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    【世界の亀ニュース】エロンガータリクガメ201匹が誕生 カンボジアの保全繁殖で過去最高記録

    今回は、カンボジアで絶滅の危機にあるエロンガータリクガメの子どもが、2026年だけで201匹誕生したニュースを紹介します。

    今回のニュース

    2026年8月、カンボジアのアンコール生物多様性保全センター(Angkor Centre for Conservation of Biodiversity:ACCB)は、今年の繁殖シーズンにエロンガータリクガメ201匹の孵化に成功したと発表しました。

    これは、ACCBが行ってきたエロンガータリクガメの保全繁殖プログラムとして過去最高の記録です。

    これまでの最高記録は2024年の169匹。

    2026年は8月時点ですでに201匹に達し、前回の記録を約19%上回りました。

    どこの国・地域の話か

    国・地域:カンボジア
    施設:アンコール生物多様性保全センター(ACCB)
    地域:シェムリアップ州
    発表:2026年8月8日
    報道:2026年8月10日
    情報の種類:リクガメ・飼育下繁殖・孵化・野生復帰・絶滅危惧種

    ACCBはカンボジアの絶滅危惧動物を対象に、救護、飼育下繁殖、野生復帰、放逐後の追跡などを行う保全施設です。

    登場する亀

    今回の主役は、エロンガータリクガメです。

    学名は Indotestudo elongata

    英語ではElongated Tortoiseと呼ばれています。

    日本の動物園でも「エロンガータリクガメ」という和名が使われています。背甲はやや扁平で、上から見ると前後に細長い形をしています。最大甲長は30センチ前後から、大型個体では約36センチに達します。

    インド北東部からネパール、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、マレー半島、中国南部など、南アジアから東南アジアにかけて分布しています。

    201匹という新記録

    ACCBでは、2026年に入ってから201匹のエロンガータリクガメが孵化しました。

    2024年の年間記録169匹を、8月の段階ですでに超えています。

    ACCBは2026年を、この繁殖プログラムにとってこれまでで最も成功した年としています。

    201匹の子ガメたちは現在、ACCBの施設内で育てられています。

    すぐに野生へ放すわけではありません。

    捕食者に簡単に襲われない大きさまで成長させ、その後、条件が整った個体から野生復帰を目指します。

    世界最大規模の飼育個体群

    ACCBは、エロンガータリクガメについて世界最大の飼育下個体群を維持する施設としています。

    2025年にACCBの担当者が紹介した内容では、同センターでは約600匹のエロンガータリクガメが飼育されていました。

    これは単に「たくさん飼っている」という意味ではありません。

    野生個体群が大きく減少している種類について、遺伝的な多様性をできるだけ維持しながら繁殖させ、将来的に野生個体群を補強するための個体群です。

    こうした個体群は、野生で何か大きな問題が起きたときに種そのものが失われることを防ぐ、いわば保険のような役割も持っています。

    90年間で80%以上減少

    エロンガータリクガメは、広い範囲に分布しているカメです。

    しかし、

    「広く分布している=安全」

    ではありません。

    ACCBによる保全活動の紹介では、違法な食用捕獲、国際的な野生生物取引、生息地の劣化と分断などによって、過去約90年間で個体数が少なくとも80%減少したとされています。

    現在はIUCNレッドリストで「Critically Endangered」、つまり「深刻な危機」に分類されています。

    一見すると普通に見える中型のリクガメが、実際には世界的な絶滅危惧種になっています。

    森の中で暮らすリクガメ

    エロンガータリクガメは、乾燥した砂漠を歩くタイプのリクガメではありません。

    東南アジアの落葉広葉樹林など、比較的湿度のある森林環境を利用します。

    植物の葉。

    果実。

    花。

    キノコ。

    タケノコ。

    そして、ときにはカタツムリなどの小動物や動物の死骸も利用する、植物食傾向の強い雑食性のカメです。

    森の中で落ちた果実を食べ、別の場所へ移動し、糞と一緒に種子を運びます。

    ACCBの保全担当者は、エロンガータリクガメが種子散布に関わり、森林の再生にも役割を持つと説明しています。

    リクガメを戻すことは、森の機能を戻すこと

    リクガメが一匹いなくなる。

    それだけを見ると、生態系への影響は分かりにくいかもしれません。

    しかし、森の中で果実を食べる大型の動物が減れば、植物の種が運ばれる距離も変わります。

    土を掘る動物が減れば、地面の状態も変わります。

    ACCBは、エロンガータリクガメが種子を運ぶだけでなく、土を掘る行動によって土壌へ空気を送り込み、小さな生物が利用する環境を作ることにもつながると説明しています。

    つまり、リクガメを森へ戻すことは、

    「カメの数を増やす」

    だけの活動ではありません。

    森の中から失われつつある機能を、一つずつ戻す活動でもあります。

    すでに100匹を森へ戻す計画が始まっている

    ACCBでは繁殖だけでなく、実際の野生復帰も進めています。

    2023年4月、飼育下で育てられた100匹のエロンガータリクガメが、カンボジア北部の保護地域へ移されました。

    しかし、到着したその日に放されたわけではありません。

    まず約1ヘクタールの順応用エリアへ入れられ、野生の気温、植物、地面、雨、餌などに慣れる期間が設けられました。

    そして約8か月後。

    2024年1月12日、囲いが開放されました。

    100匹のリクガメは、そこから自分の意思で森の中へ散らばっていきました。

    「放して終わり」ではない

    野生復帰で難しいのは、

    カメを森へ置くことではありません。

    そのあと、本当に生きていけるのかを確かめることです。

    ACCBでは放された個体の一部に、GPSとVHF発信器を取り付けています。

    どこへ移動するのか。

    どんな場所で休むのか。

    どれくらい広い範囲を利用するのか。

    健康状態は維持できているのか。

    そうした情報を収集しています。

    放したカメが森の中へ消えてしまえば、

    「野生復帰成功」

    と考えたくなります。

    でも、本当の答えはその先にあります。

    森を歩く「Tortoise Guardians」

    放されたカメを追跡するために、現地では3人のTortoise Guardians=リクガメの守り手が訓練されました。

    彼らは実際にその森で暮らしている地域住民です。

    発信器の信号を追い、

    カメの位置を確認し、

    行動や環境データを集めます。

    ACCBのスタッフも定期的に森へ入り、GPSデータを回収したり、発信器を交換したりしています。

    さらに半年ごとに獣医師が健康状態を確認します。

    飼育施設で生まれたカメが、

    森へ入る。

    人間の視界から消える。

    でも遠くから、その生活を少しだけ見守る。

    繁殖施設と野生の森が、そこでつながっています。

    201匹は、まだ「成果の途中」

    201匹が孵化した。

    それだけでも大きなニュースです。

    でも、保全という視点では、この201匹はまだスタート地点に立ったばかりです。

    成長する。

    健康を維持する。

    野生へ戻せる大きさになる。

    新しい環境へ慣れる。

    森へ放される。

    野生の餌を見つける。

    雨季と乾季を越える。

    そして何年も生き、成長し、最終的には自分たちで繁殖する。

    そこまで到達して初めて、人間が育てた一世代が、野生の個体群へ本当に加わったと言えるのだと思います。

    飼育下繁殖はゴールではない

    動物園や保全施設で絶滅危惧種がたくさん生まれると、

    「もう大丈夫なのでは?」

    と思うことがあります。

    しかし、野生の森そのものが失われれば、帰る場所はありません。

    エロンガータリクガメが減少してきた背景には、捕獲だけではなく、森林の劣化や分断もあります。

    だからACCBでは、

    飼育下繁殖。

    野生復帰。

    放逐後の追跡。

    地域住民との協力。

    生息地の保全。

    それらを一つの流れとして進めています。

    201匹の子ガメを育てることと、

    その201匹が帰れる森を残すこと。

    どちらか一方だけでは成立しません。

    亀好きとして注目したいポイント

    今回のニュースで僕が特に注目したいのは、

    「たくさん生まれた」というニュースの先に、森があることです。

    201匹。

    数字として見ると、とても分かりやすい成果です。

    でも、本当に重要なのは、

    その201匹を水槽の中で増やし続けることではない。

    いつか、

    人間が餌を与えなくても、

    人間が温度を管理しなくても、

    人間が毎日姿を確認しなくても、

    森の中で勝手に生きていること。

    そして、

    そのカメ自身が次の卵を産むこと。

    飼育下繁殖が成功するほど、

    次に問われるのは、

    「帰る場所を残せているか」

    なのだと思います。

    湯川亀吉の一言

    エロンガータかっこいいよね!

    家にスペースがあったら飼育してみたいな〜

    出典

    Angkor Centre for Conservation of Biodiversity(ACCB)
    2026年エロンガータリクガメ繁殖記録。

    Cambodianess
    「Over 200 Hatchlings of Tortoises Show Successful Breeding Year」
    2026年8月10日。

    British and Irish Association of Zoos and Aquariums(BIAZA)
    「The Long (but Slow) Walk Home – Restoring Elongated Tortoise Populations in Cambodia’s Forests」

    京都市動物園
    「エロンガータリクガメ/Elongated Tortoise」