが、このニュースでとても重要なところです。

    絶滅危惧種を飼育下で1万匹まで増やした。

    それだけでも巨大な成果です。

    でも、

    飼育施設の中だけで増え続けても、野生復帰にはなりません。

    WCS自身も、保全繁殖個体群をただ蓄積することが目的ではなく、最終的には自然の中で機能する野生個体群を復元しなければならないと説明しています。

    そこで2013年、

    次の段階が始まりました。

    2013年、野生へ戻す計画が始まった

    最初の本格的な野生復帰場所として選ばれたのが、

    Minzontaung Wildlife Sanctuaryです。

    いきなりカメを放すわけではありません。

    まず周囲13村で地域住民への啓発活動を実施。

    そのうえで、保全繁殖された亜成体150匹が選ばれました。

    感染症検査を行う。

    識別番号を付ける。

    マイクロチップを入れる。

    そしてカメたちは、保護区内に作られた約1ヘクタールの順応用エリアへ移されました。

    すぐに放さず、6〜18か月待つ

    順応期間は、

    6か月。

    12か月。

    18か月。

    グループによって変えられました。

    目的は、飼育施設から突然野生へ放すのではなく、その土地の気候や環境に慣れてもらうことです。

    さらに重要なのが、

    放流直後に遠くまで移動してしまうことを抑える

    という目的でした。

    保護区の外には農地があります。

    カメが人間の生活圏へ出れば、再び密猟される危険があります。

    2014年、最初のカメが森へ

    最初のグループが野生環境へ出されたのは2014年5月。

    続いて2014年11月。

    そして2015年5月。

    放された個体には小型の無線発信器が取り付けられ、森林局のスタッフが約2週間ごとに位置を確認しました。

    結果は良好でした。

    初期の再導入個体では、失われたカメは10匹未満。

    多くは順応施設から1km以内に留まりました。

    さらに、

    放された雌の一部は野生環境で産卵を始めました。

    中には放流後わずか数日で巣を作った雌も確認されています。

    カメが「野生のカメ」に戻り始めた

    この違いは大きいと思います。

    施設で生まれた。

    施設で育った。

    人間から餌をもらった。

    それでも、

    森へ出れば自分で歩く。

    自分で餌を探す。

    自分で場所を選ぶ。

    そして自分で卵を産む。

    そこで初めて、

    「飼育下で増やしたカメ」が、

    野生個体群の一員へ変わり始めます。

    2017年のWCS発表時点では、約750匹が野生環境へ戻されていました。

    成功しても、密猟は消えなかった

    ただし、この物語は一直線の成功ではありません。

    2015年。

    Minzontaung Wildlife Sanctuaryの順応施設から、複数のビルマホシガメが盗まれました。

    カメは違法取引業者へ売られ、その一部はわずか2週間ほど後に、タイの高級ペット市場向けウェブサイトへ現れました。

    保全のために増やしたカメが、

    また「珍しいペット」として狙われる。

    WCS、TSA、ミャンマー森林局、タイ当局による捜査が行われ、タイでは野生生物取引に関わった人物が逮捕されています。

    増えれば終わり、ではない

    1万4,000匹まで増えた。

    それでもWCSは、大規模な野生復帰には社会的・政治的な課題が残ると指摘していました。

    理由は単純です。

    森へ戻したカメが、また捕られれば意味がないからです。

    飼育施設で100匹増やす。

    野生へ放す。

    100匹捕られる。

    それでは野生個体群は戻りません。

    だから必要になるのが、

    繁殖技術だけではなく、

    密猟対策。

    地域住民との協力。

    保護区の管理。

    教育。

    監視。

    そして野生生物取引そのものを減らす取り組みです。

    周辺36村へ保全活動を広げる

    次の野生復帰先となったShwe Settaw Wildlife Sanctuaryでは、周囲にある36の村を対象に啓発活動が行われました。

    学校の子どもたち。

    地域住民。

    村のリーダー。

    保全チームが直接地域へ入り、ビルマホシガメを野生へ戻す理由を説明しました。

    さらに地域住民からCommunity Conservation Volunteersが選ばれ、

    カメの追跡。

    密猟情報の提供。

    保護活動。

    などへ参加する仕組みも作られました。

    「外から来た研究者がカメを守る」

    だけではない。

    その土地に住む人たちと一緒にカメを戻す。

    そこまで含めて再導入計画でした。

    現在も絶滅危惧種である

    1万4,000匹という数字を見ると、

    「もう絶滅危惧種ではないのでは?」

    と思うかもしれません。

    しかし、そうではありません。

    現在もビルマホシガメはIUCNレッドリストで**Critically Endangered(CR)**に分類されています。

    人工的な保全繁殖で多数の個体を確保できたことと、

    野生で安定した個体群が完全に復元されたことは、

    別の話です。

    それでも現在のIUCN情報では個体数傾向がIncreasing=増加と示されています。

    一度ほとんど消えたカメが、

    少なくとも再び増える方向へ動き始めています。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番面白いと思うのは、

    最初の175匹の意味です。

    その175匹の多くは、

    密輸されようとしていたカメでした。

    人間に捕まった。

    商品として運ばれた。

    そして途中で押収された。

    本来なら、

    その一匹一匹は野生個体群から失われた存在です。

    でも、

    そこで終わらなかった。

    そのカメたちを集める。

    繁殖させる。

    子どもが生まれる。

    その子どもがまた繁殖する。

    何世代も重ねる。

    そして、

    今度はその子孫を森へ返す。

    野生から奪われたカメが、野生を再建する親になった。

    僕はそこが、このニュースの一番すごいところだと思います。

    湯川亀吉の一言

    ビルマホシガメ欲しかったな〜。

    希少価値がある亀や高額な亀って、なんであんなに魅力的なんだろう?

    出典

    Wildlife Conservation Society(WCS)
    「Star Tortoise Makes Meteoric Comeback」
    2017年10月11日。ビルマホシガメが1万4,000匹以上まで回復したこと、保全繁殖開始時の約175匹、野生復帰数などの主要情報。

    Wildlife Conservation Society Myanmar Program
    「Turtle and Tortoise / Burmese Star Tortoise Conservation」
    保全繁殖、順応施設、無線追跡、地域住民との協力、密猟事件など、野生復帰計画の詳細。

    IUCN Red List of Threatened Species
    「Burmese Star Tortoise – Geochelone platynota
    現在の保全評価はCritically Endangered。個体数傾向はIncreasing。

    福岡市動物園
    「ビルマホシガメ」
    和名、生息地、体格、食性、繁殖、CITES・IUCNの保全情報。