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  • 【世界の亀ニュース】DNAが99%読めなくても分かった 博物館の骨から蘇ったガラパゴスゾウガメ2つの絶滅系統

    【世界の亀ニュース】DNAが99%読めなくても分かった 博物館の骨から蘇ったガラパゴスゾウガメ2つの絶滅系統

    今回は、

    生きているカメを探す話ではありません。

    化石でもありません。

    博物館の棚に残されていた、

    古いゾウガメの骨

    の話です。

    骨からDNAを取り出す。

    でも、

    ほとんど壊れている。

    現在の動物なら、

    一個体から膨大なDNA情報を読み取ることができます。

    ところが今回扱われた歴史的標本の一部では、

    読み取れるゲノム情報は1%にも満たないほどでした。

    普通なら、

    「情報が少なすぎる」

    として解析から外されてもおかしくありません。

    でも研究者たちは、

    そのわずかな断片を捨てませんでした。

    残っているDNAを集める。

    現在生きているガラパゴスゾウガメのゲノムと比べる。

    他の博物館標本とも比べる。

    そして、

    巨大な「ゾウガメの家系図」の中へ、

    そのDNAの破片を一つずつ置いていきました。

    すると、

    そこから二つの、

    もう存在しない系統が浮かび上がってきました。

    今回の研究

    研究論文のタイトルは、

    “Integration of ultra-low coverage whole-genome sequences for reconstructing the evolutionary history of Galapagos giant tortoises”

    日本語にすれば、

    「超低カバレッジ全ゲノム配列を統合したガラパゴスゾウガメの進化史の復元」

    というような内容です。

    研究を主導したのはAlexander Ochoa氏らの国際研究チーム。

    Yale University。

    Newcastle University。

    University of California, Berkeley。

    University of Connecticut。

    Woods Hole Oceanographic Institution。

    University of Crete。

    など、複数の研究機関が参加しています。

    対象になったのは、

    ガラパゴス諸島に暮らしてきたChelonoidis属の巨大リクガメたち。

    研究では、

    現生13系統と絶滅4系統

    からなるガラパゴスゾウガメの進化的放散を扱っています。

    どこのカメなのか

    今回特に注目されたのは、

    二つの島です。

    サンクリストバル島。

    そして、

    サンタフェ島。

    どちらもエクアドルのガラパゴス諸島にあります。

    しかし、

    今回調べられたカメたちは、

    もう島を歩いていません。

    どちらも、

    絶滅した系統です。

    サンタフェ島には、かつて巨大なリクガメがいた

    現在のサンタフェ島には、

    在来のゾウガメは残っていません。

    しかし昔の航海記録には、

    島からゾウガメが持ち去られた記録があります。

    さらに、

    California Academy of Sciencesの探検隊が集めた骨片も残されていました。

    これまでの研究から、

    サンタフェ島のゾウガメは、

    他島のゾウガメとは異なる独自の分類群だった可能性が高いことが知られていました。

    しかも、

    完全な標本が残る前に絶滅してしまったため、

    正式な学名すら付いていません。

    名前のない、

    絶滅したゾウガメ。

    今回の研究では、

    その残された骨から得たゲノム断片を使って、

    このサンタフェ系統がガラパゴスゾウガメの進化史の中で、

    独立した系統だったことを改めて確認しました。

    そして、さらに不思議なのがサンクリストバル島

    サンクリストバル島には、

    現在もゾウガメが生きています。

    だから、

    「絶滅したサンクリストバル島のゾウガメ」

    という表現は、

    少し変に聞こえます。

    でも、

    ここには大きな謎があります。

    1906年。

    California Academy of Sciencesの調査隊がサンクリストバル島を訪れました。

    島では一匹の生きたゾウガメが採集されました。

    一方、

    島内の洞窟からは、

    およそ17個体分のゾウガメの骨

    が見つかっています。

    当然、

    同じ島のカメなのだから、

    同じ系統だと思います。

    ところが、

    違いました。

    洞窟のゾウガメと、現在のゾウガメは違った

    2022年。

    研究チームが、

    洞窟から見つかった歴史標本のミトコンドリアDNAを調べました。

    すると、

    驚くことが分かりました。

    洞窟にあった5個体は、

    現在サンクリストバル島に暮らすゾウガメとは、

    大きく異なる遺伝系統

    だったのです。

    一方、

    1906年に生きた状態で採集された一匹は、

    現在のサンクリストバル個体群に近いDNAを持っていました。

    つまり過去のサンクリストバル島には、

    少なくとも遺伝的に大きく異なる、

    二つのゾウガメ系統が同時期に存在していた可能性

    が出てきました。

    現在残っているのは、

    その一方だけ。

    洞窟で見つかった系統は、

    20世紀までに絶滅したと考えられています。

    でも、2022年には大きな問題が残っていた

    2022年の研究には、

    弱点がありました。

    古い骨のDNAが、

    あまりにも壊れていたからです。

    研究者が十分に読み取れたのは、

    主にミトコンドリアDNA。

    ミトコンドリアDNAは、

    系統関係を調べる非常に有用な情報です。

    ただし、

    生物全体の遺伝情報のごく一部しか表していません。

    研究者自身も当時、

    「核DNAがなければ、この二つが本当に独立した進化的存在だったのか断定できない」

    という慎重な結論を出していました。

    そして2026年。

    その続きを、

    ようやく調べることができました。

    読めたDNAは、わずか0.008〜0.139倍

    今回の研究で使われた古いDNAは、

    状態が非常に悪いものでした。

    ゲノム解析では、

    同じ場所を平均何回読めたかを「coverage=カバレッジ」で表します。

    通常、

    信頼性の高い全ゲノム解析では、

    同じ領域を何度も読みます。

    ところが今回の歴史標本は、

    わずか、

    0.008×〜0.139×。

    研究論文では、

    これをultra-low coverage whole-genome sequencing(ulcWGS)

    と呼んでいます。

    ほとんど読めていない。

    でも、

    ゼロではない。

    その「ほとんど何もない」に近いDNAを、

    どう使うか。

    それが今回の研究の核心です。

    DNAの「穴」を勝手に埋めなかった

    ここも面白いところです。

    DNAが足りないと、

    既知のゲノム情報を参考にして、

    欠損部分を統計的に推定する方法があります。

    しかし今回の研究では、

    超低カバレッジ標本について、

    欠損した遺伝型を推定して埋める方法に頼っていません。

    代わりに、

    残っている情報だけを使って、

    複数の解析ツールを組み合わせました。

    研究チームは、

    EPA-ng。

    smartsnp。

    Admixfrog。

    NGSadmix。

    などを使い、

    わずかなDNA断片を、

    高品質なゲノムから作られた系統樹へ配置しました。

    言ってみれば、

    1000ピースのジグソーパズルがある。

    手元に残っているのは、

    10ピースくらい。

    その10ピースだけを見て、

    「これはどの絵の一部なのか」

    を探したようなものです。

    そして、二つの絶滅系統が見えてきた

    結果。

    サンクリストバル島の歴史的系統。

    サンタフェ島の系統。

    どちらも、

    ガラパゴスゾウガメの進化史の中で、

    独立した進化的実体だった

    ことが支持されました。

    つまり、

    「ミトコンドリアDNAが少し違っていただけ」

    ではなかった。

    核ゲノムの断片を使っても、

    別の歴史を持つ集団として認識できたわけです。

    サンクリストバル島の話は、さらにややこしい

    そして、

    ここには分類学上のものすごく面白い問題があります。

    現在、

    サンクリストバル島のゾウガメには、

    Chelonoidis chathamensis

    という学名が使われています。

    ところが、

    この種を最初に定義する基準標本、

    つまりホロタイプになっている個体は――

    現在生きている系統ではありません。

    1906年に洞窟から発見された、

    絶滅した方の系統の標本

    なのです。

    これは、

    かなりすごい話です。

    今生きているカメの名前が変わる可能性がある

    もし将来、

    絶滅した洞窟系統と現在の系統が、

    正式に別種と判断されたとします。

    すると、

    Chelonoidis chathamensisという名前は、

    基準標本が属している

    絶滅系統側

    に残ります。

    そして、

    現在サンクリストバル島に何千匹も生きているゾウガメには、

    新しい学名を付ける必要が出てくる可能性があります。

    ただし、

    現時点で新種として正式に命名されたわけではありません。

    だから、

    「新種発見」

    と書いてしまうのはまだ早い。

    今は、

    分類そのものが揺れている途中

    です。

    100年以上前の骨が、現在の名前を揺らしている

    これが、

    博物館標本の面白いところです。

    1906年。

    研究者が、

    洞窟から骨を拾う。

    標本番号を付ける。

    博物館へ持ち帰る。

    100年以上、

    棚の中にある。

    その当時には、

    DNA解析なんてありません。

    まして、

    全ゲノム解析もない。

    でも標本は、

    捨てられずに残っていた。

    そして2026年。

    その骨から、

    わずかなDNAを取り出す。

    すると、

    現在生きているカメの学名まで再検討しなければならない可能性

    が出てきました。

    標本は、

    死んだ動物を展示するものだけではないんですね。

    未来の技術で、

    もう一度調べることができる、

    時間を保存した資料

    でもあります。

    サンタフェのカメには、完全な標本すらない

    一方、

    サンタフェ島のケースも興味深いです。

    この島のゾウガメは、

    科学者が完全な標本を集める前に絶滅しました。

    残っているのは、

    骨の一部。

    だから、

    独自のゾウガメだったことは遺伝学的に支持されているのに、

    正式な種記載ができるほどの標本がありません。

    つまり、

    存在していた。

    遺伝的にも違う。

    でも、

    名前がない。

    自然界では、

    名前を付ける前に消えてしまう生き物もいる。

    ガラパゴスには「島ごとのカメ」がいる

    なぜ、

    こんなに複雑なのでしょうか。

    ガラパゴスゾウガメの最大の特徴の一つが、

    島ごと、あるいは島の地域ごとに独自の系統へ分かれていること

    です。

    海を隔てて、

    島がある。

    ある島へゾウガメが到達する。

    そこから長い時間、

    別の島の集団とはほとんど交流しない。

    すると、

    それぞれが独自に進化していきます。

    甲羅の形。

    体の大きさ。

    首の長さ。

    そして、

    DNA。

    一つの祖先から始まったゾウガメが、

    島々で枝分かれしていく。

    ガラパゴスは、

    まさに巨大な進化実験場です。

    でも、人間がその地図を混ぜてしまった

    さらに話を複雑にしたのが、

    人間です。

    過去の船乗りたちは、

    ガラパゴスゾウガメを食料として船へ積み込みました。

    ゾウガメは、

    餌や水なしでも比較的長期間生きることができる。

    そのため、

    航海中の食料として利用されました。

    そして、

    別の島へ運ばれた個体の一部が、

    そこで逃げたり、

    捨てられたりした可能性があります。

    別々に進化していた島のカメが、

    人間によって再び出会う。

    そして、

    交雑する。

    絶滅したDNAが、まだ生きているかもしれない

    ここから、

    今回の研究は、

    少し不思議な話になります。

    ある系統そのものは、

    絶滅した。

    でも、

    その系統のカメが過去に他の島へ運ばれ、

    別系統のゾウガメと交雑していたとします。

    すると、

    その子孫には、

    絶滅した系統のDNAが残っている可能性があります。

    生き物としては、

    もう存在しない。

    でも、

    ゲノムの一部分は、

    別のカメの中に生き続けている。

    Ochoa氏らも、

    絶滅系統の遺伝情報が現在の交雑個体の中に残っている可能性を指摘しています。

    僕は、

    ここがものすごく面白い。

    「絶滅」とは、どこまで消えたら絶滅なのだろう

    一匹も純粋な個体がいなくなる。

    それは、

    絶滅です。

    でも、

    DNAの10%が、

    別のカメの中に残っていたら?

    5%なら?

    1%なら?

    生物学的には、

    元の系統が復活したことにはなりません。

    でも、

    その系統が何百万年かけて獲得してきた遺伝情報の一部は、

    まだ世界から完全には消えていない。

    「絶滅」という言葉は、

    個体を見ると明確なのに、

    ゲノムまで見ると、

    少し境界がぼやけます。

    そして今回の方法は、カメだけの話ではない

    研究チームが重要視しているのは、

    ガラパゴスゾウガメだけではありません。

    世界中の博物館には、

    DNAの状態が悪すぎて、

    これまで詳細なゲノム研究に使えなかった標本が大量にあります。

    骨。

    皮。

    歯。

    羽。

    角。

    100年前。

    200年前。

    もっと昔。

    これまで、

    「DNAが少なすぎる」

    として諦められていた標本でも、

    今回のような手法を使えば、

    進化史の中でどこに位置するのか調べられる可能性があります。

    つまり、

    博物館には、

    まだ読まれていない進化史が大量に眠っている。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回、

    僕が一番面白いと思うのは、

    カメそのものはもういないのに、そのカメについて新しいことが今も発見されている

    というところです。

    普通、

    絶滅したら、

    そこで観察は終わると思います。

    もう、

    歩いているところを見られない。

    何を食べるかも調べられない。

    繁殖も見られない。

    でも、

    標本がある。

    DNAがある。

    昔の航海記録がある。

    新しい技術ができる。

    すると、

    絶滅したあとでも、

    その生き物についての情報は増えていく。

    カメは、

    もう増えない。

    でも、

    人間が知っている「そのカメ」は、今も増え続ける。

    これは、

    不思議です。

    湯川亀吉の一言

    ゾウガメって全員が性格良さそうですよね。

    出典

    Yale University
    「Reading the giant tortoise DNA that time forgot」
    2026年8月26日。超低品質の博物館DNAからサンクリストバル島とサンタフェ島の絶滅系統を解析した研究を紹介しています。
    Yale Universityの公式記事を読む

    Proceedings of the Royal Society B / PubMed
    Ochoa, A. et al.
    「Integration of ultra-low coverage whole-genome sequences for reconstructing the evolutionary history of Galapagos giant tortoises」
    2026年。0.008〜0.139×という超低カバレッジゲノムを用いた解析手法と、絶滅2系統の進化的位置について。
    PubMedで論文情報を見る

    Heredity
    「A new lineage of Galapagos giant tortoises identified from museum samples」
    2022年。サンクリストバル島の洞窟標本から、現在の個体群とは異なるミトコンドリア系統が発見された先行研究。
    Heredityの原著論文を見る

    Galápagos Conservancy
    「Giant Tortoise Restoration in the Galápagos Islands」
    サンタフェ島の絶滅ゾウガメが独立した分類群だったこと、完全標本がなく正式な学名がないことなど。
    Galápagos Conservancyの資料を見る

  • 【世界の亀ニュース】180年ぶりにゾウガメがフロレアナ島へ 失われた血統を受け継ぐ158匹が帰還

    【世界の亀ニュース】180年ぶりにゾウガメがフロレアナ島へ 失われた血統を受け継ぐ158匹が帰還

    今回は、ガラパゴス諸島のフロレアナ島に、約180年ぶりにゾウガメが戻った歴史的なニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年2月20日、エクアドルのガラパゴス諸島にあるフロレアナ島へ、フロレアナゾウガメの血統を受け継ぐ若いゾウガメ158匹が放されました。

    フロレアナ島では、19世紀半ばに固有のゾウガメが姿を消して以来、約180年間にわたってゾウガメが生息していませんでした。

    今回の放逐によって、失われていたゾウガメの生態的な役割が、島へ戻り始めることになります。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:エクアドル共和国
    場所:ガラパゴス諸島・フロレアナ島
    元記事の言語:英語・スペイン語
    放逐日:2026年2月20日
    情報の種類:リクガメ・野生復帰・遺伝子研究・生態系再生・保護活動

    フロレアナ島は、ガラパゴス諸島の中でも早い時期から人間が暮らし始めた島です。現在は約160人が生活しており、自然環境の再生と島民の暮らしを両立させる大規模な復元事業が進められています。

    登場する亀

    このニュースの中心となるのは、フロレアナゾウガメの血統を受け継ぐゾウガメです。

    フロレアナ島にかつて生息していたゾウガメの学名は、Chelonoidis niger nigerです。

    ただし、今回島へ放された158匹を、かつてのフロレアナゾウガメと完全に同じ純粋な個体として扱うことはできません。

    現在、純粋なフロレアナゾウガメとして確認されている生存個体はいません。今回放されたのは、絶滅したフロレアナゾウガメと、イサベラ島のウォルフ火山に生息するゾウガメの血を受け継ぐ交雑個体の子孫です。

    ニュースの要約

    今回放された158匹は、サンタクルス島にある繁殖施設で育てられた、12歳から14歳の若いゾウガメです。

    一般的に、ガラパゴスゾウガメは5歳から7歳ほどまで成長すると、外来動物などの危険に耐えられる可能性が高くなるとされています。今回の個体たちはその年齢を十分に超え、野生で暮らせる大きさになるまで慎重に育てられました。

    放逐は、フロレアナ島で植物が豊富になり、季節的な水場も現れる雨季に合わせて行われました。

    島へ戻った直後から食物や水を確保しやすくすることで、新しい環境へ定着できる可能性を高めています。

    絶滅したはずの血統は、別の島に残っていた

    フロレアナゾウガメは、捕鯨船や航海者による大量捕獲、そして人間が持ち込んだ外来生物などの影響を受け、19世紀半ばまでにフロレアナ島から姿を消しました。

    長い間、その血統は完全に失われたと考えられていました。

    しかし2000年、フロレアナ島から離れたイサベラ島のウォルフ火山で、周囲の個体とは甲羅の形が異なるゾウガメが発見されました。

    遺伝子を調べた結果、その個体たちはフロレアナゾウガメの血統を受け継いだ交雑個体であることが分かりました。

    かつて捕鯨船の乗組員たちは、食料としてゾウガメを船へ積み込み、航海の都合によって別の島へ置いていくことがありました。

    フロレアナ島から運び出されたゾウガメの一部がイサベラ島に残され、現地のゾウガメと交雑したことで、その遺伝的な血統が約180年間残った可能性があります。

    遺伝子から血統をつなぎ直す

    研究者とガラパゴス国立公園のスタッフは、フロレアナゾウガメの血を濃く受け継ぐ個体をウォルフ火山から選び出し、繁殖施設へ移しました。

    2015年と2020年には、繁殖計画に使用する成体が新たに施設へ運ばれ、遺伝子情報をもとに交配の組み合わせが検討されました。

    目的は、絶滅したフロレアナゾウガメを完全に再現することではありません。

    それは不可能だと、計画を進める研究者自身が説明しています。

    目指しているのは、残された遺伝的な血統をできるだけ多く受け継ぎ、かつてフロレアナゾウガメが島で果たしていた生態的な役割を、再び担うことのできる個体群を作ることです。

    158匹すべてをGPSで追跡

    フロレアナ島へ放された158匹には、軽量のGPS発信器が取り付けられています。

    研究チームは、ゾウガメが島のどこを歩き、どの場所で餌を食べ、どの環境を好んで利用するのかを継続的に記録します。異常な移動や健康上の問題が見つかった場合には、早い段階で対応することもできます。

    繁殖に使われている成体は、今後も施設に残ります。

    新しい世代が十分な大きさへ成長するたびに、年間およそ25匹から100匹をフロレアナ島へ追加放逐し、何十年もかけて自立した個体群を形成する計画です。

    ゾウガメは、島を作り変える存在

    ゾウガメは、ただ島の植物を食べて暮らすだけの動物ではありません。

    植物を食べながら島内を移動し、糞と一緒に種を遠くへ運びます。

    大きな体で草や低木の間を進むことで道を作り、地面を踏み、植物が密集しすぎない開けた環境を維持します。水や泥のある場所では、ほかの生き物も利用できる小さなくぼみを作ることがあります。

    こうした働きから、ゾウガメは「生態系エンジニア」や「キーストーン種」と呼ばれます。

    フロレアナ島からゾウガメが姿を消したことで、植物の広がり方や種子の移動、開けた生息環境の維持といった働きも失われました。

    158匹の帰還は、ゾウガメという一種類を戻すだけではなく、約180年間止まっていた島の仕組みを、再び動かし始める試みです。

    12種類の生き物を島へ戻す計画

    今回のゾウガメは、フロレアナ島へ戻される予定の12種類の生き物の第一段階です。

    将来的には、現在フロレアナ島本島では見られなくなっているフロレアナマネシツグミや、固有のヘビ、フィンチ類などについても、環境が整い次第、再導入が検討されます。

    そのためには、ネズミや野生化したネコなどの外来哺乳類を減らし、島の植物や生息環境を回復させなければなりません。

    ゾウガメの帰還は、フロレアナ島全体を再生する長期計画の始まりでもあります。

    「絶滅種が復活した」とは言い切れない

    今回のニュースは、「絶滅したフロレアナゾウガメが復活した」と紹介されることがあります。

    しかし、正確には少し違います。

    かつてフロレアナ島に生息していた純粋なゾウガメと、まったく同じ遺伝子を持つ個体が復活したわけではありません。

    今回戻ったのは、絶滅した血統の一部を受け継ぐ交雑個体の子孫です。

    それでも、その価値が小さくなるわけではありません。

    かつて島から運び出されたゾウガメが、別の島で血統を残していた。

    人間はその遺伝的な痕跡を見つけ、何十年もかけて子孫を育て、再び祖先の島へ戻した。

    完全に失われたものを元通りにすることはできなくても、残されているものから、新しい未来を作ることはできます。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、人間が運び出したゾウガメの血統を、人間が再び故郷へ運んだことです。

    約200年前、ゾウガメは食料として島から連れ出されました。

    船の都合で別の島へ置き去りにされ、その場所でほかのゾウガメと交雑した。

    当時の人間に、その血統を未来へ残そうという意思はなかったはずです。

    それでも、ゾウガメは生きた。

    子孫を残し、体の中にフロレアナ島へつながる遺伝子を持ち続けた。

    そして現代の人間が、その小さな痕跡を見つけました。

    今回の158匹は、絶滅した過去をそのまま再現した存在ではありません。

    でも、失われた血統と、これから再生していく島をつなぐ、新しいゾウガメなのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    偉いね。

    出典

    Galápagos National Park Directorate
    「Un regreso a casa para Floreana」

    Galápagos Conservancy
    「A Homecoming for Floreana」

    Galápagos Conservancy
    「From the Desk of Dr. James Gibbs: On the Return of the Floreana Giant Tortoise」

    Charles Darwin Foundation
    「158 Endangered Tortoises Released onto Floreana Island, Galápagos for First Time in over 180 Years」

  • 【世界の亀ニュース】ガラパゴスの島に巨大リクガメが約180年ぶりに戻る

    【世界の亀ニュース】ガラパゴスの島に巨大リクガメが約180年ぶりに戻る

    今回は、エクアドル・ガラパゴス諸島で報じられた、巨大リクガメの再導入に関するニュースを紹介します。

    今回のニュース

    ガラパゴス諸島のフロレアナ島に、158頭の若い巨大リクガメが放たれました。

    Charles Darwin Foundationによると、フロレアナ島に巨大リクガメが戻るのは180年以上ぶりで、島の生態系回復にとって歴史的な節目とされています。放たれたのは、フロレアナ系統の血を引く若い巨大リクガメたちです。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:エクアドル、ガラパゴス諸島、フロレアナ島
    元記事の言語:英語
    公開時期:2026年2月20日
    情報の種類:新着ニュース・再導入・生態系回復

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、フロレアナ系統の巨大リクガメです。

    フロレアナ島にもともといた巨大リクガメは、過去の人間活動などにより島から姿を消しました。報道では、1800年代以降、長いあいだフロレアナ島に巨大リクガメがいない状態が続いていたと紹介されています。

    ニュースの要約

    今回放たれた158頭の若いリクガメは、フロレアナ島の失われた巨大リクガメの系統を回復するための長期プロジェクトの一部です。

    AP通信によると、これらの個体は8〜13歳で、絶滅したとされるフロレアナ島のリクガメの遺伝的要素を持つ個体として育てられてきました。今回の放流は、将来的に合計700頭を島へ戻す計画の第一歩とされています。

    また、Charles Darwin Foundationは、この再導入をフロレアナ島の生態系回復にとって重要な出来事と位置付けています。巨大リクガメは、草を食べ、種を運び、地形や植生に影響を与える存在であり、単に「一種類の動物が戻った」というだけではなく、島全体の自然の流れを取り戻す意味を持っています。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、巨大リクガメが“島をつくる存在”として見られていることです。

    リクガメは、ただのんびり歩いているだけの生き物ではありません。
    植物を食べ、種を運び、土を踏み、道を作り、何十年もかけて島の風景に影響を与えていきます。

    人間の時間では「歩みが遅い」と感じる亀も、島の時間で見れば、風景を変えていく力を持っている。

    約180年ぶりに巨大リクガメがフロレアナ島を歩くというのは、単なる保護ニュースではなく、失われた島のリズムをもう一度動かし始める出来事なのかもしれません。

    湯川亀吉の一言

    いつかガラパゴス諸島に行ってみたいな〜。

    出典

    元記事:Charles Darwin Foundation「158 endangered tortoises released onto Floreana Island, Galapagos, for first time in over 180 years」

    関連報道:AP News「Galápagos park releases 158 juvenile hybrid tortoises on Floreana to restore the ecosystem」

  • 【世界の亀ニュース】112年ぶりに現れた幻のゾウガメ 絶滅したと思われたフェルナンディナゾウガメ「フェルナンダ」

    【世界の亀ニュース】112年ぶりに現れた幻のゾウガメ 絶滅したと思われたフェルナンディナゾウガメ「フェルナンダ」

    今回は、エクアドル・ガラパゴス諸島で、100年以上絶滅したと考えられていたフェルナンディナゾウガメが再発見されたニュースを紹介します。

    一匹の雌。

    名前は、

    Fernanda(フェルナンダ)。

    2019年に見つかったこの一匹によって、

    「すでに絶滅した」

    と思われていた種の歴史が、もう一度動き始めました。

    今回のニュース

    2019年2月、ガラパゴス諸島のフェルナンディナ島で、一匹の雌の巨大なリクガメが発見されました。

    発見したのは、ガラパゴス国立公園とGalápagos Conservancyの調査チームです。

    フェルナンディナ島で、その島固有のゾウガメが最後に正式に確認されたのは1906年。

    つまり、

    112年以上にわたって、生きた個体が確認されていなかった場所で見つかった一匹でした。

    しかし、発見しただけでは、

    「フェルナンディナゾウガメが生き残っていた」

    とは断定できませんでした。

    なぜなら、

    その一匹の姿が、1906年に採集された唯一の標本とかなり違っていたからです。

    どこの国・地域の話か

    国:エクアドル
    地域:ガラパゴス諸島
    島:フェルナンディナ島
    再発見:2019年2月
    遺伝学的な確認:2021〜2022年
    対象種:フェルナンディナゾウガメ
    学名:Chelonoidis phantasticus
    情報の種類:リクガメ・再発見・遺伝子解析・絶滅危惧種・保全

    フェルナンディナ島は、ガラパゴス諸島西部に位置する火山島です。

    島の中心には活火山があり、溶岩地帯が広がる非常に厳しい環境です。科学論文では、フェルナンディナ島は地球上でも特に原始的な自然が残された大きな島の一つとして紹介されています。

    登場する亀

    今回の主役は、

    フェルナンディナゾウガメ。

    学名は、

    Chelonoidis phantasticus。

    英語ではFernandina Giant Tortoise、Fernandina Island Galápagos Tortoiseなどと呼ばれています。

    日本でも「フェルナンディナゾウガメ」という和名が使われています。

    ガラパゴスゾウガメの仲間ですが、フェルナンディナ島だけに成立した独自の系統です。

    すべては1906年の一匹から始まった

    この種について科学者が持っていた証拠は、長い間ほとんど一つしかありませんでした。

    1906年。

    California Academy of Sciencesの探検隊に参加していたRollo Beckが、フェルナンディナ島で一匹の雄のゾウガメを採集します。

    その個体が、

    フェルナンディナゾウガメとして知られる唯一の確実な標本

    になりました。

    その雄は非常に特徴的な甲羅を持っていました。

    甲羅前方が大きく持ち上がった、

    いわゆる鞍型(サドルバック型)。

    さらに縁甲板も大きく張り出していました。

    科学論文では、その形態は他のガラパゴスゾウガメと比較しても非常に特徴的だったとされています。

    ところが、

    その後、同じカメが見つからない。

    100年以上、姿を見せなかった

    1906年以降、生きたフェルナンディナゾウガメが正式に確認されることはありませんでした。

    ただし、

    完全に何の証拠もなかったわけではありません。

    その後の調査では、

    ゾウガメらしい糞。

    歩いた跡。

    植物を食べた痕跡。

    などが何度か見つかっていました。

    つまり、

    「もしかしたら、まだいるのではないか」

    という疑いは残っていた。

    でも、

    カメそのものが見つからない。

    フェルナンディナ島には広大な溶岩地帯があります。

    足場は悪い。

    気温は高い。

    植生の濃い場所もある。

    人間が島全体をくまなく探すことは簡単ではありません。

    2019年、一匹の雌が現れた

    そして2019年。

    調査チームがフェルナンディナ島へ入りました。

    その中で、

    Washington Tapia氏とガラパゴス国立公園レンジャーのJeffreys Málaga氏らが、一匹の雌のゾウガメを発見します。

    100年以上見つからなかった島で、

    本当にゾウガメがいた。

    巨大なニュースでした。

    この雌には、島の名前Fernandinaから、

    Fernanda

    という愛称が付けられました。

    でも、姿が違った

    ところが問題があります。

    フェルナンダは、

    1906年の雄とあまり似ていませんでした。

    1906年の標本は、非常に強いサドルバック型。

    一方のフェルナンダは、

    それほど極端な形をしていません。

    さらに体も比較的小さい。

    そのため、

    別のガラパゴスゾウガメが過去に人間によってフェルナンディナ島へ運ばれ、その子孫が残っていた可能性も否定できませんでした。

    つまり、

    島で見つかったからといって、

    フェルナンディナゾウガメとは限らなかった。

    113年前の標本とDNAを比較する

    そこで科学者が使ったのが、

    DNAです。

    フェルナンダから遺伝情報を取得する。

    そして比較対象にしたのが、

    1906年に採集された雄の博物館標本でした。

    100年以上前のカメと、

    今生きているカメ。

    そのゲノムを比較します。

    さらに、他のガラパゴスゾウガメ各系統のゲノムとも比較しました。

    結果は「同じ系統」

    2022年6月9日。

    科学誌Communications Biologyに論文が発表されました。

    タイトルは、

    “The Galapagos giant tortoise Chelonoidis phantasticus is not extinct”

    つまり、

    「フェルナンディナゾウガメは絶滅していない」

    です。

    ゲノム解析の結果、

    フェルナンダと1906年の雄は、

    同じフェルナンディナ島固有の系統に属することが確認されました。

    しかも、その系統は他のガラパゴスゾウガメとは遺伝的に区別されていました。

    一匹のカメによって、

    100年以上前に止まっていた種の記録がつながりました。

    見た目が違っても、同じ種だった

    この結果はとても面白いと思います。

    1906年の雄とフェルナンダ。

    甲羅の形はかなり違う。

    でもDNAでは、

    同じ系統だった。

    つまり、

    一匹の標本だけを見て、

    「この種類は必ずこの形」

    と考えることには危険があります。

    性別。

    年齢。

    生活環境。

    栄養状態。

    個体差。

    さまざまな要因によって、生き物の形は変化します。

    実際、研究者はフェルナンダが比較的小さい理由について、島の限られた植生環境によって成長が抑えられた可能性も指摘しています。

    「一匹見つかった」は復活ではない

    ここで終われば、

    「絶滅したカメが復活した!」

    という、とても明るい話になります。

    でも、

    実際にはもっと厳しい。

    フェルナンダは、

    確認されている唯一の生きたフェルナンディナゾウガメです。

    一匹だけでは、

    次の世代を作れません。

    必要なのは、

    もう一匹。

    特に繁殖可能な雄です。

    島中で仲間を探す

    フェルナンダが見つかったあと、ガラパゴス国立公園とGalápagos Conservancyは、何度もフェルナンディナ島へ調査隊を送りました。

    目的はただ一つ。

    フェルナンダの仲間を探すこと。

    2022年の大規模調査では18人のチームが島へ入り、約65平方キロメートルを捜索しました。

    火山島。

    溶岩。

    暑さ。

    険しい地形。

    そこを歩きながら、

    カメを探します。

    「いる」痕跡はある

    興味深いことに、

    フェルナンダ以外のカメがいる可能性を示す痕跡は見つかっています。

    歩いた跡。

    糞。

    カメが休んだような場所。

    Galápagos ConservancyのWashington Tapia氏は、こうした痕跡から少なくとも数匹が島にいる可能性を考えていました。

    しかし、

    実物が見つからない。

    痕跡はある。

    でもカメがいない。

    フェルナンディナ島は、

    今でも答えを簡単には見せてくれません。

    2023年になっても、仲間は見つからなかった

    2023年12月、Galápagos Conservancyはフェルナンダについて改めて報告しています。

    それまで実施された大規模な調査でも、

    新たなフェルナンディナゾウガメは確認できませんでした。

    そのためフェルナンダが、この種の最後の一匹、いわゆるendlingである可能性も現実味を帯びています。

    かつてピンタゾウガメの最後の一匹、

    「ロンサム・ジョージ」

    が歩いた道と重なります。

    「絶滅していなかった」と「助かった」は違う

    今回のニュースで重要なのは、

    この二つを分けることだと思います。

    絶滅していなかった。

    これは事実です。

    でも、

    種が救われた。

    これはまだ言えません。

    一匹見つかっただけだからです。

    もしフェルナンダ以外の個体が本当にいなければ、

    彼女がどれだけ長く生きても、

    その先で系統は途切れます。

    だから、

    再発見はゴールではない。

    むしろ、

    そこから保全が始まります。

    博物館の一匹が、100年後に役立った

    もう一つ注目したいのが、

    1906年の標本です。

    100年以上前、

    一匹の雄が採集されました。

    その個体はもう生きていません。

    でも、

    標本として残っていた。

    そのDNAがあったから、

    2019年に見つかったフェルナンダの正体を確かめることができました。

    昔の博物館資料が、

    100年以上後の絶滅危惧種保全に使われたことになります。

    標本は、

    ただ昔の生き物を展示するものではない。

    未来の科学者がまだ想像していない方法で、

    情報を取り出せる「記録」でもあります。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が一番面白いと思うのは、

    「見つからない」と「いない」は同じではない

    というところです。

    1906年。

    一匹見つかる。

    それから100年以上、

    見つからない。

    普通なら、

    もういないと思う。

    それでも、

    糞がある。

    足跡がある。

    何かがおかしい。

    そして2019年。

    本当に一匹出てきた。

    亀という動物は、

    人間が思っている以上に、

    見つからないまま生きることができるのかもしれません。

    しかも舞台は、

    巨大な火山島。

    もしかすると、

    今この瞬間も、

    人間がまだ見つけていないフェルナンディナゾウガメが、

    溶岩の向こう側を歩いているのかもしれません。

    その可能性がゼロではない。

    僕はそこに、このニュースの魅力を感じます。

    湯川亀吉の一言

    人間の本質はクソだってことがよくわかったよ。

    ま、俺が世界で一番クソだけどね。

    出典

    Communications Biology / Nature
    「The Galapagos giant tortoise Chelonoidis phantasticus is not extinct」
    2022年6月9日。フェルナンダと1906年標本の全ゲノム解析を行った科学論文。

    Galápagos Conservancy
    「Breaking: Female Tortoise Found on Fernandina Island」
    2019年2月19日。フェルナンダ発見時の公式発表。

    Galápagos Conservancy
    「Publication Confirms Fernanda as Fernandina Giant Tortoise」
    DNA解析によってフェルナンダの種が確認されたことを紹介。

    Princeton University
    「’Fantastic giant tortoise,’ believed extinct, confirmed alive in the Galápagos」
    2022年6月9日。ゲノム研究とフェルナンダの再発見について。

    Galápagos Conservancy
    「The Enigma Of Fernanda – A Lone Survivor In Galápagos」
    2023年12月19日。仲間を探す調査とフェルナンダの状況について。

  • 【亀ニュースアーカイブ】絶滅したと思われたフェルナンディナゾウガメ、100年以上ぶりに発見

    【亀ニュースアーカイブ】絶滅したと思われたフェルナンディナゾウガメ、100年以上ぶりに発見

    2019年2月、エクアドルのガラパゴス諸島にあるフェルナンディナ島で、一匹の雌のゾウガメが発見されました。

    この島に固有のフェルナンディナゾウガメは、1906年に一匹の雄が採集されて以来、100年以上も生きた個体が確認されず、絶滅したと考えられていました。発見された雌は、島の名前にちなんで「フェルナンダ」と名付けられました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:エクアドル、ガラパゴス諸島、フェルナンディナ島
    元記事の言語:英語
    発見時期:2019年2月
    遺伝的確認:2022年
    情報の種類:過去アーカイブ・再発見・研究・絶滅危惧種

    登場する亀

    今回のニュースに登場するのは、フェルナンディナゾウガメです。

    学名はChelonoidis phantasticus。フェルナンディナ島だけに生息していたとされるガラパゴスゾウガメの一種です。

    長いあいだ科学的に知られていたのは、1906年に採集され、博物館に保存された雄の標本一匹だけでした。

    ニュースの要約

    2019年の調査で発見されたフェルナンダは、サンタクルス島にあるガラパゴス国立公園の繁殖施設へ移され、血液や遺伝情報の調査が行われました。

    しかし、フェルナンダの姿は、1906年に採集された雄の標本とは大きく異なっていました。

    雄の標本は、甲羅の前方が大きく持ち上がった、非常に特徴的な鞍型の甲羅を持っていました。一方、フェルナンダは体が小さく、甲羅も比較的なめらかだったため、本当に同じ種類なのか疑問視する研究者もいました。限られた植物しかない火山島で成長したため、発育が抑えられた可能性も考えられています。

    研究チームは、フェルナンダと1906年の標本から得たゲノムを比較しました。

    その結果、二匹は同じ系統に属し、ほかのガラパゴスゾウガメとは遺伝的に異なることが確認されました。フェルナンディナゾウガメは、絶滅していなかったのです。

    たった一匹なのか

    フェルナンディナ島では、ゾウガメらしい足跡や糞など、ほかの個体が存在する可能性を示す痕跡も報告されました。けれど、その後も生きた別個体は確認されていません。2025年時点でも、フェルナンダはこの種で唯一確認されている生存個体です。

    フェルナンディナ島は、広大な溶岩原が広がる火山島です。鋭い溶岩が島の内部への移動を妨げるため、調査は非常に困難です。人間がまだ到達できていない場所に、別のゾウガメが生きている可能性も完全には否定できません。

    なぜ今、このニュースを紹介するのか

    このニュースが発生したのは2019年ですが、絶滅と再発見について考えるうえで、とても重要な記録です。

    人間が「絶滅した」と判断したあとも、フェルナンダは火山島のどこかで生き続けていました。

    誰にも見つからず、仲間がいるかどうかもわからない場所で、何十年もの時間を生きていた。

    存在を確認できないことと、存在していないことは、同じではありません。

    世界のどこかには、僕たちが失ったと思い込んでいるだけで、今も静かに生きている亀がいるのかもしれません。

    亀好きとして注目したいポイント

    このニュースで注目したいのは、一匹の亀が、種の絶滅という判断を覆したことです。

    1906年の標本と、2019年に発見されたフェルナンダ。

    科学的に確認されているのは、わずか二匹です。しかも二匹が生きていた時代は重なっていません。

    それでも、博物館に残された100年以上前の標本と、現代の一匹の遺伝情報を比較することで、失われたと思われていた種の存在が証明されました。

    古い標本も、現在を生きる一匹も、未来の保護につながる重要な記録なのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    絶滅したと思われていた亀が、火山島の奥で見つかった。

    ロマンが溢れてやがるぜ。

    出典

    Galápagos Conservancy「Breaking: Female Tortoise Found on Fernandina Island」

    Princeton University「“Fantastic giant tortoise,” believed extinct, confirmed alive in the Galápagos」

    Galápagos Conservancy「Publication Confirms Fernanda as Fernandina Giant Tortoise